機動戦士ガンダムSEEDの世界に機動戦士ガンダム0083STARDUST MEMORYのアナベル・ガドー少佐がザフト軍の白服になっていたらという話。

1 / 1
初めて小説を書いてみました。
自分が大好きなキャラ、機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYアナベル・ガドー少佐を主人公にしてみました。


[短編」アナベル・ガドー少佐がSEEDの世界へ

CE69年4月21日

 

「ガドー隊長!大変です。本艦の宙域に向けて地球軍のドレイク級十隻、ネルソン級三隻、アガメムノン級一隻が進行中しています!以下がいたしますか?」

 

ナスカ級レオトンの通信士がレーダーに映った地球軍の情報を隊長とも言える人物に向けて言う。

 

「何?このような辺境の地・・・何も戦略的価値もない場所・・・少しばかり不可解だが・・・これを見逃すわけにはいかん。アーサー、コンディションレッド発令しろ!これより本艦達は目の前の地球軍と戦闘を開始する」

 

ガドーと呼ばれた男は少し考える素ぶりを見せる。今彼らがいる場所はプラントからも離れており、周りにもプラント製コロニーも存在していない。それだというのにこの場所に地球軍が接近してきている。

 

対して自分たちの戦力はローラシア級五隻、ナスカ級一隻、MSが三十四機となっている。本来ならば三十六機となるのであるがそこまでパイロットを補充することができず。このような数字になっている。

 

しかし、プラントと地球の間に決定的な生産力、国力差がある。それを少しでも少なくするべく、彼は戦闘を開始するべくこのレオトンの艦長を務めているアーサー・トラインに戦闘準備するように伝える。

 

「は、はい!コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!これより本艦は戦闘を開始します!僚艦のアポロとドロップへ同様に指示を出してください!」

 

少しばかり慌てながら指示を出すアーサーの肩に手を当てガドーは言う。

 

「アーサー、少し落ち着きたまえ。それではこれから艦の指揮をする者として十分の力を出す事が出来なくなってしまう。それに君はこの艦全クルーの命を預かっている。君一つのミスが全クルーに響くという事は分かっているな?」

 

「はい。それは分かっております・・・」

 

アーサーは少しばかり暗い顔をしてしまう。

 

「そう、暗い顔をするな。別に驚かしているわけではない。艦長と言うものは常冷静に、誰よりもしておかなければならないのだ。それに君自身もそれをする事が出来れば立派な艦長になる事が出来る。今回の戦闘でもそれを出来ることを私に見せてくれ」

 

「・・・分かりました。ガドー隊長!アーサー・トライン全力で期待に応えてみせます!」

 

「よし、では始めよう!私は自分のMSで前線に出て指揮を取る。アーサーは艦の指揮を取れ!」

 

先ほどよりも良い顔をし、落ち着きを取り戻しているアーサーを見ると、ガドーは蹄を返し艦橋から出ていく。

 

その姿を見送るアーサーは心の中で思う。

 

(やはり、ガドー。いや、アナベル・ガドー隊長は格好良い。私もあのような立派な軍人になりたい。何故、あそこまで落ち着いていられるのだろうか?いや、やはり潜ってきた修羅場が違うのだろう。私はまだ小競り合い程度、しかし、隊長は大規模戦闘を潜ってきている。それの違いだろう)

 

今出て行った自分の隊長、アナベル・ガドー。ここ最近頭角を現し始めてきたエースパイロットの一人。先の地球軍との戦闘の功績により赤服から白服へ昇進が決まり、現部隊を率いるようになった。体格は無駄な脂肪などは一切なく引き締まった筋肉、顔立ちも端正なもの、髪型はワコクに遥か昔存在したとされるサムライの髷を模様しポニーテールにしている。本来ならば男は似合わないのだが彼自身の雰囲気、態度などからそれを引き立ててしまっている。

 

「(さぁ、私もこの戦闘を乗り切る!) 僚艦打電、MS部隊発進後300秒後に敵へ向けて一斉射撃を行う!各員、何か少しでも状況が変化すれば直様に報告しろ!」

 

「「「(アーサー艦長、さっきまでの慌て用がなくなっている。流石ガドー隊長)了解!!」」」

 

アーサーはメインモニターに映る発進していくMS部隊を見つめ、今回の戦いがどのようなものになるのかを頭の中でシミュレートしていく。今の様子を見る限り先ほどの慌てていた人物が同一人物とは思うことができない。

 

 

 

 

 

ガドーが艦橋から出て行くと自分のパイロットスーツ(紫)が置いてある場所に向かう。そこで着替えを終えるとパイロット達が集まるパイロットルームへ向かう。そこにはこのレオトンに配備されているパイロット達が既に待っていた。

 

「ガドー隊長。遅かったですね?」

 

ピンク色のメガネフレームをしているメガネをかけ、濃い目の青色の髪をショートカットに切りそろえている女性ジュリ・ウー・ニェンが他の二人を代表して答える。

 

「うむ、すまない。何時もの事をしてきたのだ」

 

ガドーも少し苦笑いをしながら答える。

 

「なるほど。まだ、アーサー艦長のあがり症は治らないんですね?」

 

癖毛の強い金髪をして、勝気の強い女性、アサギ・コードウェルが何をしてきたのかを的確に答える。彼女の口調から毎回のように行っている様子が伺える。

 

「早く治らないの?」

 

そんな艦長に対して呆れた口調で言う、赤毛の短髪でボーイッシュな女性、マユラ・ラバッツが答える。

 

この三人とも女性としてのプロポーションが高く、誰もが男性からプロポーズを受けるほどで、同姓からも羨ましがられるものである。しかし、そのような事はあまり気にしていない三人である。

 

「そんなに言ってやるな。アサギ、マユラ。それよりも聞いていたと思うこの宙域に地球軍の一部隊が接近して来ている。この辺境の地にこれほどの部隊を送ってくるのは不可解、しかし、敵の戦力を少しでも落とす機会を逃すわけには行かない。少しばかりキツイ戦いになるかもしれない。十分に注意しながら戦ってくれ。フォーメーションは何時ものようにアローフォーメーションを中心に対応を行うようにしてくれ」

 

「分かっています。注意しながら戦います」

 

「分かっているなら良い。よし、急いで格納庫へ向かい出撃する。但し、無理はするなよ?」

 

ガドーはそう締めくくり、三人を伴いパイロットルームから自分達のMSが鎮座している格納庫へ向かっていく。

 

 

 

 

ガドーは自分の愛機、ZGMF-1017α1、アナベル・ガドー専用機ジンカスタムのコックピット内に座り、全てのシステムを立ち上げ行くと一つ一つ問題がない事を確認したら目を閉じる。

 

(私は何故この様な事になっているのか?何故一度は死んだ命だというのに、散って行った英霊兵士達と同じ地獄で合うつもりだった。しかし、それがかなわない・・・そう、あの日も私は・・・・・・)

 

ガドーはあの日の事を再び脳裏に思い浮かべていく。

 

 

宇宙世紀0083年

 

一年戦争以来のジオンの残党軍による大規模な反乱が起こった。エギーユ・デラーズ大佐(当時)とソロモンの悪夢と言われたエースパイロットのアナベル・ガトー大尉(当時)が中心となり、ジオンの再興の為に立ち上がった。

 

だがしかし、最初の戦いはジオン残党軍の優勢だったのだが、次第に連邦軍の物量に押され始めてしまい、更には司令官エギューユ・デラーズ中将がシーマ・ガラハウ中佐の裏切りに会い殺され、指揮系統は分断されてしまった。最悪な事にジオン残党軍は連邦軍に挟み撃ちにあってしまい、前にも後ろにも逃げられない。まさに前門の虎、後門の狼の状態になってしまっていた。

 

アナベル・ガトーは自分の愛機ノイエ・ジールに乗り込み、状況を確認する。レーダーには彼の周りに三十機ほどの後期量産型ザクII、リック・ドムIIと数隻のムサイ級後期型軽巡洋艦がいるだけになってしまっていた。更には自分の機体は先ほど撃たれたソラーシステムにより半壊してしまっており、ガトー自身はコウ・ウラキより受けた銃弾が右脇腹に当たっており、止血はしているが早く治療しなければ自分自身の命が危なくなってしまう。

 

「(もう、勝ちはない。後は・・・)さぁ、行くか?」

 

ガトーは分かっていた。もう既に自分達に勝機が万に一つに無くなってしまっているという事に気がついていた。いや、そんな事は他の将兵達も分かっている。しかし、そんな弱音を一切吐くことを彼らはしない。そんな事をしたとしても何も意味がない。死んでいった英霊兵士達が報われないからだ。

 

『デラーズ・フリートの残存部隊に次ぐ!最早君達に求むべき場所はない。速やかに降伏せよ!君達には既に戦闘力と言う戦闘力がない事を承知している。無駄死をするな!』

 

ガトー達残存部隊が最後の突撃の為に移動しているとこのような事が全周波で連邦軍から聞こえてくる。だが、このような通信は無駄に等しい。もう、覚悟が決まっている男達に対してそのような甘い言葉を聞くわけがないからだ。

 

ガトーは負傷している右の脇腹を右手で押さえながら、苦しそうに言う。

 

「いいか。一人でも突破し、アクシズ艦隊に辿り着け。我々の真実を後の世に伝えるために!」

 

その言葉をジオン残党軍は連邦軍に襲いかかる。

 

あるザクⅰⅰはヒートホークを右手に持ち、連邦軍の主力機ジム改の右肩に振り下ろし、ともに爆発に巻き込まれ戦死、またリック・ドムⅠⅠは敵の主砲に巻き込まれてしまい、その機体諸共爆散する。

 

ガトーも必死になって連邦艦隊からの激しい弾幕を避ける。しかし、半壊状態のノエル・ジールでは出力六割減、装甲の強度も七割減と厳しいもので、完全に避ける事は出来ず、一発、一発と被弾していく。何回か回避行動を取り、反撃するがまた撃たれてきた艦隊の弾幕を受けてしまい、左肩部位を破壊されてしまう。

 

「くぅっ!(まだだ、まだ負けん!)」

 

被弾してしまい、激しくコックピット内が揺れ、同時に機体が危険域に入りつつあると知らせるアラームが鳴り響く。その為ガトーのヘルメットのバインダーの部分にヒビが入る。まだ、このような事で自分の志を完全に折る事は出来ないと言わんばかりに、再び連邦軍艦隊に向かっていく。

 

「うぉっ!(こんな奴らがいたから我らスペースノイドが、ジオン公国が滅んでしまったのだ!タダでは墜ちん!) うらあああああああああああああああ!」

 

ガトーはモニターに写っている連邦艦隊を苦々しく見つめ、そして覚悟を決める。ノエル・ジールの残っている推進剤を全て吐き出すかのように最大まで出せるスピードで、連邦軍の艦に特攻をかける。

 

(残ったジオン公国の公民、兵士達よ。何年かかったとしても必ず独立を果たしてくれ・・・)

 

ガトーが最後の最後までジオン独立の為の事を想い死んでいった。何度も何度も夢を見て、それを実現するために、士官学校に入学し常に最前線に立ち戦い、武勲をたて散っていった。必ず残ったジオンの公民達が独立を果たしてくれるという事を想い死んだ。

 

 

 

 

 

 

これが彼アナベル・ガドーが人に言うことのできない秘密。前世とも言える記憶があるのである。死んだ瞬間の精細な記憶、確かにあの時死んだと感覚もあった。しかし、次目が覚めた時にはこの世界の士官学校とも言えるアカデミーで鍛錬に励む一生徒になってしまっていた。

 

最初は驚いてしまっていたが、自室にあったパソコンでこの世界の事を調べていく。するとどうだろうか?まるで前の世界と同じような境遇にプラントがあるではないか。このような偶然があるのか?

 

そして人型機動兵器、|モビルスーツ≪MS≫が存在している。前の世界ではソロモンの悪夢という異名を取る程のエースパイロットであった彼は他の生徒よりも抜き出た存在になっていく。

 

(私はまたあのような事を繰り返すわけには行かんのだ!もう、祖国を戦争で負けさせるわけには行かない。その為なら前線で戦い続ける!)

 

ガドーはアカデミーを主席で卒業し、赤服を受領する。地球哨戒部隊へ配属され、MSパイロットとなり、数々の戦いを生き残る。誰によりも先に敵本隊へと向かい、味方の被害を最小限にとどめる戦い方をする。

 

ガドーは考える。

 

プラントと地球間の緊張は高まっている。コップの中に溢れてしまうのではないかと思うほど注がれているくらいぎりぎりくらいに高まってしまっている。ほんの少しのことで溢れてしまう。つまりプラントと地球の二つは即戦争状態へと突入してもおかしくない。

 

その為に練度の高い兵士を作り、部隊を作り上げなければならない。と、同時に敵の戦力を少しでも落とさなければならない。いくら、MSが現行の兵器よりも高い能力を持っていたとしてもそれは必ず追いつかれ、地球軍MS開発を行ってくる。

 

それは前の世界でも言えることで、前の世界で行えたことはこの世界でも十分に起こり得るのである。

 

《もう、あのような思いはしたくない》

 

この一身で彼は今日もMSに乗るのである。

 

『・・・・・・ット。ガドー隊長!大丈夫ですか?応答してください』

 

『っと。済まない。少し考え事をしていた。これより出撃する』

 

この私とした事が考え事をしてしまい、通信士に不信感を与えてしまっていたようだ。直様通信士を安心させるように通信する。

 

『アナベル・ガドー!ジンカスタム機出るぞ!』

 

私は再び、気合を入れ直し出撃する。広大に広がる宇宙空間へ飛び立ち、少しでも敵を撃墜するために、味方を多く生き残させる。この思いを胸に戦場という部隊に向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

一方、地球軍はこのガドー率いる部隊を補足していた。と、同時に艦内は慌ただしくなってしまっていた。

 

「クッ!このような時に時に補足されてしまうとは!急げ、ここで奴らにあの場所を特定させるわけには行かん!なんとしても取り付く前に落とすのだ!」

 

この地球軍を率いる司令官の一人は内心焦り隠すことができない。自分達が全滅するようなことがあってしまってはならない。この艦隊の他に補給艦、そして月基地から丁寧に組み上げて持ってきた部品が全て台無しになってしまう。

 

彼らの目的はL5コロニーにある新星の他に、プラントを挟み撃ちにするため反対側に小惑星を引っ張ってきて、それを軍事要塞にする任務にあたっていたのである。プラント側に察知されないように小規模な編成で数回に分けて行ってきた。そして今回で作業が終了することができるという所までやってきたのである。

 

しかし、この結果である。

 

最早戦闘を回避する事は不可能である。

 

決心した司令官はこう告げる。

 

「仕方がない。各艦隊に通達しろ!ここで奴らに発見させるわけには行かん。全ての|モビルアーマー≪MA≫と艦砲を向けろと伝達しろ。最悪の場合、軍事要塞にいる部隊も援軍にこさせろ!」

 

「了解です!」

 

そう言うと彼らは慌ただしく命令を伝達していく。

 

元々、プラントとの開戦が近いと上層部が考え、少しでも戦力拡大を狙い作ったのがこの艦隊である。しかし、まだ設立されてから4ヶ月ほどの月日しか立っておらず。実践という実践を積むこともできず、今回がいきなりの本番であった。

 

更に不運なことに彼らは異世界で「ソロモンの悪夢」という異名を持ち、この世界でもその実力を示し始めているエースパイロット「アナベル・ガドー」がいることを知らない。

 

 

 

 

 

『この程度か?この程度の練度ならあいつらも苦戦することもなく戦うことができるだろう?しかし、艦隊の他に補給艦が多いのが目立つ。何のために?』

 

ガドーは愛機のジンカスタム機でミストラルをMMI-M8A3 76mm重突撃機銃で狙い撃ちにして撃墜する。彼は撃墜しながら考える。何故彼らの艦隊の編成がおかしいのか?何故このような宙域にこれほどの艦隊を派遣してくるのか?それを思考しながら彼は愛機を自分の手足のように操る。

 

『隊長、この部隊何処か練度が低いです!』

 

『そうだな・・・何処かまだ作られたばかりのような部隊・・・それも新兵が中心だ』

 

『え?新兵なのですか?何故そんな事が分かるんですか?』

 

ガドーがまたも一機撃墜しているとアサギが近づいてきて彼女が思っていることを口にする。どうもおかしい。部隊の練度が低い。今まで戦ってきた部隊でもここまで脆い部隊等はいなかった。と、彼女は告げたのである。

 

その疑問に答える。

 

『アサギ、始めの頃に教えたと思う。最初の新兵達には目標をセンターに入れてからトリガーを引けと教え込む。それは何故か?その方が確実に命中するからだ。しかし、ある程度戦場に出ると分かるだろう?そのような事をしていては間に合わない。逆に自分が狙い撃ちにあってしまう』

 

『確かにそのように教えられましたけど、途中から隊長は予測してからトリガーを弾けと教えましたよね?』

 

『そうだ。ある程度の実力を持つことのできた兵士にはそのように教えていく。そうでもしなければせっかくの機動力高いMSの性能を活かすことができなくなるからだ。相手がエースクラスになれば予測してトリガーを弾くということなどは簡単にしてくる。無論、エースだけではなく、ある程度の戦場に出た兵士なら出来る』

 

『つまり、できていないという事で新兵という事ですか?』

 

『いや・・・』

 

そこでガドーは一旦切ると再び口を開く。

 

『まだ、アサギ君には分からないかもしれんが・・・奴らの機体から殺気というものが感じる事が出来ない。操縦に迷い、怯えが見える』

 

『(そこまで感じることできるというの?・・・それに分からないでもない)』

 

『アサギ、話はここまでだ。敵の第二陣が来ているようだ。それに第三小隊のジン部隊が押され始めている。君達の部隊はそちらの方へ向かい、支援を行ってくれ!』

 

そう言うと、ガドーは残っている敵MA部隊に自機を向けるとブースターを点火して向かっていく。

 

「落ちろ!」

 

『何なんだコイツ!』

 

『は!速すぎる!』

 

『狙いが定められない!』

 

ガドーは迫り来るミストラル部隊を高機動で強襲し、右手に突撃銃、左手にMA-M3 重斬刀で次々に撃墜していく。その彼の動きに練度の低い兵士達は付いてくることは出来ず、ただの的のように当てられ爆散していく。

 

「ええい。一々小物を相手にはしてられん!敵旗艦を落とす!」

 

ガドーは一向に数の減らない地球軍に対し、旗艦を落とすという作戦に出る。旗艦を失ってしまえば敵の指揮系統は分断され、部隊は混乱する。そこを味方部隊で迎撃することで乗り切ろうと考えたのである。

 

敵艦隊が多く存在している場所にジンカスタムを向け、バーニアを点火する。

 

 

「ダメです。第六戦隊通信途絶!」

 

「第十二戦隊の消耗率50%を超えます!」

 

「第二艦隊の被弾率40%を超えます。並びにプルト艦の戦闘能力失い、撤退指示を希望していますが以下がいたしますか!?」

 

地球軍の司令官に入ってくるのはどれもこれも戦況が最悪のものばかりである。戦闘を開始してからまだ30分もたっていないというのに、保有していた戦力の40%を失ってしまっていたのである。

 

「クソ!どういう事だ!何故ここまで相手は強い!それにうちの兵士たちは一体何をしている!」

 

「それが敵部隊の練度が高く、各個撃破されていっています!その中でも一機のMSが一騎当千の如く味方機を撃墜していきます!」

 

「っふ・・・ふ・・・ふざけるな!!ありえん!そんな馬鹿なことがあってたまるか!」

 

通信士から報告される情報に対して司令官は怒鳴る。夢物語のようなことが現実に起こすことができるものかと、そんなことあってたまるかと現実逃避したく他者に対して怒鳴る。自分自身を震わせるために怒鳴るようなものであった。

 

「!?大変です。先程報告していた一機がこの艦に向けて急速に接近中!」

 

「迎撃体制を取れ!対空迎撃開始!僚艦にも打電し迎撃させろ!並びに要塞の防衛隊に救援要請を行え!あそこの部隊ならある程度戦場をくぐっているパイロット達が多いはず!急げ!間に合わなくなるぞ!」

 

「分かりました!」

 

司令官は通信士に急がせるよう指示を出すと時間稼ぎを行うため、どのような策略を練れば良いのか考えるのであった。

 

 

 

 

 

「一気に落とさせてもらう!(これ以上長引いてしまうと他の者達が撃墜してしまうかもしれん)」

 

ガドーは分厚い弾幕を掻い潜ると敵旗艦と思われるアガネムノン級へ急速に接近する。手持ちの武装で主砲、ミサイル発射口、MA発進口に攻撃を集中して行く。正確無比に狙われていく彼の攻撃は徐々に敵艦の攻撃オプションを奪っていくと、最後の仕上げを行うため、艦橋部に接近すると突撃銃を向ける。

 

「落ちろ!」

 

ズガガガッ!

 

と、彼は無慈悲に銃口のトリガーを引く。艦橋部にモロに攻撃を受けてしまったアガネムノン級は先ほどの攻撃と今の攻撃により各部で爆発が起きていき、最後には大きな音が宇宙の藻屑となって消える。

 

「何ともたわいもない・・・しかし、今が好機。これを逃すわけには行かん!」

 

そういうとガドーは僚艦としていたドレイク級、ネルソン級、ミストラル、メビウスのMAを次々に攻撃を加えていき、轟沈、撃破していく。彼が一機、一機落としていくと突如カスタムジンは警告音を出す。

 

『(何事・・・・・・敵の増援部隊!?何故突然増援部隊が現れる。一体どこからの現れたというのだ!) アーサー、付近はどうなっている!』

 

ガドーは突然現れた敵増援部隊に対して不審に思う。この辺りには地球軍の基地等は存在するわけがない。それだというのに敵増援部隊は更に一個中隊規模となっていた。

 

『ガドー隊長、こちらのレーダーでも突然デブリ帯から敵の反応が現れました』

 

『デブリ帯からだと?(まさか・・・あいつらはこの辺りに基地、それも要塞を建設でもしているというのか?いくつかの資源小惑星を改造している。そのように仮説を取れば突然現れたのも説明つく)アーサー、味方で一番消耗の多い部隊はどれだ?』

 

ガドーは仮説を立てると直様に戦略を練り直すために動き出す。

 

『ええ、少し待ってください・・・ありました。第四小隊のマーク隊と第五小隊のイエーガー隊の消耗率が高い模様です』

 

『マーク隊にとイエーガー隊は一旦補給を受けさせろ。順次、補給を行い、再出撃を行え!並びに各部隊は散開せず、必ず小隊を組み消耗を最小限にしながら戦え!』

 

そしてガドーも味方の援護に向かっていく。

 

 

 

 

「エリク隊長。少しよろしいか?」

 

「どうかしましたか?オットー艦長?」

 

ガドー達が戦闘している宙域から5キロほど離れた場所にローラシア級二隻、ナスカ級一隻がゆっくりと航行していた。

 

艦長を務めるオッドー・アイヒマンとこの部隊のエースパイロットを務めているエリク・ブランケに問いかける。

 

「実はだな。この先五キロほどの場所に宇宙哨戒402部隊が戦闘を行っている。本艦はこれよりこの部隊を救援に向かう。エリク隊長はMS部隊を指揮して欲しい。やってもらえるかね?」

 

「402部隊・・・・・・というと。あの先の戦いで多大な武勲を上げたエースパイロット、アナベル・ガドー率いる部隊ですよね?しかし、彼の部隊はザフト二個中隊規模の部隊ですよ?救援する必要はないのではないでしょうか?」

 

ここで説明しておく必要がある。

 

ザフトと地球軍の間には圧倒的国力の差が生まれてしまっているという事は周りの者達は知っていると思う。それにより軍団規模もそれに比例して数の違いが生まれてしまっている。

 

地球軍で一個艦隊規模と言っても、ザフトでは二中隊規模と決定的に違う。それだけ両者の間には決定的な国力差が生まれてしまっている。

 

アナベル・ガドーが率いる部隊はザフトでもあまり見ることのない大規模な部隊編成をしている。普通はオッドー・アイヒマン艦長が率いるローラシア級二隻、ナスカ級一隻が通常編成なのであるが、彼はローラシア級五隻、ナスカ級一隻を率いている。本来ならばこのようにする事はないのであるが、偶々二隻のローラシア級を遊ばせることはもったいないとのことと練度の高い部隊を作るという名目でエースパイロットである彼の部隊に回されたというのが理由である。

 

「そうである。彼は二個中隊規模の編成で航海をしていたが、この先で戦闘をされているようだ。先に地球軍の一個艦隊を壊滅に追い込みはしたが、レーダーで先程確認したところ地球軍の更なる増援部隊を確認した。先に消耗してしまっているエースパイロットであろうと消耗している状態では押し返す事が出来るかは分からん。それに同じザフト軍の同胞を見捨てることはできん。そこで君達部隊を増援に送るのだ。分かって貰えたかな?エリク隊長?」

 

「なるほど、分かりました。エリク・ブランケ、今すぐに部隊を纏め、402部隊の救援へ向かいます!」

 

そう言うとエリクはパイロットスーツに急いで着替え、MS格納庫へ向かっていく。

 

 

 

 

 

 

「中々の者達のようだ」

 

ガドーは新手で現れた敵増援部隊を迎撃しながら呟いてしまった。確かに彼からしてみればまだまだヒヨッコのパイロットであるが、他の者からしてみれば十分に強いと言ってもいいほどのパイロット技術を持っている。

 

『ガドー隊長!第二小隊のアサギ機が中破、並びに第四小隊が中破判定になっています!』

 

『(ここまで追い込まれてしまっているか?しかし、まだ戦死していない)直様にアサギ機と第四小隊を収容しろ!せっかくのパイロットを戦死させるわけには行かん!私が抜けた穴をフォローする』

 

『分かりました!・・・ガドー隊長!ポイントT34の敵部隊が撃墜されてきます!』

 

『何?ポイントT34・・・どこの部隊だ!?』

 

彼は不審に思ってしまう。自分の隊は既に疲労と消耗が激しく、密集陣形を引くことで少しでも生存率を上げることで戦っていた。しかし、味方機を配置していない場所の敵が撃破されていくというのは不可解なことであった。

 

『待ってください・・・・・・ありました!宇宙哨戒210部隊のオッドー・アイヒマン隊です!アイヒマン隊より入電。これより貴官らの支援を行うとのことです』

 

『(オッドー・アイヒマン?・・・何処かで聞いたような名前・・・一体何処で聞いたのか?)そうか?アイヒマン隊に「支援を感謝する」と伝達しろ』

 

『分かりました!』

 

ガドーはふうと一息吐くと全部隊員に向けて告げる。

 

『全部隊に告げる。味方増援部隊が来たことにより敵軍は前門の虎、後門の狼の状況に追い込むことができた!今一度奮起し、この苦境を乗り越えるのだ!諸君らなら出来る!私達なら出来る!この程度跳ね返せ!』

 

『『『了解!』』』

 

そうして壊滅的状況に追い込まれていたガドー隊であったが突然現れたアイヒマン隊によって式を取り戻した。今までは防戦一方であったが、一転し反撃に出たのである。式を取り戻した彼らの猛攻を今の地球軍で防ぐこと等出来るはずもなく、援軍到着後30分という時間で壊滅し、補給艦の多くを捕縛という結果で終わった。

 




皆さんが続きが読みたいという声が多ければ連載へ切り替えていきたいと思います。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。