縁切り(仮題)   作:White-Under

7 / 10

退院した後からスタートです。

見ていない人は前回を見てください。

それではどうぞ。


縁切り-7-

俺が退院して約一ヶ月が経った。

入院前と対して変わらない生活を……………過ごしたかった。

過ごすつもりだった。

「寒い…………。」

天気予報で『雪が降るかもしれません。厚着をしましょう』と言っていたはず、俺はどうしてこんな場所にいる?

勘違いしないでほしいが、決してあのリア充の日ではない。

昨日、稲城に出掛ける理由を聞くと、

その日(24日、25日)は既に予定(企業のクリスマスパーティー)が入っているらしく24日のイブを一週間前倒ししただけらしい。

まあ、彼氏(仮)の状態でも待たせるのはどうかと思い早く来たが、余裕で集合時間過ぎている。

集合時間は10時、俺は9時半から待っている。

現在の時刻は11時である。

少し前に電話をしたら

『お願いだから待って』と言うので待っている。

「八幡!お待たせ~!」

と後ろから聞こえたので振り向くとそこには稲城がいた。

それ以外に誰がいるんだって話だが………。

「………。」

ってそれ短すぎないか?

チラチラ

通行人(特に男)が稲城を見ている。

「スカートに見えるショートパンツだから大丈夫!」

いや、それが逆に視線を増やす原因と俺は思うのだが………。

「それよりも時間が無いから、レッツ、ゴー!」

ズルズル

「引っ張らなくても大丈夫だ!」

「ムリで~す。時間は有限なんだから~。」

遅れてきたあなたがそれを言いますか。

………まあ、これが稲城クオリティーだから仕方がないか。

こいつの性格、いい加減慣れないと。

グゥー

「お腹すいた。」

「時間が時間だからな。」

「………。」

「どうした?」

「『何が食べたい?』とか聞いてよー。」

「………何が食べたい?」

俺は何でもいいが、できれば財布に優しい店で。

サイゼリヤとかサイゼリヤとか。

「言うの遅い!」

「わるい。サイゼリヤでもいいか?」

「しょうがないな~。今日は特別な日の前倒しなんだけどな~。」

チラッ

「うっ、」

確かに、今日が特別な日なのは変わりようがない。

「それなら、出会った日に行ったカフェで………。」

「………及第点かな?」

俺たちはあの日に行ったカフェに向かったが………臨時休業していた。

「よし、帰ろう!」

「帰らない、帰らないからね。」

稲城が俺の腕をホールドする。

ギュウッ

ムミュ

これは立ち止まらないといけないだろう。

そして、円周率を唱える!

3.1…………九字にしよう。

臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前………。

「何ブツブツ言ってるの?」

「 臨・兵…何って九…………口に出てたか?」

「バッチリと。そして、録音済み。」

稲城の手にはボイスレコーダーがある。

「………oh.」

「八幡の変な病気が治ったところで行きますか。」

「病気って………煩悩って何科だっけ?ボソッ」

「それより、他に案は?」

「ありません。稲城さん、ご教示してください。お願いします。」

「はぁ~、しょうがないな~。こういう困ったときに行くお店に行こう。」

………

…………………

………………………………

『喫茶 ミステリアス』

「………合ってるのか?」

「うん、ここだよ。」

「住宅地にこんな建物があっていいのか?」

「わかんない。」

閑静な住宅街に突如現れる中世ヨーロッパ風の建物。

そして、何処か異世界に迷い混んだと錯覚させる雰囲気。

チリン

「あら、いらっしゃい。珍しいわね。貴女に連れがいるなんて。」

「そういう気分もあるの~。」

「それも美味しそうな男の子。」ウットリ

「!!」ゾワッ

俺の全身の毛が逆立つ。

「八幡、大丈夫大丈夫。独神だから。」

「いやいや、そこは独神だから危険なんだろ!」

あの先生みたいに婚期を逃し、更に男が近付いてこないという負のスパイラル。

そこから伝説が生まれ、そして独身は神となる。

「美味しそうな男の子改めて、勘違い少年くん。私はそこら辺にいる可哀想な乙女とは違って相手は沢山いるのよ。昨日だってナンパしてきた男と夜の運動会を楽しんだわよ。少年もどう?何戦できるか挑戦してみない?」

「言った通り安全でしょ?」

「逆に危険性が高まったわ!」

「そう?人のものは取らないから安心できるけど。」

「俺はまだ誰のものにもなってないぞ。」

「………あ。」

「でも、コンの予約済みでしょ?違ったかしら?彼氏(仮)くん。」

「確かに彼氏(仮)ですけど、それはあくまでも(仮)なだけで付き合うと決まったわけでは………。」

「「ハァー。」」

「コン、その男(仮)のどこがよかったのかしら?」

「小枝さん、ゴニョゴニョで………ゴニョゴニョ………。」

「そう、コンらしいと言えばコンらしいわね。あと、付き合うなら気を付けた方がいいわよ。こういう男に限ってえげつないモノを持ってるから。あのときの貴方みたいに目の腐った男もそうだったわ………。」

「………。」

俺のように目の腐った男………………………身近にいるとは言いたくないな。

「コン、何しにここに来たのよ?」

「昼ごはんを食べに来た。」

「………ここはコンみたいな大食いが来る場所ではないのよ。その前にディナーしかしてないわ。」

「と言いつつもそれはな~に?」

稲城がテーブルの上にある卵料理を指差す。

「オムレツよ。」

「ランチあるじゃん。」

「新しいメニュー(ディナー)の試作品だからランチではないわよ。」

「ぶぅー。食~べ~た~い~。」

「仕方がないわね。不味くても文句は言わないこと。」

「わかってまーす。」

「………」

「パクパク、モグモグ。」

現在、既に5皿目である。

稲城のことをしっている小枝さんも呆れている。

「よく食べるわね~。私には無理。絶対胃もたれするわ。」

「私は小枝さんと違ってまだ若いから。見た目も体も。」

「………ボッシュートー。」

「いや~、わたしの~ひ○しくーん。」

「違うだろ。」

「面白くないわね。コントだったのに。本当にこれのどこがいいのかしら?」

「そこも八幡らしくていいんだよ~。」

「洗脳でもされたの?」

洗脳って、そんな犯罪染みたことしません。

「八幡はそんなことしませーん。」

稲城!

「八幡菌でーす!治療薬がありませーん。」

「そっちのがたちが悪いわね。目に見えないんだから防ぎようがないわ。近寄らないで。」

「そんな菌存在しません。」

「存在してないのに私は感染した。とういことは………。」

ということは………なんだよ。

「最初の感染者。」

「バイオハザード。」

「ウガー!」

「きゃーっ!」

「………帰りたい。」

「嫌だった?変な人がいるから?」

あなたです。

「変な人?そんな人どこにいるのよ?いるなら警察呼ばないと。」

あなたもです。

「「あっ!八幡(きみ)だ!」」

「……………。」ブチッ

俺の何かが切れる音が聞こえた。

「じょ、冗談だって!」

「そ、そうよ!暴力は良くないわよ!夜の暴力はウェルカムよ!」

「ウガー!!!」

「「きゃーっ!!!」」

「冗談ですよ。俺、帰ります。」

チリン

俺はあの空間から逃げ出した。

あー、胃がいたい。

「は、八幡!待ってよー。」

チリン

「………やっぱり若いって良いわね。」

………………

………………………………

………………………………………………

「は、八幡!」

「オムレツは良いのか?」

「十分食べました!」

「そうか。」

「「………」」

「ねぇ。八幡」

「何だよ。」

「私って何?」

「………」

いきなり何言ってるんだこいつ………稲城は稲城だろ。

クローンとかロボットでなければ本人だ。

………………稲城の表情からして求めている質問の答えでなさそうだ。

「………………お嬢さん?」

「そこはお姫様じゃないの!?」

「稲城からそんなイメージが湧かない。」

「ガーン…………。」

「ガーンってマンガみたいな「何か言った?」いや何でもない。俺は、稲城は稲城のままがいいとおもうぞ。」

何も変わらない方がいい。

何もな。

「私も八幡は八幡のままがいいな。」

「そ、そうか………。」

「けど………。」

「けど、なんだ?」

「目の腐りは変わっていいかも。」

「………。」

否定できない。

「あはは。」

キリッ

俺は今できる最高の綺麗な目を作った。

「稲城………。」

「なに?」クルッ

「これでいいか?」キリッ

「………。」

「………帰ろっか。」

「ああ。」

八幡は「(自分の綺麗な目でも人の気分を悪くさせるのか。)」と落ち込み、逆に、稲城は八幡の綺麗な目で破裂しそうになっている心臓を落ち着かせようとしていた。

「(うっ、心臓が破裂しそう!予想通り八幡の綺麗な目は殺人兵器と変わらない!)」

ドキドキ

こうして八幡たちはお互い逆のことを考えながら目を会わせずに帰っていった。

そして、24日と25日。

予定通り浩志さんとエリさん、稲城は出掛けていった。

俺は当然ボッチだったが、

あのメイドと某モンスターを狩るゲーム(Z)をして暇な時間を過ごした。

いつもと何も変わらない日を境に、

俺たちの運命の歯車が初めて動いた。

………………

…………………………

……………………………………

「やっぱり神様はいないんだ……。」

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。