今回は切りの良いところで切ってますのでちょっと短いです。
さて、ハクの次なる出会いは……
さんさんと太陽が照りつける海。その上をゆっくりと進む白い影が2つ。1つは大きな白いたこ焼きのようなもの、そしてもう1つはそれの上で大の字にのびている白い少女だ。彼女は先ほどからピクリとも動かず、死んだ魚のような目で空を見上げていた。
「ああ、空が青いです……」
『そ、そうね……』
ポツリと呟いたハクにレディーは若干引きながら声を返す。
くううう~~~
海上に響く可愛らしい……だが切ない音。その音源はハクのお腹である。
「ご、ご主人……」
『だ、大丈夫?』
「ふふ……もう何も怖くない」
相変わらず死んだ目のままぶつぶつと呟いているハク。
『マズいわ、空腹で頭がやられてる……』
「ご主人、しっか……ん?」
と、そこでシロは海上を漂う何かを発見。主人に何か言うよりも先にそれに近付き、彼は大きな歓声を上げた。
「か、かかか缶詰め!? 保存食の漂流物!? ご、ご主人! しっかりしてくだせえ! 食べ物がここに!!」
『何ですって!? でかしたわシロ! 起きなさいハクっ! 食べ物よ! 天の恵みよぉおおっ!!』
「……、食べ物……?……えっ、食べ物っ!?」
ガバッと身を起こした彼女がシロの視線の先を見ると、そこにはぷかぷかと浮かぶ木箱が一つあった。そして壊れた木箱の穴から保存食らしきパッケージが……
「……!」
その目に希望という名の光を灯したハク。よろよろとシロから降り立ち中身を確認する。
「あ…あ……ああ! 缶詰めがこんなにいっぱい……! 食べ物……食べ物が!」
「これだけあれば1ヶ月以上はもつっすよ!ついてますねご主人!」
「うう、シロぉ……!」
「泣くのは後っす!今はとにかくこれを食べて元気になってくだせえ!」
中に入っていたのは大量の缶詰めであり、消費期限も問題ない。海水でいくつかはダメになっているかもしれないが、久しぶりに食べ物が食べられるという事実に彼女は狂喜乱舞。レディーとハクはそんな彼女を温かく見守っているのだった。
「……缶詰めがこんなに美味しいと思ったのは生まれて初めてです」
既に7個目となる缶詰めを平らげ、ハクは満足そうに頷いた。頬を伝って落ちていく水滴を見れば、彼女がどれだけ缶詰めに感動しているかが窺えた。素晴らしき天の恵みに感謝するのみ。
彼女が現在いるのは缶詰めのすぐ後に見つけた小さな孤島だ。残念ながら食料になりそうな木の実などは見当たらない寂しい場所だが、寝床の確保は出来る。食糧に関しては缶詰めがあるのでしばらくは大丈夫だろう。
「はあ……旅がこんなに過酷なものでしたとは……」
『当分は缶詰めでもつし、しばらくは大丈夫よ。せっかくだからゆっくりしなさい』
「はい、安心したらなんだか眠く───っ!?」
『……今のは砲撃音ね』
音が聞こえた瞬間に身構えたハクにレディーが告げる。ハクは身を潜めながら音の聞こえた方へと向かった。
「艦娘と深海棲艦の……艦隊戦ですね」
島から少し離れたところで戦闘が行われているのが見える。こういう時、無駄にハイスペックなこの体は大変便利だ。
ハクはぼんやりと戦闘を眺める。戦況はどちらもどっこいどっこいという感じだ。艦娘寄りの彼女の心境としては艦娘たちに勝って欲しいと思う。そんな風に戦闘を観察していた時だった。
「あっ」
艦娘側の旗艦らしき少女に敵の砲撃が命中した。かなり効いている一撃だ。艦隊に動揺が走り、慌てて助けに行った他の艦娘たちも砲撃を受け、戦況が一気に変わった。
(これは……マズいですね)
艦娘たちはどんな行動をとるのだろうか。考えられる行動は二つ。このまま体勢を整えながら戦いを続けるか、無理せず撤退に移るかだ。遠目に見る限りあまり旗色は良いとは言えないしここは撤退するべきだろう。彼女ならそうする。
そう考えていつでも飛び出せるように成り行きを見守っていた彼女は次の瞬間、信じられない光景を見た。
「えっ……」
撤退の動きに入った艦娘たち……ここまではいい。だが問題は撤退に入った艦娘側の旗艦がとった行動だ。
───彼女は自分たちの艦隊の……仲間の1人を深海棲艦たちの方へと蹴り飛ばしたのだ。
「どう……して」
蹴られた艦娘の小さな体が数秒宙を舞う。落下し転がる。よろよろと彼女が顔を上げた時には、既に旗艦をはじめとする艦娘たちは大きく離れた位置まで撤退していた。何故か彼女たちは撤退しながらその少女を笑っていて。うずくまっていた少女は再び逃げ出そうとしたが、あっという間に深海棲艦たちに追い付かれ───
何だこれは。何が起きている。何故あの少女はあんな目にあっている。
このままではあの少女が危ない。
既にハクは島を飛び出していた。
唐突なシリアス。近いうちにすぐ続きを投稿します。