豚と呼ばれた提督   作:源治

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五話 ツインツインテール

鎮守府の物資搬入口に高く詰まれた荷物

中身は衣食住はもとより、あらゆる物資が不足する現在では信じられない量の嗜好品や装飾品に衣類などの数々だ

 

「なんやどえらい量やなこれ、これ全部君への贈り物なん?」

 

そう言って軽空母の艦娘である『龍驤』はかぶっている帽子のつばを上げてツインテールを揺らしながら、自分の二倍はあろうかという隣にいる巨体、この鎮守府の主である豚に話しかけた

 

 

あとみんな、龍驤の事を駆逐艦サイズ(身長以外も)だね、って言っちゃ駄目だ、約束だよ

 

 

「あ、足長おじさんからのぷ、プレゼントですな。と、とりあえず開封してぶ、分類しますかのぅ」

 

そう答えて豚は手伝いとして呼んでいた龍驤と駆逐艦の艦娘である『陽炎』と共に物資を開封する

 

ちなみに陽炎をお手伝いとして呼んだのは陽炎型のネームシップとして数多くの妹を持ち、面倒見がよくてきぱきと物事に当たれるからであって、ツインテールが理由というわけでは決してない(強弁)

あとスパッツは大変良いものだ

 

「うわ、なんやこのどでかい服は!これウチらの中で着れるんおるんか!?」

 

そう言って総絹で出来たワンピースを両手いっぱいに高く掲げて広げる龍驤

龍驤の身長よりなお丈の長いその服と、龍驤の対比を見て陽炎は『ウチら』とナチュラルに駆逐艦である自分と同サイズであると認めている龍驤の言葉に引きつった笑みを浮かべて答える

 

「そうですね龍驤さん、多分着れるとしたら・・・・・・」

 

そういって二人は汗だくになりながらせっせと箱を開封している豚を見る

頭の中でこれを着た豚の姿を想像したらマツ○デラックスにしか見えない豚の姿が浮かんだ

 

「しかしデザインはともかく、どれもどえらい金のかかってそうなもんばっかやな。このご時勢にずいぶんとまあ余裕のあるもんやで」

「いったいどんな方からの贈り物なんでしょうか?」

 

そういって首をかしげ作業が止まっている二人を急かすように豚が指示を出す

 

「ふ、ふひ、ふ、服の類はほ、鳳翔さんか間宮さんにでも頼んで、し、仕立て直してくだされ。あ、嗜好品のほうは、す、全て間宮食堂のほうに運びこんでもらえますかな、でゅふ」

 

その指示を聞いてあわてて開封を始めた龍驤は、貴金属の箱の中に同封されていた手紙を見つける

悪いと思いながらも好奇心を抑えきれず開いてみると、美しい便箋に丁寧な文字がつづられていた

 

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拝啓、愛しの君へ

 

お元気ですか?

こちらは少しづつでは有りますが、暖かくなってきました

それもこれも、先日お話しくださったお天気予報のお蔭です、本当に助かっています

 

ですが貴方は天気が悪くても、気になさらず外に出るおつもりのようですね

私は天気の悪い日に貴方がお出かけする事、どうか思いなおして欲しいと願っています

せめてもと思い、貴方に合う雨具をご用意しました

また、他にも必要なものがありましたらお送りしますのでお教えください

 

離れていても貴方の事、想わない日はありません

どうかお体にはお気をつけください

 

 

貴方を愛する薔薇より

 

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「・・・・・・うわぁ、これの送り主は君にえらいべたぼれのご様子やなぁ。きみぃ、そんな風体やのにすみにおけんなぁ、一体どこのお嬢様を捕まえたんや?このこの」

 

龍驤はウエスト三桁を軽くこえる豚のおなかを肘で突っつく

ぼよんぼよんと腹肉を揺らしながら、豚は少し困ったようにつぶやいた

 

「ふ、フヒィ、ま、まぁ・・・・・・こ、このプレゼントの送り主はだ、男性なのでござる・・・が」

 

その言葉で一瞬にして場が凍りつく

それがどういう意味か理解してしまった上で、ツインテール艦娘達の頬が微妙に染まっていたのは見間違いだと信じたい

 

いつの時代もBLは乙女のガソリンらしい、ソースは姉

部屋に見たことのない幽○白書の本がいっぱいあったからみてしまった、俺は詳しいんだ(トラウマ)

 

龍驤と陽炎は気まずそうに顔を見合わせた後、嗜好品の箱を開けていく

 

「ふひっ、と、とりあえずか、陽炎どの。そ、そこにまとめた衣類を持って行って下さるか、でゅふふ」

「あ、はい。じゃあ龍驤さん、後はよろしくお願いします」

 

そう言って陽炎は衣類の入った箱を積んだ台車に載せはじめる

だがその中の一つの箱の中身が動いた気がした、不審に思った陽炎は箱に近づき開封する

 

「わっ!!」

 

陽炎が驚きの声をあげた瞬間、箱の中から黒い影が飛び出し部屋の隅に飛んでいく

しかし出口がないことに気がつき、その影は警戒するようにゆっくりと後ろに振り向いた

 

「・・・・・・人間の子供?」

 

ぼろぼろの服に汚れた髪や体、下手な駆逐艦よりも小さい体格だが、確かにそれは人間の子供だ

陽炎はおそるおそる近づき、警戒する子供をなだめるように声をかけた

子供はいくら陽炎に話しかけられても何もしゃべらなかったが、さすが大量の陽炎型姉妹の長女

陽炎の心ほぐす優しい話し方に心をほぐされたのかポツリポツリと話しだす

 

その様子を豚と龍驤は複雑そうな表情を浮かべて見ていた

 

「なぁきみ、あの子この鎮守府に入って無事でいてるっていうことはそういうことなんやね?」

「ふ、ふひ、そ、そういう事ですなぁ」

 

鎮守府敷地には普通の人間は入れない

神域ともいえるその場所に入ると普通の人間は力を吸い取られ徐々に衰弱していくからだ

無事でいられるのは提督と特殊な護符を妖精から借り受けている憲兵やごくごく一部の軍関係者のみ

 

そして、それら以外の唯一の例外が『提督適性者』と呼ばれる妖精に愛される特殊な素質の持ち主だけであった

その手の素質の持ち主は普通、幼い頃から海軍の提督養成学校に入れられるのが常識である

 

しかしもちろん誰しもがその素質を持っていると気がつくわけもなく

当然のように目の前の子供のような取りこぼしも存在していた

 

ちなみに開放日(別名那珂ちゃんライブ日)と呼ばれる一般の見学者を受け入れる日は、その効力を消している

 

やがてある程度事情を聞いた陽炎は、豚に駆け寄り説明した

それによるとどうにも子供は親を亡くし治安の悪い地方を逃げ出したのはいいものの、佐世保鎮守府周辺の都市部で食うや食わずの生活をしていた

そして先日、ついに物資を盗もうとトラックにもぐりこんだものの、出られなくなりこの鎮守府まで送られてきたらしい

 

「それはいいとして問題なのは、どれだけ説明しても私が艦娘だって信じてもらえない事なんですけどね!」

 

そして陽炎はそう締めくくった

 

「まーそりゃしょうがないわぁ。だって君(陽炎)どう見ても普通の女学生にしか見えんからなぁ。ここはこの知名度抜群の空母である龍驤様に任せとき」

 

はっはっは、と笑う龍驤

 

豚と陽炎は展開が読めた、駄目だ、まだ笑うな、だがしかし、と必死に我慢する

 

「なぁぼん、おねえちゃんの事しってるやろ?どや?」

 

子供は胸(まな板)をそらして自信満々に言う龍驤を胡散臭そうな目で見て

 

「は?誰だよあんた、大体あんたらその年で艦娘のコスプレとか恥ずかしくないの?そこのデブのおっさんもしかして提督の真似?援交でそういうプレイしてんの?正直引くわ」

 

言葉の五連装酸素魚雷(カットイン)を全方位に撃ち込んだ、龍驤は直撃した、巻き添えで陽炎も被害が出た、全国の鎮守府で鈴谷がくしゃみをした

そして至近弾を浴びたツインツインテールは無事大破した

 

その姿に豚(無傷)はウッシッシと苦笑いを浮かべ、子供に近づき担ぎ上げる

 

「なっ!?なにすんだおろせよこの!豚野郎!」

 

そういって豚の頭をぽかぽかとたたくもノーダメージ

子供がゴムタイヤをいくら叩いてもダメージは入らない、自明の理である

 

「ぶひひ、じ、実際ここがどこなのかお見せしたほうがは、早そうですな、デュフ」

 

そう言って豚は歩き出す、子供は抵抗をあきらめ落ちないよう豚にしがみつき、応急修理が完了したツインツインテールがあわてて後ろに続く

 

途中その様子を目撃した駆逐艦の艦娘『霞』がなにやら勘違いして

 

「こ、子供を誘拐するなんて貴方ってほんと最低のクズ豚提督!!」

 

と豚の上にクズまでつけられ、ひどい勘違いをして豚に詰め寄るトラブルがあったが、めんどくさがった陽炎が穏便に対処(物理)した

 

しばらくして豚たちは鎮守府内にある水上訓練場に到着する

 

水上訓練場では、川内型の軽巡たちとそれに率いられた駆逐艦たちが模擬戦を行っている姿が見える

子供はその光景を未知の物を見る、おびえた表情で見つめていた

 

「あ、あそこの、せ、先頭を走ってる、か、艦娘に、み、見覚えがありませんかな?」

 

豚の言葉を聞き、目を凝らしてみた子供はしばらくしてビクンと背筋を伸ばし、ポカンと口を開けた

 

「那珂ちゃんだ・・・・・・本当に那珂ちゃんだ。・・・・・・すげぇ」

「ふっひっひっひ、ま、まごう事なき那珂ちゃんですぞ、デュフフ」

「すげぇ」

 

 

その言葉を聞き、後ろに居たツインツインテールは二人とも膝から崩れ落ちた

応急修理した場所に主砲(夜戦カットイン)が直撃し、心が折れてしまったのだ

 

「私だって(艦これ中)最大数を誇った陽炎型のネームシップなのに・・・・・・ブツブツ」

「う、ウチかて空母の礎を作った偉大な船なんやで・・・・・・ブツブツ」

 

世間の艦娘的知名度が違いすぎる、相手が悪かったな!

 

 

そんなツインツインテールを無視して子供は興奮したようにまくし立てる

 

「食い物探して駆け回ってどんなに忙しくて、腹へってても、那珂ちゃんの出るテレビは必ず見てた。必ず、絶対見てた。でも遠い世界の事だって思ってた。いや遠いんじゃない。俺のいる世界とは違う世界だと思ってた。艦娘が活躍しているニュースも、深海棲艦が暴れるニュースも見ていたけど。本当に那珂ちゃんは、艦娘は同じ世界に存在してたんだ」

 

子供がどれだけ那珂ちゃんから生きる希望をもらっていたのか計り知れないが、その言葉を聞き豚は少しほほを緩めた

 

「おっさん本当に提督なのか?」

 

おそるおそる自分がしがみついてる男に子供は問いかける

豚はそれには答えずウッシッシと笑う

子供は答えない豚から目を逸らし、那珂ちゃんたちが訓練している様子を黙って眺めていたが

 

「・・・・・・俺も、提督になれるかな?」

 

そうポツリと漏らす

 

「・・・・・・ま、まぁ、す、少なくとも素質はあ、あるみたいですな」

「なりたい、俺提督になりたいんだおっさん、頼むよ」

 

子供は必死に懇願した、提督としての資質、そして現役の提督との出会い、まるで運命がそう導いているかのような状況を逃すまいと必死に

 

それを聞いた豚は、珍しく長考して、覚悟を問うような声色で子供に話しかけた

 

「・・・・・・うーむ、ほ、本当にそう望まれるのでしたら・・・・・・い、いい場所を紹介しますぞ。で、ですが、そ、相当つらく苦しい思いを、す、する事になりますが、か、覚悟はありますかな?」

 

それを聞いて子供はノータイムで返事を返す、覚悟なんてとっくに出来ているという風に

 

「ほんとか!?お願いだよ、なんでもするから!頼むよ!」

 

その言葉を聞き龍驤が幽鬼のようにふらりと立ち上がる

 

「ん?今なんでもするって・・・」

 

そう言い掛けた龍驤に陽炎がラリアットを決める

なぜかそれ以上は言わせないという強い意志が感じられた

 

「ま、まぁ、と、とりあえず数日はここにい、居て貰いましょうかのぅ、デュフフ」

 

もう絵図的にも、音声的にも、え?監禁?事案?事件なの?という通報待った無しレベルにしか聞こえない

しかしその豚の言葉に子供は素直にコクリとうなずく

 

その後、豚はツインツインテールと子供をつれて鳳翔の店を訪れ世話を任せた

子供は艦娘達に風呂に入れてもらい、食事をして、眠るまでずっと艦娘達に話をねだっていたらしい

 




うーん…龍驤と陽炎でツインテールがダブってしまった

ツインテール率高いのは偶然です
関係ないですが好きな髪形はツインテールです

あとマツ○デラックスの伏字を最初一つ左にずらして書いたらすごい事になってかなりあせった

 

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