オウル「そんなんしてもええことないで(´・ω・`)」
コペル「.........。」
サクサク進めたい、でも時間がないし話は丁寧に書きたい........
マイペースが一番か。
SAOが始まり二週間と少しが経った。俺ことオウルは拠点を迷宮区に一番近い《トールバーナ》にし、少しでも早くSAOを終わらせるため(という程善意に満ちてる訳でもないが)馬鹿みたいに迷宮区を攻略していた。デスゲーム初日《アニールブレード》を手に入れてからはクエストを行い経験値を得ていたが、今はmobを相手にレベリングをしている。スキルの熟練度も上げないといけない。
「下はコボルトばっかりだな。ボスの変更はないと考えていいか?」
迷宮区は全二十階。今情報屋が出してるマップデータは確か十四、五階だが、俺は十九階に踏み出した。ここをマッピングすれば二、三日の間にボス戦に突入するはずだ。
「宝箱ばかりは早い者勝ちだよな、悪く思わんでくれ。」
見つけた宝箱を開きながら言う。もちろん誰に向けたわけでもない.....最近独り言が多くなった。自覚はないが寂しいのだろうか?今俺のレベルは13、一層ではこれぐらいが限界だろう。フィールドボスなどのかなり強いmobを一人で相手にしても、徹夜でクエストをこなしても、これが限界だった。安全マージンが階層×3であることを考えれば十分すぎるが。
「それにしても.......この階層、さっきからmobを見かけないな。サーチ範囲にもいない.......。」
まさか誰かが狩りつくしている?考えにくかった。デスゲームと化したSAOは最前線でもLV10に届くかどうかというプレイヤーが多い。パーティーを組めばレベルが低くてもここまで来れるが、マップがあればの前提。転移結晶がない下層では「まだいける。」は「もう危ない。」である。となれば、
「もしかしてこの先に.....?時期的にはおかしくない.....のか?」
少し早い気もするが........足音を殺して先を急ぐ。すると剣戟が聞こえてきた。鋭い音だった。これは片手剣などで出せる音ではない。もっと尖った剣、そう、
「細剣.....間違いないな。」
フード付きケープで顔は見えないが、栗色の髪、そしてここまで来れる実力とくれば彼女は.....
「ハアァッ!!!」
細剣単発突きのソードスキル《リニアー》、だが恐ろしい程速い。反射速度には自信があるが、アレは初動から剣が通るところを見切らなくては避けられないだろう。現に《ルインコボルト・トルーパー》は体勢を崩した瞬間胸をぶち抜かれ、壁に叩きつけられた。プレイヤー自身の動きでソードスキルをブーストしてなければこの芸当は不可能だ。
「.....いいセンスだ、だがオーバーキルだな。」
「!?」
伝説の傭兵のセリフを言えたことに密かに感動しつつ原作主人公と同じことを言う....俺の言葉が介入する余地が無いことに少し泣きたくなった。
「.......オーバーキル?だったら悪いの?」
こちらをmobでないことを確認したが、それでも警戒を解いてない。
「悪い。とどめにソードスキルを使った事とかな。残り数ドットならちょいとつつくだけで倒せたはずだ。それに単発と言えど発動後の硬直はあるからソロプレイならスキルを使わないに越した事はないし、ソードスキルを連発すればHPは減らないにしても精神的に疲れるだろう........帰りはどうするつもりだ?」
喋った、かなり。アルゴ位としか話さないボッチの俺にしては上出来だった。
「.......問題ないわ。私、帰る気ないもの。」
「正気か....?何日ここにいる。」
「多分....三日間くらい...もういい?そろそろモンスターが湧いてるだろうから........。」
「........随分前向きな自殺だな。」
実のところ俺も似たような事はしたことがあるが、《索敵》と《隠蔽》を併用した上でのもの。だが、彼女はそんな事はしてないだろう。
「......遅かれ早かれみんな死ぬわ........。」
そのまま奥に向かおうとしたが、やがて受け身も取らず前から倒れた。
結城明日奈こと私がこのデスゲームと化したSAOをプレイしたきっかけは全くの偶然であった。
兄の浩一郎が買ってきたが、急に海外に行かなくてはならなくなり、部屋にポツンと置いてあったのを私が被った。最初こそ人生初のちゃんとしたゲームに驚きと感嘆を隠せなかったが、ログアウトが出来ず、そして茅場晶彦からのデスゲーム宣言........私は寂れた宿屋に駆け込み助けを待つことにした。現実で起こってることを想像しながら、発狂しながら、待って、待って、待って、待ち続けた。
そして一週間が経った頃、流石に空腹が我慢できなくなり、しかしモンスターを倒してない為お金が無く、どうするか考えてたところ。ヘアバンダナを付けた年下の女の子にパンを渡された。貰うつもりはなかったが、あれよあれよとパンを押し付けられた。パン自体は(女の子には悪いが)おいしくはなかったが、何故か涙が止まらなかった。年下に気遣われたことか、戦わず怯えてるだけの自分が情けなかったのか、死んだ祖父母を除けば人生で間違いなく一番優しくされたことか、或いはその全て。.......私は戦うことを決意した。店に置いてあったガイドブックで町のクエストなる物を受けてお金を貯めて武器を買い、ポーションを買った。慣れない単語に四苦八苦しつつも、レベルを上げながら迷宮区まで来た。そしておそらく四日目の昼前程に妙な男が現れた。
「.....いいセンスだ、だがオーバーキルだな。」
近くに来ていたことに驚きつつもオーバーキルじゃいけない訳を聞いた.....暗い迷宮区でも分かるほど剣呑な目つきだった。少し話せばわかったがどうもこちらに危害を加えようとする気はないようだ。警戒は怠らないが。
「........随分前向きな自殺だな。」
......そう言われてもしょうがない事は分かっている。ゲーム初心者でも自分のしてることが自殺行為だという自覚はある。............だが、
「......遅かれ早かれみんな死ぬわ........。」
これが私の本心だった。そして上下左右の感覚が消失し、一瞬ののちに意識も消えた。
「くっそ重い!」
やっとこさ迷宮区から抜け出した。寝袋に突っ込んだが荷物に余裕があり、筋力にもステータスポイントを振っていなければ恐らく運べなかった。でもアスナ.....いや誰であろうと見殺しは嫌だった。それに間違いなく強くなるであろうプレイヤーが死ぬのは攻略を目指すものとして無視はできない。
「木陰に置いとくか。」
仮想と言えど疲れた、少し休もう...........ん?
「.......余計なことを.....。」
起きるの早くね?30分位よ、君が寝てたの?
「.......誰だろうと見殺しにはしたくなかったからな。あと強くなるであろうプレイヤーが死ぬのは攻略を目指すものとして無視はできない。」
「攻略?本当に100層までクリアする気?」
「2,3年はかかるだろうが、俺は本気だ。あんたのマップデータがあれば明日にでもボス戦が始まるだろうしな。」
「.......ボス戦。」
「.......死ぬにはまだ早いんじゃないかな。細剣使いさんよ。」
「....アスナよ、助けてくれたのはこれでチャラね。」
お前の名前はどんだけ価値があるんだ.....?まぁいい、間違えて呼んだりしたら目もあてられないし。
「そうか、俺はオウルだ。」
それから暫く話した後、《トールバーナ》に向かうことにした.........かなり距離をとられたうえで。傷つくからそういうのやめて欲しい、ホント。
十二時ぴったしに《トールバーナ》に着いた。俺とアスナはその後マップデータをアルゴに渡し「ボスに挑むためレイドを作ろうとしてるやつを知ってるからそいつに渡してくル。今日の二時くらいに広場に来るといい攻略会議が開かれるはずダ。」と言われた後何もせずに別れた........フレンド登録?出来るわけもない。
「二時か、何しようか。」
「オイラとお喋りでもしないカ?」
「二時間はきついな。あともう渡したのか?マップデータ。」
「まぁナ、近くにいたシ。それより何処で知り合ったんダ?」
「誰と?」
もう俺の目を欺くことは出来ないと悟ったのか急に現れることにしたらしい。街中では流石にきついが........いい気にさせるのも癪なのでその内適応してやろう。
「あのフェンサーサ。ネトゲ素人なのに中々強イ........何者なのかネ。」
「知ってんのか?」
「五百コ「やっぱいいわ。」.....つれないナァ。」
多分お前よりは知ってるしね、
「じゃ俺は行くから。」
「待っタ、商談ダ。お前の剣二万九千八百で買い取るそうだガ?」
「........愛着あるからって、断れ。あと詐欺くさいんだが........。」
俺の剣《アニールブレード+6》は丈夫さ4と鋭さ2だ。だが三万もあればここまで強化するのは難しくないはず。やはりこれは、
「いヤァ、オイラそう言ったんだガ.......名前は買うかイ?」
「.......まだ上げてくるようならな、もうないと思うが.....今度こそ行くぞ。」
「待テ。」
「まだあるのか?」
いや、お前油断できないから長時間話したくないんだけど........
「お前の情報を買いたい奴がいるそうだガ?」
それを聞いた時正直驚きを隠せなかった。テスターの時と名前を変えてないので口止めに一万払っているのだが........誰だ?
「........そいつの名前は?」
まさか原作のキャラか?と思ったが、結局聞き覚えのない名前だった。コルを消費したくないので上乗せはしなかったが........何故俺の情報を?そんな事を考えながらアルゴと別れ、時間つぶしに街の中をブラブラ歩くことにした。
「........。」
「........もう居たのか、まだ一時間あるぞ?」
目ぼしい事もないので遅刻しないように広場でメニュー画面をいじりながら待つことにしたのだが、まさかのアスナさん。
「別に........食事も終えたし、することもないから。」
無趣味か、と突っ込みたくなったが俺も似たようなものだった........現実では違うし、ホントだし........誰に対しての言い訳だ?
「そうか、俺はまだだし今食うかな。」
そう言って距離をとって座ったのだがさらに一メートル程横にスライドするアスナさん........やめてね?そういうこと?泣くから?マジで。もういいや、と諦めながら黒パンにクエスト報酬のクリームを付けて食べる、クリームは割となんにでも合うが個人的にはこの街の黒パンが一番だ。何より安いし。
「........それは?」
「クエスト報酬のクリーム。ここの黒パンに合うんだわ。」
「........。」
殺してでも奪うかどうか考えてる目だった。そういやあんた生で食ってたな。
「ほい、使うといい。」
そう言って黒パン二つと瓶を渡す........いや、遠慮すんなよ。凄い目してたじゃん、あんた。
「........!!?........。」
意外な程に旨かったのか、無心でがっつき始めた。俺も食べる......旨いなぁ、もっと増えてくんねぇかなこういうの。SAOは変な料理が大半だし。
「ッ!?........。」
「いや睨むなよ、俺悪くないじゃん。クエストのコツ教えようか?」
「.................ご馳走様、あと結構。私は美味しいもの食べるためにここまで来たわけじゃないから。」
絶対悩んでたな........コイツ。
「じゃあ何のため?」
デザートにリンゴ、しかし何故か梨の味がする果物をシャクシャクしながら聞く。
「私が私でいるため........宿に閉じこもって腐るくらいなら、戦って前のめりに死にたい........私は、この世界に負けたくない。」
「なら尚更死なない方がいいと思うが........自己満足は生きる上で必要な栄養価みたいなもんだ。でもそれの為に死ぬのか?」
「........あなたに何が分かるの?」
「何か分からなければ何もしてはいけないのか?」
「........。」
「........極論、自分以外の人間は家族でも他人だ。内心なんて本当の意味で知ることはない。超能力でもあるならべつだがな........楽しめよ、仮想だろうが現実だろうが、生きるってことを。」
「........覚えておくわ。」
アスナが何を思ったか、それを知る術はない。だがもう自殺紛いの事はしないだろう、そんな確信が何故か俺にはあった。
「さてと、そろs「あっーーーーーーーー!!」!!?」
何だ!何があった!!?青いツナギを着たイイ男でもいんのか!?俺はビビッて左手を剣の柄まで持っていくが、
「梟助!!」
「......ユウキ!!?」
まさかの紺野木綿季だった。
「ほう、それでSAOに?」
「うん、たまたま懸賞が当たったから。」
「ランは?」
「ラン姉ちゃんは来てないよ、ナーヴギアうち一つしかないし。」
そうか、でもラン姉ちゃんって聞くと別の人と勘違いしそうだからやめてね?メガネの少年が居たら死者がもっと出るからね?そして後ろのフード付きケープは誰だ?もう間に合ってるんですけど?
「あなたは........。」
キャラかぶりに物申すか?と思ったがどうやらユウキの方らしい。
「あっ、宿屋で凄い目してた人。」
「ブフッww、ちょ、ユウキ、言ってやるな。」
笑うわ、こんなの。さっきまで自殺行為止めてたんだぞ?あっ、ごめん、やめてね?剣抜かないでね?ここ圏内だよ?
「一緒に行動してたの?」
「いや、迷宮区でちょっとな.......お前の方こそ後ろのそいつ誰だ?」
アスナと色違い(若葉色)のケープを着て口元も包帯みたいなもので隠してる。夜に出会ったらアサシンと間違えそう。
「え~~~~~っとね、悪い人じゃないよ?ただ恥ずかしがり屋で........。」
そっか、と言いこの会話を切る。リアルと同じ顔になったここでは顔を隠す、もしくは髪色、髪型、目の色を変える者は珍しくない。(多分)彼女もそんな一員なのだろう。さっきから俺のことガン見してるけど、誰だ?ランじゃない、直葉も違う、立ち振る舞いでわかる。俺の知り合いではないはず........とか何とか考えているともう結構なプレイヤーがいる。人数は........ここを合わせて四十五人か。レイド総数に三人足りない。
「........こんなにたくさん。」
「いや、自己犠牲の精神が発露してるやつはそう居ないと思うがね。」
「ボクは折角のゲームだし、楽しみたかったから。」
「凄いな、お前。俺でも無理だわ、ボス戦は流石に。」
そして謎フード2はだんまりである。声も聞かれたくないのか?確かに声もリアルと一緒だが........。
「はーい!注目!ちょっと早いけどそろそろ始めまーす。そこ、あと三歩くらいよって!」
大声で呼びかけてきたのは中々イケメンな青い髪のナイトっぽいプレイヤーだった。
「俺はディアベル!気持ち的にはナイトやってます!」
........コミュ力も高そうだ。俺が敵う物は果たしてあるのか?とどうでいいことに思考を割いてると、
「今日情報屋から聞いた話では、ボス部屋を除いた迷宮区のマップデータが全部揃ったそうだ。」
本題に入った。騒いでたやつらも静まり返る。カリスマはありそうだな。
「SAOが始まり17日目、そろそろいい頃だと思う。2層へ上がりこのデスゲームはクリアできると証明しよう!!」
大きな声で全員に呼び掛ける。熱に浮かされたように周りも同調する。悪くはない、怯えるよりもよっぽどいい。
「ちょお待ってんか。ナイトはん。」
だが出るか、こいつは。裏で繋がってるのだとしたら大した忠誠心だ。
「仲良しこよしする前に、言わしてもらわんとあかんことがある。」
「勿論意見は大歓迎さ。だが、名前くらい名乗って欲しいな。」
「........フン。」
演技うめーーなー、でも早くしてほしいなーー。(緊張感/zero)
「ワイはキバオウってもんや。」
この
「こん中に五人か十人くらい、詫び入れなあかん奴らがおるはずやで。」
キバオウが食って掛かり、ディアベルは芝居がかったような動作を付け言う。隠す気ないな、こいつら。
「詫びって、誰が誰にさ?」
「元テスターに決まっとるやろ!そして死んでったニュービー約八百人にや!ちゃうか!?」
そのままこちらに演説するように言う。
「奴らテスターはデスゲーム初日に自分の為に碌にベータの情報も出さずに街を去った。そして自分らだけ強なった。土下座させてため込んだアイテムとコルを吐き出させな仲間として背は預けられんし、預かりとうない、そういうとんねん!!」
成程、で?お前がテスターじゃない証拠は?何て考えてるが俺が出る気は無い。そこまで主人公力高くないしエギルらしい人物が見える。きっと彼が論破してくれる、
「........むぅ~。」
と思ってた時期が僕にもありました。ユウキさん、そんな如何にも怒ってるって顔してるということは........
「........よし、」
よし、じゃねぇよ。ヒロイン力高いけど良くないよ。流石に妹分をこんな場所の前に立たせるわけにはいかない。
「ty「発言いいかい、キバオウさん、ディアベルさん?俺はオウルという者なんだが。」!........。」
立とうとしたユウキの頭を押さえ込み俺が立つ。俯いてた周りがこっちを見ている。一瞬「何だ!?」という顔をしていたが「チッ......爆発しろ。」みたいな顔になった。何故に!?と思ったが俺の周りは二人はフードをしてるが女だらけだ。多分侍らせてる女の前でイイかっこするモテ男に見えたのだろう。すみません、自分ハーレム系オリ主ではないんですが?この空気のまま喋んの?どうか噛みませんように。
「.....!何だい、オウル君?」
「なんやねん!」
二人のブレない姿勢に癒されつつ、いや落ち着け俺。アウェー感すごいけど錯乱すんな。
「キバオウさん、あんた死んだ八百人つったな?」
「あぁ、言うたで。それがなんや。」
「その内半分がテスターだ、多分正確にはそれ以上だが概算的にな。」
「なっ、なんやと!?」
「........。」
ディアベルは沈黙か。しかし迷宮区の攻略が早かったから死んだ奴少ないな、良い傾向だ。
「信頼できる筋からの情報だ。自分の為に走ったテスターは自滅したんだよ。それでも生きてるやつは生きてるだろうが.....あんたが言った事すればそれこそ戦争が起きるぞ。もっとたくさんの人が死ぬ。」
まぁ戦争は行き過ぎかもしれんが、キバオウも引き際は弁えてるだろうし。それに、
「俺も発言いいか?」
聞きほれるような見事なバリトンボイスが響いた........俺はホモじゃないよ?
「俺の名はエギル。オウル、よく言った。若いのに大したもんだ。」
罪悪感で死にそう!ホントは立つ気なかったんです!
「キバオウさん、金とアイテムは兎も角情報はあったぞ、間違いなくな。」
言いながらエギルさんが出したのはアルゴのマークが入ったガイドブックだ。
「それは........。」
「これは俺が村に行けばもう置いてあった品だ。ならもうわかるだろ?これを作ったのはテスターだ。」
「...........ふむ、つまり裁く人はもう亡くなって、そしてテスターもニュービーを見捨てたわけではない。キバオウさん、これ以上はいいんじゃないかな。それでも無理だって言うなら........。」
ディアベルがそう締めくくった、潮時と悟ったな........何かさっきから俺腹黒いな。
「........チッ!!」
キバオウは舌打ちをして不満ですよと言わんばかりに下がった。俺も戻ろうとした時、
「フッ........。」
エギルさんが微笑みながら手を出してきた。一々カッケーな、この人。
「ありがとうございます。」
「あぁ、君も。」
手を握り返しながら、感謝する。よくよく考えたら、ありがとうはおかしいかも知れないが俺はテスターなのでこれでいい。感謝すべきだ。こういう人が居るからなんのかんの戦う意味があるというもの。でなきゃいくら何でもやってられん。
「さてと、テスターとニュービー、問題は沢山あるけれど!気に食わないなら無理にとは言わない!だが手伝ってくれる気があるなら、六人パーティーを組んでくれ!」
巻きで行きたいのか、ディアベルはそう言った。俺とアスナとユウキと謎フード2、あと二人はどうしよう?
「あの~~オウル?ちょっといいかな?」
元の場所に戻るなりユウキは言った。
「ボクらは、エギルさんとこと組むよ........。」
「................????(脳が理解を拒んでる)」
端的に言おう、死にたくなった。
「........。」
「........いじけすぎでしょ。」
「妹に近い存在にぞんざいな扱いを受けたら、いじけもするさ........。」
何故だろう?ほんとに何で?エギルさんに惚れたのか、ユウキ?それとも謎フード2のせいか?そっちのほうが考えられるな........おのれ謎フード2、夜道に気を付けろよ?
「そして、お前が来るとは思わなんだわ。」
「あはは........ごめん、オウル。」
俺のパーティーメンバーはアスナはまだわかるとして、何とコペルも入ってきた。俺ならボッチを貫きかねない、それ位彼と俺は気まずい関係だ。
「ちゃんと、自分から謝りたかったんだ。ごめん、ほんとに........。」
「いいさ、もうしないならな。」
「何?知り合い?」
ちょっと喧嘩別れみたいな、と誤魔化す。まさか殺されかけたと言うわけにもいかない。
「で?どうする?もう解散でいいわよね?」
「えっと、アスナさん?即興パーティーだし、スイッチとか練習しませんか?」
コペルが申し出るが、
「スイッチ?って何?」
「........ユウキがエギルさんと打ち合わせ終えたら来るから、その時説明するよ。」
多分、あいつも知らない。
「え?スイッチ?知ってるよ?」
え?知ってんの?ガイドブックには載ってないのでは?アスナは知らなかったし。
「え?あっ、まぁ、似たようものがあったから、えへへー。」
明後日の方向を見ながらとぼけるユウキ。まさか謎フード2はテスターなのか?それなら納得できるが........どうしてユウキと行動してる?あと俺を探るような視線はなんだ?
「じゃあ、ボクらここに来たばっかだからさ。オウルの拠点に泊めてよ。」
11歳で俺ともリアルで交流があるからそういうが、
「嫌よ、話で済むなら明日でもいいでしょ。私はここで。」
うん、そうなると思った。確かにスイッチは入れ替わるだけだし、アスナは賢いから大丈夫だろ。
「まぁ、俺の宿は広いから連れがいいなら、いいぞ。」
「大丈夫!さっき聞いたから。」
謎フード2の目的が分からん。俺のことを敵視してるわけではないのか?
「じゃあこっから近いし、飯も中々旨いし、ミルクと風呂もついてるかバッ!!?」
突然横から衝撃が走った、目を動かしてみると人の手があった。張り手の如く飛んできて鷲掴みされたようだ。
「お風呂........あるの?」
面倒くさいなぁ、俺はそうため息をつきたくなった。
夜になり、俺が泊ってる民家には
「ZZZZZZZZZZZ」
「........。」
ユウキは分かり易いくらい寝てる。謎フード2は《調合》のスキルでポーションか何かを作っている。アスナはもちろん風呂だ。しかし調合か、ベータの時でもあまり見なかったスキルだ。毒のポーションも造れるが直接殴った方が早いのがほとんどだった。PK専門のプレイヤーは使っていたがまさかユウキがそんなプレイヤーと組んでるとは思えない。何かを憂うような表情も見られなかった。SAOでは感情を隠すのは難しい。かなり感情表現がオーバーなのだ。
「調合スキルとは珍しい物持ってんな。」
「........。」
「何作ってんの?」
「........。」
無視、ガン無視である。いや、話したくないだけでもしかしたら声を出すようなコミュニケーションを避ければいけるかもしれない。
「ちょっと作って欲しい物のがあるんだけど。」
「........?」
「これとこれで作れるはずだから。」
「........??」
こんな物何に使うんだって反応だな。秘密兵器だよ。明日の運命は多分それで変わる。密かにそう企んでいると、
「...!アルゴか。」
「.....?」
「いや、だから何で分かるんだヨ。」
「!?!?」
謎フード2はあからさまに驚いていた。気にすんな勘だ、勘。
「電子の世界で勘っテ.....?」
「それより何の用だ?」
「お前の剣を三万ky「よし名前二千で買うわ。」.....話し聞けヨ。」
「さっさと済ませたほうがいいだろ?」
「ハア、ちょっと待テ..........いいそうだ。まぁ、もう知ってるだろうガ。」
メールの返信速いな、分かってたのか?俺が聞くこと、
「キバオウか?」
「........即答か。オイラはたまにオウルが怖くなるヨ。」
「まぁ梟だし、天敵だからな。」
「そうやってまたとぼけル。」
嫌なことだけ原作通りに進む傾向がある気がするな、気のせいか?
「用はこれだけダ。隣の部屋借りていいカ?」
「フェンサーが風呂浸かってるからダメだ。」
「.....ほほぅ?」
「圏外で殺されても俺は知らんからな。あと貴重な女性プレイヤーを敵に回すのか?」
「.....何かオウルはオイラにとことん利益をもたらさないナァ。」
マップデータとか無償でやってるじゃねぇか、欲張るな。そんな事を話しながらアスナが上がってくるまで話していた。コペルはいま何してんだろ?
「イッツ・ショーウ・タァーイム」
何処かで誰かが嗤った。
長すぎる、でも二話に収めたかった。ごめんなさい。
これからもこんな感じで書いてきますのでお願いいたします。
キバオウ喋らしづらい。