原作と違いすぎてどうすればいいのかわからない   作:七黒八白

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前回のあらすじ

 オウル「ゲームもリアルもボッチでコミュ障。」

 アルゴ「.........。(憐みの目)」

もっと原作崩壊させたいけど、まだかかりそうですね。


第六話 選ぶは 人か鬼か

 今から二時間弱程前に無事(くそったれなこと)に茅場晶彦がデスゲーム開始を宣言した。その内容も、広場のプレイヤーの反応、動揺、混乱は語るまでもなかったので割愛する。そして俺のそばにはクラインもアルゴも、あの短剣使いもいなかったので、足早にはじまりの街を出た。道中の敵を片っ端から倒して、最短でアニールブレードが手に入るこの村、《ホルンカ》まで来た。

 

「さてと、クエストを受けてアニールブレード手に入れてから寝るか。」

 

 今の俺のLVは3。そして装備は初期武器のスモールソード二本とワーウルフが落とした灰色のモッズコートのような防具である。首まわりの狼の毛皮が意外と肌触りがいい。この装備ならリトルペネントを倒すには十分すぎる。

 

「ポーションはクラインといた時に買い込んだからな。あとはクエストを受けるだけだ。」

 

 確かめるように喋りながら、とある家を目指した。この後に待ち構えてるかもしれない出来事を考えると気が滅入るが早くしなければ他のテスター達が来るかもしれない。後ろめたいことはまだ何もしてないが俺の行動は傍から見ると少し奇異に映るようだ。面倒なことは出来る限り避ける。まぁそばで俺の行動を見てた(ストーキングともいう)奴なんてアルゴ位しか居なかったが.........。

 

「よしクエストは受注したし、さっさと行くか。」

 

 そして現れた奴の対応の仕方ももう決めてある。

 

 

 

 

 

 

「セェイ!!」

 

 気合と同時に水平斬り《ホリゾンタル》を放ち、前方2体のリトルペネントの茎を切断する。奇妙な叫び声を上げながらポリゴンと化して空気に溶ける様に消える。

 

「.......これで20体だぞ、まだ花つきは出ないのか。」

 

 頭に花があるリトルペネントさえ現れれば胚珠のドロップは確定なのだが、戦い初めて十分程。出るのは普通の奴と実付きだけである。ベータの時よりポップ率が低いのか、俺のリアルラックが問題か。もういっそ実付きをわざと割って片っ端から狩るかと考えるが、それで誰かを巻き添えにはしたくないので断念する。あと流石に危険だ。同じことを考えて死んだテスターをベータ時代に見たことがある。

 

「レベルも上がりにくいし、早く終わらせたいんだがな.........。」

 

 このSAOはレベルを上げて物理で殴るという戦法が取りにくい。何故なら戦うmobとのレベル差が激しい程経験値は増減するからだ。そのためワーウルフの時は一気に上昇したが、今はレベルアップにまだまだかかりそうだった。早く経験値効率がいい狩場に移動したい。

 

「このコート、隠蔽率がかなり高いみたいだけど.......今は意味ないな。」

 

 スキルスロットは《片手剣》と《索敵》、そしてLV3になった為増えたスロットには《隠蔽》を突っ込んでいるが、ここではあまり使えない。何故なら.........

 

「君、凄いね。」

 

 唐突に声を掛けられた。しかし驚きはしない。

 

「.....そりゃ、どうも。だが背後から声かけるのは感心しないな。俺が殺し屋だったらどうする?」

 

「ここは剣の世界で銃器はないはずだよ。でもごめん、悪気はなかったんだ。」

 

 ネットゲーマーはやはりそういったネタに詳しい傾向にあるのか、バックラーを持った片手剣使いは明言せずとも分かってくれた。これが直葉なら馬鹿じゃない、と無邪気に笑われ、ユウキなら苦笑して誤魔化す.......何だろう、俺はもしかしたら二人の幼馴染ともまともに話せてなかったのかもしれない。

 

「.........何で中年男性みたいな哀愁漂う目をしてるのさ.....。」

 

「いや.........何でもない。」

 

 人前で考え事に耽るのはよくないな。

 

「それより何の用だ。アニールブレードか?」

 

「あっ、うん、君もだね?良ければここはお互い協力しないか?僕はコペル。」

 

「オウルだ。協力はありがたい。正直一人でこいつらの相手はうんざりしかけてたところだ。」

 

 出来ることなら遭わずに、若しくは早く種子を手に入れて森から出たかったがそうもいかないようだ。もしこいつをこのまま放置すれば周りに被害が出かねない.......不安の芽は.........摘み取るに限るのだ。

 

 

 

 

 

 

「.........出た?胚珠。」

 

「いや......何か実はドロップしたけど。」

 

「.........どんなアイテムなの?」

 

「『リトルペネントの実。とても臭い液体が詰まっている。特定のモンスターを引き付ける効果があるが薬効には使えない。』」

 

「捨てなよ.........そんなの.........。」

 

 呆れながらコペルが言う。そう言うなって意外とこういうアイテムが生死を分けたりするんだぜ?しかし胚珠が落ちないこと、落ちないこと.........

 

「.........森に火を放つか.........。」

 

「駄目だよ!?何考えてんのさ!?」

 

 俺がサイコなことをボソリと言うとすぐさま止める。いや冗談だよ、三割くらい。

 

「やる気満々じゃん!?」

 

「だって俺もうLV4だぜ。コペルも上がったし、そろそろ.........!!コペルこっち来い!」

 

 身をかがめて茂みに隠れ、コペルを呼ぶ。

 

「どうしたの?」

 

「あれ見ろ。」

 

 俺は《索敵》のお陰で暗視に補正があるが、コペルには無いらしく目を凝らしてる。やっぱこいつ.........いや、まだ分からない。

 

「.....!花付き!でも実付きが二体.........。」

 

 やっと現れたか。そう脱力したいがそうもいかない。重要なのはここからだ。

 

「どうする?どっちからやる?」

 

「.........僕が実付きが引き付ける。オウルは花付きを速攻で頼む.........」

 

 逡巡するようにコペルが言った.........実際逡巡してたのだろう。だが俺は何も言わず、

 

「よし、俺が奥の花付きに突っ込んで実付きの気が逸れたら攻撃を頼む。倒したらお前の援護に行く。」

 

「.........わかった、頼むよ。」

 

 その言葉を言い終えると同時に全力で駆け出す。敏捷寄りのステータスは実付きの間を通っても反撃を受ける事無くすぐに抜け出し、

 

「遅ぇよ!馬鹿野郎!」

 

 今まで出なかった鬱憤を吐き出しながら、勢いに乗せて《ホリゾンタル》を弱点の茎に放つ。レベルの差もあり一撃で屠った。だがしかし、

 

「よし!コペル!仕留めたぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう.........ごめんね。オウル.........」

 

 場違いな謝罪、だが俺は動揺しなかった........あぁ、やっぱりかよ......畜生。

 

 そしてコペルは垂直斬り《バーチカル》を実付きの一体に放つ。風船が割れるような音と共にカメムシのような悪臭が周囲に広まった。そしてコペルは《隠蔽》を発動しながら茂みに隠れた。

 

「コペル.......お前.........」

 

 索敵のサーチに次々とピンクの点が現れる、リトルペネントだ。だが俺は一切気にせずコペルが相手するはずだった実付きを瞬殺し、

 

「MPKか.........ある意味お前はこのデスゲームに真摯に向き合ってるのかもな.......だが聞きかじった行為を実戦でするもんじゃない.........隠蔽使ったの今日が初めてだな。」

 

 恐らくコペルがいるだろう茂みに向けて言う、

 

「隠蔽はどれだけ習熟しても、mobによっては無意味なことがある......リトルペネントのような視覚がない奴とかな。」

 

 それに答えるように茂みが揺れた.......だが信じ切ってないのかコペルは出ない。サーチ範囲には3,40体の反応が見られる.........一度にこれだけ出ると流石に危ないかもしれない。

 

「とりあえず自分の身を守るか。」

 

 後ろから来てるペネントを振り返りざまに《ホリゾンタル》で三体瞬殺。奥からどんどん出てくるペネントに向かって特攻を仕掛ける。ツルの鞭をわざとギリギリで避け、腐食液だけをしっかり避ける。鞭はあまり脅威ではないが腐食液は装備の耐久値をかなり削る。予備の武器はあるが、浴びる気にはならない。

 

「うわぁああああああ!?!?」

 

 後ろからコペルの叫び声が聞こえる。だが振り返らずペネントを二体、四体、八体屠りながら、

 

「落ち着け!しっかり対処すればいい。数が多いだけだ!」

 

「ッ!!?あ、あぁ!!分かった!」

 

 パニックにはなってないのか、返事が聞こえた。腐ってもテスターなだけはあるか。

 

「腐食液だけはしっかり回避しろ!鞭は大した威力じゃない!」

 

 だがこの助言は遅かったのか硬質な物が折れる音が聞こえた。マジかよ......コペル.........

 

「けっ、剣が!」

 

「チッ!使え!」

 

 思わず舌打ちしてしまったが、予備のスモールソードを声が聞こえた方へ投げる。これで俺にはミスは許されなくなった。これで死んだら流石に恨むかもしれない.........だが俺も、そしてコペルもペネントを次々狩っていき予想よりずっと早く決着は着いた。

 

 

 

 

 

 

「.......生きてる.......死んだかと思った........。」

 

 コペルは泣きそうになりながら、そう言っていた.........だが俺の戦いはまだ終わってない。肩に剣を構えてソードスキルを発動させる。《ソニックリープ》現時点で一番距離を稼げる技だ。

 

「ッ!!?何を!!?」

 

 狙いはコペルではなく剣。粗い使い方をしたのか簡単にへし折れ消えていった。

 

「何を?こっちのセリフだ。カーソルがオレンジにならなければ許されるとでも?」

 

「!!.........」

 

 コペルは項垂れ何も答えない、答えられるはずもない。直前で謝ったのだから胆力は然程ないのだろう.........少なくとも人殺しに何も感じないわけではないらしい。

 

「.........ほらよ、」

 

「?....!!これは.....」

 

 リトルペネントの胚珠、先の大群で花付きが居たのだろう。いつの間にかもう一つ持っていた。

 

「.........俺じゃなければ死んでたかもしれない、少なくともお前は死んでた。」

 

「.........。」

 

 コペルを見殺しにすることも、考えなかった訳ではない。はっきりいって自業自得だから同情はしない。SAOの被害者という点では俺もあまり変わらないのだから。だがそれは鬼の所業、そこまで堕ちるつもりはない......ただ俺が臆病なだけかもしれないが........

 

「そいつはやる。二度とこんな真似はすんな......自分の心を削るだけだ。死にたくなるぞ、日常に戻れば.........。」

 

「.........ッ!!!」

 

 コペルは噛み締めている。後悔か、俺への苛立ちか。分からないし、分かるつもりもないが.......

 

「じゃあな、いつかはクリアされる。自棄になるな。」

 

 そんな事を言いながら《ホルンカ》へ戻る。また会ったら気まずいなんてものではないので、次の村へ行かなくては。

 

「.........畜生.........。」

 

 .........俺には何も聞こえなかった、そういうことにした。

 

 2022年11月 アインクラッド 盾なし片手剣使いオウルLV6。俺は最初の戦いを終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ.........中々面白れぇもんが見れたな.........。」

 

 

 

 

 

 




 本格的に始まりました、少なくとも自分的には。
 コペル生存、出番は.......少しお待ちを。

 

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