原作と違いすぎてどうすればいいのかわからない   作:七黒八白

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前回のあらすじ

 武蔵「迷いは吹っ切れたか?」

 梟助「.........。」

今回からSAOです。桐ケ谷祖父の人気が凄いですね。あれ、オリ主どっちだ.........?


第五話 人の和 逸れる鳥

 2022年11月、自室。俺こと雨木梟助(あまぎほうすけ)はナーヴギアを用意してベットに座っていた。まだサービス開始、地獄の門が開くには時間がある。正直に言うと茅場も何らかの形で原作と乖離してるのではと思ったが、この前、珍しくメディアに出て、「これは、ゲームであっても遊びではない。」と言った。もうこれ以上の証拠はいらない。ナーヴギアの構造やSAOについて出来る限り調べたが、この一言が一番の確証になった。SAOで起こることを考えて、ベータ版も出来る限りやり込んでニュービーとテスターの亀裂を無くそうと頭を捻りまくったが.........。

 

「.........仮想世界は兎も角、こっちのコンディションは最悪だな。」

 

 今年の春になる少し前に、直葉の実の祖父であり、俺の師である桐ヶ谷武蔵が亡くなった。それからというもの俺の体は調子が悪かった。命にかかわるような事はないが体が怠く、言うことを聞かない。そればかりか、

 

「まさか13歳で白髪交じりになるとは.........。」

 

 医者が言うには精神的な物らしい。確かに自分自身でさえあまり気づけてなかったが武蔵さんは俺にとって大きすぎる存在だった。転生し、それに浮かれ、あの人から沢山のものを頂いていた。そして気づいてなかった。もう少し早くあの人の思いやりに気づけていれば、あれからずっとそんなことを考えている。.........かつての武蔵さんのように鍛える事により、若さを保つことも出来るだろうが、それにも限界があるだろう。

 

「下手すりゃ20代で老人みたいな姿か.........男でもゾッとする。」

 

 女が若さに執着するのが分かった気がする、そんな事を考えながら自室のテレビをつける。どこもかしこも世界初のVRMMORPGソードアート・オンラインのことを報道している。ナーヴギアも飛ぶように売れている。懸賞や福引などでも手に入る可能性があるようだ.........これも茅場の思惑の内か。直葉は部活の合宿の為間違ってもSAOには入ってこないだろう。

 

「キリトとはあえて違う道を選ぶのも手だな。俺にギルドが立ち上げられるとは思わないが。」

 

 今更だが、ベータ版が受かった事は本当に幸いだった。原作知識だけでは流石に無理がある。モンスターもほとんど苦労しなかったし、当たり前と言えば当たり前だが。ポリゴンにAIを突っ込んだだけの存在が武蔵さんの剣を遮れるものか。

 

「いったいどれくらい原作と乖離するのかね。出来る限り丸く収めたいが。」

 

 出会って早々茅場を暗殺するのもありだが、果たして大人しく死んでくれるだろうか?75層でなく、1層だもんな。流石に無理か。

 

「13時から始まり、17時くらいだっけ?デスゲーム開始のアナウンスは。」

 

 あと10分程で地獄の門が開く。はっきりいって俺がたてた対策なんぞ俺自身を安心させるための物でしかない。どれだけ役に立つか.........取り合えずアルゴとコンタクトを取るとしよう。あいつの方が上手くやるだろう。

 

「.........13年か。」

 

 背は175㎝程、目元は武蔵さん譲りの猛禽類を連想させる鋭い目つき、髪は白髪が混じり鉛色に見えなくもない。早く何とかしなくては肌にも影響が出始め、内臓器官などもやばいかもしれない。

 

「.........まぁ、SAOに入ったら関係ないか。」

 

 嘲笑うように自分に向けて言う.........自分の命にも頓着しなくなっているのが分かるが、

 

「リンク.....スタート。」

 

 これからの事に比べると、どうでもよかった。

 

 

 アカウントを入力.........クリア。

 

 パスワードを入力.........クリア。

 

 ベータ版のデータを使用しますか?.......YES.

 

 名前は《owl(オウル)》でよろしいでしょうか?.........YES.

 

 

 

 

 

 

 

 

   WELCOME TO SWORD ART ONLINE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬の浮遊感の後に、意識がポリゴンで生成された体に入ったことを確認し周りを見る。そうしている間にどんどんープレイヤーが入ってくる。みんな美男美女だが俺は黒目黒髪の普通の容姿だ。戻されるのにわざわざいじるのも馬鹿らしい。ここは一層、始まりの町の中央広場。

 

「対象年齢に届いていない奴もいるかもしれないが.......もう遅いか。」

 

 そう言いながら右手でメニュー画面を開く。この時点でログアウトボタンは無い。しかし誰も気づく様子はない。

 

「まぁ、無理もないか。ある程度の事は自分でしてもらわないと俺も死にかねない。」

 

 何様のつもりだと自分でも思うが、ここで混乱を招くのは無意味だ。計画通り初期武器を2本買って、ペンとメモ帳も.........。

 

「おーーーい!そこのあんた!」

 

 これからすることを考えながら走ってるとそんな無遠慮な声が聞こえた。まさか、

 

「なぁ、そこのあんた!あんたもしかしてベータテスターか?」

 

「....そうだけど、あんたは?」

 

「俺はクライン!SAO始めたは良いんだけどよ。何からすりゃいいのかさっぱりで.........すまんが、一つレクチャーしてくれねぇか!?いずれ恩は返す!」

 

「.........。」

 

 やはりクラインだった。どうする?アルゴとコンタクトを取ったらアナウンスがあるまでレベリングするつもりだったが......いやここは、

 

「そうか、俺はオウルだ。クライン、レクチャーと言っても何から何までじゃなく戦闘だけでいいか?知りうる知識全てとなると、1か月あっても足りないからな。」

 

「マジかよ!あんたもしかしてスゲェプレイヤーなのか?」

 

「戦闘には自信がある。で?どうなんだ?」

 

「あぁ構わねぇ、頼むぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっほおおぅ!?」

 

 数分後、クラインはフレンジーボアの突進で股間を強打していた。リアルならクラインのクラインはご臨終しているだろう。リアルなら、

 

「ペインアブソーバがあるから痛くないだろ。」

 

「あっ、そうか。」

 

 買い物は道中で済まし、俺はメモ帳に一層のベータ時の情報を書きながら言った。

 

「でもよ、あいつらすばしっこいし。」

 

「カカシじゃないから当然だろ。言ったろ、まずはソードスキルで倒せって。スキルの説明欄にあったモーションを取れ。あとはシステムが動かしてくれる。」

 

「ふーん、敵は全部ソードスキルで倒すのか?」

 

「いや、ソードスキルは威力は高いが隙がでかい。自前の剣の腕も必要だ。でもまずはスキルが使えないと話にならない。」

 

「なるほどなるほど、モーション、イメージを.........。」

 

 分かり易く説明したかいがあったのか、クラインの曲刀が淡い赤色を帯び、

 

「でええい!」

 

 フレンジーボアが情けない悲鳴を上げながら霧散するのはそうかからなかった。

 

「おっしゃーー!どんなもんよ!オウル!」

 

「おめでとう、でもそいつ某狩人ゲームのロケット生肉程度の敵だぞ。」

 

「マジかよ!てっきり水竜くらいの敵かと.........。」

 

「ネームドでもないのに亜空間タックル使うモンスターがそこかしこに出たら批判殺到するわ!」

 

 最近は当たり判定が安定してるが特にP2Gの時は凄かった。知識にあるだけだが......このフレーズも久しぶりだな。

 

「だよなぁ.......暫くは戦闘になれるのが最優先か。」

 

 思わず突っ込んでしまった。こんな会話もするのは久しぶりだった。武蔵さんが死んでから直葉とはあまり話せてない。親もどうすればいいのか分からなかったのか距離を測りかねていた。誰も悪くないのに確かに周りの空気は死んでいた。主に俺のせいで.........。

 

「おーい、どうしたオウル。」

 

「いや何でもない。それよりクラインこれ持っとけ。」

 

 そう言って書きたての攻略本を渡す。

 

「ん?なんだこれ?」

 

「俺がベータテストで知った事が書かれてる攻略本だ。見せびらかしたりすんなよ?まず間違いなくPKに遭う。」

 

「怖えよ!?呪いのアイテムかよ!」

 

 特にテスターにとってそれは自分たちのアドバンテージを脅かしかねないものだ。そしてデスゲームにおいてそれは命綱になるということまではまだ明かせないが、兎に角仲間内でしか明かさないように言う。

 

「だから俺と情報屋のネズミのアルゴってやつ以外には見せるな。」

 

「わかったけどよ、何でここまでしてくれんだ?」

 

「お前結構将来有望そうだからな。後はソードスキルのちょっとしたテクニックを教えよう。」

 

 残り時間ギリギリまでクラインにレクチャーした何のかんのクラインは筋がよく、もしかしたら良い方向で原作を崩壊させてくれるかもしれない。そしてフレンド登録を終えてアルゴのもとへ駆け出す。同じ層ならフレンド登録してない者同士でもメッセージを届けられるインスタントメッセージで場所を指定しながら。

 

 

 

「...........なんで隠蔽で隠れてんだアルゴ。」

 

「.........当然のように見破んなヨ。フー坊。」

 

 待ち合わせの人通りが少なく、NPCもいない路地裏でベータぶりに出会う情報屋はもうすでにひげを書いていた。ちなみにオウル→梟→フー坊、である。ネーミングセンスないなこいつ.........。

 

「毎回どうやって看破してるんダ?あとなんか失礼なこと考えてないカ?」

 

「仮想世界特有の気配を感じ取るというか、あと俺のログには何もないな。」

 

 ぶっちゃけ直観としか言えない。電子で全て構成されてるこの世界は目に見えずともそこに何かあれば必ず情報量は変わり、何らかのラグのようなものが生まれ、それを感じる.........全てキリトの弁だが、成程。確かに的を射ている気がする。

 

「で?始まってそうそうオイラ何のようダ?フー坊なら大概の情報は持ってるだロ。単独でボスに挑むやつなんだからナ。」

 

「自分の現時点の限界が知りたかったんだ。遥かな高みってのを知ってるだけに。」

 

 武蔵さんがSAOに居れば、ギルドを作り攻略も楽だったろうが......今は関係ないな、やめよう。

 

「頼みたいことは二つ、一つはテスターとニュービーの差を縮めるため攻略本を作って欲しい。」

 

「.........正気カ?フー坊?」

 

 自分のアドバンテージを自ら捨てるのだから無理もないが、あと数時間でそんなことも言ってられなくなる。

 

「情報はこっちから渡す。1層の情報はもうまとめといた。」

 

「フー坊、何を考えてル?」

 

 受け取りながらアルゴはこちらを訝しむ。

 

「二つ目はクラインっていうプレイヤーを出来る限りフォローしてやってくれ。」

 

「それは難しいナ。情報屋は基本中立だかラ。」

 

「まぁ、お前の判断に任す。代わりにベータの情報は融通を利かすから。」

 

「何が目的なんだ、フー坊。」

 

 語尾が消えて完全にこちらのことを警戒している。しかし、

 

「クラインは有望株だから。自分も強くなるし、仲間も率いる、クセはあるがカリスマもあるっちゃあるだろう。いつか攻略の役にたってくれる。」

 

「.........ベータの時からそうだが何故そこまで攻略に拘る?」

 

 答える気はない、誰であろうと。

 

「.........何となくだ、勘は昔から良い方なんだ.........。」

 

 俺は、一人で戦うことしかできない。仲間ができても猜疑心ですぐに離れるだろう。自分の中の原作知識というものがある限り。

 

「.........そうカ。」

 

 アルゴはそれ以上何も聞いてこなかった。ただ憐れむ目で見てきただけだ.........。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中途半端に時間が余ってしまったので、圏外でレベリングすることにした。対象は近くの森の主のといっても過言ではない強さを誇るワーウルフだ。アニールブレードを取りに行くには時間が無さすぎる。そしてこのワーウルフは逃げることの大切さを教えるボスだ。始まりの街に近いのに討伐推奨レベルは5、この数字はベータ時の最前線でも見かけた。つまり始まりの町から出たプレイヤーが調子に乗るとこいつに食い荒らされることになる。だから、

 

「ついてないな、あの女プレイヤー。」

 

 珍しくこれと言って容姿に特徴がない女性が短剣でワーウルフを相手にしていた。2メートルで二足歩行し、ボロイ曲刀を持っている。しかもHPバーは二本ある。

 

「経験値欲しいし、手を出すか。」

 

 女性プレイヤーはほとんどダメージを与えられてないし、それにもう時間があまりない。死ぬ可能性だってある。

 

「はいちょっと失礼しますよ。」

 

「え?いや、ちょっとー」

 

 何か言い切る前に、ワーウルフの鼻に《レイジスパイク》を放つ。犬科だし急所だろ、多分。

 

「GURRRRRRRGAAAAA!!!!」

 

 適当な予測だったが正解のようだ。レベル1の俺の攻撃にしては結構削れ、のけぞったお陰でスキル硬直は狙われなかった。

 

「GUAAAAAA!!」

 

 左から右へ横なぎに曲刀を振るが身長差から簡単に避けれる。そして曲刀を持った腕に飛びつき、

 

「フンッ!!」

 

 背を全力で反らし、肘関節の逆にへし折る。

 

「GRUAAAAAA!?!?」

 

 この世界には骨折などのバットステータスはないが、それでも人の形をしてると可動域には限界があり、それを狙うと部位欠損などを引き起こせる。

 

「武器も無くなったしあとはちまちま削るか、なぁ?」

 

 ワーウルフが怯えたようなそぶりを見せ踵を返すが、それを逃がす俺ではなかった。

 

 

 

 

 

「いっきにLV3か。いいね、悪くない。」

 

「.........。」

 

 こっちをジト目で見てる短剣使いをなかったことにできるならなおよかった。忘れてたが、俺は紺野姉妹と直葉以外の女子と話せたことなどない。どうするか.........事実だけ述べるか。

 

「.....悪いとは思うけどあんたに勝ち目はなかったよ。」

 

「みたいね。許すのとは別だけど。」

 

「うん、すまん。じゃ。」

 

「許すわけないでしょ、そんな適当な謝り方で。」

 

 肩をつかみ行かせまいとする短剣使い。笑ってるのに笑ってない。

 

「あんたベータテスターってやつ?」

 

「イイエ、チガイマスヨ?」

 

「隠す気ないでしょ、ソードスキルとかいうの使いこなしてたし。」

 

「あーはいはい、そうでござんすよ。だったら何?」

 

「ちょっとレクチャーしt「はいこれ、攻略本。」....用意周到なのね...。」

 

 時間が無いから仕方ない、

 

「周りの奴らに見せたら殺されるから気を付けてね。」

 

「は!?っていうか投げやり過ぎない!?」

 

「すまんが、もう時間が無いんで。」

 

「え?どういうー」

 

 言い切る前に、SAO内全域に響く鐘の音が鳴った。そして俺と短剣使いは青い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ私の世界へ、プレイヤーの諸君。私は茅場晶彦。この世界を創った者だ。」

 

 そして2年に渡る悲劇が開演された。

 

 

 




今回はほぼオープニングですね、我ながら見どころがない。
主人公、師が死んでやさぐれ中。


何か気づいても、場合によっては答えられませんので悪しからず。

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