直葉「人間やめてない?」
梟助「せやろか?(マサラ並感)」
一話にもあったように、これはソードアート・オンラインの皮を被った別の小説、IFのそのまたIF位の気持ちで見て頂ければ幸いです。
悲劇も喜劇もそのままかもしれませんが、そうじゃないかもしれません。
気が重い。2016年、冬休みももうすぐという普通の小学生ならワクワクする中、朝っぱらからそう思わずにいられなかった。きっとみんなは冬休み期間に何をするか考えているのだろう。スキーやら初詣やらそんなイベントに胸躍らせてるのだろう.........俺?年末恒例のケツをシバかれるあれを見ながらソバすすって終了である。だが俺が気を揉んでるのはそんな事でなく、
「何で、いつの時代もこういうイベントはあんのかね.........。」
今日は何でも近所の子供に入学前に学校の事を知ってもらおう的なイベントがあり、俺たち二年生はその5歳児達の引率というか、案内役をしなくてはならない。めんどい(小並感)。
「.........ふけようかな。」
別に子供が嫌いなわけではない。自分も子供だが.........。ただ周りにハブられている理由も分からないのに、初対面の子供を泣かさない自信は無いだけである。いやもういいかな?ふけようかな?いいよね別に、相手にも悪いし。
「てか最近の子供は結構賢いとこあるし、いらないだろこの行事。3,4歳でもポチポチスマホいじる時代だぜ?」
勿論返す相手などいない。もう俺もボッチを受け入れつつあった。土台無理があるのだ。精神年齢一回り違うのに対等な関係を結ぶなど。三者面談で「雨木君は友達とかいないの?」という精神攻撃を堪えればいいだけの話である。というか、先生は気づいてるだろ俺がボッチなことを。わざと?ねえわざと?
「あーさっさと原作始まんねーかな。」
若干ダメ人間になりかけてる気がしないでもないが、あと6年弱くらいとはいえやっぱ長い。やってることもそんな代わり映えしないし、桐ケ谷祖父に鍛えてもらい、直葉と切磋琢磨し、合間に伝説の傭兵のCQCを真似たり。
「マンネリ化を否めないな.....でもやることないし。」
とかなんとか考えてるとチャイムが鳴り授業が始まる、まぁいいか。別に原作キャラに会えるわけでもなし。適当に済まそう。
「こんにちは!ボク、紺野木綿季です!今日はよろしくね!」
「( ゚д゚)」
「(゚д゚)」
マジでか。ほぼ思考停止している俺の中に浮かんだ感想はその程度のものが精一杯だった。いや、確かに病院では見かけなかったし、無事だったらいいなぁ、とか考えてたが、そもそも何で川越市にいるのだろう?原作では横浜の病院に入院していたことから住んでるのもそのあたりだと考えていたのだが.........。
「?どうしたの?お兄さんおなかでも痛いの?」
「え?いや別に?ただ、あの、なんか、君ここらでは見たことないなーって。」
わざとらしい。自分でもそう思うほど挙動不審だった、おまわりさんこいつですされても仕方ないレベルだった。おい、やめろ、やめて、通報しないで。
「あ!わかる?僕ね最近ここに引っ越してきたんだ!」
天真爛漫。そんな言葉が似合いそうなユウキ(推定5歳)はあまり気にしてないようだった。しかし引っ越しか、時期的にはおかしくないのか?よくわからん。そしてHIV患者かどうかはまだ分からない。潜伏期間や、初期症状が面倒なのもHIVの特徴だからだ。原作ではどの位の時に発症したんだ?しかし「君、HIV患者?」なんて聞けるはずもない。そして知るべきなのか?知ってどうする?俺に治せるはずもない。自己満足以下の下衆の勘繰りである.........。
「.........ユウキはどうして、ここに引っ越してきたんだ?」
でも、聞いた。それらしい理由もない、ただ聞いて、その上でユウキと接する。そんな当たり前のような事しか、俺には思い浮かばなかった.........我がことながらさもしいことこの上ない。
「んー?さぁ?ボクはよく知らない。お姉ちゃんなら知ってるかもだけど、それより学校案内してよー。」
少なくとも俺の目には憂いらしきものは見られなかった。この世界では紺野姉妹はHIV患者ではないのか?身内でも何でもないがそうであることを願う。
「そうか......慣れない環境で体調を崩すかもしれないからな。気分が悪くなったら直ぐに言えよ。」
「大丈夫!ボクは元気が取り柄だから!」
そうであってほしい、願わくば一生。
結局ユウキがHIV患者かどうかは分からずじまいだった。自然を装って質問したが収穫は無かった。学校案内も拍子抜けな程何事もなく終わり今は放課後。ユウキ達5歳児は校庭で複数名の2年生と遊んでいる。中には直葉も見える。ユウキと似てる子も見えるが.....あれが姉の藍子だろうか?
「血液製剤......出生時なら
そして俺はというと、荷物を見張ると辞退してスマホ(こっそり持ってきた)で血液製剤について調べていた。簡単に言うと血液製剤にも種類があり出産時なら血漿分画製剤が使われたと思われる。しかし逆算するとユウキ達の生まれは2011年、この年には(少なくともこの世界では)HIVの感染対策は進んでおり、献血の際はしつこい程質問に答えなければならない。数年の間に海外にいったか、異性または同性と粘膜接触したかとか。実際考えにくいのだ。完全完璧とまではいかないけども日本で出産時にHIVに感染することはほぼ無いだろう。輸血は使われる際必ず検査が挟まれるし。
「不特定多数の人の血液を原料にする、か.....海外から輸入されたものを使ったのか.........?」
予測はできても答え合わせは出来ない。そもそもHIVは今では発症させずに過ごす事は不可能ではないし、理論上完治させることは出来るとされている。種類にもよるがHIVは不治の病ではないのだ。実際治った例もあったらしい。
「それを期待するのは流石に無理があるか....。」
「何が無理があるの?」
「いや、何でもないよ。」
近くに来ていた直葉に声をかけられるが、動揺することなくスマホをしまう。このことを直葉に話す気はない。俺もわからないのだから。
「ユウキとはどうだった?」
「どうって.....普通に遊んでただけだけど?」
「姉がいるらしいけど、仲良くできたか?」
「うん、急に引っ越すことになって不安だったらしいけど仲良くできてるよ。」
「.....そうか。」
個人的には
「......どうしたの?本当に?今日なんかおかしいよ?」
「何でもないよ、何でもないんだ。」
自分に言い聞かせるようにランドセルを持ってその場を後にする。もうみんな帰ったのか夕暮れ時の校庭は不気味な程静かだった。忘れがちだが2年生なのだから日が落ちきる前に帰らなくては。紺野姉妹に関して俺が出来ることなど何もない。気にするだけ無駄だ。
「直葉。」
「ん?何?」
「ユウキ達と仲良くしろよ。」
「.........私は雨木君の方が心配だよ。」
「いや、俺はハブられぼっちだし、もう開き直ってるし。」
「気づいてないの?みんなからガリ勉君だと思われてドン引きされてることに?」
「.........。」
そういう事は気づいていたなら早く言ってください。
「あとたまに朝ランニングの後シャワーでシャンプーするの忘れたのか汗臭いし、背が高いから威圧感凄いし、目つき悪いし、.........。」
「え?なに?どうすればいいの?しねばいいの?」
幼馴染兼妹弟子が容赦無さすぎる件について。てか後半はどうすりゃいいんだよ、目つき悪い?マジで?そんな事始めて言われたよ?小説なら「伏線なしでそんな後付けすんなよ」的なこと言われるよ?
「おじいちゃんと似てる気がする.........。」
まさかの桐ケ谷祖父!
「ずっと稽古してたからおじいちゃんのしかめっ面移ったんじゃない?」
「5歳くらいから剣道始めたからな.........。」
そんなのありか?と思わなくもないが、なってしまったのは仕方がない。桐ケ谷祖父には頭が上がらないし、これからもお世話になるだろうから。
「まるで梟みたい。」
「.....梟、ね。」
梟、猛禽類の鳥であり桿体細胞の多さから昼間は目を細めている。俺の名前に使われてる漢字でもある。とある宗教の伝説では梟は神の事を拒んだとかで、太陽の光を見れなくされたんだとか。
「神に呪われんでも日の光は眩しいと思うがね。」
俺も日の光を拝めなくなるんだろうか?そんな事を考えながら夕日を背に帰って行った。
原作崩壊、紺野姉妹生存?が加わりました。HIVの事は調べまくったのですが、こんな感じになりました。何か間違えていたらすみません。
書き方を色々考えながら書くの遅くなるかもしれませんが、頑張りたいと思います。