原作と違いすぎてどうすればいいのかわからない   作:七黒八白

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小説のウラ話

 作者「気づいてるでしょうが、要所要所に作者の趣味が盛り込まれております」

 オウル「伝説の傭兵ネタが一番顕著だったな」

そんな事はさておいて始めます、期間めっちゃ空いたなぁ。


第二十三話 温もり その対価

 アインクラッド五層、主街区《カルルイン》から遠く離れプレイヤーにとって需要がほぼ無い枯れた森の中。朝霧が漂い物々しい雰囲気が漂うなか、三人の男の姿があった。三人の内、倒木に腰を掛けている一人だけプレイヤーアイコンがオレンジ色となっている、システム的な犯罪者の烙印。

 デスゲームと化した今のSAOでは《圏内》に入れないだけでなく、あらゆるプレイヤーから警戒される目印だが、

 

「――――――このチンケなモンが犯罪者の証か、どうせなら赤とかにすりゃいいのによ」

 

「頭《ヘッド》、それじゃあmobと勘違いされますよ?」

 

「そうですねー、ただでさえ見た目だけなら街のNPCもエルフも、違和感仕事しろ、て感じですからねぇ」

 

 男の前に居る二人はまるで気にしていない様子であった。それぞれ装備は違うが、頭部は顔を隠すものを選んでいる。場所や顔を隠している事が彼らの立場を物語っている。倒木に腰を掛けている男――――――フードで顔を隠している男に(ヘッド)と呼ばれた人物が不機嫌そうに、しかし耳障りの良い声でフードの短剣使いに話しかける。

 

「んでぇ? ジョー?ナイト様のとこで何か有益な情報は手に入ったのかよ」

 

「いやーこれと言って特には・・・・・強いて言うなら五層は節目の階層なんでフロアボスが、ちぃっとばかし強いらしいです」

 

「―――――違ぇよ、あの白髪とお仲間の情報だよ」

 

 さっきまでは抑えていたのか、それともそれすらも演技なのか、今度こそ不機嫌さを欠片も隠さずに殺気交じりで問い詰める。

 実際の所、ジョーという男も、その隣で木にもたれかかっている鎖頭巾の剣士も(ヘッド)なる人物に忠誠を誓う部下などではない。ただ楽しめる、利害が一致している、社会不適合者である自分達を本物のアウトローたらしめるカリスマに惹かれたのだ。目の前の人物がそれにふさわしく無いのであれば、一々がっかりするまでも無く見捨てるし、あからさまに上から目線で命令されるのは気に喰わない。

 

「そうか、その様子じゃボウズみてぇだな、オイ?」

 

「えぇ・・・・まぁ、そうです・・・」

 

 だが言うは易く行うは難し。目の前で凄む男はそんな反抗も許さない。

 暴力ではない、この世界では一介のプレイヤーが拷問などは絶対に出来ない、手足を切り落としても痛みはないし、出血もしないのだから。ただ純粋に、彼の纏う空気が自然と自分を、まるで三下の手下とするのだ。

 

「まぁ、いいさ、野郎が群れる気質じゃ無いのは何となく分かった。そして恐らくスパイ―――――お前ぇの事も警戒してるって事が分かっただけでも良しとしよう」

 

「俺が、ですか?確かにウザったいキャラを演じてる自覚はありますが・・・・でもいきなり(ヘッド)に繋げるのは無理があるんじゃ―――――」

 

「所がギッチョン!そーでも無いんですよねー」

 

 場の空気を読まない口調と蟹の仕草で、今の今まで黙っていた鎖頭巾の剣士が被せる様に切り込んだ。確かにこの男は三層のクエストで攻略組がエルフのクエストを進める際に()()工作を任せられていたはずだが・・・・・。

 

「どういう事だよ、モルテ?ていうかお前、攻略組の情報源として臨時の助っ人するんじゃなかったのかよ?何で急に辞退したんだ?」

 

 ある程度助言をして、信頼を稼いだ所を裏切る。或いは現時点で周りに快く思われていないジョーの心証を良くするため、自作自演のスパイになる手もあったらしい。実際それが何処まで上手くいくか、そこまでどうやって運ぶか自分は分からなかったが、成功すればギルドの中で確固たる地位が約束されることだけは理解していた、にもかかわらず急にその計画を全てポイ捨てしたのだ、この男は。

 

「いやーそれがですねぇ、あのアホウドリさんに完全に先読みされて、殺されかけまして」

 

「はぁ!?」

 

 色々とツッコミ所があり過ぎて完全に処理上限を越えた。

 一体何を判断材料として先読みされたのか?実力があったとしても何故いきなり殺しに来たのか?いや、大前提としてそこまで読まれているのであれば、今自分達の事もほぼ筒抜けなのでは無いのか?

 

「誰かに監視でもされてんのか?」

 

 苛立ちを抑える様に頭をガシガシと掻くが、募る焦りが増すだけだ、あのシラガ野郎はこちらの事をどこまで把握しているのか?これが他のプレイヤーならばまだ話は簡単だ、殺せばいい。だが鎖頭巾の剣士―――――モルテは元テスターであり、対人戦はかなり腕が立つ、スキル構成もその方向に鍛えているくらいだ。それを殺せるだけの実力があったということは、最悪(ヘッド)でも―――――――

 

「be cool やりようは幾らでもあるさ。まず最初に考えるべきはモルテの言ってる例の『旗』だ」

 

 こちらの思考を遮る様に(ヘッド)が議題を上げる、そうだ、現時点では何も仕込んで無いのだ。だからまず考えるべきは、何時、何処で、何を仕掛けるか。今回は五層のフロアボスがドロップするアイテムが使えるのではないか?と睨んでいる。

 

「ディアベルさんを殺せば、うまい具合にギルドが割れてくれると思うんですがねー」

 

「あぁ、リンドとキバオウが仲悪いからか・・・・一層の時、ディアベルが死んでりゃあな」

 

 殺すのは、正直難しくない。実力は白髪の女共と互角かそれ以下、だが今俺たちが暗躍していることが表沙汰になるのは避けたい。そしてシラガ野郎がそれを警戒していないとは思えない。ディアベルもディアベルで馬鹿正直に戦いはしないだろう、流石に暗殺までは警戒してないだろうが。

 

「今はオウルの活躍で、ディアベルのギルドは人手不足だ。だが俺達の様なアウトローが行動しているとディアベルが知れば、いくら何でも、今ほど手あたり次第メンツを揃えようとは思わないだろう」

 

 そうなればスパイが潜り込むのは難しくなる、どころか俺の事も疑われるだろう。あのシラガは下手に混乱させるのは得策ではないと判断しているのか、まだディアベルに俺達の事は話してない様だが・・・・・それも時間の問題か。

 

「大まかに方法は三つ、一つ、俺達が旗を手に入れる。これが一番ムズイがリターンが大きい、ボス戦に出れない差を縮めることが出来るし、攻略組を纏らせない歯止めにもなる・・・・・今後似たようなアイテムが出ないとは限らないがな。二つ、旗の事を知らせて攻略組で争わせる。リスクは少ないが・・・・今のとこディアベルのギルドと張り合えるギルドがねぇからな・・・・・本当なら《レジェンド・ブレイブス》辺りに情報を流すのもありだったが・・・・・」

 

 プロDJの様な発音でFuck、と口汚く罵る、シラガ野郎がある程度お膳立てしたとは言え、あそこまで丸く収まってしまったことが気に喰わないのだろう。実際自分も苛付いていた、何より奴に真正面から気圧されたことが。

 まさかあの空気の中、あれだけの啖呵を切るとは思わなかったのだ、ソロプレイヤーで、今のSAOは顔はリアルと同じ為目立つ行為は避けると思ったのだが・・・・・・。

 

「どっちも現実的じゃない気がしますねぇー・・・・三つめは何ですか?」

 

「いや、コイツが一番現実的じゃねぇ。前二つの方がメリットとデメリットがはっきりしてる分マシだ」

 

「・・・・・聞いてる限り、三番目のメリット皆無なんですが、(ヘッド)?」

 

 デメリットは未だしも、メリットもはっきりしないって・・・・策として成り立っていないのでは?正直頭の良さにそこまで自信ない自分としては、そういったことはモルテや(ヘッド)任せるしかないのだが・・・・・。

 

「何でそんな、策として成り立ってない物が選択肢に挙がるんですか?」

 

「――――――このままじゃ、奴の手の上で踊り続ける事になるかもしれねぇからだ」

 

「・・・・・・理由を聞いても?」

 

「考えてもみろ、出来過ぎてるだろ?強化詐欺はまだ分かる、デスゲームになれば良からぬことを企む奴が出ると警戒して、偶然ぶち当たった。だがよ、ジョーへの態度、モルテを殺そうとした事、俺ぁてっきり奴は、目立ちたがりで殺したがりのサイコパスか、何かと思ったがそれも違う――――――――情報が少なすぎて、はっきりとは言えねぇが、俺達の事を事前に知ってたんじゃねぇか?って位だ」

 

 ・・・・・・・・・流石に開いた口が塞がらなかった。いくら何でも考えすぎだろう、いっそ俺たち二人のどちらかが裏切っている方がまだ現実的だ。もっともクエストなどで同行していたし、メッセージ覆歴の確認からまずありえないが。モルテも表情はあまり見えないが、口元はその考えをあまり真剣に考えている様には見えない。

 

「・・・・・・ありえませんねぇ、例えネズミが動いていたとしても、絶対に何か痕跡は残ります。何らかのスキルと言う可能性もありますが、こんな下層から、それこそ神様視点を得られる様なスキル・・・・・バランス崩壊ってレベルじゃありませんよ?」

 

「逆に言えば、奴が神様に繋がっていりゃあ説明がつくわけだ?」

 

「はぁ?」

 

 さっきから着いていけなかったが、今度こそ訳が分からなった。頭《ヘッド》は意外と信心深いのだろうか、などと絶対にあり得ないことを間抜けにも考えていた。

 

「・・・・・茅場の手先ってことですか?」

 

「それなら色々説明がつくんだがな・・・・・・疑問はあのマッドがこんな程度の事で人を寄こすとは思えねぇって事だな・・・・」

 

 あぁ、成程・・・・・・俺はてっきり神様転生とかそんなことを言い出すのかと思った・・・・・・・・・。

 

「どうしたんです?さっきから黙ってますけど?

 

「・・・・・・いや、何でも。それより、奴が手先だろうとなかろうと、こっちの行動が全部読まれてるならどうするんですか?」

 

 どうするもこうするも、手の内がバレバレならば勝負にならないと思うが。誰が相手は絵柄丸見えとわかっているのに、神経衰弱で勝負するというのか、今までの考察が正しければそれ位『勝てない戦い』と言うことになる。少なくとも自分が(ヘッド)なら投げ出す、もしくはあえて無計画で殺しに行く、手の内も何も、最初からカラッポなら読むもクソも無いだろう。

 

「ほーー・・・・ジョー、お前いい線ついてるぜ」

 

「は、はぁ?」

 

「さっきからそればっかりですねぇー」

 

 横の剣士がからかってくるが無視する、そして(ヘッド)から聞いた作戦は作戦などと言うのも烏滸がましい、単純明快で危険極まりないものだった。

 ハッキリ言って、上手くいってもこれは・・・・・・・。

 

「ここいらで一つ勝負を仕掛ける、でなけりゃ――――――」

 

 ――――――あの鳥公に屍を貪られることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「企みご苦労ォオォォォオ!オォウルクゥゥゥゥゥゥゥン!!?」

 

「何ゴットッデェェェェェェェェエエエエエ!?!?!?」

 

 《カルルイン》所か五層の中でも上から数えた方が早い位には人気があるレストラン《BLINK&BRINK》でどこぞの学園都市で最強の能力者の様な発狂ぶりでアホ毛の黒い剣士を投げてくるフェンサー、開幕はそんな感じだった、いやどんな感じ?

 

「ウォオオ!?オォォォォ!?!?」

 

 そしてぶん投げられた妹分の剣士を避けそうになる前に、此処の立地を思い出し裏返り過ぎて最早奇声になりながらも、ハラスメントコード覚悟で抱き留める。ステータス的にスピードビルドでもユウキを投げるのは不可能じゃないか?とか色々ツッコミ所はあったのだが、アスナの発狂具合と俺の混乱具合から最早キャパオーバーである。多分貧困な俺のボキャブラリー描写しきれない。

 

「いきなり何すんだよ!アスナ!?」

 

「ぶん投げられる僕の事完全に考えてなかったよね?」

 

「そのセリフそっくりそのまま返すわよ!頼まれたクエスト大半が、ユウ・・・オバッ・・・・・それ系じゃない!!」

 

「うーん見事なスルーパス、僕じゃ無かったら心折れてるね」

 

 逆さまの状態で呟くユウキを一旦おいて置き、多分こちらにまだ完全にオバケとかが苦手とはばれてないと思っているのだろう、こちらが頼んだのだから言わんとしている事は分かるだろう?とアスナは詰め寄ってくる。

 はてさて、これ以上追い詰めることも、出来なくはないがこれから先の事を考えるとそれは良くないので――――――

 

 

「あぁ、苦手だったの?肝試し系統のクエスト。アストラル系が出てくる奴」

 

 

 ―――――――取り敢えず、すっ呆けた(ゲス顔)。

 

「べべべべべべべべべっつに!????苦手じゃありませんけど!?」

 

『一部場面抜粋』~~~~

 

「あああアアアァァァaaaaaaAAAAAA■■■■――――ッ!!!!」

 

「アスナが!アスナが何かドス黒い何かを纏いながら発狂してる!?」

 

「やらないでバーサーカー!!その女の子どちらかと言えば被害者!」

 

 ~~~~~~~~

 

 

「でも圏内だし、途中からは冷静さを保てただろ?」

 

「勿論よ?そう何度も叫んでたら、喉が持たないじゃない?」

 

 

『一部場面抜粋』~~~~

 

「ナントカカントカパトロナァァァァアム!!!」

 

「ユウキ呪文を覚えてないじゃん!」

 

「そうね、呪文はちゃんと唱えないと・・・・」

 

「アスナ?」

 

「アバダ・ケダブラァァァァ(血走り目)!!」

 

「アスナ!?」

 

 ※先とは別のクエストで、設定的にはかけられている霊は悪人です。

 

 ~~~~~~~~

 

「・・・・・・・・・何だろう、キャラ崩壊とか生ぬるい何かが起こっていた気がする・・・」

 

「気のせいでしょ?それより人がクエスト頑張っている時にあなたは何をしていたの?」

 

 どうせなら付いて行った方が面白かったかな、ほんの少しばかり後悔しながらウェイターに三人の飲み物を頼む。その間にシノンに話した事、これからの行動と具体的な案を考える。アスナとフィリアは怪訝な顔をしていたが、ユウキはある程度予想していたのか、もっともらしく頷きながらPOHの手先への対処を話してきた、もしかすると俺が思っている以上にユウキはドライと言うか、割り切りやすい性格をしているのかもしれない。

 

「確かさ、この五層ではよくPKが多発していたんだよね?」

 

「でもだからって、あいつらがそんな早く行動する?数でも戦力でもこっちが上回ってるよ?」

 

「フィリアの言う通りよ。いくら何でも―――――」

 

「―――――考えすぎ?ならいいさ、俺が笑い者になるだけなんだから」

 

 何も起こらないに越したことは無いが、流石にそれはあり得ないと思う。

 原作知識抜きにしても、今回の様な騒動になりかねないアイテムはそうそうドロップしない。攻略組が強化されるのを黙ってみている程、穏やかでもないだろうし、

 

「何より俺達が把握しているのが全員とは限らない、こうしている間にもメンバーは増えているかも知れないし」

 

「因みにディアベルのギルド、ドラゴンナイツ・ブリゲードはまだ二十人位ダ、半数は超えてないナ」

 

 この層での安全マージンレベルは14,5位――――チームを組んでいればもう少し低い――――だがそこまで高いのはまだ攻略組のリーダー各位だろう。はじまりの町を出るプレイヤーは増えてきてはいるだろうが・・・・流石に登るペースが速すぎる、まだまだ戦力には数えられない。

 

「逆に言えばギルドの準備が整うまで、迷宮区に行くまで猶予はある?」

 

「・・・・長めに見積もっても一週間も無いだろうがな」

 

 シノンの質問に答えながら考える。

 まず旗を俺達で手に入れなくては話にならない、なので

 

 一、 旗を差し出してくれる信用に足る仲間を揃える。

 

 二、 実力者が必要、少なくとも、もう1パーティーは欲しい。

 

 三、 POH達にバレない様に内密に、つまり現時点ではディアベル達は頼れない。

 

 このぐらいだろうか・・・・?

 

「俺っチを加えても、今は六人・・・・2パーティー、12人で挑むこと自体かなり危険だがまだその段階ですらないナ」

 

「エギルさん達を加えても四人・・・・あと二人か」

 

 まずエギルさん達が力を貸してくれるとは限らないが、そこはもう拝み倒すしかない。いざとなれば俺だけでもボスドロップのアイテムを無償で提供しよう。物で釣るのは気が進まないが、現時点ではそれ位しか約束できない。

 

「何でディアベルさん達は頼れないの?疑いが少ないディアベルさんやキバオウさんに力を貸してもらったら?」

 

「無理よ、ユウキ。組織を運営してるなら少なくとも、表面上は公平に期さないと。ディアベルやキバオウだけがボス戦に参加するなら相応の理由が無いと駄目ね、そしてスパイがいるなんて言うのは論外」

 

 シノンの言う通り、それこそ正史の歴史通りギルドが二つに割れかねない。特にリンk・・・・違った、リンドの奴はキバオウとはあまり仲が良くないそうだ、いつかは暖簾分けするとしてもまだ早い。

 

「・・・・キズメルに頼る?」

 

「それは・・・・最終手段だな」

 

 アスナの提案を一瞬ありかと思ったが、周りへの説明をどうすればいいか分からない。旗は未だしも、NPCに心が芽生え始めているとか、攻略どころではない気がする。

 

「・・・・やることは決まったんだし、今は食事にしよう?残り二人はもしかしたらエギルさん達が見つけてくれるかもしれないし」

 

「それもそうか、何も明日明後日に挑むわけでなし。二、三日は迷宮区の攻略とクエスト。アルゴにはエギルさん達との協力の締結と残りのメンバーを探して貰おう」

 

「実力があって、攻略組レベルの実力者っテ・・・・そうそう居ないゾ?そんな奴」

 

 それでも見つけなければ挑むことすら出来ない、最低でも2パーティー無ければローテーションが組めないし、いざという時助けに入る人が均等でないと禍根を残すことになるかもしれないし・・・・・ギルドマスターってこんな事ばっか考えてんのか?SAOが特殊にしても面倒極まりない。

 

「オウルー?ここのおすすめって何?」

 

「ブルーベリータルト、てか頼むの早いな・・・」

 

「まぁ、なる様になるよ。いざとなったら極秘裏にディアベルさんに力を借りればいいじゃん、どうせスパイの事いつかは話すんでしょ?」

 

 それもそうか、俺は一旦考えるのやめて手元のメニューを見下ろす。五層特有の遺物拾いの事を話しながら飯にするとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遺物拾いに夢中になり過ぎた」

 

「いいじゃん!レアそうなアイテム沢山拾えたんだから!」

 

 そう言いながらユウキちゃんは拾った遺物を確認している、かく言う私も色々拾えた。

 

「まさかアスナも夢中になるとはな」

 

「ん?意外だった?」

 

「割と。フィリアは兎も角、お前まで地面這いつくばる事に忌避感無いのはな・・・・」

 

「ちょっとオウル!何よ、その言い方」

 

 フィリアは講義の声を上げるが、確かに彼女が一番夢中になっていた。一方あまり乗り気でなかったのはシノンだ、参加して無かったわけじゃなく、人の目がないとは言え四つん這いで遺物拾いするのに忌避感があったようだ。

 

「まぁ、それでも私もそれなりに見つけたわよ」

 

「別に地面にしかないわけじゃないしな、遺跡の付近なら屋根の上とかにも転がってるぞ」

 

 この五層で人気のブルーベリータルトを食べたおかげで、何やら《遺物発見ボーナス》なるものが付与され、効果が切れる一時間、遺物拾い祭りが開催された。

 

 大雑把な全員の戦果は、カルルインで換金される金貨、銀貨、銅貨が沢山。これまた換金アイテムの――――鍛冶系統のスキルがあれば使い道もあるが私達には無関係だ――――宝石がそこそこ。マジック効果があるアクセサリーが人数分。オウル君と私は指輪、フィリアはネックレス、ユウキちゃんとシノンはブレスレットだ。

 

「僕のはスタン耐性が少し上がる奴だった、ホントに少しだから微妙だけど・・・・」

 

「私のは《調合》スキルの補正があるわね、ハズレではないかしら?」

 

「シノンとユウキはまだいいよ、私なんて《吟唱》よ?使い道全くないよ・・・」

 

「歌手デビューすれば?」

 

 笑いながらオウル君がフィリアを揶揄うが、確かに《吟唱》スキルは使い道がほぼ無いだろう、魔法が存在しないSAOでは珍しいグループ全体にバフとデバフが掛けられるスキルだ。しかしその名の通り歌わなくては効果が無く、色々と敷居が高いスキルだ。因みに私はカラオケなんて行った事は無い。

 

「ここのメンバー歌うの上手そうだけどな、俺のは・・・・・うん?《美食》?これまた珍しいのが出たな」

 

「何それ?使えるの?」

 

「食事のバフを長続きさせたり、効果を上げるスキル。ただし()()だけだし、効果のある食事なんてそうあるもんじゃない、あっても戦闘とかには関係無い物がほとんど。《料理》スキルでも相当熟練度を上げるか、かなりレアな食材を使わないといけないから―――――」

 

「少なくとも、アタリではないって事ね」

 

 効果をどれだけ伸ばせるかにもよるが、街でバフを得ても迷宮区の最上階につくまでマップがあっても二、三十分は掛かるし、私のスキルもそこまで高くなく、レアな食材など持ち合わせていない。

 私のは《燭光》、そのままの意味なら明りが灯せるのだろうか?

 

「丁度いいんじゃないか?この階層は昼間でもやたら暗い場所が多いしな」

 

「何だったら交換してあげよっか?」

 

「・・・・・いや、いいよ。何が役立つかなんて分からないし、俺が拾ったのはこの指輪だからコイツでいい」

 

 何やら少し考えていた様だが、自分が拾った指輪でいい様だ。確かにそこまで拘るものでもないか。

 明りが必要なら松明とか使えばいいし、いざとなったら指輪を交換すれば―――――

 

「・・・・・・・・・」

 

「おーーい?どしたー?急に赤くなって?」

 

「いや!?何でもないけど!!?」

 

「?・・・・あっそう」

 

 自分が考えていたことを思い返し、それによって沸き上がった感情をご丁寧にナーヴギアが読み取る、幸いオウル君は何も気づかなかったようだが、ユウキちゃんは「いやーアツいなー(棒)。南極の氷も溶けちゃいそうだよー(棒)」などと言っている。

 ここぞとばかりに勘が鋭い、もう片方はここぞとばかりに勘が鈍い、いや悟られるのも嫌だが。

 

「それでオウル?これからの予定は?」

 

「今日は、もう寝よう。人はまだ少ないし本格的な攻略は明日からだ」

 

 言いながら戻ってきたのは一時間前まで食事していた、《ブリンク&ブリンク》。やたら高い壁があると思えば、ここは宿も兼ねているらしい。

 

「しばらくしたら、タルト目的で溢れかえるでしょうね」

 

「一日三十個限定だから、そうでもないぞ・・・・・メールが届かないな。アルゴは今ダンジョンか?」

 

 オウル君がホロキーボードを叩きながら呟く、アルゴさんとはフレンド解除してないのか・・・・。

 

「それも明日でいいかな。部屋は取ってるから、あと風呂もあるぞ」

 

 お休み~、と背を伸ばしながら階段を昇っていく。こちらの視線は気付かなかった様だ、思えばパーティーであるにも関わらずフレンド登録は解除したままだ。

 

「オウル君って今誰とフレンド登録してるんだろう・・・」

 

「多分アルゴさんとナーザね」

 

「アルゴさんは兎も角ナーザって?」

 

 そう言えばフィリアは三層からパーティーに入ったので二層の出来事は知らないのだ、私達は値段相応に大きな部屋四人部屋に向かいながら話す、オウル君が前々から何を危惧していたか、ネズハことナーザの強化詐欺事件。

 

「はぇ~・・・そんな事が。じゃあ二層で処刑を止めたプレイヤーって」

 

「オウルだねー、久しぶりに見たよ。あそこまでキレたオウルは」

 

「普段の様子からそこまで怒る感じはしないけどね、やっぱりフレンド登録しといた方がいいかな?」

 

「どーだろ?パーティー組んでいればぶっちゃけフレンド登録よりも融通聞くし、メールは制限掛かるけど違う層に行くことはそうないだろうし」

 

 確かにそうなのだろうが・・・・何故だろう、何かモヤモヤする。向こうが気軽に「便利だし、登録しとくか」位言ってくれれば、「確かに効率的ね」くらい言うのに。私だけなのだろうか?

 

「・・・・今はいける階層もそこまで多くないし、いいんじゃないかしら?」

 

「そう?シノンがそう言うなら・・・・」

 

 何だか腑に落ちないが、そこまで欲しいわけではないし。と思考を切り装備解除ボタンを押し、ベットにダイブする。クエストを終えた直後に、遺物拾いをしたので疲れは程よく溜まりすぐにでも夢の世界にたどり着けそうだ。

 

「アスナ?お風呂はいいの?」

 

「あ、忘れてた。ちょっと行ってくる!」

 

 汗などの臭いが残るわけないと分かっているがそれでも入れるなら入る、ただでさえ野営などの機会が多く、まともな食事がとれない――――それでも虫は食べないが―――――こともある。

 

「この宿はお風呂場は男女分かれてるみたいだけど、あまり広くないらしいからお先にどうぞ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 シノンの好意を受け取り、普段の装備はストレージにしまったまま風呂場へ向かう。現在は午後九時、後ろに四人いるためそこまでゆっくり浸かれないが、明日の朝は特別早いわけでも無いので大丈夫だろう。などとどれくらい入浴していられるか考えていると、

 

「・・・ん?オウル君?」

 

 最早見慣れた白髪と黒コートを着た青年が《ブリンク&ブリンク》一階ラウンジを横切り、素早く外に出るのを見た。階段上に居るこちらには気づかなかった様だ、慌てていたのだろうか?彼らしくない気がする・・・・・。

 

「・・・・アルゴさんに何かあったの?」

 

 思い当たることは今のところそれ位だが・・・・果たしてテスターでもあり、デスゲームと化した現在でも一人で情報を集める彼女が危うくなることなどあり得るのか?敏捷性を極限まで高めているなら、そうなる前に逃げるだろう。

 

「一番考えられるのは黒ポンチョの男たちよね・・・・」

 

 一人の方が上手くいく算段があるのかもしれないが、それでも何も言わずに出ていくのはどうなのか、そんな事を考えているうちに彼の姿は通りから消えた。

 私はストレージにある装備を一式纏い、彼の後を追いかけながらインスタントメッセージを送ろうとするが、返ってくるのは素っ気ないエラーメッセージ。

 

「もう圏外に・・・・となると地下ダンジョンね」

 

 彼に頼まれたクエストで散々な目にあった地下遺跡にまた向かうのかと思うと、踵を返したくなるが。

 

「・・・・いつまでも置いてかれるだけと思わないでよね」

 

 システムウインドウをいじる手間も惜しみ、クエストの間に暗記したマップを脳内で展開し一気に駆け抜ける。

 

 

 

 

「地下一階はまだ圏内だったわね・・・・てことは二階」

 

 下に降りる階段を目の前にしながら、装備とポーションを確認する。この程度のダンジョンなら今の私のレベルと装備なら苦戦するのが難しい位だが、それでも油断は禁物。圏外に出た警告メッセージを視界に捉えつつ前進する。

 

「問題は彼が何処に向かったか、だけど・・・」

 

 フレンド登録してない上に、パーティーメンバーと言えどダンジョンマップに常にその座標は記されてるわけではない。《索敵》辺りならば追跡するようなスキルはあるのかもしれないが、周りにそのスキルを取っている者が複数いたため、今更取ってもあまり貢献できないだろうと所持していない。

 つまり完全に自力で彼に追い付くしかない。

 

「まずオウル君がここに入ったことはほぼ間違いない。いくら何でも街の外のダンジョンは遠すぎるし、フィールドはメッセージが届かない説明がつかない」

 

 いま持ち得る情報から何をすべきか組み立てていく、が私は失念してしまっていた。ここが圏外であることを、今自分が一人である事を。

 そんな状態で部屋の真ん中に立ちすくみ考え事をしていればどうなるか。

 ヒョウオォ、と隙間風が入ってくる様な音が背後から聞こえた。

 背筋に小さな虫が駆けあがってくる様な感覚を覚えると同時にその音の正体を振り向く前に悟った。ここは地下墓地、ならば出て来るものなど子供でも予想がつく。

 

「HYOOOOOOOO・・・・!」

 

「ひッ・・・~~~~~~!!!」

 

 叫びそうになるが、そんな事をすれば目の間に居るレイス、mobの仲間を引き寄せるだけだ。歯を食いしばり抜剣、いつもと変わらぬその音と感触に平静を取り戻すが、やはり苦手意識というものはそう簡単に払拭できない。

 一度大きく後退し、迫ってきたところを何もさせずにソードスキルで仕留める、と行動に移そうとしたが、

 

「え―――――」

 

 後ろに跳んだ先のタイルはカチッとした感覚を返した、反射的に飛び退こうとしたが目の前から迫ってきたレイスに意識を一瞬奪われ、

 

「ちょ、ちょっと!嘘で―――!」

 

 しょ、と言い切る前に落とし穴は作動し、仮想世界の重力に従いさらに下層へ一直線。天然石造られた壁面は私の体を支えられるだけの取っ掛かりなど見当たらない。

 どうするか、剣を素早く鞘に納め思考を加速させる。まず先に考えなくてはならないのは着地。幸い落とし穴は広くないため足からの着地は難しくない、問題は落差だ。

 

(このダンジョンは三階まで!高さは精々四、五メートル!mobもその階層から離れられないはず!)

 

 最後は確信と言うよりも祈りに近かったが、高さに推測はあっていた様だ。二階と同じような床が見えた瞬間両手両足で出来る限り衝撃を殺し、後ろに転がった。

 

「ッ~~~~・・・・・さっきまでお風呂入ろうとしてたのにどうしてこうなるのよ・・・・」

 

 悪態をつきながらも周囲の警戒は怠らない、さっきの様な事はもう御免だ。かつての、一層の迷宮区で彼と出会う前であればこうはならなかっただろうが・・・・!

 

「足音・・・・?」

 

 自分が落ちてきた広間の通路からかすかに足音が聞こえた気がした、耳を地面にあて確かめてみると、恐らく二人分、そう遠くは無い。

 隠れるべきか?出会うべきか?普通に考えれば隠れる必要は無い、夜も更けてきたがオウル君曰く、夜に活動するプレイヤーなんて珍しくもないとのことだが、自身の直感に従い反対側の一本道の通路に窪みがあったので、そこに隠れ様子を伺うことにした。かなり狭いがこの際贅沢は言えない、曲がり角の壁までは軽く五十メートルはある、流石にそこまで行けば会話など聞こえないだろう。

 

「オウル君なら私のHPバーが減ったことに気づいてる・・・・なのに走ってないってことは他人、会う必要性は薄いわね」

 

 やましいことは何もしてないが、夜更けに別のプレイヤーと出会う必要もない。顔半分だけ伺わせ、誰が来るのか待っていると、顔をフードとコイフ?なる装備で隠した男性プレイヤーが現れた。暗いため良く見えないが、まず女性では無いだろう。

 

「おい、ホントにこっちから音がしたのかよ?」

 

「ウソつくメリットなんかないでしょう?この辺りで微かでしたが何か落ちる様な音がしたんですよ」

 

「mobか?それともクエストか?」

 

「少なくとも自分が知る限り、該当するようなmobもクエストも知りませんねぇ」

 

「《聞き耳》スキル持ってないだろ、お前?空耳じゃねえの?」

 

 小声だがフードの方は聞き覚えがある、コイフは無いがもしかしたらオウル君が戦ったというPKプレイヤー?いや、いくら何でもそう決めるのは早とちりだ。だが、フードのプレイヤーは間違いなく二層でオウル君と口論になったジョーというプレイヤーだろう。

 

(密会・・・?オウル君はこれを予期していた?だとしたら絶対に見つかっちゃいけない、それと出来る限る情報を・・・・いや、バレたらどうする?)

 

 一対一ならば未だしも、二対一ではこちらがオレンジになる事を覚悟しても果たして・・・・・。下手なリスクを背負うことよりも、《索敵》で彼らの事を探しているであろうオウル君を待つのが最善だ。

 

「・・・・何も無いですねぇ、戻りましょうか」

 

「いや、もうここでいいだろ?どうせ遺物拾いの奴らは来ても二階までだ、さっさと打ち合わせ済まそうや」

 

 言いながらフードのプレイヤー、ジョーは鍾乳石に腰掛ける。壁に生えているヒカリゴケの輪郭を見るに、オウル君と違い然程背丈は無い様だ、この世界では体格=強さにはならないが。

 

「そうですねぇ・・・で?ギルドの方はどうなんですか?」

 

 きた!この会話がギルドの内情をかき回すような情報なら、オウル君の危惧は的中したという事になる。逸る気持ちを抑え、少し顔を窪み側に戻し、耳を澄ます。

 ジョーは未だしも、コイフのプレイヤーは黒ポンチョとコンビで無いのならほぼソロプレイヤーでベータテスターという事である、つまりオウル君と同レベルの《索敵》を持っているかも知れない。注視されるようなことがあれば暗闇でも見つけられるだろう。まずは見つからないこと、オウル君のようにシステムの力を借りず、気配を感じる事など出来ないと思うし。ていうかオウル君以外に居て欲しくない。

 

「レベルは足りてるが、しばらくはゆっくり攻略するらしい。明日はクリパ開くらしいし」

 

「ふーん、そうですか。普通騒ぐのはイブにするもの何ですがねぇ」

 

「しゃーねぇだろ、うちのイガグリ頭が先走るんだから。それにゲーマーどもにゃそんなイベント縁遠いだろうしな、騒ぐ口実があればなんだっていいんだろ」

 

 ・・・・聞いている限りそこまで重要な話だとは思えない。攻略組の内情と言える程機密ではない、少なくともクリスマスパーティーの誘いは私達にも来ていた。オウル君が何も言いださないし、昨日までヨフェル城で戦っていたので無理もないが。

 

(この二人は黒ポンチョとは関係ない・・・・?それかオウル君の読み違い、でもこんな場所で話す理由は?)

 

 クロだとは思うが証拠がない、そんなもどかしい衝動を抑える様に少し深呼吸をする。

 そしてまたしても予想外の事が起こった、体を支えていた手に装備していた指輪、《燭光》の効果を持った指輪が微かな、しかし確かな光量を生み出した、生み出してしまった。

 

「ッッ!!!!」

 

 慌てて片手でその光をケープで包み、手で押さえ隠す。

 

「ん?何だ?」

 

「・・・・今、ほんの少しばかり、蛍の光みたいなものが向こうの通路から見えました」

 

「ここにそんなmobいたか?」

 

「いません。新しく追加されたとも考えにくいですねぇ、今までそんな事ありませんでしたし、それに―――」

 

 システムウィンドウの無機質な音が聞こえる、何かを調べているようだ。まずい、まずい、まずいまずいまずい!

 

「――――――隠れてますねぇ、そこに、誰か」

 

「・・・・・あーあ、ざんねぇん。もうちょっとでステルスミッションクリアだったのになぁ」

 

 ―――――――気づかれた、剣を抜く音が聞こえる、意図は明らかだった。

 

「直接PKするのはベータ以来ですねぇ、一体誰がのぞいてたんでしょう?」

 

「知るかよ、俺の事知られた以上誰だろうと、ゲームオーバーだ」

 

 GAME OVER、それを聞きいよいよ選択が迫られる。

 思い切って走って逃げるか?無理だ、絶対に途中でmobにかち合う。

 ならば全力で戦うか?勝てる見込みは薄い、オウル君程対人戦には慣れてない、話が本当なら相手は対人に特化したスキル構成すらしてる可能性がある。加えて二対一。

 そもそも私に、例えアウトローと言えど人が殺せるのか―――――?

 

「自分が切り込むんでカバーお願いしますねぇ」

 

「俺の方がAGI高ぇからな。まずは足を斬り落とせ、そうすりゃ勝ち確だ」

 

 死ぬ、死ぬ、このままでは死ぬ。

 間違いなく私、結城明日奈はここで終わる。

 そうなればどうなるだろう?何処かの病院で横たわっている私の体はただの蛋白質の塊となり、火葬場に運ばれ燃やされる。

 私という人間は亡くなるのだ、永遠に、その事実が電流の様に頭に走った瞬間恐怖が体を支配した、立てない、剣が、抜けない。恐怖に縛られている場合ではないのに、ずっと一人だったのなら、こんなに恐怖を実感することは無かった。しかし今の私は一人ではないのだ、仲間が、陳腐な表現だか友達が出来たのだ。疲れる駆け引きが必要な女子校の同級生などでは無い。年齢さや目的さえ違っても、一緒に歩ける友人が。

 ユウキちゃんに、フィリアに、シノンに――――――

 

 

 

「御免下さぁーーーい、どちら様ですかぁ?」

 

 

 

コイフプレイヤーの声が手の届く距離に来た時、私は、自身の恐怖に完全に押しつぶされた、だから、もう無意識だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けて―――――――――!オウル君―――――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――――――――――――待たせたな」

 

 聞きなれた声と、剣呑な目つきが、視界に写った。

 




 アスナは五人パーティーで原作より、若干メンタルが脆いです。

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