ユウキ「亀が!死ぬまで!殴るのを辞めない!」
オウル「浦島太郎もドン引き、てかそこは『ロードローラーだッ!』の方じゃないの?」
メタ時空はいい文明。十七話のシノンとフィリアのスキル項目を間違えてて申し訳ありません。
アズールレーンを友人に勧められ始めました。チャットが面白すぎる。
未だ嘗てここまでの窮地に陥った事は無い。
「ぐっ・・・・・」
かなりの力を加えても後ろで手首に括られた縄はビクともしない、目隠しもされている。千切ることなど出来はしないだろう。SAOが始まって以来の窮地。
絶体絶命。
四面楚歌。
助けてくれるものは誰もいない。
_________このままじゃ・・・!
焦る、焦る、焦る、されど縄は解けない。玉の様な汗が吹き出し、顔と言わず体中から流れ落ちる。息苦しさも感じてきた、あぁ、俺はここまでなのか。熱気が支配するこの空間は意識も朦朧とする、瞼に浮かんできたのは現実世界に残してきた大切な物。まだ一ヶ月を過ぎたばかりなのに泣きたくなる程懐かしい物。
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・」
拝啓、現実世界の父さん母さん、仲良くやってますか?
直葉、剣道頑張ってるか?お前なら全国一位も夢じゃないぞ。
そして武蔵さん、どうやら、俺は________
「___________ここまでの様です」
志半ばで倒れることになるのは自分でもどうかと思いますが・・・・許してください。あなたから教わった術をもってしてもこの場は抜け出せそうに無い。
そう、この_____________
「さぁ、精々悔い改めなさい!」
「次は逆さづり、鞭攻めをしよう(提案)」
「アスナよ、何故オウルはユウキとシノンから責め苦を受けているのだ・・・・・・」
「キズメル・・・・知らない方がいいこともあるのよ・・・・」
「うわぁ・・・・うわぁーー・・・・・(興味津々)」
________ダークエルフのヨフェル城の唯一の大浴場で女性しかいない中たった一人で女性プレイヤーから
「まともなのは俺だけかッ!!!」
事の発端を思い出すと同時に現実逃避に数時間前まで記憶を遡らせる。
フィールドボスのアーケロンを倒し、めでたく俺ことオウルはLV20になった。多分一緒に乗ってる皆も同じようにレベルアップしたはずだ。
LAボーナスはフィリアの物になったが俺のパーティーメンバーが手に入れたことは変わりないし他者には誰がLAボーナスが入ったかは予測しかできないので、取り敢えず前回暖かい声援を送ってくれた彼には礼儀としてNDKしておいた、m9(^Д^)プギャーwwwwザマァwwwww。
「何をニヤニヤしてんのよ、気持ち悪いわよ?」
「相変わらず容赦ないっすね、シノンさん」
おっといけない、シノンに指摘されるまで気づかなかった。一人回想に耽るのも程々にしておかないと。
今回のボス戦で活躍したフィリアに代わって船を漕ぎながら口元を抑える、あの後で攻略組のメンバーは消耗品を買い揃えてから進むとのことで今ティルネル号の前にも後ろにも船は無い。
「でさ、オウルは今どこに向かってるの?」
「ん?まぁすぐに分かるよ、のんびりしとけ」
「そうだね~~いい天気だから昼寝したいよ」
「駄目だよユウキちゃん、いつmobが現れるか分からないんだから」
アスナの言う通りここは圏外なのだから最低限警戒はしておかないといけない。ユウキの言うことも分かるのだが、冬を感じさせない温かい日光とさわやかな風、船に揺られて眠れたらどれだけ幸せだろう。
「そうだねぇ・・・・せめて何か美味しい物とかあったらピクニック気分が味わえたんだけど・・・・」
「食材は兎も角、料理はストレージに入らないからなぁ。バケットとか持ってないし、手に入れる方法も知らないし」
ベータ時の時は気にしなかったため、そういった情報は知らない。いつも迷宮区や圏外で食べる物は大体mobがドロップした食材を生か塩で焼く程度の物だ、せめてカ〇リーメ〇トが欲しい。特にチョコ味。
「わかるわかる、私はプレーン味かな」
とフィリア。
「ボクもチョコ味かな?」
とユウキ。
「私、フルーツ」
とシノン。
「私はメープル味ね」
とアスナ。
「オイラはチーズだナ、やっぱリ」
とアルゴ・・・・・・・・・・・・・・・・オイコラ。
「いや待てどっから沸いた、お前」
「沸いたっテ、酷いナァ。オウル?」
いやいや、勝手に乗船してんじゃないよ。運賃払え、幼児扱いでいいから。
「喧嘩売ってるんだナ?そうなんだナ?よし買っタ」
「おい馬鹿辞めろ、落とそうとすんな洒落になら・・・ちょ、おまッ、何で全員手をワキワキさせながらにじり寄ってくる!?辞めろ辞めて辞めてくだしあ____________」
ドボン、と。ボスを倒したばかりの昼下がりに馬鹿が一人落っこちた、というか仲間から突き落とされた。お前ら全員グルになって嵌めようとしてんだろ?
「てかさ?」
「うン?何ダ?」
水も滴るいい男となった俺は突如として現れたアルゴに聞く・・・・・ごめん、やっぱ今のなしで、自分で言うのは無いわ。
「お前俺の事フー坊って呼んでないじゃん」
「・・・・センス悪いと思ってナ、新しいのを思案してル」
「ファーーーwww自覚あったんですねーーーwwwこれを機にもうちょいマシな・・・・うんごめん、俺が悪かった、だから皆して突き落とそうとしないで?そんなに俺の事嫌いですかそうですか?」
ユウキはまだ分かるがアスナやシノン、フィリアまでもがノリに乗っている。主に俺への懲罰に。
「いや・・・何となく・・・・」
「何となくでmobが出る湖に落とされちゃ敵わないんですけど」
ダ〇ウ倶楽部じゃねぇんだよ、押すなよ?押すなよ!?絶対に押すなよ!!?女友達出来たからってはしゃいでんじゃないよ。
「うん分かった(ゲス顔)」
「一番わかってないですよねぇ?ユウキちゃん?」
コイツもう初期のキャラ跡形もなく無くなってるじゃん。オイコラお前のせいだぞアルゴ。
「いやぁー何か凄い化学反応が起きたみたいだナ」
「こっち向けや、化学反応どころか核反応が起きてんだよ。世界観揺るがしかねないレベルだよ」
もうここに居るユウキは大人気のヒロインとしての姿は無い、下手をすればメタ発言連発しかねないギャグキャラだ。どうしてこうなった?
「そんな事よりアルゴさんは何処から来たの?」
「そんな事ってお前の事ですよ?」
「あァ、主街区でこのサンダル見つけてナ」
「アッレレ~?おかしいぞ~?まるでそこに居ないかのように扱われてるぞ~?(某少年探偵風)」
「何そのサンダル?」
「・・・・・・・・」
「これを履くと水上を走れるんダ、尤もかなり装備体重を軽くしてよっぽどAGIにステを振ってないといけないけどナ」
「・・・・・・・・」
「ふ~ん、そんなのあったんだ・・・オウルどうして教えてくれなかったの?」
・・・・・・・・都合の良い時だけ会話振らないでくれます?
船の隅っこの方で体育座りで拗ねてるとユウキが会話を振ってきた。辞めるんだフィリア、頭よしよししないで、泣きそうになるから。
「ベータの時と何もかも違うから知らなかったんだよ、クエストだって変わってたし」
「オウルって実はそんなに役に立ってないよね」
「ぐっはぁあああ!!?」
「やめたげてよお!」
割りと理由がなくもないユウキの心の無い罵倒が俺を襲う。そしてそれを慰めるフィリア、そのセリフは直葉に言って欲しかったが。
「相変わらずハーレム系主人公やってんナ」
「何処が?事あるごとに肉体的にも精神的にもフルボッコですが?」
「攻略組ではお前は嫉妬の対象にもなったゾ?」
「仮想でも現実を見ろ、女子と楽しく話せるコミュ力が無けりゃ一緒に居ても気まずくなったりヘイト溜まるだけだ」
「あとファンクラブとか出来かけてるらしいゾ」
「おい攻略しろよ」
ディアベルがちゃんと統制取れてるのか不安になってきたんだが・・・・。
ユウキとフィリアは寧ろお喋りな方なので困らないがシノンだと偶に無言の空間が出来る、そこまで気まずいものでは無いがそこまで楽しくもない。そして一番の鬼門、アスナさん。
「馬鹿やってないで折角アルゴさんが居るんだから、情報買ったら?」
「アッハイ・・・・で、何か目ぼしい情報ある?」
絶対零度の視線と共に早くしろとアスナに促される、信じられるか?これでパーティーリーダーじゃないんだぜ?
「抽象的過ぎて答えられないナ、強いて言うならお前が目を掛けていたクラインってやつが今は三層でレベリングしてるゾ、もうちょいで攻略組入りするんじゃないカ?」
「そうか・・・・クラインが・・・」
早いな、原作は確か二十層の中盤辺りだったと思うが・・・・流石に忘れて来たな、覚えてるのだけでも暗号でメモ取った方がいいかな。
「誰?クラインって?」
「俺がデスゲーム初日に会ったプレイヤー、その内紹介するよ」
言いながら櫂を操作し、《ウスコ》と言う村に着く。ここで消耗品を揃えて、クエストをこなし休憩したら次の所へ向かう。
「そういえばエルフのクエストは変わったとこが多いって話だガ・・・・」
「辞めとけ、その情報は売らない方がいい」
「だよナーー」
「なんでさ?」
ユウキが不思議そうに聞いてくる、確かに普通なら情報の独占と思われかねないが。
「欲張って三層のあのエリートmobと戦って死んだりしたらまずいだろ?」
「注意書き書いとけば?」
「一層でのボス戦の時みたいに楽観視して『こんなはずじゃなかった』がオチになるだろうな」
キズメルの事はまだ謎が多いし・・・・・そして俺自身、この世界の事をゲームという虚構と認識させたくないという謎の感情があるのもまた事実だった。
「ねえー?まだー?」
「もうちょいで着くよ」
「この先には何があるの?」
飽きたようにシノンの膝枕で寝転んでるユウキがさっきからずっと同じ問い掛けをするので、同じ答えを返す。いい身分だなオイ、そこ代われ。
《ウスコ》の村でクエストを消化し、アルゴと商談を終えて、また船を漕ぐ。《操舵》スキルなる物があれば100は超えてるのではなかろうか?
「ロモロさんのクエスト、まだ終わってないの知ってるよなシノン?」
「まぁ、昨日のことだし」
「多分この先でクリアできるはずだ」
「先って・・・・あの霧の中?」
正面を訝しげに眺めながらフィリアが聞く、確証はないがここしか怪しい所がない。まず間違いないだろう。
「ちょっと!これぶつかったりしないの!?」
「大丈夫だって、俺を信じろ」
「ボス戦で無茶ぶりさせた人が何言ってるの!?」
落ち着けよアスナ、何かいいことでもあったのかい?この先に行けばきっとご機嫌になるだろうが女の叫び声は耳が痛くなるから勘弁してほしい。
「あなたが勿体ぶるからでしょ!?」
「落ち着けって、今同じ船に乗ってるんだから下手な事はしないって」
渋々、と言った感じでアスナは一旦落ち着いてくれたが・・・・はてさてこの先はどうなるのやら。
「・・・オウル、これ本当に大丈夫なの?前全く見えないよ?」
「此処まで来て誰も思い出さないのか?この霧、何か思い出さないか?」
「あっ、これ、もしかして・・・・」
「知ってるのか!?フィリ電!」
「お前は何処までネタに走れば気が済むんだ?ユウキ?」
「うむ、これはまさに・・・・」
「乗らなくていい、乗らなくていいからフィリア」
そのネタ知ってることにも驚いたけど乗っかった事が一番驚いたわ。キャラ崩壊もいいところだよ、まともなのは俺だけか?
「オウル、そろそろ教えなさいよ。この先には何があるの?」
「・・・ちょっと遅かったみたいだな、前見てみ」
言われてシノンは前方に視線を向けて、唖然とした。
「これって・・・・」
「ダークエルフの城、後はもうわかるだろ?」
某夢の国にも負けない程馬鹿でかい、まさに西洋といった城が建っていたからだ。霧の部分はマップ切り替えの為、周りはカルデラ湖の様になってるので霧を抜ける以外ではここには入れない。
「早く早く!オウル君早く岸に騎士に!」
「だから落ち着けって!あと発音おかしくなかったか!?」
俺の肩をガックンガックン揺らすアスナは、まるでプレゼントの包装を破きたくて仕方ない子供の様に無邪気な顔であったが、視界がブレる事ブレる事・・・・調子いいなぁ、このお嬢さん・・・・・。
「ほい、到着s「キズメルーーー!どこーーー!?」・・・・」
「・・・・ボクが後を追うからオウルは城主にでも会ってきたら?」
「・・・・取り敢えず、そこの兵士に通行証見せとけば大丈夫だろ」
言いながら俺はそこに居た兵士に前の層で貰った通行証を見せる、よくアスナの事を襲わなかったな、キズメルの名前を叫んでいたからか?
俺が言い切る前にアスナはそのステータスを全開にして城の後ろに駆けていった、しかも自分が索敵持ってないのでフィリアも連れて行ってる。フィリアも乗り気だったからいいけど・・・・。
「ここでロモロさんのクエストがクリアできるの?」
「多分な、俺達も行くか。ここまでデカい城だと案内無しだと迷いそうだ」
「そうね・・・それにしても・・・」
「うん?どうした?」
シノンが何故かぼんやりした感じで城を見上げている、俺も見上げてみるが黒くドッシリした城とそろそろ日が暮れそうなので紅くなった空しか見えない(実際は空ではなく天蓋なのだが一々言うのは野暮と言うものだ)。
「ううん、ただ、奇麗だなって・・・・」
「・・・そうだな・・・奇麗だ・・・・」
ここでコミュ力カンストのイケメンなら「君には負けてるけどね☆」的な事を言って好感度を稼ぐのかも知れないが、俺はその言葉をオウムの様に返すので精一杯だった。
黒い西洋の城、夕暮れの空、それを映す湖、それを感慨深げに眺めるシノン。
______________あぁ、奇麗だよ。ホント・・・・カメラが欲しいくらいだ。
勿論そんな物は無いので脳と瞼に焼き付ける事しかできない、シノンには悟られない様に。
「・・・・・行きましょうか」
「そうだな、いつまでも見惚れてるわけにはいかない」
索敵に四つ反応がある、多分ユウキとフィリアとアスナと_______
「オウル!!シノン!!久しいな!」
思考の途中でシノンと一緒に抱きしめられる、かなり強い力で。しかし不思議な事にあるはずの固さを感じない。むしろ何か柔い気がする。
「・・・キズメル?なんでドレスに・・・?」
「まぁ、それは城内に入りながらでも話すさ。早く行こう、三人も待ってることだしな」
二、三日ぶりに出会ったダークエルフのエリート騎士は何故かドレス姿だった。成程、つまりさっきの柔さは________
「その先考えたらぶん殴るわよ?」
「・・・・・・・・・・・・はい」
なんで分かるの?とはツッコまない。無駄だから。
「ふーーん、ここの司祭たちが?」
「あぁ、『目障りだ』とのことでな。お陰でこんな格好なのさ、似合わないだろう?」
「ううん!奇麗だよ、キズメル!」
そうか?、と気恥ずかしいのか頬を軽く人差し指で掻いてるキズメル。本当にNPCとは思えない位感情表現が豊かだ、下手すりゃプレイヤー以上だ。
「ところでさ、今どこに向かってるの?」
「ユウキ達が泊るところだ、残念ながら男女別とはいかないが・・・・」
「いいのよ、キズメル。こんなお城で泊めてくれるだけでありがたいわ」
被害妄想で無ければ俺が居なければ、なお良しって事じゃないですよね?
そんな事を考えながら前を歩くアスナとユウキとキズメルの後を追う、シノンとフィリアは会話より城の中の様子が気になるのかキョロキョロと見渡している。
「シノンは兎も角、フィリアは何か値段が付きそうな調度品の位置と逃走経路を覚えてるみたいだな」
「ちょっと!それどういう事よ!」
「そうね、案外正面玄関からの方が逃げやすいんじゃない?」
「シノンまで!」
「辞めておけよ、フィリア?ここの物を許可なく持ち去ると霧から抜け出せなくなる」
「・・・・・・・・・もーキズメルまで、しないってば。そんな事」
待ちなさい、さっきの間はなんだ?下手な事すればクエスト中断になるから辞めてくれよ?
「さぁ着いたぞ、此処だ」
「わぁーーーー!凄いよオウル!主街区のスイートルームでもこんなの無いよ!」
確かに俺もベータの記憶を遡ってもここまで豪華な部屋に泊まれたことは無かった。
どんな材質か分からないがフカフカのカーペット、北国で見そうな暖炉、その前にあるこれまた人を駄目にしそうなソファー、五人でも寝れそうなキングサイズのベット。
「まぁ、俺はソファーか」
「・・・・・・・・・・・・」
何故か、シノンがこっちを見てるがアレだけフカフカならソファーでも熟睡出来る。迷宮区の安全地帯で隠蔽を発動させながら、地面と同系色の布を被りながら仮眠することに比べれば天国である。
「三階には大浴場があるから、後で行って見るといい」
「「「「大浴場!?」」」」
これには流石のシノンでも驚かずにはいられなかったようだ、確かにユニットバスが付いてる宿でさえ稀なのだから。ぶっちゃけ俺も興味津々である。
「よし行こうすぐ行こう」
「待て待て、せめて要らない荷物をここのチェストにでも______」
「そんな事はどーでもよかろうなのだあぁぁあ!!」
何処の究極生命体だ、お前は。そんなツッコミを炸裂させる暇もなく四人はいざ鎌倉と言わんばかりの速度で来た道を戻り、階段を昇っていった。はえーよ、ホセ。
「私は城主にお前たちの事を伝えてくる、オウルも興味があるなら行ってくると良い」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
ボスと戦ってちゃんとした休憩は取ってないので俺も大浴場に入りたかった。
思えばここが分岐点だったのだろう、原作知識の事を忘れていたためにあんなことになる。
三階に昇り、暖簾らしきものをくぐると、
「・・・・・なんで立ち尽くしてんの?」
まだ四人が居た、服すら脱いでない。いや別に期待してたわけじゃないけど、いやマジで。
「それがさ・・・・オウル」
「ここ・・・男女別に分かれてないみたい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
絶句、である。絶望と言った感じでユウキとアスナが立ち尽くしている。
三層は野営地だったのでまだ分かるが城でも男女にわかれてないのかよ、何なの?エルフの性別意識はそんなに薄いの?それとも俺たちが過剰に反応してるだけなの?
キズメルがいたら詰問していたかもしれないが生憎ここには来ていない、今頃城主に俺たちの事を報告してるだろうから。
「はぁーー・・・・・じゃあ、俺は後で入るから、お前たち先に楽しんで来い」
ここで俺が先に入るなど言おうものなら血で血を洗う戦争が始まることは想像に難くなかったので譲ろうとしたのだが、去ろうとする俺の袖をアスナが掴む。
「でも私達が入ってる間に男性のNPCが入ってくるかもしれないし・・・・」
「いや、野営地でも一回も入って来なかったし、大丈夫だって」
「その時、私達全員が戦ったら言い訳出来ないけど、あなたが居ればなんとかなりそうだし」
「スケープゴートですね分かりたくありませんでした」
意外と腹黒いですねアスナさん、ていうか結局どういう事だってばよ?俺がここで仁王立ちしてりゃいいの?まぁ別にいいけど・・・・・
「いや、もうオウルも入っちゃえばいいじゃん?」
「「「!!?」」」
ユウキ?お前は一体何を言ってるんだ?
「折角の大浴場だし皆で入らないのは勿体無いよ、それに水着着れば平気でしょ?」
ここで一番肉体的にも精神的にも年齢が低いからこその発言だろうが、とんでもない理論だなぁ・・・・。
「・・・・確かに、それならいいかもね」
「マジで言ってんすか、シノンさん?」
最近の女子はイケイケドンドン(死語)なのか、シノンも「水着だから恥ずかしくない」理論に賛成の様だ。
「・・・・わかった、じゃあ《裁縫》スキルあるからパパっと作っちゃうね」
「あっ、どうせならビキニがいい!」
言いながら後ろでアスナが水着を作り始めて、フィリアは何故か大胆なオーダー。なんでやなんでや、オオウなんでや(錯乱中)。
何故だろう、何故ここで俺は素直に喜べないのか、残念ながら精神年齢が高いだけで十三年と少ししか生きてない男子中学生の人生経験では分からなかった。
「わーい!ひろーーーーい!」
「ちょっと!ユウキちゃん!泳いじゃ駄目だって!」
「まぁまぁ、もうこんなお風呂入れるか分からないし」
「そうね、どうせ私達以外いないんだし」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そこは中々の、いやまさに絶景であった。
「フィリア!競争しよう!」
「いいよー!負けたらジュース奢りね!」
「銭湯じゃないんだからジュースなんて・・・・・」
「あったわよ?部屋で何故か中が冷えてるチェストの中に果実酒みたいなのが数人分」
縦十メートル程、横は二十メートル位だろうか?深さは俺でも座れば肩まで浸かる。何か混ぜられてるのか若葉色で良い匂いがする、そして前面はガラス張りで外の星明りを反射しキラキラ輝く湖面が見える。
____________しかしそこではない。
ユウキは相変わらずインナーの様なスク水。
アスナは白いワンピース、フリルの様な物が付いている。
フィリアは本人の希望で少し薄い青のビキニ、何故かビキニ。
そしてシノンは俺の隣で縁に腰掛けてさっき言っていた果実酒の様な物をちびちび飲んでいる、パレオを着て。
「・・・・・」
何故にパレオ?しかも黒?何故にそんなに大胆な物選んだの?いや肌の露出はそこまでじゃないけど、違うよね?ここに来た時最初に来てたスポブラみたいなのじゃダメだったの?今ここで着るものじゃないよね?それ。
ハワイかどっかの南国で、パラソルの下でサングラスを額に掛けてジュースを飲んでればモデルにもなれるんじゃないかと思わせる程、
________それは見事な黒パレオだった。
「・・・・・・・・・・・・・リアルだったら『前かがみ』不可避だった」
「ん?何て?」
「いいいいいややややっや?何でもなかとですよ?」
「何処の方言よ・・・・」
成程、ここが妖精郷、或いは桃源郷、或いは幻想郷、或いは
例え自分の独り相撲と分かっていてもやはりここは男子が居るところではない、そうと分かればさっさと逃げようそうしよう。
「畜生!こんなところに居られるか!俺は自分の部屋に戻るぞ!」
「なんか死にそうね」
今なぜか自然と死亡フラグを建ててしまったが大丈夫だろう、ここは圏内ではないが危険は無いはずだ。素早く湯船から上がり、後ろから掛けられる声も無視して脱衣所に向かう。
ここでは服はウインドウを使えばすぐに着れるが流石に大浴場の中で着る程非常識ではない。
「リアルだった危なかったな・・・・・」
「何が危なかったんだ?」
壁に手を着き息を整えていると背後から声が掛けられる、恐らく報告を終えたキズメルだろう。
「ん?あぁいや、何でもな____________」
「・・・どうした?急に固まって?」
・・・・・・・そりゃあ固まりもしますよ、えぇ。
あの四人でさえ水着は来ていたのに。
一応言っておくとキズメルはエルフであり人間の二十台半ば位の見た目で俺たちの中では誰よりも成熟した顔と体をしている、そしてダークエルフの基準は知らないが人間基準だとキズメルは中々のスタイルをしている。
つまり、まぁ、なんだろ、何て言えば良いのか・・・・・・。
「キズメルさん・・・・何故に・・・・・服・・・」
「ん?風呂に入るんだから服は邪魔だろう?」
ここで男子たるものなら両手を上げて万歳でもするべきなのだろうが、俺にはそんな事は出来なかった。何故かと言うと・・・・
「・・・・何か、言い残すことは、ある?」
「・・・・・・最後に酒が飲みたかったな」
絵に残したくなる程、奇麗な笑顔のシノンが______________
「ゴバッハアアア!?!?」
「おーーーい、起きろ」
突如冷水をぶっかけられて朦朧としていた意識が強制的に覚醒させられる。
さっきから茹蛸になるまで湯に沈められ、冷水をぶっかけられる拷問が続いてる。
パーティーメンバーって何だろう?(哲学)
「さぞかし楽しかったでしょうねぇ?私達じゃなくてキズメルの裸体を見て、ねぇ?」
「ちゃ、ちゃうねん!アレは事故やってん!」
「ホモは嘘つき」
「何でホモ扱い!?」
関西弁はスルーされさっきからホモ呼ばわりされ、アスナとフィリアはキズメルと仲良く談笑、何だこのカオス空間は。
「人族は風呂に入る時水着を着るのか・・・・」
「そういうわけでも無いんだがッガボボボボボッボ」
言い切る前に頭を鷲掴みにされ、沈められる。ここは流石に圏外なのでHPバーが減り始める前に顔をあげてくれるがそれでもキツイ、生かさず殺さずを心得ている。
「な、なぁ?もう許してやったらどうだ?私は別に気にしてないが・・・」
「大丈夫、オウルは昔から自分を苛めることが好きなんだ」
「そ、そうなのか?」
後頭部を抑えつけたまま俺の首にまたがり足だけ湯につかってる状態でユウキが言う、ただ鍛錬してただけだよ、ドḾみたいに言わんでくれ。しかしお湯の中なのでゴボゴボ泡立つだけで何も言い返せない。
「前から思ってたけど、ユウキちゃんってオウル君と昔からの知り合いみたいね」
「うん、ボクが五歳になる直後か直前だから・・・・もう六年かな」
「ユウキ、ここじゃあんまり素性は話しちゃいけないわよ」
「人族ではそんな取り決めがあるのか?」
「あ~~~~~・・・・・・ほ、ほら!家族を特定されて人質にされたらまずいでしょ!?」
「成程・・・・難儀な物だな」
ユウキが俺と自分のリアル事情を話しそうになり、シノンがそれを窘め、キズメルが不思議そうに聞き、フィリアが上手い事誤魔化した。仮想と現実という事を誤魔化さなくてはならなかったが、皆リラックス出来ているようだ。
「ゴボボボボボ、ガボ、ガガッボボボボボ!?!?」
俺を除いて。
「それにしても何で急にここに来たんだ?」
「えーーーっと・・・・なんでだっけ?」
「いいんじゃない?今はゆっくりしましょう」
「そうだね・・・いい景色・・・」
「こういう海とか湖に繋がってるプールをインフィニティ・エッジって言うんだよ」
「へえ~~~~なんか短剣のソードスキルにありそう」
ユウキがのんびり答える、
「ゴボゴボ、バゲッボ!!(そろそろ、上げろ!!)」
しっかり俺の後頭部を抑えながら。あかん、息がヤバイ。
「あ、忘れてた」
「忘れんな!!」
息を吸い込みながら答えたので掠れ声だったが何とかツッコんだ、毎度毎度ボスと関係ないところで死に掛けてんな、俺。
「無事のようだな、オウル」
「恩師が川の向こう側で手を振ってるのが見えたよ」
「ふむ、噂に聞く「三途の川」と言う奴か。ユウキ?シノン?じゃれつくのも程々にな」
「「はーい・・・」」
なんかできるお姉さんに叱られてる妹みたいな光景だった。そしてキズメルの顔が見れない、だってマッパだったんだもん、そして俺十三歳だもん、しょうがないね。
「そしていきなりで悪いが、あまりここには長居しない方がいい」
「そりゃまた何で?」
本当にいきなりだったので、早口に答える。いつまでも居ようとは思ってなかったが・・・・何かまずい事でもしたっけ?
「オウルがキズメルの裸を見たこと?」
「もうそれは掘り返すな、頼むから」
心が砕ける音がする。
「ここは見ての通り四方を湖と断崖に覆われた鉄壁の城塞だ。一度も破られたことは無いという・・・・そのせいでここの司祭どもはたるみ切っている、一度も経験してないんだ、本当の戦と言うものを」
苛立ちを交えているであろうその表情と口調に引っかかるものを覚えるがまだ思い出すには至らない、何だっけ?ここに来た理由は・・・・・。
「でもさ?フォレストエルフが船で攻め込んできたら・・・・・」
「あり得ないよ」
ユウキの言葉を待たずに断じる。
「どうして?エルフのお呪いは同じエルフにはあまり効かないんでしょう?」
「確かにここに城があることは奴らも知っていようさ、だが我らエルフが使う木は自然の成り行きで倒れた物だけ、ましてやフォレストエルフがそれを破ることなどあり得ん」
「船を大量生産できないってことね・・・・」
「__________それだ」
「え?」
やっと思い出した、ここに来た理由。二人の拷問で忘れてたがここに来たのはそれが理由だ。
「キズメル、近い内にここをエルフが攻め込んでくるぞ」
「オウル、だからここには_______」
「・・・・あのフォールンエルフはそのために木箱を・・・・?」
「何だと!フォールンがこの層に!?」
シノンが呟いたその瞬間キズメルが顔色を変える、そして俺のクエストログにクリアされたことが表示される。しかるべき相手とは俺たちの場合キズメルの事だったのだ。
「何で忘れてたのさ!」
「いや・・・・お前らのせいだよ」
さっきまで水責めしてた人が言うことじゃない、なんやかんやと騒ぎながら風呂から上がりキズメルに城主のところまで案内してもらう。
恐らく全員で初めて人型mobの集団戦になるだろう、パニックやトラウマにならなければいいが・・・・・・。一抹の不安が俺はぬぐい切れないまま戦いに赴く。
更新速度が安定しないなぁ、SAO終わるのいつになるんだろうか。