原作と違いすぎてどうすればいいのかわからない   作:七黒八白

13 / 24
前回のあらすじ

 オウル「のぼせんな!!!」

 シノ・ユウ・アス「(誰だコイツ)」

ネロ祭楽しい、でもブリュンヒルデが当たらねえ・・・・
そんな事は置いといて始めます、第十二話。我ながらまさかの展開。


第十二話 木漏れ日の中 戸惑う梟

 森林浴で体の調子が良くなるのは錯覚では無い。

 これは森の木々が虫に喰われることを防ぐため殺虫作用のある揮発性物質、フィトンチッドと呼ばれるものを散布するからだ。これは虫を殺そうとはするが人体には極めて優しく、脳波を抑え精神に安らぎを与えてくれる・・・・・のだが・・・・

 

「でも、SAOでは関係ないのかね・・・・・」

 

 樹齢何百年と言う大樹がそこかしこにあるアインクラッド第三層の森の中で俺は呟く、真昼間なのにも関わらず日光が遮断されてるところはまるで暗闇、死角から襲われてはかなわないので《索敵》を常にフル活動させておく。

 しかし、ここの森は索敵に引っ掛からない奴もいる、常に直観を周囲に張り巡らさなくては、

 

「オウルーー!何してんのーーー?おいてくよーーー?」

 

 割と遠くから活発そうな少女の声が俺に掛けられる、考え事をしてる間に結構離れてしまったようだ。《索敵》で追跡のスキルはまだないので、この常に霧が充満してる森で仲間と離れるのは自殺行為。ボス戦で戦いまくったお陰で経験値がたくさん手に入り、LV18ももうすぐだが置いてけぼりだけはごめんだった。

 

「ああ、すぐ行く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                     ()()()()!」

 

 

 

 白髪片手剣士こと俺、オウルは今、彼女フィリアとコンビで《翡翠の秘鍵》というクエストを受けようとしていた。

 シノン、ユウキ、アスナは今は居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 SAOが始まり二十数日程、あと一週間もしない内に丸一ヶ月が経つ。

 原作よりも早く進んでることに喜びと一抹の不安を覚えずに居られないが乖離するときは勝手に乖離するだろうから気にしないことにする。

 二層でのボス戦の後は俺も驚くほど丸く収まった、何故かと言えばオルランドは元から謝罪するつもりだったらしい、それを信じられるほど今回の事件は決して簡単でないし、小さいものでは無いが・・・・兎に角、武器と鎧ボス戦で得たアイテムとコル、そして前から賠償金として溜めていた分で取り敢えず()()()()()払えた。

 ネズハ改めナーザは無事に(と言っていいのか俺は分からないが)レジェンド・ブレイブスに戻れた・・・・・・他のメンバーも思うところがあったのか謝罪やら何やらあったらしい。

 そしてらしい、というのは俺はレジェンド・ブレイブスが名乗り出た後、街に戻ってレジェンド・ブレイブスの武具でオークションしようとする帰りの道中《隠蔽》でこっそり抜けたからだ、事の顛末はアルゴとナーザからフレンド登録によるメールで知った。

 ポンチョの男と繋がってるであろうジョー(ちゃんとしたプレイヤー名かは分からない)にあれだけ迫ったのだから、間違いなく目を付けられただろう・・・・・シノンを俺の油断で死なせかけ、アスナにも危ない橋を渡らせた手前これからはソロの方がいい、ユウキは絶対怒るだろうが・・・・・・フレンド登録も消した、追跡の可能性は出来る限り無くしたい。

 そして、そのままボスの広間に戻り三層へ上がろうとしたのだが、

 

「・・・・・・・・?」

 

 何やら見られてる様な感じがした、上手く形容できないが・・・・アルゴではない、奴ならすぐに出てくる。

 

「まさか・・・黒ポンチョの男・・・?」

 

 《隠蔽》で隠れている?俺の《索敵》掛からないレベルとなると相当な手練れということ。ジョーからもう連絡が入って俺の抹殺に来た?圏外で俺を攻撃すればオレンジになる、そのリスクを冒してまで殺さなくてはならないと思ったのか・・・・・?

 

「(・・・いや・・・・むしろ好都合だ、奴だけは何としても・・・・)」

 

 装備も消耗し、精神的にも疲れは無視できるレベルではないが・・・・スキルもレベルもボス戦に参加してる俺の方が流石に上だろう、ここで確実に仕留める・・・!

 俺は何も気づいてないふりをしてゆっくり歩きながら周りに目を配る、すると広間の隅が僅かに歪んだ気がした。

 

「ッ!!」

 

 距離は遠い、突進系のソードスキルでも届かない。だがシノンに作ってもらった煙玉があったのでこいつを《シングルシュート》で投げる。

 

「ええッ!!?ちょっ!?」

 

 何やら声がやたら高いが気にしない、多分アレだ、裏返ったのだろう。十秒しか持たないので一気に距離を詰めて手足を切り落とし、仲間の名前も出来れば吐かせたい。転移結晶はまだ無いため口だけでは絶対に逃げられない、レイドに混じって居るであろう仲間ももう遠くに行った、確実に成功させる!

 

「(武器は・・・短剣か!間違いないか!?)」

 

「くッ!!」

 

 迷宮区の最上階に一人で来れるだけあってその短剣裁きと身のこなしは攻略組と比べても遜色ないが・・・・・・

 

「すっとろいな」

 

「なッ!??」

 

 シノンとの模擬戦で短剣使いとの戦い方は大体わかる、左胸、心臓めがけて突き出すソレを払うように力強く左手で手首を掴み外側に捻る、同時に右手で軽く相手の目元に手刀を入れる。

 

「ぐぅッ!!」

 

「いいセンスだ・・・だが見つけられた動揺が手に取るように分かる!」

 

 右足の踵で相手の右膝をHPを減らさない程度に引っ掛け態勢を崩し短剣を奪い、そのまま背負い投げで地面に叩きつけて袈裟固めで押さえ込む、STRにどれだけ差があってもこの拘束からは簡単に逃れられない。

 丁度十秒経ったのか黒い煙幕が晴れる。

 

「はッ離せ!!この変態!!」

 

「変態?こんな所で隠蔽してる怪しさ満点の奴に言われるとは・・・・・ん?」

 

 何やら脇の辺りに柔い感触があるが・・・・・まさか・・・、

 

「私はただ三層に向かおうとしてただけよ!」

 

「・・・・じゃあ何で隠蔽で隠れてた?」

 

 女か・・・・流石に彼女が黒ポンチョの男ではないだろう、てかこいつ誰だ?()()()()()()()()()()()()

 

「索敵で何か来るのがわかったから反射的に隠れただけよ!」

 

「・・・・そうか、すまん・・・・」

 

 一言謝罪し、離れる。本当に彼女がそのつもりでここに居たのか、隠れたのかは分からないが黒ポンチョの男以外は問答無用で殺すつもりは今のところ無い・・・・にしてもまいったな、勘違いだったとはな・・・

 

「本当にすまない、さっきここで色々あっただけに君がオレンジプレイヤーと勘違いしてしまった」

 

「オレンジプレイヤー・・・・?ここで何があったのよ・・・・」

 

 全体的に青い装備、金属の類は見当たらない。明るい茶髪、アイテムで調整してるのか薄いオレンジ色にも見える。武器は片方に武器を壊すためにギザギザが付いてるソードブレイカー、

 

「お詫びにそれ位はいくらでも話す、お前の名前は?俺はオウルだ」

 

 奪った短剣を返しながら訪ねたら、

 

「・・・オウル?それってアルゴさんから買った・・・」

 

 何だと?じゃあ・・・こいつが・・・

 

 

「私、フィリア。ソロでトレジャーハンターやってる・・・・と言っても自称だけどね」

 

 

 その名はかつて一層で俺の名前を買い、そして先ほどアルゴから教えてもらった名前だった。

 

 

 

 

 

 

「公開処刑・・・・そんな事が・・・・」

 

「まぁ、とあるプレイヤーの説教と首謀者の仲間が自白して事なきを得たんだがな」

 

 俺とは言わない、恥ずいから。トレジャーハンターを自称するフィリアと次の階層に繋がる階段を昇りながら事の顛末を話す。そしてフィリアがあそこにいた理由は俺に宝箱を取られる前に先に三層の宝箱を総どりするつもりだったらしい・・・・俺は兎も角、攻略組の連中はブチ切れかねないぞ。

 

「そんなのとぼければいいし、それに原則ダンジョンの宝箱は早い者勝ちでしょ?」

 

「じゃあ俺の名前は買わなくてもよかったんじゃ・・・・」

 

「・・・・それとこれとは別よ・・・」

 

 こいつ・・・・まぁ、気持ちは分からないでもない。ソロで危険を冒して入ったのに宝箱が空っぽ、何も感じないとは俺でも言えないし、あからさまにケチを付けてくる奴らは相手にしたくないのも普通の心理だろう。

 

「だがな、ソロで行動するならもうちょっと慎重になった方がいい、PKもないとは言い切れないが・・・それ以前にmobに袋叩きにされるぞ」

 

「これでもLV12よ?それに貴方はどうなの?」

 

「俺は元テスターだからな、それに一人で動きたいわけがあるんでな・・・・」

 

 フィリアの反応を見る限り俺の一層での事件は広まってない様だが安心は出来ない。俺の事を危険視した奴が殺しに来る可能性もあるし、何より一人なら自重せずに動ける、どれだけ展開に対して先回りしても怪しまれない・・・・・それに、もう俺は簡単に人に背は預けられそうにない・・・・。

 

「成程ね、テスターだから先回りして宝箱の在処が分かったのね・・・」

 

「まぁな、フィリアは違うのか?」

 

「うん、近所の店で偶然売ってるのを衝動買いして・・・・ゲームもそこまでするわけじゃなったんだけどね」

 

 無理もない話だ、バーチャルの世界に憧れてやって来た人間は若者だけではない。ベータの時は顔はリアルの物では無かったが話していたり、その行動を見る限り結構な高齢者も居たと思う。老いて動かなくなった体がゲームの中とは言えまた全力で動かせるのだ、フルダイブの技術は医療機関に導入も考えられていた。フィリアの衝動買いはむしろ真っ当な理由に思える。

 少なくとも俺よりは。

 

「・・・・・・よし!決めた!」

 

「?」

 

 何やら難しい顔で悩んでたが決めたようだ、それよりも三人が追いかけてくる前に行かなければ、あのクエストを受けてレベル上げとポンチョの男の手先との接触を図って・・・・

 

「オウル!私とコンビ組んでよ!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・え?何だって?」

 

 俺はまるで難聴系主人公のように答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どーしてこうなった」

 

「どーしたの?急に?」

 

 いや君の事だよ?ソロまっしぐらのはずが何故また仲間出来てんの?仲間増やして次を目指すのは俺じゃないよ、もう二十年間近く十歳のまま旅し続ける少年だよ、体質は同じかもしれんけど。

 

「え~?私は別に強要はしてないんだけどな~?」

 

「嘘ダゾ、『襲われたって言いふらす』って明らかに強要だし、脅迫ダゾ」

 

 もしあの三人に知れたら、「一歩音超え・・・二歩無間・・・三歩絶刀!」とか、「本格治療を開始します。覚悟は、よろしいでしょうか」とか、「来たれぃ我が忠臣、我が手足、我が具足!四天王なぞこれこの通り・・・」とか、なりかねない。

 もしそうなったらSAOは秒速でクリアされるが間違いなく俺は死ぬ(確信)。

 

「だってさ、貴方ほっといたら宝箱全部取るでしょ?」

 

「そりゃな、剣は未だしも防具は強化の余地がありまくりだし、コルもアイテムもあり過ぎる位がいい」

 

「うんうん、それはわかる、そして貴方は私にソロは危ないって忠告した」

 

「まぁな、顔合わせただけとはいえ死なれたら目覚めが悪いし」

 

「だったら!一緒に行った方がいいじゃん!大丈夫!これでも結構やるから私!」

 

 理には適ってるが・・・・確かに彼女の戦闘能力はアスナと同等位はあるだろう、ユウキとシノンは俺が鍛え、日頃の鍛錬も怠らないように言ってあるので流石に及ばないが。それにトレジャーハンターと自称するのだ、バリバリ戦闘ビルドの俺より小回りが利くスキルも持ってるだろう。

 

「・・・・俺と来れば危険に晒されるかも知れないぞ?それに俺が君に危害を加えないとも限らない」

 

 いつかと同じように問いかける、フィリアがどういう存在なのかは気になるが・・・・何と言えばよいのか、身もふたもない言い方をすればフィリアは『キャラが出来過ぎてる』気がするのだ。

 無論NPCとは思ってない、最近は全く意識していなかったが俺は転生するにあたって『記憶』だけ消され『知識』だけ残った、その二つの明確な境界線は分からないが、確かに俺は原作の展開、キャラクターを覚えていた。そして今俺の目の前にいるフィリアも俺が知らないだけで原作のキャラクター・・・・そんな気がするのだ。

 だから正直言えば知りたい、彼女はどんな立ち位置だったのか?何をするのか?だがその我欲で窮地に追いやるのは論外だし・・・・・

 

「・・・・何を悩んでるのか知らないけど、貴方が私に危害を加えるならさっき武器を奪って押さえ込んだ時、もうしてたでしょ?油断させるためとも考えたけど、あれだけ完全に押さえ込んだならそのまま何かすればいいし・・・・多分信用できる!」

 

 多分て・・・・考えてんのか、そうでないのか・・・

 

「・・・・俺は俺の目的で動く、宝探しが後回しになるかもしれない、それでもいいのか?」

 

「う~ん・・・それはあんまり良くないかもだけど・・・でもクエストとかでもお宝は手に入るかもしれないし、私だけで動くよりは効率良いだろうし、着いてくよ!」

 

 こうしてソロに戻ったはずが俺にはまた仲間(しかも普通に美少女)が出来た。何故だろう、敵が増える予感がそこはかとなくする・・・・

 

「でさ、今どこに向かってるの?主要区はあっちだよ?」

 

「今からまさにクエストを受けに行くのさ、かなり大規模で、レアなアイテムももらえるぞ」

 

「やった!で、どんなクエストなの!?」

 

「慌てんな、ここの情報を与えながら教える」

 

 第三層は全体的に森に包まれている、その上霧も充満してるためマップも大してあてにならない。mobは植物系なのでソードスキルは使ってこないが・・・・

 

「フィリア、ちょっとしゃがんでみ?」

 

「え?う、うん」

 

 戸惑いながらも頭を押さえてしゃがむ、避難訓練では無いんだが・・・まぁ好都合だ。俺は素早く抜剣し、ボス戦で覚えた四連ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》をフィリアの後ろの木にかます。

 

「なっ、何してんの!?」

 

「見りゃ分かるだろ?」

 

 そしてウロらしきものが顔の形になり「MORORORO・・・・」と奇妙な鳴き声?を発する。

 

「この階層のどこの森でも湧く《トレント・サプリング》だ、索敵に引っ掛からない上、普段は擬態し森の奥に誘い、迷わせようとして来る」

 

「ほえ~・・・索敵に引っ掛からないなら何で分かったの?」

 

「勘」

 

 やっぱり「何言ってんだコイツ」みたいな目で見られるか・・・・ちゃんと理論は教えてるのだがまだ誰も同じ真似ができたことはない、おかしいな・・・・

 

「ここはVRの世界だよ?直観って・・・」

 

「分かる物は分かるんだから仕方ない、百パーでは無いが、どんどん精度が増してるし」

 

 プロの将棋棋士などは最善の一手を直観で打つという、これはアマチュアにはない経験則からくるもの。今まで戦った記憶の中から無意識に最善を拾い上げそれを感じるらしい、もっと難しく言うとシナプスがどうとか読んだ気がするが・・・それは置いといて。

 

「さてと、このへんかな?フィリア、耳を澄ましてみてくれ、剣戟の音が聞こえないか?」

 

「剣戟?それがクエストの合図なの?」

 

「そうだ、予め言っとくとこのクエストは九層まで続く、その全部に付き合う必要は勿論ない、俺もボス戦で中断する可能性があるしな・・・」

 

「やると決めたからにはやるよ、でもどんなクエストなの?」

 

 そればかりは見てのお楽しみだ、そして目を閉じ全神経(SAOでその言い方が正しいかは分からないが)を耳にだけ集中させる、鳥のさえずり、葉の擦れる音、虫の音、様々な音が聞こえるがそれら全てをシャットアウト、効きたいのは剣戟だけ・・・・・・・・・・!

 

「聞こえた!」

 

「え?嘘?何にも聞こえなかったよ?」

 

「いや確かに聞こえた、こっちだ!」

 

 街道から外れ森に入る、《索敵》と勘で出来る限りmobは避ける。勝手に決着が着くとは思えないが急ぐに越したことは無い。

 

「森に入って大丈夫なの!?」

 

「クエストを受ければ戻ってこれるさ、あとここからはあんまり大声は出すな」

 

「クエスト受けれなかったら?」

 

「行くぞトレジャーハンター、野営の準備は万端か?」

 

「・・・・お風呂」

 

 まず女性が少ないが絶対それに拘るな、確かにリラックスできるけど・・・・

 

「・・・・クエスト受けたらとある拠点に行ける、そこなら風呂あるぞ」

 

「やった!」

 

 分かり易く、誘導しやすい、今のところ俺のフィリアへの評価はそんなところだった。

 

 

 

 

 

「居たぞアレだ」

 

「あれって・・・・エルフ?」

 

 茂みに隠れながら伺う、俺たちの視線の先には金髪碧眼の美青年のフォレストエルフ、もう一人はスモークパープルの髪の女性のダークエルフ。この二人のうちどちらかに助太刀し、そして秘鍵を預かる。それを助けた方の拠点へ持ってくというもの。今も一進一退といった感じで斬り合っている。

 

「でもさ・・・・何か凄い強そうだけど・・・」

 

「いくら安全マージンがあってもあの二人は七層のエリートmob、勝てる可能性はかなり低い」

 

「え?やばくない?ここで死んじゃったら・・・・」

 

「それは無い、間違いなくな・・・・俺たちがイエローゾーンに入ったら加勢した方が奥義を使う、命と引き換えになるがそれでクエストは一先ず進む」

 

「・・・・・・そう・・・」

 

 だがしかし、俺は我ながらメンドクサイ性格をしてる、

 

「なあ、フィリア?」

 

「何?」

 

「お前さ、超有名な某RPGの第五作目の奴やった事あるか?」

 

「?・・・・ああ!あの親子三代に渡る、勇者が主人公じゃなかったり、最強装備が杖だったりするアレ?」

 

 まぁ、間違ってないけど・・・・その言い方はないだろ、あとカジノの武器を含めたら最強装備は剣だからね。因みに俺は幼馴染派です。

 

「俺さ、ずっと昔に多分主人公の父親救うため幼少時代にスゲーレベル上げしたんだよ」

 

 記憶はないが、そんな事をしていたような知識がある。

 

「オウル、まさか・・・」

 

「何もかも茅場の思い通りは気に食わないからな、一つ運命に逆らわないか?」

 

「・・・・・うん、いいよ!やってやろうじゃんか!」

 

 中々彼女はノリがいい様だ、一応アスナの事があったので黙って勝手に事を進めるのは避けたい。

 

「よし、じゃあ俺が攻撃を担当するからフィリアは防御主体で行け、戦いは俺の方が上だろうから」

 

「身に染みてますよ、それは」

 

 それに人型なら色々有効な技があるしな、スキルばかりが戦いではない。

 

「でも、どっちに加勢するの?」

 

「野郎より女の方がモチベが上がるんだが・・・・フィリアは?」

 

「・・・・・・・」

 

 ジト目で見られた・・・・しょうがないね、そればかりは逆らえぬ性だよ。そんな事よりさっさと行こう。

 俺とフィリアは茂みから出て、俺はそのまま《ソニックリープ》を森エルフに喰らわせる、不意打ちに対処は出来ないのか、まともに受けたが・・・・ほぼ減ってないな、ちょっとしたボス戦だと思った方がいいな。

 

「何故邪魔をする!!人族よ!!?」

 

「人族の間じゃ婦女暴行はかなり重罪でな、その辺にしとけよ」

 

「貴様ら・・・・我が剣の露と消えるか・・・」

 

「下がっていろ!貴殿らの敵う相手ではない!」

 

「でも、貴方だけじゃ勝てないでしょ?事情はよく知らないけど手伝うよ!」

 

 別に森エルフが悪というわけではないが、この構図は完全に森エルフが敵役だった。だがそんな事で引く奴ではない、イエローのカーソルが血のように赤く染まる・・・・ギリギリ勝てるかどうかといった感じだな、油断すれば間違いなくやられる。

 

「愚か者どもよ!ダークエルフと共に消えるがいい!!」

 

「・・・!!」

 

 滑るようにこちらに迫ってくる、メタい事を言うと人型mobはその動作の元となった人間の動きがある、その為ソードスキルもシステム任せでなくブーストされてる場合もある。この森エルフはどうやらその数少ないブーストのソードスキルを使ってくる奴だ。

 

「ゼアアッ!!!」

 

「シッ!!」

 

 剣はまともに受けず流す、今の剣ではへし折れかねないし、ステータスも向こうが上だ。なので、

 

「フィリア!!」

 

「何っ!?」

 

「ヤアァッ!!

 

 足を引っかけて体勢が崩れたところをフィリアに斬らせる、二連ソードスキル《クロス・エッジ》がまともに背中に入る。

 

「くっ・・・・舐めた真似を・・・」

 

「やっぱりあんまし効いてないか・・・・」

 

「どうすんの?ジリ貧じゃない?」

 

 それは流石に早い、まだまだ手はある。

 

「今度はこちらの番だ!!」

 

「やってみろ、出来るもんならな」

 

 ソードスキル《シャープネイル》、予備動作だけでそれを見切り距離をとらずに森エルフに近づく、三連とはいえ一回位はまともに当たっても大丈夫だ、それにそんな馬鹿真面目にソードスキルを使うところやはりAIは単純だな、肩の辺りに振りかぶったそれを左手で掴み抑える、前髪を右手で鷲掴み、そして端正なその顔に膝蹴りを入れる。

 

「ガッ!?!?」

 

「まだまだぁ!!」

 

 そのままたたらを踏んだところに右手で顔面に《閃打》、後ろにある左足を前足の外側に回し、旋体からの水平蹴り《水月》、そしてバック転のように《弦月》で顎を刈る、全て体術スキル、だがブーストは極限までしている。この手の稽古も武蔵さんから良く受けていた。

 

「ギッ!?」

 

「おっ?スタン入った?」

 

 まぁ、狙ったんだけどな。スタンは僅か三秒しか持たない、それを意識するより早く《ホリゾンタル・スクエア》を放ち、硬直を《閃打》で短くし《バーチカル・スクエア》に繋ぐ。ソードスキルには冷却時間があるので無限につなげることは出来ないため一旦退く、

 

「ぐあああぁぁッ!?!?」

 

「・・・オウル・・・強ッ・・・」

 

「何と・・・・・!」

 

「感心してないで手伝え、まだイエローに入ってないぞ」

 

 このコンボならイケると思ったが・・・・予想以上に固い。だが勝てることはもう確信した、後は作業の様な物だ。

 

 

 

 

 

 十分後________

 

「ばっ・・・・馬鹿な・・・」

 

 一度天を仰ぎ、そのまま力なく倒れる。そして大量の経験値とアイテムが手に入る、おぉ、LV18になった。マージン取りまくってるからもう少しかかるかと思ったんだがな・・・・やったぜ。

 

「倒せた・・・・・強すぎでしょ・・・・」

 

 その場にへなへなといった感じでフィリアが座り込む、俺なんかボス戦直後だぞ?剣もかなりヤバイ、メンテしないと・・・・、

 

「・・・・これで聖堂は一旦守られる・・・・すまない、そなた達、助けられてしまったな」

 

 森エルフからドロップした、巾着袋の様なものを拾い黒エルフの女性が言う、あれが秘鍵か。上手く進んだとみていいのかな?

 

「私の名はキズメル、そなた達のお陰で第一の秘鍵は守られた、我らが司令からも褒賞があろう、野営地まで同行するがいい」

 

「あ、ありがとう・・・・正直疲れた・・・」

 

「俺も武器を何とかしないとな・・・・案内頼めるか?」

 

 わざとYESの意味をはっきりさせなかったが、

 

「よかろう、ここから南に少し歩くぞ、道中の敵は任せてくれ」

 

 黒エルフのキズメルは快く承諾してくれた、敵と戦ってくれるのもありがたい。俺のアニールブレードはもはやボロボロだ・・・・・・そろそろ、か・・・

 

「私フィリア、よろしくねキズメルさん」

 

「敬称はいらないさ、暫くの間よろしく頼むぞフィリア」

 

「剣が折れそうなんで道中役に立たないかもしれんがよろしく、オウルだ」

 

「構わんさ、奴はフォレストエルフの精鋭、むしろ剣が折れそうなくらいでとどめたなら快挙だ」

 

 こうして、キズメルと俺にとってイレギュラーなフィリアを交えてクエストが始まった。あの三人は心配ないだろう、アルゴ経由で俺手製のガイドブックを渡しておいたし、それに・・・・

 

「どうしたの?早く行こうよ?」

 

 フィリアはいったい何者なのか、俺は今それが気になる・・・・・・もはや原作知識はあてにならなくなりつつあるのかもしれない。

 

 

 

 

 




まさかの原作ヒロイン(一時)退場、すかさず登場ゲームヒロインフィリア!
これもまた原作崩壊・・・・本当のことを言うとフィリアはもう少し後の登場予定だったのですが、同行者が多すぎると作者の文章力では捌ききれないのでプロットを少し変えて早めに出させました。
懲りずに声優ネタも使っていきますがそれでもよろしければこれからもよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。