オウル「・・・・・・・・・・・」
アスナ「剣が・・・・・砕けた?」
物語が進むにつれて原作の設定にはない、でもそれ自体が原作を崩壊させない程度に設定を織り込むかもしれません。
始めます第十話。
やはりもう手が回っていたか。
その現象を目の当たりにして頭に浮かんだのはそんな物だった。
「あの・・・本当にごめんなさい・・・・店売りでよければ、武器を・・・」
「あぁ・・・いや、それよりも聞きたい、武器の強化失敗で破壊とかあり得るのか?俺はテスターだが・・・・見たことも聞いたこともない」
「・・・・以前にも同じことがありましたので・・・もしかしたら正式版で追加された・・・のかも・・・」
目を合わせることなく、蚊が鳴くような声で鍛冶屋のネズハは言う・・・・さて、どうするか?この後の行動を考えていると、
「オウル・・・・どうするの?」
「剣・・・折れたけど・・・?」
シノンとユウキが心配そうな目で見てくる、確かに修行とクエストでLV16に上がったが、メインウェポンを失ったとなるとかなりきつい・・・・・・・
「・・・オウル君・・・」
「・・・・取り敢えず、今日はもう宿をとろう、明日考えるさ」
アスナもどうしていいかわからないという目をしているが、
流石にどうなるかわかってるのにアスナに先に強化させるのは気が咎める。
「すまないなネズハさん、時間取らせて・・・」
「いえ、そんな・・・僕は・・・」
怯えたような目でこちらを見る、はっきり言って安心した。もしここで生き生きしてたらそれはそれでどうすればいいのか分からなかった。
「じゃあ俺は一人部屋取ってるから」
「オウルは何で一人になりたがるのさ?」
「いや・・・純粋過ぎるぞ、ユウキ」
「別に今日だけならいいわよ?」
「三人で女子会でもしてるといい、何かあったら呼ぶから」
その後すぐに近くで宿を取った、勿論俺は一人部屋だ。そして三人は同じ部屋に消えていった・・・・アスナが終始浮かない顔だったが、まぁ、大丈夫だろう。
部屋のタンスにいらない荷物を置いて可能な限り身軽になり
「よっ!と」
部屋の窓から飛び降りる、向かう先はネズハのところだ。
尾行する必要は無いかもしれないが念のためメンバーの顔と、
そんな事を考えながら《隠蔽》スキルを発動させ、《ベンダーズ・カーペット》というほぼ商人専用アイテムと言っても過言ではないソレを担ぎながらどこかへ向かうネズハを尾行する。
目は死んでるし、足もトボトボといった感じだ。それで許されるわけではないが・・・・だからと言ってSAOで悪習が生まれるかもしれないこの事件を見過ごすのはあり得ない。
「全部杞憂だったら良かったんだが・・・・」
コペルの件はまだ定かではないが、
・・・・俺がSAOに来たのははっきり言えば、転生者という意識からくる罪悪感から逃れるため、日常生活ですら感じていた違和感の様な物と折り合いをつけるため、ここで必死に戦えば自分に対して許せるような気がしたから・・・・
「醜いことこの上ないな・・・・」
だがそれを意識するあまりコペルの事件が起きた、もしかすると初日にコペルを殺すべきだったのかも知れないが・・・・俺はSAOのサーバーからある程度プレイヤーの行動が外部に知られてることを知ってるし、何より日常生活を滞りなく送るために戦ってるのに自ら殺人鬼に堕ちるのは本末転倒である。
「・・・・めんどくさいな、我がことながら・・・」
しかし今は関係ない。
ネズハはあまり人が居ないところを通って寂れた酒場に入った、話の内容を考えれば確かに丁度いいのかもしれない。
「(入るのは・・・論外・・・扉を開いて盗み聞き?ばれない保証はない)」
どうする?街中で《隠蔽》を発動させるのも結構グレーゾーンの行為だったが、《聞き耳》スキルはないし・・・・天窓があったのでそこから聞くことにした。
屋根に登って、僅かに窓を開けて話を聞く、酒を飲んで夢中になっているのか覗き込んでも気づいた様子は無い。
「ネズオー、おかえり~」
「うん・・・」
「今日の儲けは?どうだ!?」
「・・・・アニールブレードを二本・・・」
「おぉーー!マジで!?まだ残しとけよ、売らずに使うかもだから!」
それ俺のなんですけど?と普段なら言うが今はまだだ。見たところ全員顔見知りそうだが・・・・流石に無理だったか?扇動だけが目的なら接触は不要か・・・。
「ね、ねえ?もう辞めないか?そろそろバレるよ・・・」
「・・・・大丈夫だって、全然噂になってねえし、な?」
「あぁ、でもあの黒ポンチョさんも人がいいよな、自分がやればぼろ儲けなのに・・・・なあ、オルランドさん?
」
「・・・・むぅ・・・」
・・・・・・黒ポンチョ、それが聞けただけでも収穫だな。しかし、あのオルランドとかいう奴は乗り気じゃないのか?槍使いと斧使いはかなり乗り気みたいだが・・・・・
「・・・・原作とは違う展開になるか?」
俺は窓を戻して、宿に戻った。勿論《所有アイテム完全オブジェクト化》で剣は取り戻した。
「強化詐欺!?あり得るのソレ?」
「・・・・見た感じそんなことする暇無かったように思えるけど・・・・」
「でもあの後尾行してそれっぽい話を聞いた、剣も取り戻せたし」
翌朝、自分の事だし夜中に女子の部屋に突撃するのは何かと気が引けたのでそのまま寝て、今俺たち以外誰もいないので宿の食堂で話してる。
強化詐欺の推察、所有権がまだ移ってなかったこと、そしてネズハ自身の事。
「でもそれを知ってオウル君はどうする気なの?」
「探偵を気取るつもりはないが・・・自分の武器が犠牲になりかけたんだ、是が非でも止める。それにSAOで愛用してる武器を奪うことははっきり言って重罪だ、バレたらプレイヤー達の反感から公開処刑とかあり得る」
恐らく黒ポンチョの狙いはそれだろう、ネズハ自身からも色々聞きたいが。
「いや~流石にそれは・・・・」
「あと今回の事件は確実に誰かが手引きしている」
「!誰なの」
「分からん・・・・黒ポンチョの奴としか・・・・そいつが強化詐欺を教えたことは間違いないが・・・」
ユウキとシノンは既に話しているためすんなり通じるが、アスナはイマイチ要領得ないようだ。
「ちょっと長くなるけど・・・・同一の人物とは限らないが俺はコペルが誰かに唆されたか、或いは脅されてあんな行為に走ったんじゃないかと思ってるんだ・・・・実はあいつデスゲーム初日にも俺にMPKを仕掛けてな、結局失敗したんだが・・・・人前で殺そうとするだけの度胸があるならあの時に殺してたんじゃないかって思えて、しかもボス戦前日に俺の情報買われてるし、全部繋がってる気がしてならないんだ。」
一気に喋ったためお冷で飲むが、アスナがすぐに切り込んできた。
「あなたね、そう言うことは先に言ってよ!私も同じパーティーに居たのよ!?」
「すっ、すまん・・・・だが事が事だけに言いづらくて・・・・」
全くその通りである、俺がコペルの善性を信じたかったためにアスナは知らない間に危ない橋を渡っていたことになる。もし誰かこの先それで死んだら・・・・俺はどうするのだろう・・・・流石に考えすぎか・・・
「全く申し訳ない・・・・」
「・・・・あなたその黒ポンチョを追いかけるの?」
「育つ前に不安の芽は摘む・・・・牢屋にぶち込むだけで済めばいいんだが・・・」
はっきり言って
「じゃあ私もついてく」
「は?」
「だって、無関係では居られないし、お金儲けが目的なら攻略組は必然的に狙われるでしょ?」
確かに攻略組が一番効率がいいだろう、武器が弱ければ死に繋がるのだから。
必然的に強い武器を持っている。
「・・・・そういや、今日フィールドボスの攻略じゃなかったっけ・・・・」
「・・・・行きましょ、オウル、もしかしたらネズハと一緒に居た奴らも居るかも」
反論する暇もなく決まってしまった。ユウキとシノンもついてく気満々の様だった・・・・・・ここで何か言ってもどうせついてくだろうし、いっそ頼らせてもらうとしよう。
「儲けた金は・・・・多分自分たちの装備に使ってるだろう、ここのボスは装備の耐性が重要だからな」
「で?君たちはレイドには入らないのかい?」
「あぁ、代わりに周りの蜂は任せてくれ」
そんなこんなで私とオウルとユウキと、新たに加わったアスナを率いてフィールドボスのところまで来た。
私達の目的はネズハと繋がってるパーティーの素性を調べること・・・・その為ボスの取り巻きである蜂の駆除に回る。
因みにオウルは今アニールブレードを装備していないし、防具もモッズコートに変えていて、髪も黒くしている。ここにネズハというプレイヤーはいないが念のためだ。
「ディアベルさんが認めてるとは言え、よく周りが騒がないね・・・・」
確かに、それは危惧していたことではある。
オウルは初のPKプレイヤーになってしまった、一部始終を見ていたため正当防衛であることは明らかであったが・・・・それで人が騒ぎ立てないとは私は思えなかった。
「・・・・今のSAOは顔を覚えられたら報復もありえるからでしょうね・・・・」
ここでは大人しくしていても目の見えないところではどうしているか・・・・こんなことは考えても仕方ないが。
「ところで向こうのパーティーの人達は何でレイドに加わらないのにボスと戦えるの?」
ユウキが視線を向ける先には昨日オウルが酒場で見たらしいネズハと繋がりがあるパーティー、確かパーティー名は《レジェンド・ブレイブス》・・・・恥ずかしくないのだろうか・・・・・。
「シノン、それは言ってやるな・・・・俺たちは飽く迄対等だ、強く出られたら力量が不足してない限り参加拒否はできない・・・それにさっき言った様にこの層のボス戦は装備の耐性が重要になる、ディアベルはそれを見越してあのパーティーにも強くなってもらうつもりなんだろう」
成程、確かに理には適っている。だがあのパーティーが使ってる装備は十中八九強化詐欺で得た資金で作った物だろう。ということは・・・・
「この層のボス戦で活躍して一気に攻略組のトップになろうとしているってこと・・・・?」
「ほぼそれで間違いないだろうな・・・・問題の強化詐欺は昨夜俺も試してみたが・・・・俺のは人前でやれるもんじゃないな・・・・多分何かのスキルを利用した物だろうが・・・・」
「スキル?《強奪》とか?」
《強奪》、mob(オウルが言うにはこれが一般的なモンスターの名らしい)からアイテムなどを奪ったりできるようになる、盗賊やトレジャーハンターの様なスキルだ。
「考えたが・・・・多分違う、それなら剣の所有権が一瞬で移って取り戻せなかった」
テスターでない為そのあたりはあまり分からないが・・・・・そうだ。
「あのカーペットを利用した線は?」
「《ベンダーズ・カーペット》か・・・・・ウインドは出してても隠せるかもな、だがそんな機能はないよ、ベータの時アレは一回事件があって修正パッチがあてられたから間違いない」
ふむ、言ってはみるものだ。ウインドを出してても大丈夫と考えるとワンタッチの猶予はあると思える・・・・が、
「人前でするとなるとなぁ~~~」
間延びした声でユウキが考えてる、そう武器をワンタッチで変えられてもサウンドやその時のエフェクトは誤魔化せない。何より変わる時、武器は一瞬消えるのだ、人前なら尚更バレないわけがない。
「・・・・いや、いい線いってると思うぞ、あの時武器が変わったのなら炉に素材を入れて発光エフェクトが出てる時だろうから、ある程度の誤魔化しは効くと考えていい」
「あぁ、マジシャンがよく使うミスディレクションって奴?」
「でもそれならあの時の壊れた武器は何だったの?オウル君の武器は戻ってるし・・・」
確かにアスナの言う通りだ、目の前で剣が砕け無くなったように見えた。だからこそ私とユウキは一緒に攻略が出来なくなるのではと危惧したのだから・・・・
「それは多分エンド品を使ったダミーだな」
「エンド品?なにそれ?」
「武器は強化試行回数ってのがあって、それ以上武器を強化しようとすると問答無用で壊れる、一層でアニールブレードに変えるときスモールソードで試したから間違いない」
「・・・・何でそんな事を」
「知的好奇心、あと何か有効活用出来ないかなって・・・・」
オウルのちょっとした奇行は置いておいて、大分話は煮詰まってきた気がする。カーペットでウインドウは出してても隠せる、ミスディレクションでワンタッチの猶予はある、エンド品と交換で怪しまれない・・・・あともう一歩だと思うが・・・・
「ねえ、そろそろボス戦始まるよ?」
「・・・・後にするか、今は戦おう」
「こいつらの相手もいい加減飽きてきたな!」
「文句言わない!ていうか情報より多くない!?」
「今更だけどボク、虫苦手!」
ここまで来たら虫というか、もはやクリーチャーだと思うが・・・・内心ツッコミながら弱点に二連ソードスキル《ラウンド・アクセル》を叩き込む、LV14でオウルの教え通りシステム任せでなく任意でブーストしたため一撃で屠れた。
「今回のボスは変更ないのね」
「まだわからん、フィールドボスは変更しないとは限らんし・・・」
背後を取られないように背中合わせでオウルと話す・・・・身長差が激しいためほぼこちらがもたれかかってる様な体勢だが気にしない。
「例のパーティーは?」
「危なげなく戦ってる、装備だけではないみたいだな・・・」
「・・・・戦えるだけの技術と度胸はある?なら何で詐欺を?」
リスクを背負うならそれなりの理由があると思うのだが・・・・てっきり足りない力か何かを補うためと・・・・
「勘だが・・・・それはネズハにあるのかもな・・・」
確かに同じパーティーなのに一人だけ戦わないのは何故だ?今は攻略組に合わせる顔が無いにしても鍛冶だけで彼が戦ってる姿はアルゴさんも見たことがないらしい。役割分担?・・・・・・それか・・・・
「・・・・いざという時の為、切り捨てるから?」
残酷だが、それが一番濃厚な線だと思う。
「・・・・・・決めつけはよくない、もう少し探ろう、詐欺の仕組みが分かればネズハに・・・・あっ!・・」
どうしたのだろう?と視線を追って見ると、フィールドボスの巨大牛にタンクが押し負けて吹っ飛ばされているのが見えた。
「まずい!カバーに入れ!」
ディアベルが叫ぶがタンクは必然的に遅い、他のプレイヤーも間に合わないだろう、
「しょうがない、シノン、迎え撃つぞ」
「了解」
二人だけで?と思わなかったわけではないがオウルが判断したのならいけるのだろう。その辺はもはや疑ってない。
「足の関節を狙え、頭のコブには行くな、吹っ飛ばされるぞ」
「わかった!」
すれ違う一瞬なら、突進系のソードスキルがいい。単発突進《アーマー・ピアス》を脳内で選択する。
「3・・・2・・・行くぞ!」
私は左を、オウルは右を、オウルは利き手が左なので合わせやすい。寸分のブレもなく同時に膝関節を穿つ。巨大牛は体重を支え切れず、呻きながら倒れた。
「ダウンとったわ!!」
「間髪入れず行くぞ!」
現時点で一番強い二連ソードスキル《クロス・エッジ》、オウルは山籠もりの時、徹夜で戦い手に入れたばかりらしい三連ソードスキル《シャープネイル》を弱点のコブに叩き込む。
弱っていた巨大牛は一瞬不自然に固まり、そのままポリゴンとなって消えた。
「またLAボーナス掻っ攫ったわね・・・」
「いや、マジで偶然だよ・・・・これは、まぁ、使えなくも無いけど・・・」
何かドロップウインドウを見て難しい顔をしている、それよりもさっき吹っ飛ばされたタンクの人は大丈夫なのだろうか?武器が明後日の方向へ飛んでいたが・・・・とその時、
「・・・!!?」
何かウインドウをいじったかと思えばすぐに無くしたはずの武器が出てきた。
「オウル!今のって・・・」
「ん?あぁ、《クイックチェンジ》だな、武器を無くしたり、落としたりした時便利なやつだ、多分タンクだから剣も防御方面に鍛えてるんだろ、だから早めに・・・・・・」
「違う、そうじゃないわよ!アレなら・・・!」
「・・!そうか、成程」
探偵風に言えば謎は全て解けた、という奴だ。
その夜、迷宮区でmobを乱獲した後、《タラン》というフィールドボスを倒した先にある村に来た。ネズハはここ居る、というか私達の視線の先で鎚を振っていた。今は私とユウキとアスナはNPCの民家の二階から様子を伺っている。
「・・・・まだするのかな、詐欺」
「もし私が被害にあってたら、許せなかったと思う・・・」
「・・・・オウルは何で拘ってるのかしらね・・・・」
疑問に思ったことを言う、確かに無視できることではないが・・・・それ以外に目的があるような気がする。
「?コペルさんを唆した奴と会えるかもしれないからじゃ・・・・」
「そうなんでしょうけど・・・何か腑に落ちないのよね・・・」
俗に言う女の勘である、ほぼ根拠は無い。彼の目的はさらにその先にある・・・・・そんな気がする。そんな事を話してると、
「必要な物は買い揃えた、あとはアルゴが来るのを待つだけだ」
買い物から帰ってきたオウルが部屋に入って来た。
「ネズハは?」
「ずっと同じ場所ににいるわ、強化を頼みに来た人は居ないみたい」
「良いことだ・・・多分、ネズハ自身は文無しだろうからな・・・」
何故ネズハ自身は戦わないのか未だに分からないが、恐らくそれが彼が詐欺をすることになった理由なのだろう。
賠償金を払うにはレジェンド・ブレイブスが罪を認めなくてはならない、詐欺のお金は全て彼らに流れているだろうから・・・・認めるだろうか。
「・・・・ずっと気を張り詰めても仕方ない、肉まんみたいなもの買ってきたからみんなで食おう」
「えっ!肉まん!?頂戴、頂戴!」
「何の肉が使われてるの?」
「さあ?多分牛だろ?」
そう言ってホカホカの肉まんみたいなものを差し出す・・・・・確かに空腹を覚えていたところだ。
「ホカホカだな・・・・少し冷まそう」
梟が猫舌とはこれ如何に?など考えながら肉まんにかぶりついた瞬間、
「むみゃっ!?」
「わぶっ!?」
「ッ!?」
アスナやユウキの様な声は出さなかったが顔に何かが勢いよく掛かった、粘り気のある、白い物が、
「・・・・・・やっべ・・・」
まるで何かを忘れてたと言わんばかりにオウルがそう呟いた。そして、
「・・・・・・・うわぁあオ・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
いつに間にかアルゴさんが扉の前に立っていた、それを見たオウルはしばし沈黙し、清々しい顔をした後、
「死ねぇええええええええ!!!!アルゴオォオオオオ!!!!!」
「理不尽だロォォおおおああああああああああああ!!!!???」
殺しにかかった。何故そんな真似をしたのか、幼く、比較的純粋な私が知るのはもう少し先だ。
「いやア、でも大したもんだヨ、シノのんハ」
「・・・・その呼び方で行くんですか?」
「まあネ、クセみたいなもんだからサ、テスターでも分からなかった強化詐欺を見破るなんテ・・・・情報屋顔負けだヨ」
さっきの騒動から少し経ち、オウルは今変装しアスナのレイピアを借りて強化詐欺を暴こうとしている。ほとんど勘だったし、オウルが居なければわからなかっただろうが・・・・
「ねえ、アルゴさん?何でネズハさんはこんな真似したんだろ?」
「さア・・・・でも、もう少しで分かるサ・・・」
ユウキとアルゴさんが窓に噛り付くように見ている、窓の先を見るとまさに強化真っ最中だった。
「大丈夫よね?私の剣・・・・」
「じゃんけんの結果とは言え・・・・ごめんなさいね」
公平に決めるためと、オウルが提案した。
「大丈夫だよ、ホントはオウルが自分の使いたかったらしいけど・・・・」
流石に無理があるだろう、相手はNPCではないのだから、
「・・・・こっちに来るナ・・・無事暴いたみたいダ」
さて、本番はここからだ。
「金は全部使って、文無し・・・・と?」
「・・・・はい・・」
「嘘だろ?ネズハ?いや、
「!!?」
オウルが尋問している、しかしナーザ?どういう事だ?
「・・・Nezha・・・これはネズハじゃなくて、ナーザと読む、中国のナタク、もしくはナタ太子の事だよ」
ナタ太子、私もその名前は知っている。封神演義に出てくる美少年で神でもある、負けたがあの孫悟空とも戦ったことがある紛れもない英雄。
「クーフーリン、ギルガメシュ、オルランド、ベオウルフ・・・・最後の斧使いは知らんが、ナーザ、君もレジェンド・ブレイブスの一員だ・・・・或いは
「・・・ッ!・・・」
ナーザは何も答えない、ただ唇を噛むだけだ。
「何でこんな真似をした、脅されたのか?「違うッ!!」!・・・」
脅された、その言葉が出た瞬間急に叫んだ。
「ぼっ僕が独断でしたんです!みんなは、オルランドさん達は関係ないんです!」
「・・・・ああ、俺も見てたよ・・・・あの夜オルランドって奴だけ難しい顔してたのは・・・・だが装備を見る限りオルランドも同罪だ、少なくとも事情を知らない奴からはそう見えても仕方ない」
「・・・・・ッ・・・」
もはやその顔からは生気すら感じられない、絶望、ただそれだけだ。
見た目は少女、声はエロい、その名は名探偵シノン!
原作知識のせいで主人公がたまに動かしづらい、ちょっと中途半端ですが、予定で暫く投稿出来なさそうなのでここで切ります。