原作と違いすぎてどうすればいいのかわからない   作:七黒八白

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前回のあらすじ

 オウル「お前か」

 シノン「私よ」

ヒロインタグは必須ですか?
あと前回言っちゃいましたが、やっぱりもう少しだけアスナも活躍します、すいません
会話が多めですが、始めます。第九話


第九話 人道行く 白梟

 何故ここに?単純極まりないがそう思った。

 朝田詩乃はゲームをするような女の子ではなかったはずじゃ?

 不思議に思い「ゲーマーなのか?どうしてSAOに?」と聞いてみた。あまりゲームに詳しくなさそうだし、知らない仲ではないからそれ位は教えてくれそうだが・・・

 

「私がSAOに来た理由?まぁ、お父さんが買ってきたからかな」

 

 そんな馬鹿な、原作では死んでるはずの父親が生きてる?何故だ?だがそんな事聞けるはずもない。そのまま俺とユウキとシノン三人で主要区《ウルバス》に向かいながらシノンに話してもらう。

 

「私の誕生日にお父さんがナーヴギアを買って、SAOのベータテストに応募したの「小説以外にファンタジーを体験させたかった」って。でも結果は落選、買ったナーヴギアも持て余しちゃって、リベンジのつもりなのか徹夜してまでSAOのソフト買ってきたの」

 

 お父さんのガッツ凄いな、ナーヴギアとSAOソフト、両方買ったら十数万だぞ?娘溺愛してるじゃねえか。だが幸せそうで何よりだ、もし朝田父を救った人に出会えたら感謝したいくらいだ、俺は全く関係ないが知ってるだけに心苦しい物があったし。

 

「そうか・・・・親父さん、発狂してなきゃいいけど・・・」

 

「その時はお母さんが止めるでしょうし、私達が心配してもしょうがないわね」

 

「ボクも姉ちゃんに叱られるかなぁ・・・・・」

 

 そこには日常的な雰囲気があったがそれも街までだ。俺は人殺しになってしまった、悲劇の主人公ぶる気はないが側に居られたら二人に迷惑、いや本物のPKすら現れる可能性もある。

 二層であの事件が起こればそれこそ間違いなく。

 

「言っとくけど、人を殺したからソロで行くなんて駄目よ」

 

「・・・・・・・」

 

 お見通しか、だが、

 

「何でだ?お前に何の権利がある?何で俺について来る?」

 

「・・・・・二つ、ユウキがあなたに会いたがっていたから」

 

「えっ?いや、会いt「何?」何でもありません!マム!」

 

 え?何今の?明らかに恐怖を刻みこまれてたけど?シノンは父親を亡くし、母親が精神的まいったために原作の強気な少女になったと思っていたが・・・・成程、ある程度資質はあったようだ。

 軍人の如く敬礼するユウキを見てそう思った。

 

「もう一つ・・・・あなたに助けられたから、あとその強さを近くで見てみたかった」

 

「・・・・それじゃ三つじゃないか、しかも助けたのは二年前、礼はいらないよ」

 

「まぁ、強さを見てみたい動機はボス戦で出来たものだし、あと二年前だけじゃないわよ」

 

 そう言ってシノンは何か本の様な物を出した、ガイドブックにしては分厚く、何よりアルゴのマークが付いてない。

 ・・・・・・・なんかどっかで見たことある気もするが。

 

「・・・・あのモッズコート、始まりの街近くのワーウルフからドロップしたの?」

 

「!何でわか・・・・あ、お前、あの時の・・・」

 

 そこでやっと分かった、ユウキが何故ガイドブックに載ってない「スイッチ」を知っていたか。載っていたのだ、俺が書いたガイドブックには。そしてあの時の短剣使いがシノンだった。

 

「でも何で顔を隠してた?しかもエギルさんとチーム組むように言ったのお前だろ?」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・オウル・・・・」

 

 何で?何でそこで「駄目だな・・・こいつ」みたいな空気が流れるの?至って普通の質問だと思うけど?

 

「いや・・・・二年前ことなんて忘れてて、誰だお前って言われるんじゃないかと・・・・」

 

「あんな出来事早々忘れねえよ、我ながらよく被害ゼロで押さえ込めたなと思うわ」

 

「ねえ?さっきから二年前、二年前って何の話?」

 

「シノンから聞いとけ、で?結局お前らついて来るのか?何があっても保障出来んぞ?」

 

「デスゲームで何か保障出来る奴なんていないでしょ?」

 

「うんうん、オウルなんかちょっと気取ってない?」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 なんだろう、俺は妹キャラにディスられる運命なのだろうか?直葉もユウキも容赦ないな・・・・泣きたい。

 

「街にいったらどうするの?」

 

「・・・・あー、そうさな・・・・クエストいくつか受けて、アイテム補給と武器の整備、その後街を出てあるとこに向かうつもりだ」

 

「あるとこ?ていうか、街すぐに出るの?」

 

「ディアベルが先の事件どうみんなに説明したか分からんが、俺はあまり街には居られない」

 

 緘口令を出してたとしてもすぐに広まるだろう。人はそういう生き物だ、アルゴでさえこの情報は売らないだろう、自分のステータスさえ売るが倫理や道徳は多分人一倍強いはずだ。そういや今何してんのかな?何のメッセージも来ないが・・・・

 

「そっか・・・・まぁ、しょうがないよ、他人事みたいで悪いけどさ・・・・」

 

「実際他人事だしな気にするな、早く行こう、二時間すると勝手にアクティベートされるから」

 

「歩きながら行きましょ・・・・ボス戦の後で流石に疲れたわ・・・」

 

 仮想世界では肉体的な疲れはそこまで続かないが、精神的な疲れは十分な睡眠を取らなければ治らない。まぁ、確かに街まであと二十分もあればつくだろうし、急がなくてもいいだろう。

 

「あぁ、あとそれと」

 

「?」

 

 シノンが俺の頭の上辺りを見ながら言う。

 

「あんたその白髪交じりの髪どうにかしなさいよ」

 

 「グハァッ!?!?」

 

「オウルが死んだ!この人でなし!」

 

「は?」

 

「ごめんなさいなんでもないです」

 

 だからユウキはシノンと何があったんだよ、パートナーというよりその構図は下僕に近いぞ?

 そしてシノンよ、めっちゃ気にしてることダイレクトアタックかましたな、効いたぞ。

 確かに俺ことオウルは恩師が死んでから精神的に不安定になり白髪がめっきり増えた、十代がこれは目立つだろうし、何より俺もどうしよう?とは前々から悩んではいたのだ。

 

「一応、メーキャップアイテムはあるんだが・・・・」

 

「使いなさいよ、デメリットないでしょう?」

 

「折角だし赤色とかにしようよ!」

 

 白髪染めするみたいで今まで忌避していたが遂に染めるのか・・・・あとユウキそれは尚更目立つだろ?

 

「えー?髪色位大丈夫だって、自意識過剰だよ」

 

「若しくは被害妄想ね」

 

「君ら慰める気/zeroか、死にたくなるな」

 

 フルボッコじゃん、俺。

 このメーキャップアイテム、中々レアで十数回は髪や目の色を変えられオークションにでも出せば四、五万はする、ボス戦前にこれを売って装備を強化するか考えたが・・・・結局売らなかった。コルはいつでもカツカツである。

 それはもう某人類史を救わんとするソシャゲーの如し、羽がねえ、歯車がねえ、心臓がねえ、まずそもそもQPがねえ・・・・そういやこの二人と同じ声のキャラ何人もいたな。

 

「で?何色にするの?」

 

「えっ、まぁ黒で・・・」

 

「え~~~?つまんないよ、それじゃ」

 

「折角だし冒険してみれば?」

 

「年頃の息子を持つお母さんか!!あと冒険ならもうしてんだろ!?」

 

 その後街に着く三分前まで議論はなされた、個人的にはシノンはペールブルーにして欲しかったがにべもなく断られた。似合うと思うのだが・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故に白色?赤と同じくらい目立つわよ?」

 

「現実でもありえそうな色にしたかったから・・・・あと梟ってやっぱ白いイメージあるじゃん?」

 

 あとは願掛け、最強喰種捜査官をイメージした。メガネは掛けない、そこまで似せたらファンや信者に批判されかねない。あとコートも黒だしこのまま黒に統一したらそれはそれで嫌なのでキレイな総白髪にした。

 

「よし、一時間後にここに集合な?その間に全部終わらせろよ?」

 

「了解」

 

「うん、わかった!」

 

 あと一時間経っても二十分は余裕がある、俺は三十分でも良かったが女の買い物が時間がかかるのは一々言うまでもない。

 そんな事を考えながら買い物をし、クエストの受注を終えて。武器の整備をNPCに頼む、ボスと打ち合い、コペルと切り合ったため、丈夫さに+4振ってるが見るからにボロボロだ、

 

「コペル・・・・・・・・・・・」

 

 自ら殺しておいて今更被害者面するのは虫のいい話だとは思うが、それでも気が沈む。例え憎まれても自分で救った命を自分で殺した・・・・かつて見殺しは鬼の所業などと考えたが・・・・直接殺した俺はやはり殺人鬼になるのだろうか?

 何もしてないとこんなことを考えてしまう・・・さっき起こったばかりだからかも知れないが・・・

 

「・・・・・しかし何でいきなり?」

 

 俺なら夜の目立たない場所で決行する・・・・ボスとの戦いの最中に攻撃、刀スキルで殺すつもりだったのか?

 死んでくれそうにないとも言っていた、別の方法があったが成功しないと見てあの乱戦で殺すことにした・・・・そういうことなのか?しかしそれでも、

 

「・・・・解せない・・・・いくら何でも豹変し過ぎだろ・・・」

 

 それだけの度胸があるなら初日の森で殺しに来たはず・・・・誰かにそそのかされた?誰にだ?考えれるのは今のところあの原作キャラだけだが・・・・・・!

 

「まさか・・・・アルゴから情報を買ったのはコペルの後ろに居た奴か・・・・?」

 

 金だけ渡して他人に情報を買って貰い、自分の素性は明かさない、よくある手口だ。少なくともアルゴも黙認するくらいは・・・・

 

「ユウキとシノンにも言っとくか・・・・」

 

「何をさ」

 

「!っと、何だユウキか、びっくりさせんな」

 

「いやふつーに話しかけただけだよ」

 

 どうやら武器の整備に来たようだ、アルゴに前俺の情報を買った奴の素性を調べてもらうことを頭の片隅に置いておき、思考を中断する。

 

「どうかしたの?」

 

「・・・・あとでシノンと一緒の時話す」

 

 アインクラッドで殺人鬼の類が居るかもしれないことを。

 

 

 

 

「よし!準備は終わったな?てか早かったな?」

 

 結局三十分位で終わった。女子ってもっと買い物かかるのでは?

 

「買うものはほとんど決まってるし、ファッションに気を使ってる場合じゃないでしょ?」

 

「そうだねー、あんまり美味しいものもないし」

 

「それは激しく同意せざるを得ない」

 

 食料も良さげな物を見繕ったが・・・・飽くまで良さげだ、ここでは見た目は当てにならない。

 

「でさ、どこいくの?」

 

「役に立つスキルが手に入る所」

 

「どんなスキル?」

 

「体術、読んで字の如く体術を覚えられる」

 

 この森を抜けて、岩壁を登り、洞窟を抜けて、ウォータースライダーで滑り降りた後、更に進む。

 そして東の山の頂上にたどり着く、直径2,3メートル位の岩がゴロゴロしあって、飲み水の為の泉もある。

 近くにはノンアクティブの牛しかいない。こいつらは経験値効率がいいため後で乱獲する。

 

「やっと・・・着いた」

 

「・・・・私まず、休む、クエストはそれから・・・・」

 

「バテたか・・・まぁ、俺も結構疲れたが・・・」

 

 俺も休みたい気持ちも無いわけではないが、俺が先にクエストを受けて実演しなければ時間が掛かるし、何より二人に恨みを買うことになる。

 

「じゃあ、そこら辺の岩の上で見てろ、割と簡単だから」

 

 そして一時の恥を覚悟し、ボロイ小屋をノックする。

 

「・・・・・入門希望者か?」

 

「あぁ、体術を覚えに来た」

 

「ならばよし・・・お前に貸す試練は一つ、そこにある岩を素手で砕け、それだけだ」

 

 そして次の瞬間、

 

「岩を砕くまでここを下りない証を立ててもらう」

 

 シュバッ!そんな効果音と共に顔に何か走る、やっぱこれ不可避なのか・・・・

 

「砕け、されば道は開かれん」

 

 そんなどっかで聞いたことがあるキャッチフレーズを残し、小屋に戻る・・・・

 

「・・・っく・・ぷ・・ふふ・・」

 

「ぶふぅーwwwwオウル、それは反則だよww」

 

「・・・・・お前らもあとでするんだぞ?」

 

 率直に言おう、あの師範代に殺意が湧いた・・・・何時まで笑ってんだ、おい。

 そして赤い布を取り出し、近くの牛mobをここまで連れてきて闘牛士のように岩にぶつけさせ続けた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「いや・・・そこまで落ち込むなよ・・・」

 

 人の事笑っておきながら自分たちがいざやるとなると逃げ出そうとしたので師範代に「すいませーん!彼女たちも修行受けたいそうでーす!」とけしかけ、「是非もなし!」ととんでもない速さで追いつき二人の顔にひげを書いた、ゲーム開発スタッフの悪意が垣間見えた瞬間である。

 思いっきり笑ってやりたかったが目が凄いことになってるのでやめておいた・・・・ハイライトがないな、これ。

 

「覚えときなさいよ・・・・?」

 

「この恨みはらさでおくべきか・・・・」

 

 マジすぎる、ひげが書かれて面白いことになってるのに笑えない。

 

「いいから、さっさと牛釣ってこい、普通に殴ってたら三日かかるぞ」

 

 時間が掛かる系のクエストは大体何らかの救済措置みたいなものがあるのでそれを見破るのも必要だ、今回は俺が教えるが・・・・やめろ、俺を殴ってもクエストは終わらん。

 

「怒りの力で一撃で割る・・・・」

 

「できねえよ、・・・多分・・・」

 

 ()()に頼るにはまだ早すぎる・・・・ゴリ押しを覚えて欲しくない為普通にクリアさせた。

 

 

 

 

 

「結局野宿か・・・・お風呂・・・・」

 

「そうね・・・・いくらノンアクティブしか沸かないとは言え、圏外はそれだけで疲れるわ・・・・」

 

「まぁ、明後日の昼には下山するさ」

 

 

 その日はそのままクエストの岩場で過ごす事になった、岩の割れ具合は6割くらいか?後で俺が体術スキルの試し打ちがてら殴っておこう。他人が割っても、二人のひげも消えてスキルを獲得出来るはずだ。

 

「明後日?一日半位余るじゃん、その時間どうすんの?」

 

「ここよりいい狩場あるでしょ?」

 

「・・・・二人にはここでデュエル形式で対人戦に慣れてもらう、武器だけじゃなく素手でもな」

 

 そして昼に考えたことを話す、意外に二人とも、特にシノンは実際過去の経験からか俺の話はかなり信じてくれた。それに闘いの基本は格闘だ、武器や装備に頼ってはいけない・・・・あの名作ゲームの灰色の狐も言っている。

 

「まぁ・・・・ここでは法律はあってないようなものだし、ストレスとかで豹変する奴もいるでしょう・・・」

 

「コペルさんを唆した奴って、一体誰なのさ?」

 

「分からん・・・だがPKを扇動するのが目的なら・・・・それっぽい事件は全部そいつ、もしくはそいつの息がかかった奴がいるはずだ」

 

 アルゴからメールを受け取りながら答えた・・・昼間に忍者に追われた・・・・忘れてたな、ごめんアルゴ。そして望み薄だとは思うが大金はたいてコペルと関わっていた奴、そして俺の名前を買った奴の身辺調査を頼む。

 

「明日からは対人戦な、今日はもう寝とけ」

 

 そして俺たちが《ウルバス》に戻ったのは、二層が開通してから三日後の事だっただった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっざけんなよ!!」

 

 溜める様に思いっきり、そんな絶叫を中央広場で聞いた。

 さっきLV13に上がり、今日は少し贅沢しようかと考えてたところこれだ。ウンザリするのは私だけではないだろう。

 

「あぁ、プロパティだだ下がりじゃねえか!」

 

 どうやらプレイヤーが出している店で武器の強化に失敗したようだ、「元に戻せ!」と小柄な男性に叫んでいる。

 あの剣は見たことがある、そうアレは、確か・・・・

 

「アニールブレードの強化失敗か・・・・」

 

「!!?」

 

 自分の隣からまさしくその剣の使い手の声が聞こえてきた、いつから居たのだろう?

 まるで気づかなかった、というか、

 

「あなたここで何してるの!?」

 

 小声で叫ぶという我ながら器用な真似をしながら問う。

 

「いや・・・武器を強化出来ないかなって来たんだが・・・どうした?」

 

「どうした?じゃないわよ!何処で何してたの!?」

 

「まぁ、色々とな・・・・お前こそ、ここで何してんだ?」

 

 貴方には関係ない、そう言おうとしたがちゃんと答えてもらえなかったにせよ自分だけそう突っぱねるのはあまり褒められたことではない。

 

「私も武器の強化、そうしようとしたところあの騒ぎよ」

 

「みたいだな・・・やめとこうかな、失敗引きずられそうだし・・・」

 

「そんなオカルトあるわけないでしょ・・・・多分」

 

 まさかこの剣士からそんな弱気な言葉が出てくることに驚いたが、確かに先の一連の流れを見ると私が集めた素材による成功率では少し心もとない気もする・・・・ここは現実ではないから確率も一定とは限らない気もするし・・・

 

「素材はどの位あるんだ?」

 

「成功率八割分」

 

「妥協しない方がいいぞ、ソレ、気に入ってんだろ?」

 

「・・・・・じゃあ、手伝ってよ」

 

「あーーー・・・・ユウキとシノンも呼ぶか」

 

「えっ?三人で行動してたの?」

 

 てっきり一人で動いてるかと・・・・あの事件があっただけに街にも近寄れないのでは?とずっと思っていた。

 

「その辺俺も聞きたいから情報交換としよう、素材集め手伝うから」

 

 こうして私アスナは、何故かキレイな総白髪になり名前も相まって猛禽類の様な目つきをした、ボスドロップであろう黒いコートを着た剣士、オウルに再会した。

 

 

 

 

「成程、思いのほかディアベルがやってくれたみたいだな」

 

「お礼言っといたほうがいいわよ」

 

「オウルー!蜂が降りてこない!」

 

「だからって剣投げないで!ユウキ!」

 

 街に出る途中で短剣使いのシノンさんと片手剣士のユウキちゃんを拾い、全員で《ウインドワプス》を狩っていた。ユウキちゃんは思いのほかヤンチャでシノンさんはそれを咎めている、まるっきり保護者役だ。

 

「なんかごめんなさい、私の用事に付き合わせて・・・・」

 

「いいわよ、オウルが言うには経験値効率悪くないみたいだし」

 

「飛ぶ敵の練習にもなるしね!」

 

「てか、二人には謝って俺は当然の如く突き合わせるって・・・・」

 

「言いだしっぺの法則」

 

「アスナさん?何処で覚えたんです?そんな言葉?」

 

「アルゴさんから」

 

「ネズミって喰えんのかな?」

 

 目を血走らせながらオウル君は言った。仲いいのか、悪いのかイマイチよく分からない。

 あの事件はディアベルさんが上手く処理した、混乱に乗じてPKを行おうとした者がいたが、ボスに殺された。

 攻略メンバーは公表されてはいないがそれがコペル君であることはやはりというか広まってしまい、そして眉唾の噂程度にしか認識されてないが、本当は攻略組の誰かが()()した、と。

 

「多分その辺はアルゴも関わっているだろうな、俺に気を使って最小限にまで『火消し』をしたな・・・・情報操作は奴の十八番だし」

 

「あんたみんなに迷惑かけすぎでしょ」

 

「攻略会議には出るの?」

 

 何のかんの元気そうだった、心配したこちらが馬鹿のようだ。

 

「・・・・・ねえ、私達今一人当たり蜂を五十匹狩ろうとしてるわけだけど」

 

「ん?あぁ、シノンの武器も同じ素材で強化できるからな、ついでに百匹追加だ」

 

「ビリはここの名物ケーキ奢るってのはどう?」

 

「「「是が非でも勝つ!!!」」」

 

 急に三人の目が飢えた獣のようになった・・・・まずい、イラついて早まってしまったかもしれない・・・・

 

「34匹目ぇ!!」

 

「くっ!32匹目!!」

 

「ハチイィィ!!降りて来てぇぇえ!!!」

 

 というか、何故シノンさんとユウキちゃんまであそこまで飢えてるのだろう?そう考えつつも蜂の腹部の付け根に《リニアー》をぶち込む、

 

「35匹!!」

 

 負けるのは、性に合わない。

 

 

 

 

 

 

 

「うん!これ美味しい!」

 

「久しぶりにまともな物食べたわ・・・・」

 

「・・・・今まで何してたの?」

 

「山籠もり・・・・この珈琲意外とイケるな・・・・」

 

 結局勝負は私が負けてしまった、《トレンブル・ショートケーキ》を奢ることになった。

 オウル君は一口食べただけで辞退して珈琲を飲んでいる、甘いものは苦手なのだろうか?

 だが正直ありがたい、あれだけ狩ったのに儲けが吹っ飛びあんまり食べられないとなると泣きたくなる。

 

「それにしてもさっきのスキルは何なの?」

 

「今言った山籠もりで得たスキルだ、あと三日間位修行してた」

 

「だからあんなに飢えてたのね・・・・」

 

 シノンは(同い年位だから呼び捨てでいいとのこと)上品に食べてるがユウキちゃんは口の周りにクリームが付くことも気にせず食べてる・・・・なんだかすごく和む。

 

「オウルホントに一口だけでいいの?」

 

「これかなり美味しいわよ?」

 

「・・・いや、()()()()()()

 

「・・・?」

 

 どこか含みの様なものを感じるが・・・・気のせいか?

 しかし久しぶりに誰かといっしょに食事をした、ここではこういう事が一番羽休めになる・・・・・そもそもリアルでも私は誰かと一緒に食事することがあまりなかったが・・・・

 

「・・・・どうした」

 

「ううん・・・何でもない」

 

 そう、何でも無い事なのだ、本当はこれくらいの事。

 だが私は一生この時間を忘れられそうになかった。

 

 

 

 

「あぁ~美味しかった」

 

「高かったけど・・・また食べたいわね」

 

「また今度な、他にもいいとこは知ってるし」

 

 三者三様に感想を言いながらレストランを出た、しかしさっきから気になってるがこのアイコンは何なのだろう?

 

「何かさっきのケーキに幸運のバフがあったみたいだな、ベータテストの時はなかったな」

 

 もうテスターであることは隠さない様だ、私が気づいてることに気づいてるのだろう・・・十五分か、モンスターと戦うには少し時間が足りない・・・・どうしよう?

 

「じゃあ、試しに寄りたいとこあるからそこで解散にしないか?」

 

「これを有効活用出来るの?」

 

「多分、だけどな」

 

 そう言って彼は中央広場の方へ歩き出した、成程、そういうことか。

 

「武器強化に影響あるの?」

 

「分からん、でも無いよりいい効果ありそうだなって」

 

「十五分なら全員強化出来るよね?」

 

「急げば全員間に合うだろ、俺は一口だけだったけど時間は変わりないみたいだし」

 

 シノン、オウル、ユウキちゃんはそれが当たり前のように横に並びながら広場に向かう・・・・流石にそれに何も感じない程、孤高を貫いてるわけではないが、かといってさも当然のように混じるのも・・・。

 そんな事をウンウン考えてると、

 

「ねぇ、アスナ」

 

「えっ?な、何?」

 

 ユウキちゃんに呼ばれどもりながらも答えた、

 

「ボクお腹一杯で苦しくて・・・おんぶして!」

 

「え、え~と・・・」

 

 いきなりの要求に戸惑いを隠せなかった、何故いきなり?わけが分からない。

 

「じゃあユウキの剣は俺が持とう、今は荷物少ないし、スピードビルドで軽いからアスナのLVなら持てるだろ」

 

 何故かオウル君も叱ったりしなかった。シノンも黙認している。

 

「えへへ~、姉ちゃんにも負ぶって貰ったな、昔は」

 

「・・・・・・」

 

 ・・・・・あぁ、成程。きっと、気遣ってくれたのだ、私が輪に混じれないことに。甘えん坊のふりをして、二人もそれを察して・・・・

 

「時間はあるし、ゆっくり行くか」

 

「そうね」

 

 願わくば、こんな時間が長く続いて欲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっ・・・すみません!!あの、手数料は全額こちらが負担しますので・・・・!」

 

「・・・・・」

 

 だが、呼んでもいないのに波乱は巻き起こり始めた。結論から言うと、オウル君の剣が粉々に砕けた。

 

 




小説のプログレッシブ4巻を読んで、スキルスロットの増え方が少し違ってましたが、この小説はこれで行きます、申し訳ございません。

LV3→スロット三つ

LV5→四つ、あとは5上がるごとに一つ増えるということで、



~おまけ~

とある老人M「年金どうつかお・・・(´・ω・`)?」

     M「せや!東北の温泉行こ(´・ω・`)!」

     M「車落ちとる!119せな(´・ω・`)!」
 
多分こんな感じ。


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