ふと、意識が覚醒した。さっきまで自分が何をしていたのか思い出せない。寝てたのか?俺は?だが意識ははっきりしている。
「まぁ、落ち着きなよ、人間。あとここは僕が君を招くために造った空間だよ。」
せせら笑うような声が聞こえた。というか何だ?人間よばわりって?しかも造った空間?招くために?何を言っているのか分からない。.......いや、直観的に分かったかもしれない。だが正直分かりたくない、いや分かりたくなかった。
「うん、僕は君たち人間の言うところ、『カミサマ』だよ。」
まるで他人事のように『カミサマ』は言った。察するに人の定義に合わせてるだけなのかもしれない。
「会話して頭が冴えてきたのかな?結構冷静だね。」
頭どころか体すら見当たらないんですが?
「いやぁごめん。それよりさ君神様転生って知ってる?」
謝る気ないだろ。てか、その言葉で全部悟ったわ。実家のような安心、いや安定感を感じる。
「テンプレって言いたいのかい?でもまぁ、そう邪険にしないで、ちょっと転生してくれない?」
いやノリ軽いなお使い感覚か。てか、え、マジで死んだの?俺?死んだ時どころか生前すら思い出せないんだけど?
「うん、死んだ死んだ。マジで。というか僕が殺したんだけどね。」
.....................は? 一瞬、こいつが言ったことを理解できなかったが、すぐにその訳を話し始めた。
「いや、君結構よさげだからさ、ついね。やっちゃったよ、うん。」
もうわかった。こいつは神は神でも邪神の類だ。そして理由になってねえよ。
「やっぱ、君いいね。結構察しがいい。じゃあ、そろそろ話を進めるよ?君にはさ転生してその世界で面白おかしく生きて欲しいのさ。でもって原作改変して、つまりIFの物語を見せて欲しい。転生する世界はもう決まってる。教えないけどね。そして君には加護を、いや特典?を与えるよ。テンプレって大切だと思うし。」
最近は賛否両論あるけどな。しかし娯楽為に殺されて今度は操り人形になれって、ごめん被る。
「いいのかい?それは無に帰るってことだよ?それに今言ったように見せて欲しいってことは、君が君のまま生きればいいのさ。何大丈夫さ、一回転生してくれたらそれで解放する。何度もやったらいずれは壊れるだろうしね。」
何気なく『カミサマ』は言った。無に帰る、左手に鬼を封じた教師の漫画ではよく聞いたフレーズだが、どんなものかは想像できない................できてたまるか。選択肢なんて無いに等しい。
「わかってもらえて何よりだ。それで、どんな特典が欲しい?割と何でも叶えられる自信あるよ?」
いきなりだな。転生する世界が分からない以上かなり限られる。魔力のない世界で無限の剣製とかやってみ?不発ならまだいい。実際起こったら、下手すりゃ解剖されるかもしれない。
「ちなみに、西暦2000年以降の日本に転生することは確定してるよ。」
それだけじゃ安心できない。東京喰種とか亜人だったら死ぬより辛い目に合うかもしれない。
「弱気だねぇ。大丈夫さそこまでファンタジー色強い世界じゃないし、努力次第でどうとでもなるさ。それに........」
それに?なんだよ、そこで止めんなよ。不安になるだろうが。
「原作に限りなく似てるだけで、原作そのものの世界じゃないからさ、もしかしたら君が何もしなくとも勝手に改変するかもよ?」
それはそれで、恐ろしいことが起きそうだが....よし、じゃあ特典は健康で強靭な体に生まれるようにしてくれ。頼むからサイヤ人とかにはすんなよ?日本でも違和感ない程度にしろよ?
「えーつまんないな。魔力SSSランクにするとか、大嘘憑きとかいらないの?」
いらないよ。てか結構詳しいな?何?よく読んでたの?あと後者は本人いたらどうすんだよ。
「はいはい、じゃあ干渉するのはこれで最初で最後だ。良き人生を。死んだらまた会おう。」
そんなこんなで転生を果たして、はや4年。俺こと雨木 梟助《あまぎ ほうすけ》は絶賛幼児です!.........うん、誰に何言ってんだろう俺?ちなみに、前世の記憶とかは全く戻ってない。年齢にそぐわない理性と知識はあれど、人生の記憶は転生に当たって邪魔とあの邪神が消したのだろう。考え方によるが悪くはないのかもしれない。自分がどんな人だったのかとかは気になるが、今俺が生きてるのはこの世界なのだから。....ぶっちゃけ、赤ん坊の体でこの理性があるのは色々きつかったが、うん、忘れよう。おしめの交換とかなかった。
しかし、この4年色々と情報収集したが、普通の日本である、埼玉県川越市である、厳密にはここにきたのは今日引っ越してきたばかりなのだが、それでも普通である。霊力とか魔力とか、喰種も亜人も、箱庭学園もありはしない。いやあったら、困るけど。今は西暦2013年である。ドラえもんが生まれるにはまだまだかかる。
平和に越した事はないがいいのか?これ?まじ何もないよ?引っ越し報告だけで終わるぜ、これ?そんな誰に対しての脅しか分からないことをかんがえていると、
「おーい、梟助!近所の皆さんに挨拶するぞ!早くしろ!」と実の父からの呼び出しがかかった。勿論俺の知る限り、父も母も普通の両親だ。血はつながってるし、俺に虐待などは一切していない。
もうこれわかんねぇな、など考えながら父の後に続いていくと、何故か見覚えがあるような家があった。
それは、一軒家にしては珍しく道場があった。庭もなかなか広いようだ。何でだろう?珍しいが何故見覚えが.....しかしそれも次の瞬間氷解した。
「どうも、桐ヶ谷さん。この度は近所に引っ越してきた、雨木と申します。何卒宜しくお願い致します。」
「わざわざありがとうございます、雨木さん。夫は単身赴任でいませんが、こちらこそよろしくお願いします。」
桐ヶ谷。この苗字で何らかの漫画もしくは小説、いやライトノベルとなれば、少なくとも俺は一つしか知らない。
「梟助、お前も挨拶しなさい。何をボーっとしてるんだ?腹でも痛いのか?」
「いや、でかい家だなーって、こんにちは。桐ケ谷さん、ボクは雨木梟助です!雨の木に、梟の助太刀で、梟助です!あと4歳です!」
「あら、若いのにちゃんと挨拶できるのね、こんにちは。うちの直葉とも同い年だし、仲良くしてくれるとありがたいわ。」
やはり、ここはソードアート・オンラインの桐ケ谷家か!アニメでしか家は見たことが無かったが.....直葉、間違いないな、ここに桐ケ谷和人ことキリトがいる!確か、物心つく前に交通事故で両親を失ってしまったはずだから、多分5歳ぐらいのキリトが.....!
「直葉?って女の子?男の子はいないの?」かなり踏み込んだが、子供なら怪しまれないはず!
「ごめんね、梟助君。うちには直葉しかいないのよ。でもいい子だから仲良くしてね。」
「梟助、異性でも仲良くできるだろ?我儘言うなよ。」
What......? えっ?いや?おまっ?主役いないって、どゆこと?など言えるはずもなく。
「うん!わかった!仲良くするー!」と満面の笑みで答えた、まさか、原作に限りなく似てるだけの世界と言っていたが、いやまさかな?
「じゃあ梟助君。直葉に会って見る?今は道場でお父さんの稽古見てると思うから」
「じゃあお言葉に甘えて、梟助、お前ちょっと挨拶に行ってきなさい。」
しめた!キリトがいない理由がわかるかもしれない!原作の主人公がいないのはいくら何でも無視できない。もしかしたら、早急に事を早めなくてはならないかもしれない。そんな事を考えながら俺は「じゃ、行ってきまーす!」と言いながら道場へかけだした、と言っても、家の庭すぐに直葉らしき幼女を発見した、道場で竹刀を振っている祖父を覗いているようだ。邪魔はしたくないが、許可は得ているし、こちらの事情もある。すぐに話を.........。
「君は一体誰かね?ここらじゃ見ない顔だが?」
その声を聞いた瞬間口から心臓が飛び出るかと思った。信じられないことに道場で竹刀を振っていたはずの桐ヶ谷祖父がこちらに気づき、こちらが気づく前に、扉を開きこちらを見ていた。嘘だろ、いつ近づいた?直葉を見てたのも、ほぼ数舜だぞ!?なんてこちらの動揺も気にせず、
「直葉、お前の友達か?何もきいていないが?」
「ううん、ちがうよ、みたこともない。」
やばい、平和なはずの日本なのに、死亡フラグが立っている気がする!
「驚かせてしまったなら、ごめんなさい。ボクは今日引っ越してきた、雨木梟助です、桐ケ谷さんに許可を貰ったので挨拶に来ました。」
「へぇ~こんにちは。あたし、すぐは。よろしくね!」
「.........桐ヶ谷 武蔵だ、よろしく、梟助くん?」
明らかに武蔵さんがこちらを疑っている!?何故だ、いくら何でもそこまで疑うか!?怖いよ!?
「で?それだけかね?」
「あっ、はい、粗品は父が渡していると思いますので.........」
やばい桐ヶ谷祖父が怖すぎる、何も聞き出せそうにない.........。
「すまないが、私は外せない用事があるのでね。行かせてもらおうか。直葉、梟助と遊んでなさい。」
「はーい!いってらっしゃーい!」
と俺がビビッている間に、桐ヶ谷祖父はさっさと行ってしまった、俺を怪しんでたのではないのか?しかし、あの厳つい顔はなんだったのか.........。
「ねぇねぇ、なにしてあそぶー?」
「!?っと、あ~ちょっとまだ荷物を運ばないといけないから、遊ぶのはまた今度かな?」
いきなり話しかけられて驚いたが、直葉はどうやら俺のことは 警戒していないようだ.....いやまて、これはチャンスなのでは?しかし、どうする?普通に兄がいるか聞くか?だが、桐ケ谷母のあの様子は嘘ついてるようには、そもそもそんな理由ない.....はずだ。
「ちぇ、おじいちゃんもいないし、ひまなのにー」
「.....少しなら遊べるよ?」
「ほんと!やったー!」
流石俺とは違い純粋な4歳、素直である。この後ある手伝いを、忘れてたことにして、今くらいは直葉と遊ぶことにしよう。だが、驚くことにこれが功を奏した。
「でも、おじいちゃんは何処に行ったんだい?」
理由なんてない。会話を繋ぐためになんとなしに聞いただけだ。なのに、
「うん、おはかまいり、
わたしのいとこのかずとくんの。」
それは、俺が聞きたかった、でも聞きたくなかった、答えだった。
桐ヶ谷和人は、原作の主人公は死んでいた。恐らく数年前に起きたであろう事故で。
ここまで、読んでくださってありがとうございます。タグにはありましたが、
これからどんどん原作はこわれます。ソードアート・オンラインですが、中身は全くの別物かもしれません。キリト君が好きな人はこれ以上はオススメできません。
あと、出来るだけ控えたいと思いますが、オリキャラが出るかもしれません、今回で言うなら、桐ケ谷祖父に名前をつけたり、といった感じで。未定ですのでタグはまだつけません。
8/23 色々端折りました。