外伝~2~永い後日談のクトゥロニカ神話『一途な彼等』 作:カロライナ
「ハッハー!! 人間サマを舐めんじゃねー!!!」
「ワンッ! ガルルルル…ワンッ!!」
恐怖の対象に打ち勝ったことで、ショットガンを掲げ大々的に声を張り上げる爆雷ではあったが、内心心臓は今にも喉の奥から飛び出しそうなほどに心拍数は上がりきっていた。そんな爆雷を見据えるかのように、ヘビトンボは恨めしそうに複眼を1人と1匹に向ける。
「人間を脳缶詰めにして観察しようなんざ100億光年早いんだよ!! このッ! このッ!! 菌糸甲殻類がッ!!」
ショットガンを構えながらも、ヘビトンボの側面に回り込むとズタズタになった脇腹をブーツの底面で踏みつけるように蹴りつける。ヘビトンボの白と緑色の体液が爆雷のスボンやブーツを汚したが爆雷は気にすることもなく蹴り続け、蹴り続けられている間ヘビトンボは悔しそうに奥歯をガチガチと鳴らし脊髄反射で「よぶんなはね」を細かく振動させていた。ラッキーもまた爆雷に寄り添うように付きまといながらも、文字通りの虫の息状態にある汚物に対して牽制するかのごとく果敢に吼えていた。
「クソムシがァ…まだ羽を震わせやがって……気持ち悪ぃな…切り取ったらその目障りな動きも止むのかオラァ!!!」
はねを細かく振動を繰り返すヘビトンボへ向けて爆雷はコンバットナイフを取り出し、背中によじ登るとまだ綺麗に残っている羽をむしり取りに掛かる。苦しそうに転げまわる蟲は身をよじらせて爆雷を落そうとするものの、それはあまりにも弱弱しく虚しい抵抗であった。
4枚の羽根が むしり取れたところでついにヘビトンボはその動きを止める。はぎ取られた羽は痙攣を引き起こしていたが、そんなことは気も止めていないかのように爆雷は持ったままヘビトンボを眺め続ける。
「へ、へへっ…ザマァ見やがれ…。このバカみたいにクソデケェ羽は俺の昇進とSHIELD部隊の研究材料として使ってやるよ…」
「グルルルルルル…」
「ごめんよラッキー。随分待たせちまったな。脅威は取り払ったし、さっさと互いの仲間を探しに行こう」
「ワンッ!! ワンッ!!!」
息を切らせながら爆雷はヘビトンボの羽を片手にラッキーの方へと踵を返す。だがラッキーは怒ったかのように警戒した状態を解いていない。変わらず唸り声をあげ、上空を見上げている。
爆雷も先ほどと同じように背後を振り返り、空を見上げる。するとどうだろうか、何か黒い影のような物がポツポツと空を飛びこちら側に向かってきているのが目に留まった。おそらく十数匹は居るだろうか、爆雷たちの要る距離から見えるということは相当大きい存在なのだろう。
「……」
目の前に転がるヘビトンボを横目に伺う。心なしか勝ち誇ったように爆雷の目には映った。
「…オーケーオーケー。まだ慌てる時間じゃない。ラッキーここは一旦、一時撤退だ。何処かあいつ等の目に留まらないところに隠れよう。どこか適当な場所を知らないか?」
「ワンッ!」
ショットガンを元の背中に背負い直し、迫りくる『群れ』からは目を離さないようにしながら唸るラッキーを宥めるように撫で落ち着かせる。ラッキーも撫でられるとまた唸るのを止めその手に力強く頭を押し付けると、ひと吠えだけ吠えた。
【後書き】
最近、行ってきましたオススメのシナリオ紹介です。
「トップスピード/トップスピード1920s」
これがですね。超楽しいんですよ。Twitter卓で夜募集されています。
気になる方は参加されてみてはいかがでしょうか?
シナリオ傾向として
どったんばったん大騒ぎ(殺意)なシナリオです。
ハマる方にはハマり周回することになるでしょう。