外伝~2~永い後日談のクトゥロニカ神話『一途な彼等』 作:カロライナ
「…はい。おしまい」
「…! キュゥーン、キュゥーン」
ジャケットの解体作業に取り掛かってから5分ほど時間が経った頃だろうか。男は胸を撫で下ろすかのような溜息を吐きながら、犬の両わきに解体した爆薬とアンテナを置く。そして解放された『犬』の尻を軽やかに1度だけ叩いた。
重荷を除去して貰った『犬』は嬉しそうに置き上がると、男の周りを2,3周回った後 左脇に首を突っ込むかのように甘えた声を出しながらじゃれ付き、そのガスマスクを嘗め回すのだった。
「俺の手に掛かればざっとこんなもんよ。その暑苦しいジャケットは今から取り除いてやるから、もうちょっとだけジッとしていてくれよ……」
「ワンッ!」
コンバットナイフを取り出すと『犬』を傷付けてしまうことが無いように男は強化繊維で出来たジャケットを、爆弾を解除した時よりも時間を掛けながら丁寧に除去していく。しばらくすると今までは隠れていて見えなかった綺麗な毛並みが露わとなるのであった。
「はぁーぁ…何かジャケットに付いていると思えばそれは爆弾で、品種を調べてみれば…劣化版C4並びに劣化版手榴弾。しかもご丁寧に破壊以外の着脱不能品で? ジャケットを無理やり剥した時に起爆するタイプ…オマケで遠隔操作起爆式ときた。今のテロリストの方が真面な爆薬を使ってんぞ……コイツの飼い主は何を考えているんだか…。ま、広範囲爆薬を使用していたいただけある種の同族の匂いと好感が持てるが……」
「きゅーんきゅーん…」
「あぁ、ごめん、ごめん。腐ってもお前の大事なご主人様だったな。貶して悪かったよ」
「きゅーん…」
男は腰をその場に降ろし天を仰ぎみる。
空は相変わらずの鉛色の雲が広がり見るに堪えない景色が広がるばかりであったが、一仕事無事に終えることができた彼にとってそれは些細なことであったのだろう。小言を呟いている彼に向けて『犬』は「おすわり」の状態に戻り悲しげに顔を下へと向け俯いてみせた。
「さて、と。この手の爆薬は『改善』を加えて、対神話生物用の兵器として使うとして…」
「クゥン?」
「首輪にも名前が着いてなかったし…いつまでもお前って呼ぶのは可哀想だしな。名前を付けたいと思うんだが、付けてもいいか?」
「…! ワン!」
男は丁寧に劣化版C4や手榴弾をその場に並べると、『犬』に向き直るような形で新たな『改善』を加えながら話しかける。正面に対峙するかのように『犬』も座り込むと元気よく頷いてみせた。
「お、肯定的な反応だなぁ。それじゃあ…。……ラッキーって呼んでも良いか? この出会えた運命や上手く爆発物処理が出来た幸運に関連付けて
「ワン! ワン!」
「そうかそうか!! そんなにこの名前が気にいったか! あ、そういえば俺の名もまだ名乗って無かったな。俺は
「ワンッ!!!」
爆雷はその場で飛び跳ね、喜びの様子を見せるラッキーに対して爆雷自身も楽しそうに笑いながら着々と己の扱える爆薬の数を増やしていくのであった。
【後書き】
これから毎日投稿(21:35)していきます。
大体、内容的には1ヶ月間ぐらいの投稿になると思いますが、最後まで見て頂ければなと思います。