外伝~2~永い後日談のクトゥロニカ神話『一途な彼等』   作:カロライナ

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Episode17〖“死体”縫合〗

 ドッグテイマーはまるで子供の玩具の人形のように片腕で抱きかかえられ、ラッキーと犬達は後を追うようにして爆雷の後に続く。

爆雷も先陣を切りながらも、暴れるドッグテイマーを押さえつけつつ8ゲージショットガン片手に医務室を目指し更なる地下へと降りて行く。

 コンクリートで覆われた暗い暗闇が広がるばかりであった。電気はとうの昔に供給が切れ停止したのか、ドッグテイマーの訓練によって遮断してしまったのかは分からないが、少なくとも暗い状況であれ爆雷にとってその暗闇での活動は何の造作もないことだった。むしろ犬達の行動が制限されるのではないかと一抹の不安を覚えた様子であったが、何事もなく犬達は爆雷の後を続いてくる。

 

「暗視機能も搭載してないのに、よくついて来れるな…」

「放せ!!! 放せぇぇぇぇ!!!」

「…ドックテイマー。この先が医務室か?」

「そうだっつってんだろ!!! 信じられねぇなら、てめぇから突っ込めよ!!!」

「はいはい」

 

 爆雷は騒ぎ続けるドッグテイマーに対し、呆れたような返事をしながらドッグテイマーを盾にするかのように構えながらその扉を開ける。敵影は無い。そこは医務室というよりも手術室と呼ぶ方がふさわしいかのような部屋の内装となっていた。

 壁一面にはガラス戸式の戸棚が置かれ、中には様々な薬品の入った小瓶が見える。執務机が入口付近に置かれており、机の上にはノートが1冊開かれた状態で放置されている。中央には手術台。周囲には床頭台が置かれ、そこには赤黒い液体が染みついた産婦人科に置かれているようなまた開きも可能な分娩台(ぶんべんだい)が置かれていた。

 

「…嘘じゃなかったみたいだな」

「分かったら、さっさとオレ様を…!!!」

「もう少しだけ待て。ラッキー、おいで」

「わんわんっ」

「おい、ゴラァァァァ!!!」

 

 爆雷は暴れ怒り狂うドッグテイマーを床頭台の上に置き、犬の群れの最前列に居るラッキーに対して手招きをし、両手を広げるようにしながらしゃがみ込む。ラッキーはその手招きに素早く反応すると爆雷の腕の中に飛び込んだ。

 

「もうちょっとの辛抱だからな」

「わん」

 

 背後からはドッグテイマーの叫びが響いていたが、爆雷は気にする様子もなくラッキーを手術台に乗せるとショットガン片手にガラス戸式の戸棚に近づき、ショットガンの銃床でガラスを叩き割ると、ラッキーの腹を修復すべく準備に取り掛かった。

 棚を引っ掻き回す要領で、縫合糸と針を見つけ出す。足元には様々な液体が散らばるが気にした様子はなく、必要な物だけ掴むと足早に手術台へと赴く。

 

「本当は麻酔やら、アルコール消毒してやりてぇどころだが…ごめんな」

「くぅん」

「お前は…本当に賢くて強い子だ。…行くぞ」

 

 気遣うような声色にラッキーは引き摺っていた はらわたを余計に溢しながらも、飛びつくように爆雷へ体重を掛ける。そして励ますかのようにガスマスクを舐め再び臥床してみせた。

 爆雷は飛び出たはらわたを定位置に押し戻す様にしてから裂けてしまっているラッキーの胴体を繋ぎ留め始めた。

 そしてついに爆雷もラッキーの体温が異常に低く、心臓も動きを止めていることを確認する。少しの間動作が止まってしまったが、ラッキーの掛け声に励まされる様にして腹を縫い合わせて行く。

 

「大丈夫…か?」

「わんわん!!」

「…おつかれさま」

「わんっ!!」

 

 ……1時間ほど掛けたのち、そこには爆雷と初めて出会ったころのラッキーの姿があった。

 

 




【後書き】
恐らくネクロニカの世界線ではアンデットを駆逐する為に大型口径の拳銃や武器が出回っていることになっていますが、ダメージ計算は「nDx」になるのでしょうか?
nD100ですと火力が凄まじいことになりますし・・・nD20でも大きすぎます。
となるとnD6~nD10が妥当な威力となります。

なかなか興味深いです。



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