Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】   作:カチカチチーズ

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IF:騎士の選択

 

 

 

 

 それは凍てつく大地。

 

 

 ただ人であれば生き延びる事など不可能な世界。

 

 

 剪定された世界。

 

 

 そんな世界で私は目を覚ました。

 

 

 『異聞帯』『汎人類史』……なるほど、理解した。

 

 

「我々も剪定されていたかもしれないわけだ」

 

 

 柄を握る手がやんわりと冷える。大地を踏みしめる脚はこの世界の辛さを教えてくれる。

 視界は吹雪で覆われている。

 降り積もる雪は進みを妨げる。

 

 

「それでも足を止めるという選択はないか」

 

 

 マスターはいない。

 呼び出した者はいる。

 何をすべきかはわかっている。

 それをする理由はない。

 

 

「では、どうするか────それはひとまず」

 

 

 柄を握る手に力を込める。

 

 

「この場を切り抜けてから考えるとしよう」

 

 

 周囲へ気を配れば、そこには白豹の様な模様を持つ獣が群れをなしこちらを囲んでいた。

 はてさて、種族として恐らくワイバーンに近い魔獣だろう。

 この世界と属性は合わない事を考えれば……さて、やるか。

 

 

「来い」

 

『────!』

 

 

 嘶き正面から突っ込んでくる魔獣に右手の盾を叩きつけそのまま潰し、左右から挟撃する魔獣には先にやや近い左側の魔獣へ剣を突き放ち、すぐさま魔術回路を起動させ空間置換を用いて右側の魔獣の首を落とす。

 盾を握り、振るうように動けば隙を突こうとした魔獣の首へ盾を叩きつけそのまま首を折る。次に盾を振るった際の反動を利用し近づいてきた魔獣の目につま先を抉りこませる。

 

 

『────!?』

 

 

 痛みに絶叫し、仲間を呼ぼうとする前にその首に腕を潜り込ませてそのまま捻り折る。

 数頭ほど、逃げたのを視界の端に収めつつすぐさま仕留めた分の魔獣の血抜き作業を行い腰に括り付けていた縄で尾を結び引き摺るように運ぶ。

 食べた事がない種族ではあるが、少なくともゲイザーやらなんやらよりは癖はないだろう。毒素があっても加護による対毒が何とかしてくれる……筈だ。

 

 

「────ふむ、どうやら機会があちらから来たようだ」

 

 

 少し急ぐか。

 そこまで遠くはない場所。そこで何やら騒ぎが聞こえる。

 魔獣の縄張り争いとは違う。明らかに人間またはそれに準ずる者の争いだ。

 荷物があるが気にせず駆ける。

 その際に鎧の表面が凍りつくがすぐに剥がれていく。

 

 

「────!!」

 

「────!!??」

 

 

 襲ってる数に対して襲われている数の方が多い……野盗とそれに襲われている村人と言ったところか。

 行くか。

 

 

「……!?誰だ……!!??」

 

「フン」

 

「ぎぃぃあぁぁ!!??」

 

 

 一番近くに立っていた野盗の様な装いの人狼の様な男……男だろう……ともかくそれが刀剣を握っている手首を切り落とす。

 その返し刃で銃を持っている野盗の手首へ斬撃を放つ。

 

 

 血を吹き出させ絶叫する彼らに盾の代わりに持っていた魔獣の尾を束ねている縄を振るい束ねた魔獣を叩きつけ他の仲間らに吹き飛ばす。

 

 

「ひ、ひぃぃい!!??」

 

「…………」

 

 

 気絶した者をまだ意識のある者が引き摺って逃げていく……それにしても丈夫だ。

 視界を逃げゆく彼らから襲われていた側の者らへと移す。

 

 

「ぁ……あ」

 

 

 村人……見た目は人狼と言うべきそれだが……獣人という類ではない……ニンゲンか。

 いったいどのような経緯でこのような進化を遂げたかは知らんが…………ああ、だから剪定されたのか。召喚された際の知識でこの大地がロシアである事は理解してるし、ロシアがこんなにも寒いわけがない。

 恐らくこの寒さに耐えるために何かをしてこうなった……そして、彼らは生き延びる事が出来て未来は閉ざされた。

 つまりは汎人類史側のこちらは彼らにとって悪でしかない…………さて、騎士としてどうするべきか。

 

 

「ぁ、あ、ありがとうございました……」

 

「…………」

 

 

 そうだな。それがいい。

 

 

「あ、あなたは……いったい……」

 

「……私か?私は────」

 

 

 

 息子よ。聖杯に選ばれた君ならどうする?

 汎人類史が白紙化され、かつての人理は消えた。

 異聞帯が構築され、いずれその人理は消える。

 生存に善悪の優劣などない。

 生きたいと望むことは悪などではない。

 

 だが、私は────────

 

 

 

 

「俺はランスロット。円卓の騎士ランスロット・デュ・ラック」

 

 

────君たちを生かす為に召喚された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

「彼らの味方だというのならば、我らと共に雷帝に叛逆するのが道理だろう!!」

 

「未だ身の振りを定めず宙ぶらりんでしかない貴公の許に行くほど俺は愚かではない」

 

 

 自分たちはこの世界にとって悪でしかないと泣く女がいた

 

 

 

 

「やれやれ……悪いが掃除屋の定めなのでね……大人しく倒されてもらおうか」

 

「掃除か。なれば貴公は悪だよ……汎人類史の奴隷」

 

 

 世界の為に無辜の人々すらも虐殺する世界の掃除屋がいた

 

 

 

 

「はじめまして────湖の騎士殿」

 

「巫山戯た面だ。連れていけ────」

 

 

 怪僧の手により騎士は異聞帯の王の許へその歩みを進めた

 

 

 

 

『────よい、サー・ランスロット。卿の力を余に、このロシアに貸して欲しい』

 

「無論。生存に善悪の優劣無し……ならば、今を生きようとしている彼らの為に戦いましょう」

 

 

 生きる為に、民草の為に、剪定の道へと踏み切った偉大な皇帝がいた

 

 

 

 

「…………アンタがそんな態度をとるとこっちが反応に困る」

 

「あいにく私は知らん。適当に直せ」

 

 

 凡夫でありながらも利用出来るものを全て利用し最善へと手を伸ばそうとする少年がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いこう、キャスター、ランスロット。僕たちがこの世界を救う」

 

「ええ、行きましょう。マスター」

 

「くっ、やってみせろよ。少年」

 

 

 

 

────彼らの為に私は君らを討つよ

 

 


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