Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
なお、投稿したのは更に次の日。
ちなみにセミラミスは当たりました。
藤乃を当てよう。
今回の話はあくまでif。今回のバレンタインイベントのようにあったかもしれない話。
あくまでifだからネタバレでもない。
セミラミスならぬチョコラミスによる繁栄のチョコレートガーデンズ・オブ・バレンタイン及びバレンタインデーが終わり、俺ことランスロット・デュ・ラックは貰ったバレンタインプレゼントを食べていた。
…………エレインをはじめとする日頃から共にいるサーヴァントやカルデアスタッフからプレゼントを貰った訳で数があるのは仕方がない。
だが、だがな?
「キツすぎるだろ、コレは……」
俺の目の前、テーブルの上にあるのはアルトリア(ランサー)から貰ったバレンタインプレゼントである巨大な城型のチョコ……確か名前はワールドエンド・キャッスルだったか?聞けば円卓、俺以外の騎士たちに作るのを手伝ってもらったそうだが…………デカ過ぎないか?
次にその横に置いてあるのはこれまたデカいチョコ、アルトリア・オルタ(ランサー)から貰ったワールドエンド・ホワイトという名前らしいロンゴミニアド型のチョコ。
エレインやスタッフ、マシュ、ガレスやライオネルから貰ったチョコは食べ終わったが未だにあの二人のモノはここに残っている。
すまん、嘘ついた。
「槍と城のチョコに対してチョコぜんざいとホットココアの量が少なすぎると僕は思うんだけど?」
「……量か?そこは問題じゃないだろ……どう考えても」
巨大チョコ二つに対して、チョコぜんざいとホットココアだぞ?口の中の味何も変わらないんだが!?
「強いて言うならほのかに小豆の味はするがそれでもチョコだ。ひたすらチョコだ」
「そこは、ほら……湖の乙女直伝の魔術的なもので何とかなるんじゃないかな?」
「魔術はそこまで万能じゃないだろ」
向かいに座っているであろう馬鹿の言葉に俺は呆れつつもぜんざいを口に運ぶ。
あぁ……白玉が美味しい。
「それにしても沢山貰ったねぇ……羨ましいよ」
「キャスターから貰え」
「えぇ……それはちょっと、なんというか恥ずかしいというかさ」
こいつは何をほざいてやがるのだろうか。
エレインから俺はチョコ貰ってもまったく恥ずかしくないぞ、むしろとても嬉しい。
ついでに言うならマシュからバレンタインプレゼントを貰った際に不覚にも泣きそうになった。
「ところでさっきからかかってるコレなんだい?」
「ん?ああ、これか」
どうやら、今かけている曲が気になったらしい。そういえばこいつは知らなかったな。
俺は手元に置いてあるCDケースの表紙部分を見せる……いや、残念ながらワールドエンド・キャッスルのせいで見えないな。
向かい側に送ろうにも送れないためしょうがなく表紙に記されてるタイトルを教えてやる事にする。
「ベスト・オブ・トリスタン……トリスタンの馬鹿が何やら調子に乗ってレコーディングした挙句わざわざこうして諸々もやった奴だ」
「……うんと、円卓の騎士ってなんていうか誰も個性が強いね」
「…………個性が強くて悪かったな」
毎度毎度思うが何気にこいつ、失礼な事を言うな、おい。
いや、こいつ程になればそういうのも仕方がないといえば仕方がないか。……いや、駄目だ許さん。
「……マシュからチョコを貰えなかった癖にな」
「そういう事を言わないでくれるかなぁ!?」
「去年は貰えたが今年は貰えなかったわけだ」
これだからヘタレは。スペースバックスで手に入れたというホットココアを飲みながら呟くがどうやら聞こえていなかったようでこいつはまだ嘆いている。
そんな馬鹿には目もくれず、三分の一程食べ終わったワールドエンド・ホワイトをよりいっそう食べ進めていく。
まったく、こいつは…………。
「マシュに頼めば適当に小さいのぐらいくれるだろうに……」
「そんな!?頼むもんじゃないだろうバレンタインって!?」
「知らん」
少なくとも俺はライオネルにチョコをくださいと言われたぞ。ついでにエクターにも……後は何故か知らないがガウェインやトリスタン、マーリンにも言われたな…………え?Xオルタ?ズイっと来られたら流石に首を縦に振らざるを得ない。
「…………それで?」
「ん?どうしたんだい?」
「お前は何がしたいんだ」
「────」
音が止んだ。
部屋の音が、俺の咀嚼音が、心音すらも今この時ばかり消えた。
静寂ばかりがこの部屋を支配する。
姿の見えない彼の息遣いなど聴こえない。
だが……
「────ランス」
「きっとこれから先、いままで味わった事も無い困難に君たちはあうだろう」
「君たちが悪となるかもしれない」
「君たちこそが世界の敵となるかもしれない」
「君たちの手で希望を摘まねばならなくなるかもしれない」
「ランス……だからこそ」
「知らんよ。俺たちは……いや、立香はきっとお前の心配事なんて関係ないと言うだろう」
「だから────安心しろ」
俺の言葉を皮切りに部屋に音が戻る。
俺はホットココアを飲んで姿の見えないあいつに笑いかける。
「俺たちはお前が繋いでくれたモノの為に頑張っていくから」
「……さん……お……さん……」
「……お父さん」
「ん」
「お父さん、大丈夫ですか?」
どうやら寝てしまっていたようだ。目を開ければそこにはマシュが顔を覗いていた。
「ん……大丈夫だ。少し疲れて寝てしまっただけさ」
「それなら、いいんですが…」
心配そうな顔をするマシュの頭を心配するなと適度に撫でて俺は椅子から立ち上がる。
ふとテーブルを見てみればキャッスルは一番下の部分まで食べ終わっており、槍はなくなり当たり前といえば当たり前かぜんざいとホットココアは空になっていた。
時計を見れば既に朝の八時を指している。
「それで、マシュどうした?」
「あ、朝食の時間になっても食堂に来なかったのをお母さんが心配してまして、それで部屋を覗いて見たところ」
「いないな。日付が変わる頃からここにこもってたからな」
とりあえずチョコはあらかた食べ終わったが……にしても何故にランサーはこうもデカイものを渡してくるのか。
アレか?胸部装甲がデカくなると贈り物もデカくなるのか?アルトリアもオルタも普通……普通ではないが手頃なサイズだったしな。
「えっと、お父さんと昨夜たくさんのバレンタインプレゼントをこの部屋に運ぶのを手伝ったとトリスタン卿が教えてくれたので」
「なるほど……」
ありがとな、とマシュの口にキャッスルの一部だったものの欠片を入れてやりキャッスルの残った部分を備え付けの冷蔵庫に入れる。
「さて、見ての通り朝食は無理そうでな。残念だがエレインにそう伝えといてくれないか?」
「わかりました」
そう言って部屋を後にするマシュ。その背を見ながら俺はついでに入れたコーヒーを飲み、容器の片付けを簡単にだが行い出口へ向かう。
…………その背に何かしらの感覚が突き刺すが俺はそれを無視しこの部屋────ロストルームを後にした。
────どうか、あの情けなくも勇気ある優しい医者に感謝と謝罪のバレンタインプレゼントを送れる日が来ることを俺は祈る