Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】   作:カチカチチーズ

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ダン卿とアーチャーがとても好き。
執筆しながらパズドラ楽しい。
ふじのん?当たらなかったよ…………皇女様の為に石を貯めるんだ……

注意:時系列が本編とは違います。ついでにそういうifなのでネタバレではありません


番外:ある日の話

 

 

 

 

 

 

 

 魔術王……第一の獣による大偉業・逆行運河/創世光年は藤丸立香という人類最後のマスターである少女と人理継続保証機関フィニス・カルデアの者達によって打破され、人類に未来は戻った。

 しかし、安らぐ事なかれ。未だ君たち今を生きる人類の未来には障害が横たわっている。

 

 探せば不安な点はいくらでもある。

 

 第一の獣が遺した数柱の魔神。

 

 ビーストの連鎖顕現。

 

 マリスビリーの不審な自殺。

 

 そして────

 

 

「クリプター……カルデアの四十七人いるマスターの内、Aチームに括られた七人のマスター。マリスビリーがそう呼んでいたが……さて」

 

 

 嫌な名前だ。

 

 俺のカルデアとは切り離された秘匿端末に詳細を打ち込みながら俺はこの不信感を吐露する。第一の獣が遺した魔神柱自体は恐らく後一柱であるだろうが……第四の亜種特異点セイレム。

 第二までの記憶しか無い俺からすれば未知数。そして、やはりというべきか俺は亜種特異点にレイシフトの許可が下りない。立香に負担をかけてしまうことを申し訳なく思う。

 

 

「査問会まで後一、二ヶ月……予測では年末年始頃には有るのだろうが…………」

 

 

 文字を打ち込む指が止まる。

 不安からか、それとも未知への恐怖故か。

 

 

「…………いや、考えすぎか」

 

 

 俺は端末を閉じ、羽織っているコートをベッドに脱ぎ捨てそのまま俺自身もベッドへ倒れ込む。

 知らないというのはこうも恐ろしいのか。

 聞けば第三亜種特異点である下総では七騎の英霊剣豪という存在がおり、宮本武蔵と同じ放浪者がいたという。そして彼を唆した謎の存在。

 セイレムにもそういう存在がいるのか、それともその先…………駄目だな。

 

 

「一度考えると歯止めがきかん……気分転換に何処か……そうだ食堂にでも行くか」

 

 

 そうと決まれば、と俺は意気揚々と部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、ランスロット殿。この様なところで奇遇ですね」

 

「む、確かに奇遇だなインフェルノ」

 

「そういえばランスロット殿はゲームを嗜んでいると黒髭殿や刑部姫様に教えていただきまして」

 

「まあ、それなりには……」

 

「では!今から黒髭殿よりいただいたマイクラなるものを何人かでやるのですがどうですか」

 

「…………あー、また今度誘ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

「────」(奇遇ですね、食堂ですか?)

 

「ああ、少し気分転換にでもな」

 

「────」(なるほどでは途中まで御一緒させてもらっても?)

 

「問題ない……ところでカルデアはどうかな」

 

「────」(ええ、皆良くしてくれます)

 

「そうか、それは良かった」

 

 

 

 

 

 

「おー、ランス。奇遇だな、おい」

 

「モードレッド……そのコート」

 

「ん?これか?食堂に落ちててよ、ランスお前これ誰んか知らねえか?」

 

「そうだな……持ち主なら背後にいるぞ」

 

「え?」

 

「────モードレッド、それは私のモノだ」

 

「え、あ、く、黒い方の父上……えっと、なんで、怒って……」

 

「────」(合掌)

 

 

 

 

 

 

 食堂近くで首無しの彼と分かれ、俺は一人食堂に入る。するとそこには夕飯時が過ぎた頃でもチラホラとサーヴァントが残っていた。

 俺はいつも通りの席に腰を下ろし、対面の席に座る人物を見る。

 

 

「あ、お父さん」

 

「やあ、マシュ……そういえば今日会うのは今が初めてだったな」

 

「そうですね。私は先程までダ・ヴィンチちゃんと一緒に情報の整理をしていたので……」

 

 

 お父さんは?というマシュの視線に俺は疲れた笑みを浮かべ言葉を返す。

 

 

「ついさっきまで私も情報整理さ」

 

「なるほど、お父さんもお疲れなんですね」

 

 

 そう、苦笑する彼女に俺は首肯し、先程席に着く前に取っておいた水を飲む。

 思えばマシュも俺と同じように亜種特異点には行けないのか……いや、俺はアガルタだけは行ったが。……いや、他意は無い。

 そう、そうだ。アガルタだ……今思い出せば少し大人げなかった気がする。本性を現したあの男の耳を話を聴かずに切り落としたのは……少し騎士としてどうかと思った。

 

 

「……それで、お父さん。調子はどうですか?」

 

「……ああ、右腕の腱はもう大丈夫だが……やはり、ギフトの影響だろうか。ハロウィンのように騙し騙しでないと……少しな」

 

「そうですか……」

 

 

 思い出すのはアガルタを攻略してしばらくの事。トリスタンの暴走……と言えばいいのか、アレとの戦いで負った傷は治ったものの後遺症は未だに残っている。あの場に現れたアル曰くモルガンが関与しているようだが…………さて。

 

 

「すいませんがマシュ、ランスロット卿をお借りしても?」

 

「あ、ベディヴィエールさん。はい、大丈夫ですよ」

 

「というわけでランスロット卿、少し来てくれませんか?」

 

「ん、わかった」

 

 

 と、少し考えにふけっていたようだ。近くに来たベディヴィエールに気づかなかったとは。

 席を立ち俺はそのままベディヴィエールに付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

:ある時の昼下がり────

 

 

 

 

 

 

「そうだ、マッシュポテトを作ろう」

 

「………………ランスロット、疲れたのならば休め。これぐらいならまだ私だけでもなんとかなる」

 

「待て、勘違いするなアグラヴェイン」

 

 

 コイツは何を言っているのだろうか、という表情で対面の席に座り執務をしている友人ことランスロットを男───アグラヴェインは見る。

 時折、ランスロットは執務で疲れた時などに疲れから現実逃避紛いの事を言う事があるため今回もそれかとアグラヴェインは判断し、ランスロットに休憩を勧めるがランスロットはそれを否定する。

 ではなんだ、と言いたげな表情で見るとランスロットは細く笑みながらその手に握られたものを見せる。

 

 

「それは……?」

 

「ジャガイモ……ブリテン島より西にある大陸で栽培されている根菜だ」

 

「…………待て、ブリテン島より西の大陸で栽培されているだと?どうやって手に入れた」

 

 

 後の世で伝わるジャガイモを手で弄びながらアグラヴェインの質問にランスロットは軽く答えてみせる。

 

 

「一度湖の乙女母のもとへ足を運んでブリテン島でもなんとかなるようなモノは無いかと尋ねた所、幾つかくれたんだ」

 

「湖の乙女が?…………なるほど、精霊ともなれば海程度なんとでもなるのか……」

 

「まあ、母は湖……水に関する精霊だからなある程度はなんとかなるのだろうさ」

 

 

 ランスロットの言葉にアグラヴェインは納得したのか頷き、再度友人の掌にあるジャガイモを見る。

 黄色味のある拳大の大きさのそれを見て、味は未だわからずとも精霊がこのブリテン島でも充分育てられると太鼓判を押しているのなら信用できそうだ。と考えながら思った事を口にする。

 

 

「それで?その……ジャガイモとやらはどういった野菜なんだ」

 

「先にも言ったが根菜だ。植えて育てば、食べる部分は地下でできる。後は痩せた土地でも充分に栽培が可能だ……味は……まあ、普通に美味いぞ?……それと芽の部分に毒があってだな、調理する際にはきちんと芽を取り除いて水につけるのがいいらしい」

 

「ふむ…………量は?」

 

「試食用に一箱、栽培用の種芋が入った二箱がある」

 

 

 なるほど、ならばひとまず我々で試食するか。とアグラヴェインが提案するとランスロットはそれを首肯し、まずは目の前の執務を終わらせるかと掌のジャガイモをおいて筆を持ち仕事へと取り掛かった。

 

 

 

 

 時と場所は移り変わり、ランスロットが私的理由で拵えた厨房内。

 当初、この厨房が造られた際に何人もの騎士らがランスロットに対して騎士が厨房に立つなど……と苦言を呈していたがそんな彼らにランスロットは堂々とした振る舞いで、

 「騎士たるもの王の為になるのならば、如何なるモノも出来ねばいざという時に王に恥をかかせてしまうだろう」という旨の言葉を言い放ち、苦言を呈した騎士らや言わずとも良く思わなかった騎士らが心打たれていたらしい…………がそれを聞いたアグラヴェインはとりあえず「いやそれはおかしい」と思った。

 

 さて、そんな場所でアグラヴェインは意気揚々と調理の用意をしているランスロットとその隣や自分の座る席の横を見てため息をついた。

 

 

「ランスロットの食事は美味しいですからね、少し楽しみです」

 

「悲しい事に此処に王はいない……王の不運を私は悲しく思います」

 

「アレ?トリスタン卿……先ほどベディヴィエール卿が探していましたよ?」

 

 

 いったい何処から湧いたのかこの場にはアグラヴェインとランスロット以外に四人もの人物がいた。

 アグラヴェインの実の兄である太陽を思わせる朗らかな雰囲気を持った王子の如き騎士ことサー・ガウェイン。

 ランスロットの友人でありアグラヴェインの同僚である赤い長髪の詩人の様な雰囲気を持つサー・トリスタン。

 ランスロットの従妹でありランスロットの率いる部隊の副官を務める明るげな性格でランスロットに子犬扱いされているライオネル。

 そして今もランスロットを手伝っているガウェインとアグラヴェインの実の妹であるサー・ガレス。

 どこで耳にしたのかジャガイモの試食をする気満々な四人に対してアグラヴェインは呆れるしかなかった。だが、アグラヴェインとランスロットだけで様々な方法で調理したそれらを全て処理できるかと言われれば首を振るしかない以上、アグラヴェインとしてはまあ良い誤算と判断した。

 

 

「(だが、トリスタン……呼ばれているのならば行け。後で説教を受けるのは卿だぞ)」

 

 

 とりあえずトリスタンはいつも通り、ここにはいないベディヴィエールに愚痴愚痴と説教を受けるのであろう。

 しかし、アグラヴェインはトリスタンに言わないでおくことにした。そう、行かないトリスタンが悪いのだから。

 

 

「まったく……」

 

「いやぁ、すいませんねアグラヴェイン卿。なんだかいきなりガレスちゃんが直感か何かで……そのランスロット卿のもとへ行ってしまって……こうなりました」

 

「……止めようとは?」

 

「いえ、まったく」

 

 

 ある意味マトモである枠のライオネルはとてもいい笑顔でアグラヴェインの言葉を叩き切った。従兄が従兄なら従妹もこう常識的でありながら面倒な所でおかしいのだ。

 その事に何度目になるか分からないが再確認しアグラヴェインはため息をまたついてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんだこれは」

 

「………………」

 

「………………」

 

 

 調理が終わり出された皿に乗っているのは山であった。そう紛うことなき山である。

 黄色味のある白い根菜の山。

 そうすなわちは『マッシュポテト』と後の世で呼ばれる料理である。

 まさしくネビス山の如き様相のマッシュポテトの山がアグラヴェイン、ライオネル、トリスタンの前に出されていた。

 アグラヴェインは一言、冷淡な声音で目の前のランスロットとガレスに問いかけるが二人はあらぬ方向を見て素知らぬふりをしている。

 

 

「………………これはなんといいますか」

 

「すごく、マッシュです……」

 

 

 トリスタンとライオネルはただこのマッシュポテトの山に驚くばかり、だが一人足りない。

 三人と共に座っていたガウェインはどうしたのか?

 それは簡単な事だった。

 

 

「マッシュ、マッシュ、マッシュ。なんでも潰せば、食べられマッシュ〜」

 

 

 食材への冒涜が如き歌を口ずさみながら朗らかに満足げに笑うガウェイン。その手にはまだマッシュされていない蒸かしたジャガイモが入ったボウルと棒が…………。

 

 

「…………何故アレにやらせた」

 

「何も見えない聞こえない」

 

「私は知りません。これは全て妖精の悪戯です」

 

 

 あくまでガウェインが勝手にやりましたという姿勢を崩さない友人と妹にアグラヴェインは何度目になるかもわからないため息をつき……

 

 

「この山はモードレッドとガウェインにでも食べさせるか……」

 

 

 こうして戦犯ガウェインと何故かここにいないというのに巻き込まれたモードレッドがこのマッシュポテトの山を処理する事となった。

 この後、きちんとランスロットとガレスで作ったジャガイモ料理はアグラヴェインを始めとする城の者に大層気に入られたらしい。

 

 

 こうして、ブリテンにマッシュポテト・ガウェインが誕生してしまったそうな。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

「────おぅ」バタンッ

 

 

「ッ!?ランスロット卿!!」

 

「ランスが倒れてしまいましたね…………私は悲しい」

 

「やはり、調子が悪かったのでしょう……」

 

「いえ、ガウェイン卿……兄上は単純に貴方が作ってしまったこのマッシュポテトの山にやられたのでは…………」

 

 

 

 カルデアに来て、なぜにまたお前のマッシュポテトを見ねばならんのか……ガクッ

 

 

 


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