Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】   作:カチカチチーズ

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まさかの3代目はアルテラという。
ところでランスロットさんやお前はサンタするの?

獅子面の湖「ランスロット?誰のことだ、私はオーンサンタインだが?」

あ、はい。


オルレアン:21

 

 

 

 

 

 

 三本もの矢が続けて放たれる。

 内一本はシフの脚を狙って放たれたがしかしシフは軽々とそれを飛び上がりそのままランスロットを狙った矢すらも避けてしまう。

 そして着地と同時にアタランテへと駆けていく。

 

 

「シフ、このまま────」

 

────!

 

 

 逃さんとばかりに続けて矢を放っていくアタランテ、しかしランスロット共にピクト人の軍勢の中を駆けたシフは紙一重に避けていく。

 無論、アタランテもそのまま行かせるわけにはいかない。本心としてはこのまま通しバーサーク・アーチャーである己を討たせるのがいいと思っているが狂化されている以上それを良しとできないのだ。

 

 

「ッア!」

 

 

 放たれていく矢をシフは避けていくが少しずつかすり始めているのにランスロットは気づきシフの腹に脚を当てる。

 

────!!

 

「今度もまた頼むな」

 

 

 魔力を込めた斬撃を放ち矢の雨に風穴を開けたと同時にシフが跳躍し、ランスロットはシフを踏み台に風穴よりアタランテへと向かう。

 ランスロットの背後でシフの身体に矢が刺さる音が聴こえるが振り返らずランスロットはアタランテへと突き進む。

 

 その様を見てアタランテは数ではなく一に決める。狂化しているが故にその矢を引く手に力がこもってしまう、アタランテの持つ宝具・天穹の弓(タウロポロス)は引き絞れば引き絞るほどにその威力が増すという神より与えられ弓。

 通常時のアタランテの筋力ステータスはD、それですら限界まで引き絞ればAランクを凌駕するほどの物理威力を出すことが出来る。ならば狂化した状態の筋力で撃てばどうなるか────────

 

 

「────くっ」

 

 

 だがしかし、そんな心配をアタランテは切って捨てる。そこまで深くは憶えてはいないが確かにアタランテの記憶にはランスロットがいる。

 クラスは違うだろう。調子も違うだろう。だがアタランテの心中にはこの男ならば何かをするのだろう、という信頼があった。故にアタランテは笑いその限界まで引き絞った矢を撃ち放った。

 

 

 放たれた刹那、矢はランスロットの頭部の兜を穿つ────事は無かった。

 

 その鏃から二つに断ち別れる矢はそのまま勢いよくランスロットの後方へと流れていく。

 特別な事はしていない。ランスロットはただその矢の来るであろう場所に無毀なる湖光(アロンダイト)の刀身を構えたに過ぎない。

 

 

 ああ、やはり!アタランテは笑い二の矢を番えようとする。どうやら予想外に狂化は影響しているようで二の矢を番える事になんの遠慮もなかった。

 いや、恐らくは多少遠慮しなくとも目の前の男ならばなんとでもするだろうと考えているのだろう。

 

 故にアタランテは二の矢を番えて────

 

 

「な────」

 

 

 視界よりランスロットの姿が消えた事に目を見開く。

 なんだそれは?そんなもの私は知らんぞ。

 そう呟きそうになったアタランテは背後から立ち上った魔力に気が付き振り返った。そのまま跳び退くわけでもなく振り返ったのだ。

 

 

「────これで!」

 

 

 両手でその柄を握りしめ上段へと振り被られた無毀なる湖光。

 不思議なことに先ほどアタランテの感じた魔力など微塵も感じはしなかった。故にアタランテは振り返ったという事もあり反応が遅れ……ランスロットは聖剣をアタランテへと振り下ろし────────

 

 

「ハァッ!!」

 

 

────ギャリィッッ!!

 

 

 横合いから突き出され細剣がランスロットの籠手を削りながらその一撃に僅かばかりの猶予を与えた。

 

 

「ッ!!」

 

 

 与えられた猶予を好機とし、アタランテはランスロットから跳び退き、誰が手を出したのか気が付いた。

 

 

「……バーサーク・セイバーか」

 

「やあ、サー・ランスロット。邪魔して悪いと思うがこちらも狂化されているんだ……許してくれ」

 

 

 そこに現れたのは羽帽子を被った可憐なる男装の剣士。ランスロットと同じクラスのバーサーク・サーヴァント。

 その立ち振る舞いは凛として洗練され、狂化を施されているというのに礼節を失ってはいないがその言動から狂化の片鱗を僅かながらにランスロットは感じていた。

 

 

「二騎か……」

 

 

 嘗められていると考えるべきか……。ランスロットは兜の中で呟きながら無毀なる湖光を構える。アタランテ、バーサーク・セイバー共にランスロットからすれば十分に対処可能なサーヴァント、故にまずはアタランテを討つことを考え突貫する。

 

 

頑強たれ(Sir)────」

 

 

 突貫しながら無毀なる湖光に魔術を行使する。それにより無毀なる湖光はその刀身と柄を伸ばし大剣のような形状に変化する。

 柄頭近くを握り大振りに無毀なる湖光を振るいランスロットはアタランテを狙う。

 

 

「ッ!」

 

「ハァッ!!」

 

 

 その大きさが変われども変わらぬ攻撃速度。狂化を抑えつつ戦うアタランテはその変化したリーチに反応が遅れるがしかし、そこに再びバーサーク・セイバーが横合いから細剣をランスロットの左腕に打ち込み攻撃速度を遅らせる。

 先ほどもだが、本来ランスロットに対してバーサーク・セイバーが腕へと一撃を打ち込んだところで堅牢な護りを持つランスロットには大した事ではない、だが今この場においてランスロットは騎士として剣士として大切な腕を負傷しているのだ。

 そう、ゲオルギウス捜索の前にあった実弟エクター・ド・マリスとの戦闘の際に腕を始めとする各箇所にランスロットは宝具による銃創を負っている。

 そしてその傷は止血されたとはいえ未だ癒えていないのだ。故にバーサーク・セイバーの腕への攻撃はランスロットへ大きな影響を与えていた。

 

 

「チッ────」

 

 

 二度目の妨害についランスロットは舌を打つ。どうやら一回目のそれで傷を知られたようでバーサーク・セイバーの憂いのある表情を見、ランスロットは一度下がった。既にアタランテとの戦いの最中に街へ入り込んでいたランスロットはそのまま家屋の屋根の上で周囲の状況を探る。

 

 ワイバーンが多少いるのを感じる。

 リビングデッドがいるのを感じる。

 そして────────

 

 

「クッ」

 

 

 ランスロットは兜の下で不敵に笑い、新たに浮かんだ事の為にどうするか思考を回していく。

 さて、対するアタランテとバーサーク・セイバーはランスロットのいる家屋の屋根より少し離れた家屋の屋根よりランスロットを見て話していた。

 

 

「さて……どうするんだいバーサーク・アーチャー」

 

「わかっていると思うが今の吾々ではどうにも出来ない……狂化を受け入れるのならばまた少し話は変わるが……」

 

 

 それは御免こうむるだろう?

 アタランテの続く言葉にバーサーク・セイバーは頷く。ただでさえ、無辜の民を傷つけたのにその原因たる狂化に身を委ねるなど無理だと考えるバーサーク・セイバーはどうすればうまく自分とアタランテがランスロットに討たれるかを考える。

 

 

「と、なれば……」

 

 

 その時、ランスロットが動いた。

 無毀なる湖光の刀身と柄の長さを元に戻してランスロットは回した思考で割り出した考えを実行するために今いる場から見えるとある建物に目をつけ、それに向かって駆け出した。

 

 

「な!?」

 

「……何をする気だ」

 

 

 屋根の上を疾駆するランスロットをバーサーク・セイバーとアタランテは追いかける。その際にランスロットへワイバーンが襲いかかるがアタランテはランスロットを狙う体でワイバーンを射抜いていく。

 

 

「…………ふんッ」

 

 

 追いかけてくる二騎へとランスロットは駆けつつもナイフを数本投擲する。

 空間置換の応用により瞬間的に加速したそれはぎりぎりバーサーク・セイバーの反応速度を超え……

 

 

「グッ!?」

 

「…………」

 

 

 充分反応できるアタランテはそれを避けたが避けれなかったバーサーク・セイバーは左肩と左脚にナイフが刺さる。それにより減速するバーサーク・セイバーを尻目にアタランテは加速しランスロットの前へと躍り出る。

 

 

「フッ、取らせてもらう」

 

「やってみせろ」

 

 

 それなりに引き絞られた矢を放つがランスロットはそれを転ぶ様に回避してみせ起き上がりと同時に空間置換を挟み、アタランテの側頭部に蹴りを叩き込む。

 

 

「グウッ!!??」

 

 

 無論、寸前で防御してみせたが筋力値はランスロットの方が上、ある程度吹き飛ぶアタランテ。そんな彼女を気にせずそのままランスロットは目的の場所。

 辺りの家屋よりも一際高い教会の屋根に登り立ち止まった。

 

 何故ここに来たのか、それは簡単な事だ。

 

 

「ここなら良く見える…………」

 

「ほう、何がだ!!」

 

「ハァッ!!」

 

 

 用意は出来たと言わんばかりに細く笑むランスロットに追いついたバーサーク・セイバーと戻ってきたアタランテが襲いかかる。

 だがしかし、二騎の目前からランスロットはその姿を消して見せた。

 何ッ!?唐突のそれに思わず驚愕する二騎、ランスロットはそんな二騎の背後に転移してみせそのまま二騎の肩を掴みここから見えるとある場所へと割りと本気で投げつけた。

 

 無論、二騎は当たり前だがサーヴァント。いくらランスロットが本気で投げようとも負傷している腕でそんな事をしたところで勢いはたかが知れており空中で体勢を立て直そうとして────

 

 

「キャアアァッッ!!??」

 

 

 その途中で物の見事にとある人物の背へと二騎揃って直撃した。

 街に響く絹を裂くかのような悲鳴。

 まさかの状況に驚愕する二騎。

 故の好機。再び使う空間置換による転移。

 

 今度は自身の転移ではなく、仲間の転移に使う。目視出来ている以上、座標間違いなど起こるはずはなく……

 

 

「キャッ!?」

 

 

 ランスロットの腕の中に転移される仲間、マリー。ランスロットは彼女を姫抱きにして教会の屋根から飛び降り地面に降りる。

 予想外の出来事に困惑する彼女にランスロットを立たせ告げる。

 

 

「マリー。君の覚悟はわかっている……わかっているが騎士として乙女を残すのは認められない……故にこうして交代に来させてもらったよ」

 

「ランスロット……さん」

 

「さて、既にジャンヌとゲオルギウスは待ち合わせ場所へと向かっている……俺はここで戦うが一人で行けるかな?」

 

「…………そう。ええ、もちろんそれぐらい問題ないわ」

 

 

 ランスロットの言葉にマリーは少し怒っているように答え、ランスロットはそれに苦笑する。そんなランスロットに今度は微笑み宝具の一つであるガラスの馬を呼びそれに腰かける。

 

 

「ひとまず言いたいことは色々とありますが今は言いません。なのでどうか無事に戻ってきてくださいね、サー・ランスロット」

 

「ええ、その時は存分とどうぞ」

 

 

 それを最後にジャンヌとゲオルギウスを追う為に出発したガラスの馬に腰かけるマリーの背に一礼してからランスロットはアタランテとバーサーク・セイバーを投げつけてやった彼女を見る。

 ああ、怒っているな。ランスロットはそんな風に軽いように兜の下で呟く。

 表情は引き攣り、近くにある家屋の建材である木がチリチリと燃えている。心なしかアタランテは微笑み、バーサーク・セイバーは微妙な表情をしている。

 

 三対一という圧倒的な不利の場においてランスロットは笑ってみせる。

 左手に無毀なる湖光。右手に大盾。

 起動する武具に刻まれた擬似魔術回路と擬似魔術刻印。

 

 

────圧倒的な不利?笑わせる。それは並のサーヴァントの話だ。この身はなんだ、円卓の騎士だ。麗しき我らが騎士王に仕えし湖の騎士、なれば…………

 

 

「別にここで倒してしまっても構わんのだろう?」

 

 

 ランスロットはジャンヌ・オルタを前にして兜があろうとも理解出来る様に笑ってみせた。

 

 

 





ぶっちゃけエレちゃん当てれるとは思わない。何故?簡単さ……俺は凛ちゃんに嫌われてるからな!←イシュタルおらん(配布除く)
ところでアッくんとモルガンまだァ?

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