Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
トリスタン「おや?ランスが呼んでいますね……では私が」
黒王「モルガーン!!!」
トリスタン「」ジュッ
カルデア食堂。
その一角にある五人席でサーヴァントとマスターらは交流を深めていた。
「ほへー、つまり君は、あの円卓の騎士の、いや僕たちフランス騎士の憧れの湖の騎士なんだね」
「まあ、そうなるな。しかし憧れか……それは、何ともこそばゆい話だ」
「シャルルマーニュ陛下もローランのバカも憧れてたし……あ、特にオリヴィエなんて凄かったなぁ。ほら、オリヴィエのオートクレールは元は無毀なる湖光だったらしいから」
「ああ、聖杯からの知識で知ったよ。まさか、俺の無毀なる湖光が後々祖国の後輩騎士に受け継がれていたなんてな」
ランスロットとアストルフォ。互いにフランス出身の騎士で先輩後輩にあたる為か話が弾んでいた。
……いや、ランスロットは間違いなく隣の光景を見ないように正面のアストルフォと話しているのだろう。
「もきゅもきゅもきゅもきゅ」
「…………凄い、ですね」
「うん……」
本来アストルフォのマスターとして、同じマスターに従う同僚サーヴァントとしてアストルフォと話すはずの立香とマシュは目の前の光景に呆然としていた。
そう、それはポテトだった。
ただ、ひたすらなまでにマッシュマッシュされたポテトの山。
マシュはその皿に盛られたマッシュポテトを見て何故か『マッシュ、マッシュ、マッシュ。何でも潰せば、食べられマッシュ~♪』という何処かで聞いた事のあるようなないような声が脳裏に過ぎっていた。
立香は見ているだけでお腹がいっぱいになりそうだった。
さて、そんなポテトの山を食べているのは誰か?無論この四人以外となれば一人。
「もきゅもきゅもきゅもきゅ……ランスロット水を出せ」
「…………御意」
反転したアーサー王ことアルトリア・ペンドラゴン・オルタ。
彼女はただ只管ランスロットがマッシュしたポテトを食べていた。
嘗てはブリテンの雑な料理に辟易していたが仕方ないと思っていたところにランスロットが隠れて一人美味しいものを食べていて喧嘩になった事があったが今のアルトリアは反転し、それによりこの様な雑な料理を好むようになっていた。
アルトリアの命令でランスロットは水を取りに行ったので話し相手がいなくなったアストルフォは本来、最初に話し合うべきの立香に話しかける。
「それでマスター」
「へ?何かなアストルフォ」
「うん、マスターはさ好きな事って何?」
まったくもって唐突なアストルフォの質問に一瞬、間が空きつつも立香は答える。
「うーん、ご飯とか走る事かな?あ、あとはゲーム」
「走る事……そういえば以前お爺様の家の近くの山や洞窟で遊んでたと言ってましたね……」
「へぇーマスターって結構お転婆なんだね!」
「ゴフッ」
アストルフォの言葉が容赦なく胸に突き刺さり立香は胸を押さえる。
元陸上部、同年代の男子よりも男子っぽかったと評判だった立香といえども花の女子高生にあたる年齢。流石にお転婆と言われるのは心が辛かった。
「アストルフォ。不用意に女性にそういう事を言うもんじゃない……如何に理性が蒸発してるとはいえもう少し考えて言葉をかけろ」
と、そこで水を取りに行ったランスロットが戻りアストルフォに苦言を呈する。
如何に理性が蒸発しているアストルフォといえども流石の憧れであるフランスの先輩騎士の言葉には素直に従い立香にすぐさま謝罪する。
「あー、そのごめんねマスター」
「う、うん…………」
「せ、せんぱい」
それでも暫く立香は胸を押さえている。
流石にバツが悪いのかアストルフォもマシュのように立香を慰め始め…………
「…………」
「もきゅもきゅもきゅもきゅ」
「……(辛い)」
話し相手のいなくなったランスロットは否応なしにアルトリアの対応に務めなくてはいけなくて。
「ランスロット」
「……なんだ」
「やはり、お前の料理は食べていて心地が良い」
「ただマッシュしたポテトは料理と言わんだろ」
「………………そうか」
「………………ああ」
「……(どうすればいいどうすればいいどうすればいい……ここからどう繋げればいいんですか!!??マーリン、円卓議決を!!)」
なお、アルトリアは内心とてもとてもテンパっていた。
外面にはそのテンパっている様子は微塵も感じ取れないがその冷徹な表情の下は正しく乙女のようなものであった。もし、それをランスロットが見ればきっと「……ああ、やはり姉妹」そう言うだろう。
「……アル」
「……ッ!?な、なんだ」
「……(どうしたコイツ)……まあ、これから共に特異点を行く訳だが、嘗ては王と騎士の関係だったがいまはマスターとサーヴァントだ。ある程度はこっちを尊重してもらいたい」
「……呆れた男だ。もはや王も騎士もない……私はお前のサーヴァントだ」
「そうか……」
二人は目の前の暴走する立香を抑えるマシュとアストルフォの楽しそうな光景を見て微笑んだ。
「ところでランスロット」
「なんだ」
「生前と死後、お前はどうわける」
「はい?」
「生前を忘れろとは言わん。だが、もはやお前は第二の生に生きる者…………わかるな?」
「────お前絶対に許可なく俺の部屋に入るなよ」
「────フ」
「その不敵な笑みはなんだ!?」
──────────────
「ところでランス」
「…………いきなり愛称で呼ぶのか」
「なんだ……お前だけ私の事を愛称呼びしているだろう。ならば私がそう呼んで何か不都合か?」
「いや……別に」
食堂からうって変わってランスロットとアルトリアは守護英霊召喚システム・フェイトのもとにいた。
その理由はこれからランスロットは立香と共に特異点攻略をしていく事になり、このフェイトの様々な調整やらなんやらをする事が出来なくなるためランスロットは部下たちに引き継ぎをしていた。
そしてアルトリアは引き継ぎ業務をしているランスロットを後ろの方で立ってみている。
「実はだな、お前に頼みたい事がある」
「俺の部屋の合鍵以外ならある程度、都合はしてやる」
話しかけるアルトリアにランスロットは只管業務をこなしていく。
「私の今の格好を見ろ」
「………………いつも通りだな」
「そう、今の私は鎧姿だ」
「…………おい、まさか」
重厚な鎧を指して言うアルトリアに嫌な予感を募らせるランスロット。しかし、業務の処理速度は一切落とさない。
「……流石にな常時鎧姿というのもアレだ。故に私の普段着を仕立てろ」
「…………」
「無論。仕事には報奨を出そう」
「…………」
アルトリアの言葉に絶句するランスロット。しかし、業務の処理速度は一切落とさ(ry
「……やれるな?」
「………………とりあえずこの引き継ぎ終わったらな」
「「「「(やるんだ…………)」」」」
引き継ぎ作業をしているランスロットの部下たちの心は正しく一つになっていた。
ランスロットの社畜具合に。
この後、ランスロットは引き継ぎ業務を終わらせアルトリアの普段着を仕立てる為にアルトリアと共に部屋を後にした。
「待て……わざわざ下着まで脱ぐ必要は無いだろ」
「なに、気にするな。それに何よりサイズが合わなかったら困るだろう?」
「流石に下着の上からでも出来るわ」
「ふむ、そこまで言うのなら着てやろう…………本当にいいのか?」
「着ろ」
ランスロットは雑な料理も美味しい料理も作れます。
そしてアルトリアの普段着やイベント着は全てランスロットが仕立てていく事に……