Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
九月一日中に終わる?そんなの無かったんや……
「────────」
「────知らない天井だ」
目を覚ました私の視界に映ったのは、白い天井。別に知らない天井と言う訳では無いがネタを回収出来た。
心の中でガッツポーズしつつ、私は起き上がり
「おや?本命の子が目覚めたね。よしよし、それでこそ主人公ってもんだ」
なんだか私の寝てたベッド横に見知らぬ……見知らぬ?変な格好のお姉さんが座っていた。
なんだろう知らない……知らないけどなんか知ってる……変な人。
「おはよう、こんにちは、藤丸立香ちゃん。意識はしっかりしてるかい?」
「え、あ、はい」
誰だろうかこの人は。
というか片手がゴツゴツしてるし。なんか変なもの着けてるし……変態?
「んー、まだ思考能力が戻ってないのかな?こうして直接話すのは初めてだね」
誰だろうか、カルデアのスタッフ?にしては格好がおかしいし……
と、黙っている私に何を勘違いしたか、目の前の謎の女性は唐突に胸を張り
「なに?目が覚めたら絶世の美女がいて驚いた?わかるわかる、じき慣れるから」
「自意識過剰なんですか?」
「……………………………………………………………
……………………………………………………
………………………………………………………………
……………………………………………………
………………………………………………………………」
固まった。
微笑んだまま固まった。
とりあえず、片手にゴツゴツした何か変なものを着けてる時点で絶世の美女かどうかは怪しいところだ。だって、絶世の美女って顔だけじゃなく他の部分も綺麗じゃなきゃいけないわけだし…………
「私はダ・ヴィンチちゃん、カルデアの協力者だ。というか召喚英霊第三号みたいな?……あー、いや、彼がいるんだったね……となると四号?でも彼はカルデアが呼んだ訳じゃないから…………三号でいいか」
たっぷり時間を空けて再起動した目の前の女性はダ・ヴィンチというらしい。召喚英霊と言っていたからサーヴァントなのだろう。
ということはレオナルド・ダ・ヴィンチ…………あ、どっかで見た事あると思ったら……モナ・リザか…………ちょいとモナ・リザと違う様な気がするけど三次元と二次元の違いか。
「とにかく話は後々、キミを待っている人がいるんだから早く行ってあげなさい」
「……ドクターですか?」
「ロマン?ロマンも待ってるけど、あんなのどうでもいいでしょ。まったく他にもいるだろうに、大事な娘が。まだまだ主人公勘ってヤツが足んないなぁ」
私の返答に呆れたような口調で話すレオナルド・ダ・ヴィンチ(仮)。というかドクターディスられてる…………あんなのって。
というか主人公勘って…………あ
「フォウフォーウ」
「マシュ……」
フォウくんが私の肩へと登ってくるが気にせず私はベッドから出る。
そうだ、マシュはどうなったのだろうか。
このレオナルド・ダ・ヴィンチ(仮)の言葉からは恐らくマシュが待っているんだろう。
私はすぐさま部屋を出て────
すぐに戻ってきた。
「えぇと、何処に行けば……」
「あー、ごめんね!言い忘れてた、管制室だよ」
「ありがとう!」
改めて私は管制室へと走っていった。
「ここからはキミが中心になる物語だ。キミの判断が我々を救うだろう。
人類を救いながら歴史に残らなかった数多無数の勇者たちと同じように……。
英雄ではなく、ただの人間として星の行く末を定める戦いが、キミに与えられた役割だ」
────────────
「マシュ!」
「おはようございます、先輩。ご無事で何よりです」
「おはよう、助かったんだねマシュ……!」
管制室へと飛び込んだ私の前に現れたのは冬木でのサーヴァントとしての姿ではなく初めて会った時のような制服姿。
そんなマシュが安堵した表情で私に挨拶をしてくれた。そんなマシュの姿に私も安堵する。
「はい。先輩が手を握ってくれたおかげです。二度ある事は三度あるという格言を信じたい気持ちです」
「コホン。再会を喜ぶのは結構だけど、今はこっちにも注目してくれないかな」
私とマシュが手をあの時とはまた違ったように握り再会を喜びあっていた所にドクターが咳払いをしたので私はひとまず喜ぶのは止めてドクターを見る。
ドクターの後方には柱に寄りかかるランシア……ランスロットさんがいた。
「あっ」
「すいません、ドクター」
「……まずは生還おめでとう立香ちゃん。そしてミッション達成、お疲れ様。なし崩し的にすべてを押し付けてしまったけど、君は勇敢にも事態に挑み、乗り越えてくれた」
「その事に心からの尊敬と感謝を送るよ。君のおかげでマシュとカルデアは救われた」
「べ、別に私だけじゃ……ランシア、ランスロットさんもいましたし……」
ドクターの言葉に私は何処と無く照れてしまい、私だけではないと否定する。
別にこれは照れ隠しだからじゃない。事実だから。
私だけじゃ勝てなかった。マシュを信じて無いわけじゃなかった……でもあのアーサー王との戦いは本当に負けてしまうんじゃないかと思った…………ランスロットさんが来なかったらどうなっていたのか…………。
「……そうだね。そこの馬鹿のおかげでもあるね。ともかく……所長のことは残念だった。でも今は弔うだけの余裕はない、悼む事しか出来ない」
「…………」
「……所長」
ドクターの言葉に私やマシュはあの時の事を思い出す。
特異点の最後で…………レフに殺された所長の事を…………
『所長ッ!!』
『駄目だ、行くな……!……君も下手すれば焼かれかねん』
『でも……!!』
『ラン、スロットさん……』
『………………ッ!!』
所長を助けようと走り出そうとした私を止めたランスロットさん。私は何故止めるんだ、と反抗しようとした……だが、あの人の顔はとても悲しかった。必死に堪えていた……。
所長に続き私たちを失うまいと私たちを止めていた。
あの時の事を……私は思い出していた。
「いいかい、僕らは所長に代わって人類を守る。それが彼女への手向けとなる。……マシュとランシア……いや、ランスロットから報告を受けたよ。聖杯と呼ばれた水晶体とレフの言動」
「カルデアスの状況を見るに、レフの言葉は真実だ。外部との連絡はとれない。……カルデアから外に出たスタッフも戻って来ない。…………恐らく既に人類は滅びている」
「このカルデアだけが通常の時間軸に無い状態だ。崩壊直後の歴史に踏みとどまっている……というのかな?外の世界は死の世界だ。この状況を打破するまでね」
「……ということは」
ドクターの言葉に私は希望を見出すことが出来た。打破するまで、つまりそれは打破する事が出来るという事で……
「ああ、勿論ある。君たちが冬木の特異点を解決したにも関わらず、未来は変わらなかった……それはつまり、他に原因があるということ。そう、僕らは仮定した」
「そして、見つけた。人類のターニングポイント。
“この戦争が終わらなかったら?”
“この航海が成功しなかったら?”
“この発明が間違っていたら?”
“この国が独立できなかったら?”
そういった現在の人類を決定付けた究極の転換点だ」
「これらの特異点が出来た時点で未来は決定してしまった。レフの言う通り人類に未来はない。けど、僕らだけは違う。カルデアはまだその未来に達していないからね」
「わかるかい?僕らだけがこの間違いを修復できる。今こうして崩れている特異点を元に戻す機会がある」
「結論を言おう」
ドクターは一度言葉を切った。
きっと、ドクターはドクターで心を整理しているんだろう……あの時、特異点で言っていた。いまこのカルデアにはドクター以上の権限を持つ人はいないと。ランスロットさんも昔はそうだったらしいが……今ではそこまでの権限は持っていないようだ。
このカルデアをまとめるものとしての整理を。
「……この七つの特異点にレイシフトし、歴史を正しい形に戻す。それが人類を救う唯一の手段だ。けれど僕らにはあまりにも力が足りない」
「マスター適性者は君とランスロットを除いて凍結。所持するサーヴァントはマシュとランスロットだけだ」
……ランスロットさんが使い回されてボロボロになりそうだ。
トリスタンさんが言ってたような休暇は望めないかもしれない…………。
「…………この状況で君に話すのは強制に近いと理解している。それでも僕はこう言うしかない……。
マスター適性者48番、藤丸立香」
「君が人類を救いたいなら、2016年から先の未来を取り戻したいなら。
君はこれからこの七つの人類史と戦わなくてはならない……」
「その覚悟はあるか?
君にカルデアの、人類の未来を背負う力はあるか?」
ドクターの言葉に私はすぐに答えれなかった。
私に……私なんかに人類の未来を背負う事が出来るのだろうか、そう考えた。
だけれど…………マシュを見た。ランスロットさんを見た。ドクターを見た。最後にフォウくんを見た。
それでも私は…………
「…………自分に、私に、出来るのなら」
「────ありがとう。
その言葉で僕たちの運命は決定した。
これよりカルデア所長オルガマリー・アニムスフィア代理としてロマニ・アーキマンが発令する。
カルデア最後にして原初の使命。
人類守護指定・グランド・オーダーを」
ここに私の、私たちの人類を、未来を取り戻す旅は始まった。
────────────────────
炎上汚染都市:冬木
特異点F
A.D.2004年
────定礎復元────
────────────────────
「さて、ランスロット。君はなんで突っ走るかなぁ?」
「……身体が動いていたんだ」
「いや、自分の身体だろう?バーサーカーじゃないんだから」
「ぐぅ……」
グランドオーダーが発令されたすぐあとに管制室でそのままドクターはランスロットさんに説教を始めていた。
マシュに聞けばランスロットさんはドクターの制止も無視して私のように管制室に来ていたらしい…………。流石にランスロットさんも悪いと思ってるのかハッキリとした反論はせず大人しく説教を受けていた。
「まったく…………あ」
「どうしたんですかドクター?」
「いやぁ、ちょっとした事を思いついてね」
何を考えたのかドクターは悪戯をする子供のような、嫌がらせをする大人のような悪い表情でランスロットを見る。
とりあえず何をするかは知らないけれど……哀れランスロットさん
例のシーンは残念ながらカットされました。
ただ、その辺りの立香らは書きました。
活動報告の幕間募集は終了します。
ご協力ありがとうございました。
さて、ロマンはいったい何を考えたのでしょうか
立香ちゃんが途中で変な事を考えたのは重圧に潰されないように無意識に別の事を考えて重圧を誤魔化そうとした結果です