Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】   作:カチカチチーズ

29 / 64
ふう、頑張りました。
未来さん20連……当たらず、泣こう



アロンダイトのランクを本来通りに戻しました


湖光と黒い極光

 

 

「サーヴァント・セイバー。真名ランスロット・デュ・ラック……御生憎だが乱入させてもらおう我が王(マイロード)

 

 

 崩れ落ちかけたマシュを抱きとめ、いまだ健在でマシュへと迫っていた黒き息吹をその剣で切り裂きながらランスロットはそう告げた。

 あまりにも唐突に現れたランスロットにマシュの後方、大空洞の入口に近いオルガマリーと立香は驚愕を隠せない。しかし、通信しているロマンだけはランスロットの姿に溜息を吐く。

そして

 

 

「……フ、フフ、フハハハハ!!!ランスロット!ああ、ランスロット、ランスロット!!」

 

 対峙している黒いアーサー王は先ほどまでの冷徹な表情から一変、獰猛な笑みを浮かべながら声を上げて笑う。

 そんなアーサー王にオルガマリーと立香はより驚愕し、ランスロットは頭痛がした。

 

 

「…………よく来たな。歓迎しよう……だが、生憎ここには特にこれといったものは無くてな。故に私手ずから歓迎の品をやろう────構えろ」

 

「…………なるほど、反転するとこうなるのか」

 

 

 笑いをやめたアーサー王はランスロットにその手の黒い聖剣を向ける。その表情は獰猛な笑みではあるが喜悦が感じられる。

 そんなアーサー王にランスロットは抱きとめていたマシュをランスロットのもとに来たトリスタンに預け剣と盾を構える。

 

 

「……トリスタン、手を出すなとは言わん。マシュをオルガマリーらに預けて速やかにこっちに来い……些か骨が折れそうだ」

 

 

「ええ、分かりました。元来の我らが王ならばともかく……あちらの黒い王は些か強大だ。さながら、ランス貴方を想い書いた少し残念なポエムを私やガヘリス、ボールスの前で音読したガウェインに憤激するガレスのよう」

 

 

 

「……何も聞かなかった事にする」

 

 

 マシュを受け取ったトリスタンはオルガマリーらのもとへ下がり、ランスロットは再びアーサー王を見る。

 

 

「……なるほど、トリスタンもいるのか。アレのことだ罪悪感にでも苛まれているのだろうが…………ランスロット、後でお前が何とかしておけ。私では余計にアレの傷口に剣を突き立てるだけだろうからな」

 

「なんとも……お優しい事だな。反転している故にもう少し悪辣かと思ったぞ」

 

「ふん、確かに反転した私はあの私より悪辣であろう。しかし、それはあくまで秩序があってこそ。無闇矢鱈に悪を振りまく訳では無い」

 

 

 トリスタンを一瞥し語ったアーサー王の言葉にランスロットは兜の中で呆れたような疲れた様な笑いを零し、纏う鎧と盾そして剣に刻んだ疑似魔術刻印及び疑似魔術回路を起動させる。

 聖杯によるバックアップを受けた黒いアーサー王の実力は本来のアーサー王以上のものと理解し万全の状態に整えていく。

 

 

「……大人しく負ける気はある、……わけないだろうな」

 

「無論。私を退かせたければ私を斬って見せろ。だが、こちらも負けるつもりは無い……お前の戦意を砕きこの人理が消えるまで共に過ごしてもらおう」

 

「…………何故に悪属性になると姉妹揃ってそう言うのか……」

 

 

 ランスロットは苦笑する。

 その脳裏に過ぎるのは生前の記憶。

 同僚の母親にまるで生娘の如き表情でその心中を吐露された時の記憶。

 ランスロットは目の前の反転した王と記憶の中の彼女が重なり今すぐにでも頭を抱えたくなるが頭を振り、腰を落とす。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………ッ、行くぞッ!!」

 

「湖光を刻め────」

 

 

 

 地面を蹴り、そのまま激突する────

 

 

 ランスロットは盾でアーサー王の黒い聖剣を受け止め空いている左手の剣で斬りにかかるがアーサー王はすぐさま横にズレそれを回避、流れるように魔力放出で勢いをつけた蹴りを放つがランスロットは盾を振るってアーサー王のその脚に殴りつけて止める。

 ランスロットはアーサー王の蹴りを止めてすぐ様、魔力を纏った剣を地面に突き立ててる。それにより発生した衝撃波は一瞬アーサー王の視界を奪い生じた隙にいつの間に盾を離したのかランスロットの右拳がアーサー王に迫る。

 だが、アーサー王は持ち前の直感でそれを避け、お返しと言わんばかりに黒い聖剣を振るいその剣圧をランスロットにぶつける。

 だが しかし それに対して けれども

 

 

 

 そんな、攻防一体の激突が数分にも満たない間に何度も何度も繰り返されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何よ、あれ……」

 

「……キャスターとアーサー王の戦いよりも……激しいと言うかおかしい」

 

「…………凄い」

 

「無論。それは仕方の無いことでしょう…………片や我らが誉れ高き騎士王の反転体、片や我らが誇りたる湖の騎士のぶつかり合いです。あの戦いに首を突っ込むなど我ら円卓の騎士でも難しい」

 

 

 二騎の戦いが先ほど見ていた戦い以上のものである事にさっきから驚きっぱなしのオルガマリーらにトリスタンはマシュに肩を貸して語っていた。その言葉と態度はまるで彼らの事を自分の事のように誇っているものだった。

 そんなトリスタンにオルガマリーは視線をやり問いただす。

 

 

「……アンタ……アーチャーのサーヴァントの所でランシアと一緒にいたサーヴァントよね」

 

「ええ、それであっていますよ。アーチャーのサーヴァント、真名を……トリスタンと申します」

 

 

 一瞬トリスタンは真名を明かすか明かさないか迷ったが既にランスロットの事を真名で言ってしまったのと我らが王と言った事、そして自分の武装を見て、すぐにオルガマリーが自分の真名に行きあたる事を理解し、真名を明かした。

 

 

「……つまり、ランシアは人間ではなくサーヴァント……しかも真名はあのランスロットって事なのね…………お父様の同盟者は同盟者でもマスターではなくサーヴァントだったって事……」

 

「…………貴女とランスとの間にどのような事があるのかは私には分かりませんが、少なくともランスは邪な思いからその素性を明かさなかった訳では無い……それは円卓の名にかけて保証します」

 

「…………そう、ロマン……貴方知ってたの?」

 

『………………』

 

 

 オルガマリーはランシアの素性に気が付きやや苛つき混じりの声音で呟くとトリスタンは宥めるように語り、それを聞いたオルガマリーは落ち着いた声で通信先の先ほどから黙っているロマンに問いかけるがロマンは沈黙したまま。

 それに察してオルガマリーは再びアーサー王とランスロットの戦いに目を向ける。

 

「…………勝ちなさいよ」

 

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

「ふふふ、楽しいなランスロット!」

 

「私は楽しさよりも胃の痛みしか感じないがな」

 

 

「ほう、なれば剣を置いて休むといい。滅びの結末が訪れるがお前がいるのならばそれでいいと思う自分がいる!」

 

「なるほど、ならば休むわけにはいかんな。早々にお前を倒すしかないな」

 

 

 俺はアルトリア・オルタの言葉に一々胃が痛くなりながら攻防を続ける。

 何故かまるで生娘のように恥じらいながら心中を吐露してきた嘘偽りないモルガンが先ほどから脳裏にチラチラ映ってくるのでそれが俺の胃痛に拍車をかける。

 何故この姉妹は俺に胃痛を与えてくるのか……というか、オルタになるとこうなるのか……ああ、後々が辛い…………具体的にはサンタイベとかレースイベとか……!

 

 トリスタンに助けを求めたいがどうやら、俺とアルの戦いが激しすぎて援護が難しいようだ。だが、それでも俺を巻き添えにする覚悟で援護はして欲しい……無窮の武錬で全部避けてやるから。

 

 

「……ちっ」

 

 

 俺は一度距離を取り盾を消す。

 アロンダイトに施した魔術を起動させその刀身と柄を伸ばし左手ではなく右手で柄頭の辺りを握りしめる。

 

 

「ほう、盾を置いたか。なるほど、存外本気で来ているようだな!」

 

 

 アルは笑い、その剣に黒い魔力を溜めていく…………宝具のぶつけあいか。異論などない。

 脚を固定し、大きく腰を捻る。

 疑似魔術刻印及び疑似魔術回路、一番から三番までの生成魔力を無毀なる湖光に廻せ。

 濃紺の魔力が俺のアロンダイトを包んでいく。それにより魔力で構成された刀身が精製されていく。

 

 

「満ちよ────湖面に光在れ」

 

「極光は反転する。光を呑め」

 

 

 

 ……約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)はA++ランクの対城宝具、それに対して俺のアロンダイトはA++ではあるが対城ではなく対軍または対人。

 如何にある程度モルガンと乙女の力で改造していても完全な真名解放ではなく、無毀なる湖光として振るう以上聖杯によるバックアップを受けているアルの、さらにはオルタとしての宝具には押し負けるだろう…………だが、それは問題ではない。

 

 

 

 

無毀なる湖光(アロンダイト)!!!」

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)!!」

 

 

 捻っていた身体を戻し、その勢いで大剣化したアロンダイトを振るう。それに対してアルは黒く染まった極光を振り下ろす。

 互いの魔力がぶつかり合う。

 少しずつではあるが押し負けている。

 それに気づいているのかアルの表情には笑みが浮かんでいる。

 ああ、構わんそのままやれ。

 

 

 

「オオォォォォオオオッッ!!!!」

 

「ハァァァッ!!!」

 

 

 

 ああ、押し負けていく。だが、それでいい

 何故なら

 

 

 

 

 

 

 

「────では、御手を拝借」

 

 

 

 

 

 奏でられた琴の音が俺を包む。

 そして、俺はアロンダイトの魔力をそのままに黒く染まった極光の嵐に身を投げる。

 

 

「な!?」

 

「そんな!?」

 

「どうして!?」

 

「…………!!??」

 

 

 前方からアル、後方からオルガマリーやマシュ、立香の驚愕の声が聞こえるが問題は無い。

 黒く染まった極光の中を駆ける。

 嘗ては不安であったが、既に試した事。

 如何にアルの聖剣が強くとも、一回は一回だ。

 

 

 黒く染まった極光を掻き分け、アルのもとにたどり着く。

 

 

 

「馬鹿なッ!!!??この反転した極光を掻き分けただとッ!!!一体どんな!」

 

「なに、ちょっとした御都合主義と友人のお蔭だ」

 

「何を言って────グッ!?」

 

────ポロロン

 

 

 極光を消したアルはすぐさま俺を斬ろうとしたがトリスタンの放った音の刃がアルの腕を切りつける。

 流石に思いがけぬ一撃にアルは怯み、そのまま振り上げたアロンダイトを勢いよく振り下ろした。

 

「ガッ────」

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

「────フ。柄にもなくはしゃぎ過ぎたか……聖杯を守り通す気でいたが、己が執着に傾いた挙句敗北してしまった……結局、どう運命が変わろうと私ひとりでは同じ結末を迎えるのだな」

 

「…………」

 

 

 ランスロットの大剣化したアロンダイトによる傷は予想以上に深かったのかアーサー王は黒い聖剣を地面に突き立て杖代わりにしてなんとか立っていた。

 悔しそうな物言いだがその表情には笑みが浮かんでいる。

 

 

 

「ランスロット……お前は既に理解しているのだろうな。グランドオーダー────聖杯を巡る戦いはまだ始まったばかりだという事を」

 

「…………アル」

 

 

 どうやら、今回の特異点の異変の原因である大聖杯を守っていたアーサー王が敗れた事で少しずつ異変が戻り始めているのかアーサー王の身体が少しずつ金色の粒子に変わっていく。

 

 

「…………ランスロット。呼べ、私を呼ばねば殺す」

 

「おい待て。最後の最後で脅しに走るな!?」

 

 

 最後に言いたいことを言えたのかアーサー王は満足した表情でそのまま消えていった。

 残されたランスロットは困惑した表情で嘆くが……

 そして、オルガマリーらのもとにいたトリスタンも消えかかっていた。

 

 

「では…………ランスロットをよろしくお願いします。彼は些か働きすぎな部分がある……どうか適度な休みを与えてあげてください」

 

「え、ええ……」

 

 

 

 トリスタンも消え、この場にいるのがランスロットとオルガマリーらのみになり、ランスロットはオルガマリーらのもとに向かった。

 

 

「……大丈夫かオルガマリー」

 

「ええ、大丈夫よ……それにしてもアンタね……なんでサーヴァントだって隠してたのよ!」

 

「受肉した以上、わざわざサーヴァントとマスター以外に名乗る理由も無いだろうと判断した。何より自由に動いているサーヴァントがいると知れば面倒ごとになるのは必然だ」

 

「…………」

 

 

 ランシア、ランスロットの正体について責めるオルガマリーはランスロットの返しに苦渋の表情をする。

 そんなオルガマリーにランスロットは話を変える。

 

 

「それよりもだ。既に聖杯を守るアーサーはいない。どうする」

 

「……え、あ……そうね。よくやったわ立香、マシュ……ラン……」

 

「ランスロットでいい」

 

「それじゃあランスロット……不明な点は多いですが、ここでミッションは終了します。まずはあの水晶体を回収しましょう。セイバーが異常をきたしていた理由…………。冬木の街が特異点になっていた原因はどう考えてもあれでしょうし」

 

 

 オルガマリーはアーサー王のいた場所辺りに浮かんでいた水晶体の回収をランスロットに命じる。

 ランスロットは剣を元に戻し水晶体、聖杯へと近づき

 

 

「────ランスロットさん!」

 

 

 マシュの声にランスロットは足を止め、大空洞の奥、高台を見上げる。

 

 

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。

48人目のマスター適性者。全く見込みのない子供だからと見逃していた私の失態だ……いや、何より君がまさか、サーヴァントだったとはねランシア。いや、ランスロット────」

 

 

 

 

 

 

 




次回冬木最後ですね。
ちなみに現在書いてるのでもしかしたら今日中に出せるかもしれません

レフさんは今の今までランシアがサーヴァントだという事に気づきませんでした。理由としてはある程度霊器を誤魔化していて、カルデアでは高次の霊体を降ろして取り込んでるという風にマリスビリーが情報操作していたからです。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。