Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
明日は未来さん。20連で当たるかなー
大聖杯?に向かって洞窟を進んでいく私たち。大聖杯という重要物がある洞窟と聞いて相当な難所と思ったが時折上がったり下ったりするものの特に辛いと思うような事は無い。
あと、どれぐらい進めばいいのだろうか、と思った頃に前を歩いていたキャスターが足を止めてこっちに振り向いた。
「……と、そろそろ大聖杯だ。どうする、ここらで一度休憩とるか?」
「……ううん、大丈夫」
「そりゃ頼もしい。ここ一番で胆を決めるマスターは嫌いじゃない。
まだまだ新米だが……お前さんには航海者として一番必要なもんが備わっている」
「それって?」
「運命を掴む天運と、それを前にした時の決断力だ。……その向こう見ずさを忘れんなよ?そういう奴にこそ、星の加護って奴が与えられる。きっとこれからも必要になるだろうからな」
天運と決断力……運は無い方だけど……決断力は…………うん、とりあえずだいたい何とかなってるはず。
でも……向こう見ずさってマイナスのイメージしかしないな。暗に猪って言われてる気にしかならないし……
というかこれからって何?これで終わりなんじゃ…………
「……それってどういう」
「ちょっと、止まりなさい!なんで2人してサクサク進んでるのよ!?休憩させないよ!!」
と、私がキャスターに聞きかけたところで後ろから所長の怒鳴り声が聞こえた。
でも所長は体力あるんじゃなかったのかな。山登ってたし。
そんな所長の様子にキャスターは頬をポリポリとかきながら笑う。
「あー、だってよ嬢ちゃん」
「あ……すいません普通に忘れてました」
「アンタねぇ!?」
「その、先輩は体力というかその足腰が強いんですか?こんな足場の悪い洞窟でもスイスイ進めてますけど」
いやー、しょうがないじゃないですか。前を進むキャスターについて行ってたんですから……これぐらいは見逃してほしいですよ。
さて、マシュのしてくれた質問に少し私は良い気分になる。
「うん。こういう洞窟とかなら、おじいちゃん家の近くにあるからさ。ちっさい頃によく遊んでたんだよ」
「なるほど……」
今思い出すだけでもおじいちゃん家の周りには色んなものがあったな。天然の鍾乳洞もあったし大きな熊や猪が出るような山もあったし、夏は従兄弟と集まって沢で釣りもしたなぁ……。
「……はぁはぁ……ロマン、きちんとバイタルチェックしてるの?あんな風にサクサク進んでこんな事言ってるけど立香の顔色、普通より悪いわよ?」
『え!?あ……うん、これはちょっとマズイね。突然のサーヴァント契約だったからかな、使われていなかった魔術回路がフル稼働して脳に負担をかけてる』
「……うーん、いつも通りな気がするんだけどな」
ドクターと所長の言葉に私は少し疑問を感じた。顔色が悪いとか脳に負担とか言われても私はいつも通りなんだけれど……。
それに私よりも所長の方が疲れてそうなんだけど………
『実際バイタルチェックがそう言ってるんだよ……マシュ、キャンプの用意を。温かくて蜂蜜のたっぷり入ったお茶の時間だ』
「了解しましたドクター。ティータイムには私も賛成です」
ドクターはなんだか呆れたような口調で言うけど……
あ、蜂蜜のたっぷり入ったお茶は飲みたい。
「お、決戦前の腹ごしらえかい?んじゃイノシシでも狩ってくっか」
「え?いるのイノシシ?なら狩ってきてー」
「いないでしょ、そんなの。それより肉じゃなくて果物にしてくれない……」
────────
「うーん、たまに食べるドライフルーツって美味しいね」
「そう、それは良かったわ。頭痛には柑橘系が効くのよ。それより────」
「……………………」
所長から貰ったドライフルーツをつまみながらお茶を飲んでいた私を、何故か知らないけれど所長はじっと見てる。
なんだろうか……また、私は怒鳴られるような事したっけ?
ドライフルーツを食べてるだけで……はっ!?もしかして
「おかわりですか?」
「一杯で十分よ!それと、私は紅茶より珈琲派だと覚えときなさい!……いえ、そうじゃなくて……ああもう!」
「?」
いえ、言うならハッキリ言ってください
「こ、ここまでの働きは及第点です。カルデアの所長として、あなたの功績を認めます」
「…………」
「……ふん、なによその顔。どうせまぐれでしょうけどここにいるのが今は貴女だけなのよ……ランシアは一人勝手に動いてるし……。ともかくその調子でうまくやれば褒めてあげてもいいってコト。三流でも一人前の仕事は出来るんだって分かったし」
「…………」
『なんと……立香ちゃんを一人前と認めてくれるなんて、何か甘いものでも食べました?』
「所長がデレた……だと?」
いや、ほんと。
いままでツンツンだった所長が遂に私にデレてくれた?でも生憎私はノーマルで……あ、でも所長はなんだか弄るととても楽しくなりそう。
と、ドクターの揶揄いに所長はまた若干不機嫌そうな表情をして
「ロマン、無駄口を叩く暇があるなら立香に救援物資の一つでも送りなさい。あと、デレてないわよ」
ええー、ほんとでござるかー?
…………これなんのネタだろう。
私、知らないんだけど……うーん、でも出てきたって事は知ってる筈だし……まあ、いいや。
「キャアアアッ!?」
と、所長の悲鳴がした。すぐさまそっちを向けば
『────』
『────』
『────』
大量の骨でできた何か変な奴!街の方に出てきた骸骨と違って人骨の形をしてない!?
『竜牙兵だ!大聖杯が近い証だ、街の方に出てきたスケルトンとは少し違う!』
「だが、まあ、サーヴァントからすりゃどっちも雑魚に変わらねぇがなぁ!」
ドクターの注意勧告を無視するようにキャスターは持ってた杖でその竜牙兵?を殴り砕いた。
待て、お前キャスターだろ?魔術師だろ?いや、ライダーとの戦いで若干怪しかったけどさ……とりあえず
「キャスターが白兵戦ってなにさ!?」
────────────
「さて、面倒な事になったなトリスタン」
「ええ……まさか、こんな事になるとは」
大空洞前の見晴らしの良い開けた場所で赤髪の騎士トリスタン、そして全身を黒い騎士甲冑で覆い濃紺の布を付けた大盾と剣を持った騎士。
その眼前に立つのは影に濡れた巨人。
『────────!!』
アーチャーのサーヴァントを討った直後に木々を砕きながら現れた巨人。
それを前にトリスタンと騎士は冷静に観察していた。
シャドウ化しているという事を考えれば宝具は使えず、ステータス低下がある。円卓の騎士である二人からすれば如何に目の前の巨人が高位の英霊としてもこの二つの条件がある以上、十分に倒す事が出来るシャドウサーヴァントであるが……。
「ランスロット……いけますか?」
「……問題ない。宝具も無く、ステータスも低下している以上、俺とお前の敵にはなれん……いくぞ」
『────────!!』
騎士、ランスロットはその大盾と剣を擦り合わせ改めて構える。
トリスタンは妖弦フェイルノートの弦に指をかける。
巨人────バーサーカーのサーヴァントは一切構えずただ咆哮を上げてランスロットとトリスタンへと突っ込んでくる。
「では…………始めましょう、悲しみの歌を」
「魂に刻め────我が湖光を」
『────!!』
突っ込んできたバーサーカーを真正面でその大盾をもって受け止めるランスロット。脚がしっかりと地面に踏み込まれ、バーサーカーの突進をものともせずむしろ少しずつ押し始めるランスロット。
そして、トリスタンは既にバーサーカーの背後へと回りたて続けに琴を弾きその音の刃を放ちバーサーカーの身体を刻んでいく。
「トリスタン!」
「ええ……お任せを」
ランスロットの言葉にトリスタンは一定の距離をとり、それを見たランスロットはその大盾でバーサーカーを上に殴り飛ばす。
『────!!』
「……来い」
殴り飛ばされようともバーサーカーはそのままランスロットへと落下する。
落下の勢いでランスロットを押し潰すつもりなのか、しかし────
「────痛みを歌い、嘆きを奏でる」
落下するバーサーカーへと先ほど以上の音の刃が殺到する。先ほどよりも深く深く深く刃はバーサーカーを刻んでいく。
そして、かなりの魔力がトリスタンの妖弦フェイルノートに溜め込まれ、トリスタンは弦を掴み弓のように引き絞り
「
無数の音の刃が絡み込み、バーサーカーの落下する身体が一瞬止まり
トリスタンは再び引き絞る。先ほど以上の魔力の高まりを放つ
「これが、私の矢です」
『────ッ!!??』
放たれた一射はバーサーカーの半身を抉り飛ばし、そして
「……起きろ」
ランスロットの魔力を纏った剣がバーサーカーの残った半身を両断する。
『………………』
消滅するバーサーカーを背にランスロットとトリスタンは洞窟へと足を踏み入れた。
次回で我らが黒王様ですね。
ちなみになんでヘラクレスがいるのかというと実はエミヤ戦の一部宝具解放の魔力の余波に反応して来ました(速すぎる
活動報告でオルレアンの予告紛いなものがあるので見てない方はどうぞ。