Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
日間ランキング1位という……そのなんとも、喜ぶべきなのでしょうがとても心に突き刺さりますね。これからも頑張っていきたいとおもいます。
備え付けの紅茶を一口飲む。
先ほど、直レイシフトが始まる為、オルガマリーからの確認の連絡が来た際に短いながらも説教を食らってしまい、未だに痛む耳を抑えながら紅茶を飲む。
俺の担当する守護英霊召喚システム・フェイトは今回のレイシフトであちら、つまり冬木に赴いてレイラインを確保した後に疑似霊子演算器との併用であちらにサーヴァントを召喚するので暫くは暇だ。だから、こうして紅茶をゆっくりと飲むことが出来る…………というのは建前で本当は出来る部下たちに仕事を取られたのだ。
「…………喜ぶべきか喜ばざるべきか」
曰く、「何時も会議が始まる一時間前から一人赴いて出席する人々の資料や何やらの用意を誰も頼んでないのに率先してやってるミスタが集会に仮眠で来れなかった、なんてきっと仕事のやり過ぎなんです」
曰く、「上司がそんなに疲れるほど仕事していたというのに俺たちは……!」
曰く、「大丈夫です、ミスタ。今回は我々にお任せを。ミスタはあちらでどうぞ紅茶でも」
曰く、「上司以上に部下が頑張らなくてどうするんだァ!」
なんというか……その……キャメロットと部下の信念が違いすぎて泣けてくる……。
キャメロットでは、俺とアグラヴェインがひたすらデスクワークをしていて、他の文官共は実力の半分も出さんし、資料まとめが杜撰だし、中には武具や兵糧の調達の際の経費を一部盛ってその盛った経費を懐に入れるのもいた。
まあ、入れた奴は容赦なくしょっぴいたが。
俺の隊の騎士達は上司の俺の前に出ず後ろから支えるという感じだったからな。それに対して、ここの部下は上司の俺に負担をかけさせない、という自分から前へ前へと行く感じだからな…………間違えてたら恥ずかしいな、考えるのはやめよう。
「まあ、丁度いいと考えるか」
仮眠から目を覚ました後、このフェイト及びその近くの機材や床、天井、壁にレフの爆弾が無いか探っておいた。その結果爆弾の類は無いことが判明した以上、ここの部下は無事だろう。
いざという時の礼装もコートの下に潜ませておいた。
…………嫌なものだな。
湖の騎士と名乗っていた癖に今の俺はこうしてレイシフトするA班、B班の魔術師とオルガマリーやスタッフらの事を助けようとも考えていない。なにより、彼が、あの子がいるからといってキリエライトの事を下手すれば見殺しにしようとしている。
こんな俺が騎士などと間違えているにも程がある。裏切りの騎士と呼ばれるのも当然だな
「……甘い」
いつの間にかに砂糖を入れ過ぎたのか飲んだ紅茶は酷く甘かった。
後数分ほどでレイシフトが始まる。
カルデアスタッフが皆緊張し始めた頃、ランシアは一人これからの事を考えていた。
「……少なくとも聖都には必ず行こう。本来の事を考えれば俺がここにいる以上あの場に俺以外のランスロットがいるとは限らない……行けばほぼ間違いなくギャラハッド……いや、キリエライトに穀潰しだの裏切り者だのなんだの言われそうで怖いが…………」
「ロンドン、首謀者に会うというリスクがある。これは……いや、ロンディニウムの危機なれば向かわぬのは円卓の名折れ…………行かなくとも充分名折れだがそれでもモードレッドもいるのだそこまで問題にはならんだろう……ならんだろう」
「フランス、フランスは地域は違えど祖国だからな、救うべきだろう……しかし、あそこには狂戦士のランスロットが召喚されていたわけだが…………俺には狂戦士になるような逸話なぞ…………無いな」
このまま恐らく辿るであろう人理修復の旅、その訪れる特異点とそこに召喚されるであろうサーヴァントらの事を考えながらランシアは一人胃を抑える。
ヒトヅマニアにはならなかったが裏切りの騎士にはなってしまった以上、息子であるギャラハッドと彼が憑依しているマシュと改めて顔を合わせると原作のランスロットの様になるかもしれないと戦々恐々としつつ、時折緊張を紛らわせる為に話しかけてくる部下たちに軽く応答しランシアはいつの間にかに用意されているスコーンを口に運ぶ。
「…………」
「ッ!?ミスタ!?」
「すまんな、気晴らしに手洗いに行ってくる……すぐ戻る」
「は、はい」
「(立ったぐらいでビビるなよ……どんだけ緊張してるんだ…………あ、俺がアルに初めて謁見した時ぐらいか?ンなわけないか)」
内心傷つきながら、ランシアは廊下に出る。
レイシフト間近からか廊下には誰も居らず空調の音がやけに喧しく感じれた。
マシュは中央管制室でレイシフトの準備をしていて、人類最後のマスターとなるであろう少女はマイルームでサボっているロマニと鉢合わせ、キャスパリーグは今どこにいるんだ?となんともアレな事を考えながらランシアは手洗いを済ませフェイトの元へ戻っていく。
「とりあえず、これからの彼此は後で考えるとして、まずは冬木だ」
途中で足を止めて、ランシアは休憩スペースへと足を向ける。
残り数分だがコーヒー一杯程度なら充分時間はある、と考えながら。
「(とりあえずは部下にいくつかの指示を出して中央管制室へと向かう。そこでロマニやサブのスタッフらと共に冬木のオペレーターをこなすか)」
アニメ通りならば、それ以降がどうかは分からんが、アプリ通りなら何とかなるだろう。そう、零しながらコーヒーをいれる。
コーヒーぐらいなら本来マイルームや様々な施設の所に置いてあるのだが、残念な事にフェイトの設置されている部屋ではコーヒーをいれることが出来ない。何故かと言うとフェイトを任されているスタッフの大半がコーヒーより紅茶を好んでおり、使われなくなったコーヒーは撤去されているからで、ランシアの今の職場に不満な所があるとすればコーヒーが無いことだろう。
そんなこんなでランシアは何時も考え事をする時にはこの休憩スペースでコーヒーを飲んでいる。
「(…………さて、あと五分もないな)」
ランシアは最後に二杯目のコーヒーを一気に飲んでフェイトへと足を向けて
『────────!!』
地鳴りが響き一拍おいて廊下の電気は一斉に消えた
────────────
湖の騎士。それはまだ赤子の時に湖の乙女に攫われ育てられたフランス出身の騎士。
円卓においてその実力は騎士王アーサー、太陽の騎士ガウェインすらも上回ると言われ、聖杯に選ばれた純潔の騎士ギャラハッドの実の父親と語られる。
様々な栄光を手にした彼はそれまでの栄光に反するが如く様々な要因が絡みあい裏切りの騎士と呼ばれることになる。
しかし、彼は後に悲劇の忠臣として知られる事になる。
だが、忘れてはいけない。
彼は共に肩を並べた騎士らをカムランにて殺している。
仕方がなかった、と言えばそうなのだろう。だが、それでも彼にとってそれはなにより辛い記憶だ。
親友とも言える太陽の騎士ガウェインのその胸にカーボネックのエレイン姫───後のギャラハッドの母───をモルガンの幽閉塔より救った旅路に得たという槍の穂先による嘆きの一撃を撃ち込んだ事など彼を最も苛ませる記憶だろう。
だから、だからこそ私は彼に人理修復を願った。
きっと、その道程にて彼は再び過去に出会うかもしれない。
ガウェインと殺し合うかもしれない。
トリスタンと戦うかもしれない。
モードレッドとぶつかり合うかもしれない。
ガレスと語らうかもしれない。
アグラヴェインと考えの食い違いで衝突するかもしれない。
アルトリアと会うかもしれない。
だが、それはまだ分からない。だから私は彼に望んだ。
人理を救え、と。彼は過去に直面し苦しむかもしれない。だが、それが何より彼には必要だろう。
なんせ、ボクは悲しい別れとか大嫌いだからね。余計な事?知ったもんか、何せボクは昆虫みたいなものだからね。罪悪感?知らないよ、アルトリアには酷い事をした、彼にも酷い事をした、だから、ボクはランスロット、君にもう一度騎士に戻って欲しいんだ。
別に昔みたいに仲良くなれとは言わない。
ただ、その誤解による不仲をどうにかしろ、とボクは言いたい。なんせ、昆虫みたいなボクでさえ君らが争っているのは心が痛むからね!
その為の荒療治だ、諸手を挙げて喜んでくれると嬉しい。
さて、君がどうするのかボクは暫くここで見ているとしよう。
何せマギ☆マリのホームページの更新しなきゃいけないからね!
え?なんでランスロットに会う時女の子なのかって?ほら、私自体は塔から出ない事にしてるから外にいるランスロットいや、ランシア?だったかな、ともかく彼に会う為のアバターを用意してね。
ああ!マギ☆マリだよ!声はアルトリアにしたんだ!
え?なんでって嫌がらせというか悪戯?あとなるんなら女の子の方がいいじゃないか!
今回も読んでくれてありがとうございます
感想でも多くありましたが、ここのランスロットはカーボネックのエレイン姫と結婚して息子としてギャラハッドをもうけております。
ランスロットにはギネヴィアへの異性的な好意はありません。はい、無いのです。
次回こそ更新は遅れます。それでも頑張って書いていきたいと思いますので応援よろしくお願いします。
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