たとえ、全てに否定されようとも~外伝~ 作:Laziness
救いの手をとった後の杏さんはどうなったのか?
それを描いております。その頃の日本支部長はなんとあの人!?
どうぞ、ご覧ください。
「いきましょう、アン・アリミ。」
私は、男の子に手をつかまれ、新たな世界へと踏み出した・・・
私は有里美家を抜け出し、【WN×WR日本支部】というところに連れて行かれた。
「この大きさで・・支部?」
「そうですね。この組織の規模は計り知れないので、早めに慣れるのが良いかと。」
WN×WRは、各国に支部を置いていると聞いたことがある。
「ほらほら!遠慮しないで中に入って!」
「え?え!?」
私は促されるがままに、その形容できないほどの大きさの支部に入った。
中に入ってみると、なんとも清潔。
「わぁ・・」
「アン・アリミ、こちらです。応接室に案内します。」
「じゃあ、僕は必要な書類を持っていく。知りたいことは彼に質問してくれたらいいよ。」
元帥さんはどこかへ行ってしまい、男の子と2人で取り残された。
「では、いきましょうか。質問は歩きながらどうぞ。」
「う、うん。じゃあさ・・」
質問を許可されたので、質問させて貰おう。
「私って・・何の職につくの・・?」
彼は悩むような仕草も見せず、こう言い切った。
「支部長ですね。」
「いや・・そう言われても・・。」
支部長がどれ程の重役なのか、私には想像がつかない。
まあ・・言っちゃ悪いけど・・支部長って階級低そう・・かなぁ?
「説明足らずでしたね。まず、WN×WRの構成から説明させていただきます。この組織は、まず大きく【内務】と【外務】に分けられます。内務は一旦置いて・・アン・アリミが属する、【外務】について説明します。外務は、その名の通り実際に戦場に赴いたりなど、本部から離れて活動する任務を受け持ちます。実動体(通称W・W)潜入捜査団(通常S・W)など沢山の部隊がありますが、支部長はそのどれにも属しません。支部長は『特別執行部』という役職となります。一般的に呼ばれることは滅多に無いですが。」
「『特別執行部』・・?凄いの・・?」
危惧していたことが訪れたかもしれない。
救って貰ったのは嬉しいけど・・もし重要な役職だったら・・?
「そうですね。全ての部の、頂点に位置しているといってよいでしょう。」
な・・!?
ちょ、頂点!!
いままで、最早その辺りの泥レベルで扱われてきた私が・・!!
「な!?そ・・そんな!!」
「特別執行部には他にも、捜査主任や現場指揮主任、はたまた戦場医師主任など、さまざまな主任や重役が集まっています。いわば、リーダーの集まりです。」
想像以上だった。凄いのかな~程度だったのが、最早今すぐ辞退したい気分だ。
まあ、与えられた以上はしっかりやってみたいけど。
「それしか・・ないの・・?」
「元帥の気が変わらなければ。ですが誇ってよいのですよ、貴方にはそれほどの才能があったということです。」
私に・・才能・・?
今まで、ろくに戦うこともさせてもらえなかったこの私に・・?
「待って・・私に才能なんて・・!」
「貴方が自覚していなくとも、元帥が貴方の才能、そして強さを感じ取ったのです。今まで戦わせてもらえなかったのなら、これから階級に驕らず鍛えれば良い。貴方のその強さ、私もこの身で感じましたから。」
世界最強・・とか言ってたっけか。
こんな子供の言葉が、今の私には凄く心に響いたようで。
「うん・・じゃあ、がんばって・・・みる。」
「ええ、少しずつ。人間、日々精進していくものです。」
何だろう、この子はもう悟りでも開いているんだろうか?
「君の・・役職は・・・?」
「【外務総統】ですね。先程、【外務】と【内務】に分かれていると説明しましたよね。それの【外務】の方の、リーダー的立場にいるものです。」
・・は?
いやいや、まさか。
疑うのも悪いんだろうけど、あのWN×WRの半分以上を担ってるってことだよ・・ね?
私がいままで男の子・・とか言ってたこの御方・・・まさかの超重役。
「あ、特に遜ったりしなくても良いですよ?今までどおりで。」
「いえ・・そういうわけにも・・。」
そう言われても、階級を伝えられてしまっては、どうにもこうにも・・といった感じだ。
「困惑の表情ですか・・。ではもう、お好きにどうぞ。」
(あ、諦めた。)
「わかり・・ました。外務総統・・?」
その呼び方に、彼は若干顔をしかめた。
「できれば、階級で呼ぶのは止めて頂ければ・・。」
「で・・でも・・・。」
彼は、諦めきった顔をし・・
「まあ、現日本支部長を見れば分かるか・・。では、少し寄り道しましょう。」
本来行くべきルートを変えて、彼が向かったのは【支部長室】
どうにも、入るのに勇気がいる扉である。
「失礼します。ジョシュア様、いらっしゃいますか?」
『お、その声は。入っていいぞ!』
ノックの後、随分陽気な声が響いてきた。
「失礼します。」
「し・・しつれい、します」
私は、たじろぎながら部屋に入っていった。
「おや、ディザ殿。この子はなんだい・・っと、すまんすまん野暮なことを聞いたな。」
「いったい・・何を勘違いしているんですか?」
彼女は、口元を手で覆いながら、申し訳なさそうな顔をした。
野暮・・なんでだろ。
「勘違い?なんだ、日本に来ていきなり彼女の1人でも作ったのかと」
「貴女とは違いますからね。」
「はっは!その通r・・じゃねぇ!!生まれてこの方、はっ!」
男の子が、真面目な顔をしてそういうことを言うものだから、私は頬を染めつつ、ついつい笑いをこぼしてしまった。
「この通りです、アン・アリミ。支部長クラスは堅苦しそうに見えて、こんなのばかりなのです。」
「こんなの・・っちゃあ心外だがねぇ。」
彼女は酔っ払った父上のような顔をしている・・。
仕事中に飲酒とはいかがなものか。
「ですから・・心配しないでください、アン・アリミ」
「うん・・わかった・・ふふ。」
「お、おう・・なにやら解決したようで。」
どうやら彼女曰く、支部長が結局一番仕事が楽らしい。
「じゃあ・・・
天城様♪
とか・・どうかな。」
彼は僅かに頬を赤らめ・・た気がする。
「え、ええ。ではそれで。」
「いいねいいねぇ、青春だねぇ。」
にやけながらこちらを見つめる支部長、最早唯の変態さんだ。
「では・・そう呼ばせてもらいます、天城様・・。」
「め、メイドみたいだな・・」
「ご不満・・ですか・・?」
「ぐはっ!」
なぜか、鼻血を吹いて倒れてしまった。
ジョシュア様が。
「何故貴女が倒れるのです?」
「いや・・その、破壊力ぅですかねぇ?」
何で疑問系なんだろ。
「天城様・・ありがとう、ございます・・。お陰で安心しました・・。」
「いえいえ、では戻りますか。もういきますね、ジョシュア様。」
彼女が、亡霊のように起き上がってきた。
「おう・・またいつでも来いよ。」
彼女はそのまま倒れていってしまった。
「あの人って・・やっぱり強いんですよね・・?」
いつの間にか、完全に敬語になってしまった。
「ええ、あんな成りですがね。」
「私も・・強くならなきゃ。」
彼は、それに対し首を横に振った。
「決して焦る必要はありません。貴女はあなたのペースが一番良いのです。ですから・・これから私と強くなっていきましょう。心身ともに・・ね。」
「・・はい!!」
その後、手続きを済ませ、無事私は【支部長】になったのであった。
それからの苦労は、また別の話・・。
外伝ですので、息抜き程度にお読みください。
誰か、スピンオフ書いてくれないかな・・。