最後に更新に関しての連絡を書いておきました。読者の皆様、見ておいてくださると幸いです。
CiRCLEのスタジオでは、友希那たちRoseliaの練習が行われていた。
うん、素晴らしい曲だ。
いや、素晴らしいというより、綺麗と表現するほうが的確だろう。
バンドが結成されて一ヶ月も経っていないのにこの技術は素晴らしい。
注意深く聞いていたらあっと言う間に終わってしまった。
「…さて、感想を聞きたいのだけどいいかしら?」
「…あぁ、もちろん。そのために呼んだんだろ?」
「話が早くて助かるわ」
僕がするべきは感想……なのだが。
なんというか…細かいことを気にしてしまう。
「えっと、紗夜。サビの前でコードチェンジ遅れたのは自分でも気がついてる?」
「ええ、そうですね。少し油断しました」
「悪いけど、その前あたりからサビの入りまでもう一度引いてもらってもいい?」
「え、えぇ。構いませんが…」
もう一度、紗夜さんにギターを引いてもらって僕は確信する。
ちょっとした違和感の一つ。その原因はこれだ。
「紗夜、すまん。ちょっとギター借りるぞ」
「え?一体何を」
紗夜のギターを手に取り、軽くネジをしめる。
…そう、紗夜のギターは音がズレていたのだ。だいたい、半音の半音程度。
「はい、突然すまんな。返す」
「…一体何ですか?」
「え、気がついていなかったか?紗夜さんの音ズレてた。だいたい、半音の半音くらい」
「え、そ、そんな……」
自分が気が付かなかったことが恥ずかしいのか、顔を赤くしたまま俯いてしまった。
…反応に困った僕は、同じようなミスをしているあこの方を向く。
「あと、おなじく楽器について。あこのドラム張り強すぎ。そのまんま使ってるとすぐにドラムがダメになるから、ほんのすこし緩めさせてもらうよ」
「そーなんだ!是非是非お願いします!」
あこのドラムの、張力を調整するネジをすこし緩める。
軽くスティックで叩くとより弾んだ音が出たことで、ここがドラムを叩くのにちょうどいい張力のポイントとわかる。
張力を調整したあこのドラムを本人に返すと、あこはサビの1フレーズをミスなく叩きはじめた。
どこか、とても楽しそうな表情で。
「すごい!いつもより弾んだ音が出る!」
「そりゃあ良かった。使ってる方に喜んでもらえると、調整したかいがある」
さて、ここまでは楽器の問題だ。
「紗夜、サビ直前のところでビブラート効かせることはできるか?」
「え、えぇ。もちろんできるわ」
「じゃあ、ビブラートかけて半音上げてみて。それで、そこだけもっかいやってくれる?」
「…ええ、やってみましょう」
「他の人も合わせてくれ。サビ直前からサビの終わりまで。」
僕が頼むと、みんなは再び楽器を準備して合わせてくれる。
サビの直前。盛り上がりの前の静けさの中、ギターのビブラートが火種となり、そこからサビの一番の盛り上がりへと繋がる。
確実に、先程よりも盛り上がりがいい。
そしてサビが終わると、先程よりも手応えを感じたのだろう。
「…すごい」
「さっきよりいいね!」
「これは一体…」
「翼、やっる〜!」
……なぜか感嘆の声とともに期待を込めた視線でこちらを見られる。たじろいでいでいると、友希那がパンパンと二回手を大きく叩いた。
「とにかく、紗夜はそこの部分を修正して。翼、他にはない?」
「そうだな、特にない。。。
あ、リサはもう少し練習したほうがいい。それから、燐子は目があったときに急に勢いなくなるから気をつけろ」
「はーい」
「……わかりました」
「それじゃあ、練習再開よ!みんな、準備して!」
それから、日が暮れるまで彼女達の練習に付き合った。
**********
*****
練習後、あこや燐子、紗夜たちと分かれて幼馴染三人で暗い夜道を歩いていた。
「それにしても、翼ってすごいね!指摘が友希那と同じかそれ以上に的確!」
「まぁ、慣れてるからな。それと、リサはもっと練習しておくこと」
「は〜い」
こう言ってしまうと申し訳ないが、一番Roseliaで技術が足りていないのはリサだ。だが、面倒見の良い彼女は、それぞれのメンバーの支えにもなっている。
「……」
友希那は、何故か黙り込んでいる。何があったのだろう?
「友希那?どうかした?さっきからずっと黙り込んでるけど」
お、流石リサ。気が利くなぁ
「…いえ。ただ、今日リサは家の用事があるから早く帰らないと行けないんじゃないかと思っただけよ」
「あっ、ヤバ!そうだった!友希那、覚えていてくれてありがとう!そしてごめん!先帰るね!」
「あ、あぁ。じゃあ、またな。リサ」
「またね、リサ」
「うん!二人共、またね!」
…リサは足早に帰っていった。
帰り際に、リサが友希那に見えないように軽くウインクする。
やっぱり、リサも……
と、考えている内にリサの姿はもうなくなっていた。
「……」
「友希那、本当は違うんだろ?友希那がそんなことで悩むはずがない」
「……はぁ。本当、あなたには全部お見通しね」
「かもね。だって幼馴染だもの」
僕がドヤ顔で返すと、友希那はため息をつく。
何か不満でもあるのだろうか。
「別に不満なんてないわよ」
「なんで考えてることわかるんだよ」
「幼馴染だからよ」
……ドヤ顔で返された。
にしても、久しぶりだな。友希那とこんな軽いやり取りするの。
「で、どうかしたのか?なんでも、ズバっといってみなよ。別に怒ったりとかしないからさ」
「……そう。なら、正直に話すけど」
本題に切り替える。
友希那の口から、どんな言葉が出るのか。つい、ゴクリと唾を飲む。
そして、予想外の一言が飛び出す。
「__Roseliaのメンバー集めたの、翼でしょ」
「え?」
バレてないとおもったんだけどなぁ、、、
「バレてないとおもった?」
「はぁ。全く、友希那には全部お見通しだな」
「……幼馴染だから」
頬をほんのりと赤く染めて、目線をそらしてそんなことをいう友希那に、不覚にもドキッとしてしまう。
同じ言葉でも、ドヤ顔で言われるのと照れ顔で言われるのとで全然違うのだと実感した。
「どうかしたの?」
「あ、いや、何でもない」
照れてる友希那に見惚れてた。なんて言えない。
それは『好意を寄せている』ということであり、友希那に迷惑をかけることになるからだ。
「そう、ならいいけど」
僕は、「おう」と軽く返しつつ。ふと、思い当たることがあって、周りの風景を眺めていた。
周囲は暗く、灯りはほんのりとともる外灯だけ。空は晴れており、チカチカと星がまたたいている。そんな夜空に、月の姿はない。
そんな夜の坂道を友希那と一緒に下っている。
__まるで
「まるで、二人で公園に行った夜みたいね」
「……覚えていてくれたんだ」
そう、去年の今頃。あの日、空は晴れていて星は見えるが、月の姿は見えない坂道を友希那と歩いていた。
そして、友希那を公園に誘って、大きな木の下で告白をした。
…綺麗に断られた。
『今は、音楽に集中したいの』
その言葉が、全てを物語っているだろう。
「あれから、一生懸命支えてくれてる。あなただけよ、メンバー探しにつきあってくれたの」
「だって、幼馴染が困ってるんだもん。それに、待ってるだけなんてやだよ。『
僕と友希那が同時に述べた言葉。
この言葉は、僕が友希那に向かって述べた言葉だ。
「…あの夜のことは、よく覚えてるわ。あんなの、忘れられるわけがない」
「……そうだね」
「『約束』だって、ちゃんと覚えてるから。心配しないで」
にっこり、とまではいかない。けど、その友希那の表情から楽しそうな感じがする。
「…ねぇ、翼」
「ん?どうかした?」
友希那は僕の前に立った。
僕達の頭上にはほんのりと灯る電灯があり、ふと、スポットライトを照らされたような気分になる。
スポットライトに照らされた友希那は、まるでステージの上に立つ女王のような美しさを放っていた。
「これからもサポートをお願いできるかしら」
そんな
「もちろん!喜んで!」
僕らは、手を繋いで家へと帰る。
「あいつ、やっぱり女と帰ってやがる…」
それを、
更新についての連絡です。
これから、作者がしばらくリアルで多忙になると思われます。
ですので、連日18時投稿が厳しい状況です。
なので、本編はそれぞれの話を章ごとに区切って、章ごとに連日18時投稿をするようにします。
今回更新の話にて、第1章は終了となります
新しい章や特別編の更新開始は活動報告やTwitter等にてさせていただきます。
読者の皆様、ご理解とご協力の程よろしくお願いします。