青薔薇の奇跡   作:reira

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第1章〜青薔薇の元に集いし者達〜
一話


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青い薔薇、、、それは、存在すら叶わぬ物。故に、花言葉は『不可能』と言われる。

 

神話におけるクローリスとニンフの物語は知っているだろうか?

花の女神クローリスは愛するニンフが死んだ時、そのニンフを花の女王と言われる花に変えてくださいと、オリンポスの神々に頼んだ。

その願いが聞き入れられ、ニンフは薔薇となった。

その時、クローリス自身が薔薇に色を付けたが『青は冷たく、死を意味する』として、薔薇に青い色をつけなかった。

だから、この世に青い薔薇は存在しないのだ。

 

しかし、それはもう昔の話となった。

品種改良により、青い薔薇が生まれ、広く普及した。

 

花言葉も、『不可能』から、『夢が叶う』に変わった。

 

__夢。それは、人の欲望の権化。

金、怨み、恋、権利、名声……

それが努力もなく叶うとしたら、一体どれほどの惨事になるかは想像におまかせする。

ただ、少なくとも理想的な人格者でもない限りは己の欲望のままに夢を叶え、多くの者が死ぬであろうことは想像に難く無いはずだ。

 

そもそも、努力も無く望むままに夢を叶えるのは『奇跡の力』でしか無いのだ。

それは、あらゆる道理や権力をねじ曲げ無理やり叶える『奇跡の力』。

ねじ曲げた結果、歪みを生み出し多くの人を苦しめる『奇跡の力』。

……それでもなお、人々を誘惑し、争いを起こす種となり人々に『死』を撒き散らす『奇跡の力』。

それが、夢を叶える『奇跡の力』。

 

…お気づきだろうか?

結局、『夢が叶う』という花言葉が意味するのは『奇跡』であり、それ即ち『死』なのだ。

 

そして今日も、『死を意味する』青い薔薇が咲き誇る…

 

 

 

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「終わったー!」

季節は春。今年入ったばかりの春明高校での授業がおわって挨拶をして迎えた放課後。

 

僕、天野 翼(あまの つばさ)は荷物を持って階段をかけおり、誰よりもいち早く学校の外へ。はしゃぎすぎだ。と、思う人もいるだろうが、それだけ今日は特別な日なのだ。

…いや、今日も特別な日だ。という表現のほうが正しい。というのも

 

「友希那のバンドメンバー探し、中々思ったよりも楽しいなぁ。さて、もう準備は万端だけど、、、」

 

この間、幼馴染の友希那がバンドのメンバーをさがしてライブハウスをうろうろしていたところに遭遇。事情をきいた僕はバンドメンバー探しに協力することにした。

まぁ、既に二人ほど自分の中では確定している。

僕から紹介するのも考えた。が、しかし、それでは友希那の目標の妨げになると思ったのでやめておいた。

 

FUTURE WORLD FES...

プロですら落選が当たり前、このジャンルでは頂点とも言われる大きなイベントである。

それが、友希那の目指す夢であり、目標なのだ。

 

そのためにはそれ相応の努力が必要となる。遊びで入るようなら頭ごなしに断られるだろう。だから、そのやる気と意思を本人が見せる必要がある。

僕から紹介するのはあまり良くないだろう。

 

…まぁ、誘導はしておいた。その辺りは問題ないはず。

あと、知り合いのツテで、あるバンドを友希那と同じライブハウスに出演させた。僕の予想通りなら、そこから一人スカウトができるだろう。

 

……場は、僕の出来る限り、整えた。

あと一人、本人のやる気次第だ、、、

 

 

 

……………

 

………

 

 

 

ライブハウスに向かう途中、リサと友希那がライブハウスの方に歩いているところを見つけた。

 

「やほー!リサ、友希那!」

 

「あ、翼じゃん。久しぶりー!」「翼、久しぶりね」

 

手を振りつつ二人の名前を呼びながら駆け寄る。

昔はこの三人でよく遊んでたものだ。

……まぁ、友希那はこないだライブハウスであったし、リサともアクセサリーショップであったんだけど。

 

「うん、二人とも久しぶり。えっと、もしかして二人ともライブハウスに?」

 

「ううん、私はアクセサリーショップにいくんだ」

 

あ、そういやあそこのライブハウスの手前に新しいアクセサリーショップができてたっけ。今度見に行ってみようかな。

 

「……翼、こないだ頼んだ件なんだけど」

 

「バンドのメンバーだよね。ごめん、まだ見つかってなくてさ」

 

わかりきってるだろうけど、嘘だ。

見つかってるし、既に準備は整えてる。あとは本人の意思の問題だ。

 

「友希那、まだ探してたの?」

 

「当然よ、今年こそは見つけるわ。最低メンバーは三人。今度こそFUTURE WORLD FESにでて自分の音楽を認めさせる」

 

「そういや、去年も探したなぁ。まぁ、去年は条件あわなくて見つからなかったけど」

 

でも、今年首尾よく見つけられたのは去年の挫折があったからでもあると思っている。決して去年の時間は無駄ではない。

 

「ん?去年は?」

 

「今年はまだ始めたばかりだからわかんないでしょ?大丈夫、今年こそは見つかるって。僕、出来る限り手伝うから」

 

「…ありがとう」

 

探すという名目でいろんなバンドが見れるし、案外楽しいんだよメンバー探し。 

 

「こんなところで立ち止まって話してる場合じゃなかったわね」

 

そう言って、スタスタと歩いていく友希那。

 

「うん」「ねぇ、翼。ちょっとまって」

 

友希那の背を追いかけようとしたら、突然リサの右手に僕の左手をとられる。突然のことに、何事かと思った。しかし、程なくして左手から伝わるリサの右手の感触から初めてリサが苦しんでいることに気がついた。

 

リサの右手は、震えていたのだ。

 

「……友希那のバンドのメンバー探し、するの?」

「うん」

 

どうして、彼女がこれだけ苦しんでいるのか。正直わからなかった。でも、続く言葉でやっとわかった。

 

「……友希那のお父さんの話…知ってるよね?」

 

「うん。それで友希那のお父さんが苦しんでたことも知ってる」

 

「なら、、、なんで、メンバー探しに協力するの?友希那まで音楽に苦しんでもいいの?」

 

「……」

 

リサは、友希那のことが心配なんだ。音楽で苦しんで欲しくない。だから、リサは友希那に協力できない。

 

「ねぇ、まだ今からでも遅くはないよ。友希那のメンバー探し協力するのはやめ「メンバー探し、僕は全力で応援する」なんで!」

 

「ちょっ!イタイイタイ!」

 

リサが思いっきり左手を握ってきた。左手に刺さるような痛みがある。恐らくネイルだろう。繋がった手から血がたれている。思ったよりも深く刺さったらしい。

 

「ご、ごめん!でも、どうしてそんなこと言うの?」

 

申し訳なさそうにリサが右手を離したことで、血まみれの左手が解放される。

 

「そりゃあ、友希那に笑ってほしいから。今は友希那は一人なんだ。だから笑えない。けど、バンドは一人ではできない。だから、きっとバンドができたら友希那はきっと、、、」

 

「翼、、、」

 

リサの目をみて、ハッキリと述べる。

リサはハッと気がつくような素振りをみせるものの、まだ、どこかに迷いがあるようだった。

……言っておくしかないか。

 

「ちなみに、もうメンバーは見つけてる。彼らには友希那のいくライブハウスに行くようにしたから、、、後は友希那や本人達がどう判断するかだ」

 

「……えぇ!?」

 

驚くリサをよそに手元の腕時計をみる。

__もう、友希那の出番だ。おそらく、ここから走ったとしても間に合わない。

 

「友希那の出番、過ぎちゃったな、、、」

 

「メンバー決まってるって!?それで、ライブハウスに向かったってことは友希那はもう会ってる!?結局、誰!?誰なの!?」

 

「リサ、落ち着いてよ。結局は、彼らのやる気しだいなんだから。まだやるって決まったわけじゃないし。」

 

何故かすごく興奮しているリサをなんとかなだめようとする。

まだ彼らを見繕い、きっかけを作っただけに過ぎない。だから、まだ定かではないのだ。

 

「でも__「と〜に〜か〜く!」」

 

リサの言葉を遮るように大声で言う。

そして、まだなにか言おうとしているリサの右手を血まみれの左手でそっと握って、そのまま歩き出す。

 

「わわっ!?どこいくの!?」

 

「決まってるでしょ?

新しくできたアクセサリーショップ、一緒にいこ?」

 

……リサは、なにかをいおうと口を開けた。が、続く言葉を飲み込んで何かを考えるような素振りをみせる。

 

__ごめん、今はまだいえないんだ。それは、君が友希那のバンドメンバーの五人目だから。君自身の意思で入ってほしいから。

 

声を大にしていえないこの思いを、リサならきっと、察してくれると思った。

 

「……うん、わかった。じゃあ一緒にアクセサリーショップに行こ?」

 

「あぁ、行こう!」

 

二人は、そのまま歩き出す。手が血まみれであること、手を繋いだままであることは既に忘れていた。

 

アクセサリーショップに入ろうとした時になってやっと気がつき、お互い照れながら謝る。

 

__その時みたリサの頬が赤く染まっていたのは夕焼けのせいだろう。




……友希那を心配するリサ姉書こうとしたら、何故かリサ姉ヒロインっぽくなってしまった。。。

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