ダイヤさんのいた夏   作:Kohya S.

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9. 対応

 ディスプレイと非常灯だけが三人を照らした。

 

「おい、マジかよ」

 

 中島が裏返った声を上げる。

 

 いままで響いていた低音にさらにもうひとつ、やや高い音がくわわった。

 数秒後、照明が一度ちらついてから、また安定して光りはじめた。

 

 そうだ、ダイヤさんは?

 

 すぐにダイヤの姿がふたたびあらわれて桜井はほっとする。「真陽(しんよう)」は動作しているらしい。

 

「商用電源が切断されました。ですが、非常用の発電機が稼働しています」とダイヤ。

「ハラハラさせるぜ」

 

 中島がふうっと息をはいた。

 

「しかし、まずい状況であることにかわりはありません」黒田が言う。「非常用発電機の燃料はせいぜい三十分だ」

「わたくしとしたことが、物理(かぎ)の存在を忘れておりました。痛恨の(きわ)みですわ」

 

 ダイヤは(くや)しそうに肩を落とした。

 

 ディスプレイに映っていた電源設備の部屋は(から)になり、映像はふたたびエントランスに戻った。画面隅に「11:00」と時刻が出ている。

 

「物理鍵で開けられないように、エントランスのロボットを移動しましたわ」

 

 一体のロボットが扉の前に陣取り、もう一体はその周囲を警戒するように動いていた。男たちは遠巻きにしている。

 

「警戒モードに設定してあります」

「発電機のほうは大丈夫?」桜井は聞く。

「いま、予備の警備ロボット二台を向かわせました。そちらは足止めしてみせますわ」

 

 ダイヤは唇を引きしめた。

 

「ありがとう」

 

 エントランスと発電機はとりあえずいいとして……でも、どうすればいいんだ。エーアイジェントの妨害は続いてるし。

 

「なんとかしてエーアイジェントを止められないでしょうか」

「ボットネットならコントロールサーバを止めればいいんだけどな」と中島。「今回のサーバは、おそらく富士立(ふじたち)だぜ。それこそ攻撃でもかけるか?」

「いや、それは犯罪だ。まあ、いまさらだがね。しかし、そもそも攻撃手段がない」

 

 黒田が肩をすくめた。

 

 攻撃手段……そうだ。いまでもそれなりのユーザーがいるはずだ。

 

「こっちもキャラクタントを使えばいいんじゃないでしょうか」

 

 黒田は首を振る。

 

「残念ながら任意のプログラムを動かす機能はないよ。あくまでも処理を肩代わりするだけだ」

 

 だめか。行けると思ったんだけど。

 

「いや、待てよ……」黒田が考え込んだ。「エーアイジェントとキャラクタントは相互に通信していると桜井さんは言いましたね。もしかしたら、そのルートでエーアイジェントにプログラムを送り込めるかもしれない」

「それなら、サーバを攻撃できますね」

 

 犯罪なのはさておこう。

 

「いや、それ以上だ」黒田の顔が明るくなる。「そもそも、妨害行為を止められるはずだ」

 

 そうか、富士立からの指令を上書きできれば。そうでなくても重い処理を流してPCを停止状態にできれば。

 

「すぐにエーアイジェントを解析しましょう。おふたりはPCは持ってきていますか?」

 

 桜井は首を振った。

 

「俺は持ってきてる」と中島。「ただ当たり前だけどエーアイジェントは入ってないぜ」

「私も同様です。しかたない、ここで入れましょう」

「それで間にあうのかよ」

「幸いここは回線だけは太いですから」

 

 黒田は鞄から真っ黒なノートPCを取り出して空いている机に置いた。

 

「おっ、R社の最新型じゃないか」

「以前からのお気に入りでね。有線でつなぎます」

 

 黒田は壁面の棚からケーブルを引っ張ってきてPCに接続した。

 

「すみません、インストールをお願いできますか」

 

 桜井は中島と視線を交わした。ここは中島のほうが手馴れているだろう。桜井が目で合図すると中島は立ったままでキーボードを打ち始めた。

 

「おっ、めちゃくちゃ速いぜ。もうダウンロードが終わった」

 

 桜井が見守るうちにインストーラが起動する。黒田は解析の準備を進めているようだった。

 

 これなら行けるかな。そう桜井が思ったとき、ダイヤから声がかかった。

 

(わたる)さん、エントランスでふたたび動きがあります」

 

 画面のなかでは黒服のひとりが金属棒を持ってロボットににじり寄っていた。大きく振りかぶって、巡回している一体を殴りつける。ロボットはぐらりと揺れた。

 さらに何人かは扉に向かおうとしているようだ。

 

「うわ、大丈夫かな」

「打撃には十分耐えられますが、自律動作には限界があります。力ずくで排除される可能性は高いですわ。」

「そうか、大勢で押しかけてこられたらまずいな」

「よろしければ、わたくしが直接制御して、反撃したいのですが?」

 

 ダイヤはすました顔だが、目は輝いていた。こころなしか頬が紅潮しているようにも見える。

 

 さっきのを挽回する気かな。ちょっと嫌な予感がするけど……。やるしかないよな。

 

「黒田さん、ロボットを動かしますよ!」

「わかりました、好きにしてください!」

 

 黒田も吹っ切れたように答えた。

 

「ということだから、どうぞ、ダイヤさん」

「かしこまりましたわ!」

 

 二体のロボットの胸元のディスプレイが点灯した。それとともにエントランスの音声が聞こえるようになる。ロボットにマイクが付いているらしい。

 

 巡回していたほうのロボットがぴたりと動きを止め、男たちに向き直った。

 

『すぐに破壊行為をお()めなさい! 止めないとたいへんなことになりますわよ』

 

 男たちはロボットから突然、女の子の声で呼びかけられたことに戸惑ったようだ。ぽかんとロボットを見つめる。

 数人が所長と警備員に駆け寄るが、ふたりともなにも知らないと弁明していた。

 

 まあ、そりゃそうだよな。

 

 残りの男たちは気を取りなおして、じりじりと距離を詰めはじめた。

 

「仕方ありませんわね」

 

 桜井の隣でダイヤが言った。口調とはうらはらに、どこか嬉しそうだ。

 次の瞬間、ダイヤの体がまばゆい青に輝いて桜井は思わず目をそらす。

 

 視線を戻すとダイヤの姿は一変していた。白とミントグリーンの生地(きじ)がレイヤードになった、ノースリーブで丈の短いワンピース。髪飾りとチョーカーは同じく白く、胸元の黄色いネクタイがアクセントになっていた。背中には大きな青いリボンが見えた。

 ワンピースの裾からのびるすらりとした脚がまぶしい。

 

「ステージ衣装はスクールアイドルの戦闘服、ですわ」

 

 桜井はすぐに気づく。

 

「Awaken the power、だね」

「まさにいまの状況にぴったりだと思いませんこと?」

 

 桜井に向けてウインクをしてから、ダイヤは形のよい眉をきりりと上げた。

 

『警告はいたしました。それでは、まいりますわ!』

 

 ロボットはモーター音を立てて男たちに向かっていった。

 男たちがひるんだところでロボットは胴体からなにかを発射する。相手にあたると、ぼふっと灰色の煙が舞い上がった。

 

 おっ、催涙ガスかなにかか?

 

 男たちは次の瞬間、盛大にくしゃみを始めた。

 

「あれ?」

「コショウ爆弾です。なにしろ水も電撃も使えませんから」

「けっこう効いてるね」

「まだまだ、こんなものではありませんわよ!」

 

 ロボットはホールの真ん中までいったん後退してから、勢いよく加速して突っ込んでいく。あわてて避ける黒服たち。不運な何人かはロボットに跳ね飛ばされた。

 

 ふたたびロボットは距離を置いた。男たちはさすがに警戒したのか、身構える。

 

「さて、次は……(いた)っ!」

 

 ダイヤが顔をしかめた。

 

「どうしたの、ダイヤさん? 大丈夫?」

 

 キャラクタントが痛みを感じるなんてことがあるんだろうか。

 

「一部に、極端に動作の遅いモジュールがあるようです。それが遅延(ラグ)を引き起こして協働(きょうどう)齟齬(そご)が生じ……痛みとして感じられるのですわ」

 

 中島が言っていた、変換して動かしたってやつかもしれない。

 

 ドカンと大きな音が聞こえて桜井は顔を上げる。

 

 一体のロボットが男たちのタックルを受けて転倒していた。空中でむなしくタイヤが回っている。

 

「まずいですわ」

 

 扉の前の残りの一体も囲まれていた。じりっと男たちが近づく。

 

『下がりなさい!』

 

 ダイヤが一喝した。びくりとする男たち。しかし彼らは顔を見あわせてうなずくと一斉にロボットにとびかかった。

 

 ロボットはその場で回転して大量のコショウ爆弾をばらまいた。盛大に上がるコショウの雲。くしゃみの音。

 

 雲が晴れたとき、ロボットは扉へ向かって斜めに倒れていた。数人の男を巻き添えに。残りの黒服が、よろよろと立ち上がった。

 

「一度倒れると自力では起き上がれない。設計ミスですわね」

 

 ダイヤが残念そうに言った。

 

        ・

 

「しかし、まだまだ手段はありますわ。たとえば……つっ!」

 

 ふたたびダイヤは頭に手を当てた。相当つらそうに見える。

 

「大丈夫?」

「ええ、無理をしなければ。とくに創造性をつかさどるモジュールに不具合があるようですわ」

 

 ディスプレイではロボットの体が扉をふさいでいた。多少は時間が稼げるだろう。

 

 でも、もうすぐ突破される。廊下や部屋の扉も同じだろうし。ダイヤさんも心配だ。

 

「黒田さん、エントランスが突破されそうです。そっちはどうですか?」

「解析はほぼ終わりました。ただ、キャラクタントと違って認証がおこなわれています。なんとかしてキーを割り出すか、ハッキングしないと」

 

 認証――IDとパスワードみたいなものか。

 

「『真陽』でどうにかならないのか?」と中島。

「総当たりで試すことはできますが、三十分ではさすがに無理ですね」

 

 そうだ、ダイヤさんなら……?

 

「ダイヤさん?」

「残念ですが、ハッキングもいまのままでは難しいでしょう」

 

 首を振るダイヤ。額に汗がにじんでいる。

 

「そうか、なんとかできないかな」

「自己書き換えができれば、この痛みもおさまると思うのですが」

 

 動作の遅いプログラムを自分自身で変える、ってことか。以前のキャラクタントのように。

 

「ただし、いまのところ、わたくしには書き換えをする権限がありません」

「権限がないって、どういうこと?」

「現在の環境……『真陽』では、プログラムからプログラムを書き換えることは禁じられています。セキュリティ上の理由だと思いますわ」

「それじゃ、黒田さんに話して……」

「ええ、それができれば可能性はあります。しかし、ハッキングにはすべての演算能力を使ってもかなりの時間がかかるでしょう。そのあいだ、施設の制御はできなくなってしまいますわ」

 

 そうなったら黒服の男たちが押し寄せてくる。だめだ。……いや、待てよ。

 

「施設の制御なら俺たちでもできるんじゃないか? この画面から」

「それは……はい、可能ですわ」

「それじゃ、そのあいだは俺たちで」

「……それしかないようですわね」

 

 ダイヤはうなずいた。

 

「黒田さん、ダイヤさんに自己書き換えの権限を」

「ええ、話は聞いていました。……ここでそれをやるのはすこし怖いんだが」

 

 怖い。どうしてだろう。でも、聞いている時間はなさそうだ。

 

「仕方ないですね、毒を食らわば皿まで、だ」

 

 黒田が新しいウィンドウを開けて操作を始めた。

 

「わたくしはそのあいだに、施設制御のプログラムを作成いたしますわ」

 

 ダイヤはまるで瞑想(めいそう)するように目を閉じた。ときどき眉をしかめるのは、痛みを感じているのかもしれない。

 待っていたのは十秒ほどだったろうか。

 

「終わりました」

 

 中島と桜井が使っていた端末の画面に、施設の地図が映し出された。

 

「それぞれの扉の施錠(せじょう)解錠(かいじょう)、防火シャッターの開閉、消火施設などが制御できます」

「お、すごいぜ」中島が話す。

「まずはシャッターを閉じてみてください」

「おう」

 

 中島はメニューから機能を選択してクリックする。

 

 ゴウンと周囲から音がした。壁面のディスプレイではエントランスの扉の内側にシャッターが下りていく。

 

「やったぜ。これで大丈夫だろ」

「残念ながらすべての扉は、手動でも開閉可能です。時間稼ぎにしかなりませんわ」

「ったく、余計なことするなあ」

「誤動作による閉じ込め対策ですわ」

 

 まあ、やつらからしてみたら、盛大な誤動作だろうな。

 

「また、各ロボットもコントロールできますが……」ダイヤは言いよどんだ。

「ますが?」と桜井は聞き返す。

「直接制御は、この画面からは無理があります」

 

 そうか、マウスとキーボードじゃ無理か。

 

一人称シューティング(F P S)ゲームとかあるんだし、なんとかならないのかよ。かっこいい画面とか作ってさ」と中島。

「わ、わたくしにもできないことはありますわ」

 

 ステージ衣装のまま、つんとそっぽをむくようすは年相応に見えてかわいかった。こんな場合でなければじっくりと眺めたいんだけど、と桜井は思う。

 

「おっ、すまん」

「わかればいいのです。も、もちろん時間さえあればできますわ」

 

 でも、制御できないとなると貴重な戦力が使えないな。

 

 考えこむ桜井にダイヤが話しかける。

 

「あまりおすすめできませんが、目視なら制御可能でしょう」

「目視というと」

「近くまで行って直接、コントロールするということですわ。スマートフォンはお持ちですよね?」

 

 そういえば例の袋に入れたままだけど、もう取り出してもいいよな。

 

「黒田さん、スマートフォン、出していいですか」

「どうぞ、勝手に開けてください」

 

 手を休めることなく黒田が答えた。

 桜井は黒田の鞄から袋を取り出した。自分のスマートフォンを取り。中島にも手渡す。

 

「おう、サンキュー」

 

 黒田の机にも彼のスマートフォンを置いた。

 

「こちらの構内ネットワークに接続してください」

 

 ダイヤのわきの空中に二次元バーコードが浮かんだ。読めるのかな、と思いつつカメラをかざすと、接続情報が認識されてオンラインになった。

 

「つづけて制御アプリを」

 

 バーコードが更新された。桜井と中島はアプリをダウンロードする。

 

「警備ロボットが二体。こちらは発電機械棟のエントランスにいます。ほかに清掃用ロボットが十台ほど。さらに重量物運搬用が三台あります」

「なんかやれそうな気がしてきたぜ」

 

 桜井と中島は視線をあわせてうなずきあった。

 

 ちょうどそのとき黒田が席を立ってふたりの隣に来た。

 

「権限の設定が終わりました。すみません、通常は考慮されていないオペレーションなので時間がかかってしまった」ダイヤに向かって続ける。「本格的に書き換える前に、まずは簡単に試してもらえますか」

「わかりましたわ」

 

 ダイヤはしばらくうつむいたかと思うと顔を上げた。

 

「いかがでしょう?」

 

 いつもの青みがかった瞳が、いまは金色に輝いていた。

 

「おっと、鞠莉(まり)さんみたいだぜ」と中島。

「よろしいようですわね」

 

 ダイヤは微笑んだ。

 

「うん、権限設定はよさそうだ」黒田がうなずく。

「それでは、まいりますわ」

 

 ダイヤはふたたび目を閉じた。ディスプレイのノード使用率とニューラルプロセッサ使用率が、ともに80%台の数値を示す。

 

 次の瞬間、ダイヤの体が輝いた。衣装が消え失せてすらりとした体のラインがあらわになる。

 

「ん、衣装データを変えるのか?」と中島。

 

 体は光りながら縮んでいった。四、五歳の幼女のような体形になったかと思うと逆に成長を始める。

 

「違うな、モデルそのものが変形(モーフィング)してる」

 

 身長が元の高さを超えると、今度は胸がふくらんで腰回りがふっくらと豊かになった。

 きっと自己書き換えのイメージが外見に反映されているのだろう。

 

 まるで果南(かなん)さんか鞠莉さんみたいだな。ちらりと桜井は思う。

 

 彼女はすぐにまた形を変え始める。元のスタイルが戻ってくると、それとともに光はおさまり制服姿のダイヤがふたたびあらわれた。

 

 瞳の色は元に戻っていて桜井はほっとする。

 

 ステージ衣装じゃなくなったのは、すこし残念だけど。

 

 ふうっとダイヤが息を吐くと、ディスプレイが切り替わった。

 倉庫のような空間に、十台ほどのずんぐりしたロボットが映っていた。一台ずつLEDが点灯すると、まるでダンスでも踊るようにくるくると回り出す。

 

「……よろしいようですわね」

 

 ロボットを止めてダイヤは満足そうにうなずいた。

 

「うん、すばらしい」黒田が感心する。「いま、PCを接続します。エーアイジェントの解析を」

「かしこまりましたわ。……その前に」

 

 壁面の大型ディスプレイがふたたび切り替わる。

 

「発電機械棟で動きです。やつらが来ました」

 

 無骨な金属製の扉の前に二体のロボットがいた。ふたりの男が警戒しながら近づいていく。

 

「さらに、エントランス前のシャッターが開かれました。エレベータは停止中。階段への防火シャッターを開けようとしています」

「わかった、そいつらは任せろ」と中島。

 

「ダイヤさんは、なんとかしてエーアイジェントを」

 

 桜井はそういってダイヤを見つめる。ダイヤはしっかりと視線を受け止めてうなずいた。

 

「ええ、お任せあれ。ご無事を、祈っておりますわ」

 

 ダイヤはにこりと微笑むと、一度深呼吸をしてから目を閉じた。

 

 響いていた低音が一段と大きくなった。壁の数値は急激に上昇して100%に張りつく。

 

「彼女を信じましょう」と黒田。

 

 そうだよな。よし、俺たちもなんとかしないと。

 

「私はエーアイジェントに送り込むプログラムを書きます」

 

 黒田はそういって席に戻る。

 

「どうする、桜井?」中島が聞いた。

「とにかく黒服のやつらを足止めしないと。ここに来られたら終わりだよ」

「そうだな。桜井、実は空手(からて)の黒帯だったりしないか?」

「そんなんじゃないこと、知ってるだろ」桜井は首を振る。

「まあ、そんなチート主人公みたいなことないよな」

 

 遠くからなにかを(たた)くような金属音が聞こえた。

 

 桜井は決断して言う。

 

「俺は発電機を守りに行くよ。警備ロボットもいるし、ダイヤさんが解析を終えるまでの足止めならできると思う」

「それじゃ、俺は一階にいるやつらを」

「わかった。なにかあったら、スマホで連絡してくれ」

「おう」

 

 桜井はスマホのアプリ――さきほどダイヤさんがインストールしてくれたもの――を開く。ロボットだけでなく、防火シャッターなどの制御もできるようだ。施設の地図もしっかり入っている。

 

 よし、これなら役に立ちそうだ。

 

「それじゃ、行ってきます。黒田さん、あとはよろしく」

「わかりました」

 

 端末を操作しながら黒田は答えた。

 

 桜井と中島は扉から外に出た。左側から音が聞こえてくる。

 

「俺はこっちだな。気をつけろよ、桜井」

「ああ、中島も」

 

 ふたりはそれぞれ廊下を小走りで急いだ。


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