楓さんと男子大学生   作:ブロンズスモー

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遅刻、謝罪、全奢りゲーセン、音ゲー。

 

 

翌日、俺は一人家でゲームをしていた。今日は高垣さんと出掛けるのだが、まだ時間があるため一人でボンヤリとゲームしていた。

ていうか、高垣さんが俺なんかに何の用があるのだろうか。もしかして、今日は俺が保護者役だったりするのかな。

しばらくボンヤリしながらドラクエ11をやってると、スマホがヴヴッと震えた。

 

【楓:まだ?】

 

あれ、どうしたんだこの人。待ち合わせは13時だろ?あと50分以上あるけど。

 

【慎二:え、13時集合ですよね】

 

【慎二:あと50分ありますけど】

 

【楓:12時集合よ】

 

…………えっ?

俺は慌ててラインのログを振り返った。12時集合だった。サァーッと顔色が悪くなるのを感じた。

 

【慎二:ごめんなさい今行きます】

 

玄関を出て、親父の原チャリを(無断で)借りて家を飛び出した。

 

 

 

 

昨日と同じ駅前に到着し、高垣さんの前に滑り込んだ。

 

「すみません遅れました‼︎」

 

「…………」

 

高垣さんはツーンとした表情のまま動かない。頬を膨らませてそっぽを向いていた。その表情はメチャクチャ可愛かったが、そんな場合ではない。

 

「ほんと、すみません。12と13見間違えてて……!てっきり……!」

 

「……………」

 

うっ……無視されるのって意外と心に来るな……。いや、完全に俺の落ち度だが。

必死に頭を下げてると、高垣さんはジロリと俺を見下ろした。

 

「あら、いたの?」

 

「うぐっ………」

 

「ごめんなさい、私ここで30分は待ってたから気付かなかったわ」

 

その論理はわけわかめだが、怒ってるという事だけは伝わってきた。

 

「………いや、その……本当にすみませんでした……」

 

「まぁ、特別に許してあげます。今日奢りで」

 

「えっ………お、奢り?」

 

「何か?」

 

「いえ、奢らせていただきます」

 

「じゃ、行きましょう」

 

ぐっ……昨日今日で金がすごい飛んでいく………!ただでさえ金がないってのに………!

 

「ち、ちなみに、どこに行くんですか?」

 

「本当は見たい映画があったんだけど、どこかの誰かさんが遅刻して来ちゃったから、それまで時間が空いちゃったのよね……」

 

「あの、本当謝るので許して下さい……」

 

「慎二くんが選んで良いわよ」

 

「えっ俺が?………えっ?」

 

な、なんで急に名前呼び……と、思ったが余りにも自然に呼ばれたのでタイミングを逃してしまった。仕方ないので、スルーして話を進めた。でも、一応後で聞いてみるか。

しかし、俺が選ぶのか………。

 

「映画って何時からですか?」

 

「次だとー……15時からね」

 

割と空くな……。ていうか何を見るつもりなんだ?まぁそれより先に予定を決めなきゃいけないけど……。でも、高垣さんが好きそうな場所なんて分からないし……。

 

「そんなに悩まなくて良いわよ。いつも慎二くんが行ってる場所で良いのよ?」

 

「………ゲーセンとか?」

 

「それでも良いわよ」

 

良いのかよ……。でもまぁ、良いと言うなら良いかな。

 

「じゃ、行きましょう。あ、でもその前に原チャリ止めてきて良いですか?」

 

「良いわよ」

 

駐輪場代でさらに金が……いや、もう仕方ないか。

二人で駐輪場に向かいながら、俺はどうしようか迷ったが、どうしても気になったので質問した。

 

「………なんで急に下の名前で呼んだんですか?」

 

「…………呼んでないわよ、二宮くん」

 

「え?いやさっき……」

 

「行きましょう二宮くん」

 

………なんかまた怒らせてしまったようだ。謝らないと。

 

 

 

 

ゲーセンに入った。高垣さんにとっては珍しいのか、辺りをキョロキョロと見回している。

 

「ゲームセンターかぁ……学生時代以来ね……」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ。だから、しっかりとエスコートしてよね?」

 

「ま、まぁ、努力しますけど……」

 

ゲーセンでエスコートとか言われてもな………。つまり、なるべく女性受けするゲームってことか?あ、アイドルなんだし音ゲーとかどうよ。

 

「じゃ、太達とかどうですか?」

 

「やったことないけど大丈夫?」

 

「難易度低いのもありますから」

 

「そう?じゃあ、やってみようかしら」

 

太達が置いてある筐体の前に移動した。太達やんの久々だなー。今日はマイバチ持ってきてないし、明日の筋肉痛は覚悟しておいたほうが良さそうだ。

俺は2人分のお金を払って、バチを持った。

 

「あら、払ってくれるの?」

 

「………今日の俺は高垣さんのお財布なんで」

 

「………そこまで卑屈にならなくても……」

 

いや、でも実際それくらいしないとなぁ。目上の方を待たせた上に、その理由が時間の間違いとかふざけてる。せめて、飛鳥が可愛すぎて愛でてた、とかなら許されるだろうに……。

 

「二宮くん?目が濁ってるわよ?今、飛鳥ちゃんのことを考えていたでしょう?」

 

「え?いや、なんでわかんの」

 

「まったく……すぐに分かるわよそのくらい」

 

マジか……俺、分かり易過ぎるか……。もう少し表情とかから考えてる事を悟られないようにしないと。

 

「さ、やりましょう?」

 

「はいはい……」

 

俺はア○ミーカードを置いた。

 

「? それは?」

 

「ICカードみたいな奴です。なんかポイント貯めて自分の赤い太鼓をカスタムしたり出来ます」

 

「へぇ〜……それどこにあるの?」

 

「………え、買うんですか?」

 

「えぇ。今日買えば私がお金払うわけじゃないし」

 

………そう言うことは口に出すなよ。

 

「それに、二宮くんの好きな事は、私も興味あるもの」

 

「えっ………」

 

それどういう意味なんですかね……。ちょっと心臓に悪いからやめろよ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……………」

 

だから台無しだっつの。つーか分かりにくいし。とりあえず、ちょっとドキッとした俺の純情を返せ。

 

「で、どこで買えば良いの?」

 

「今はゲーム始めちゃったんで、また後で……」

 

「はーい」

 

楽しそうに返事したな。年相応じゃない返事が、また少し可愛かった。

そうこうしてるうちに、ゲーム開始。とりあえず、高垣さんに曲を選んでもらうことにした。

 

「どうぞ、なにか選んでください」

 

「え?私が?」

 

「はい。結構、良い曲ありますよ。飛鳥の曲もいくつか」

 

「そ、そう?じゃあ……」

 

カッカッカッと曲を選ぶ高垣さん。やがて、一つ何かを見つけたのか、ピタッと止まった。

 

「これ……」

 

「…………えっ、これ?」

 

ハルヒのED……アイドル事務所と全然関係ないの選びやがった……。まぁ、個人の自由だし好きにしたら良いけど。

 

「あ、もしかしてハルヒ好きなんですか?」

 

「? 何それ?」

 

知らずに選んだのかよ……。

 

「ただ、なんか面白そうな曲だったから」

 

まぁ、確かにタイトルだけ見れば面白そうな曲だよな。ユカイって言ってるし。

そんなわけで、演奏開始。俺はいつも通り鬼を選び、高垣さんは普通を選んだ。まぁ、妥当だろう。

 

『さぁ、始まるドン!』

 

ゲーム開始だ。

 

 

 

 

ゲームが終わった。驚いたわ、高垣さん超上手いのな。流石、アイドルってだけのことはある。三曲目にはフルコンしてたわ。怖っ。

 

「ふぅ、面白かったわ。ね、このカードどこに売ってるの?」

 

「えーっと、こっちです」

 

自販機まで案内した。こういうカードはカード販売機があるからな。バ○パスとか、ド○ゴンボールヒーローズICカードとかトライエイジICカードとかと一緒に。

 

「へぇー、これ?」

 

「そうですよ。………あ、俺が払うのか」

 

簡単に奢りだなんて言うんじゃなかったな……。明日からはマジで金使えないや。

カードを購入して渡すと、高垣さんは嬉しそうに微笑んだ。まぁ、俺なんかがこんな美人を喜ばせられたなら何よりだ。

 

「さて、次は何する?」

 

「んーじゃあ次は洗濯機でもやりますか」

 

「え、何それ」

 

「こっちです」

 

そう言って、とりあえずゲーセン内で音ゲーを巡り巡って、俺の小銭は消え失せた。

 

 


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