曜side
「千歌ちゃんと?」
「えぇ、上手くいってなかったでしょ?」
帰り道、突然後ろから胸を鷲掴みにしてきた変態……いや、鞠莉ちゃんを投げ飛ばした後、場所を変えて話してる。
ダンスのことだよね?
「それなら大丈夫!あの後練習して上手くいったから!」
「いいえ、ダンスのことじゃなくて…梨子に千歌っちを取られてちょっぴり嫉妬ファイアーーが燃えがってたんじゃない?」
「嫉妬!?」
い、いきなり何言ってるの鞠莉ちゃん!?さすがアメリカに行ってただけあって発音はよかった気がするけど。
「ま、まさか…そんなことは…」
「えいっ!」
「ふぁにふんの?」
いきなりほっぺつままれた。これじゃあ上手く喋れないよ。
「ぶっちゃけトーク!する場ですよここは。話して?千歌っちや梨子には話せないことでしょ?」
鞠莉ちゃん……これは話さないといけない雰囲気……だね。
鞠莉ちゃんの隣に座って話し出すことにした。
「私ね、千歌ちゃんと一緒に何かやりたいって思ってたんだ〜でもそのうち中学生になって……それでも一緒に何かをすることがなくて……
だからね、一緒にスクールアイドルやりたいって言ってくれて嬉しかったの。これでやっと一緒にやれるって。でも……そこに梨子ちゃんか転校してきて……
千歌ちゃんと2人で曲を作って…気付いたらみんなも一緒になってて……それで思ったの。千歌ちゃん……私と一緒なの嫌なのかなって」
「ホワイ?なぜ?」
「私ね、全然そんなことないんだけどね、なんか要領が良いって思われること多くて、そんな子と一緒なのは嫌なのかなって……」
これは私が勝手に思ってるだけ。聞いたわけじゃない……けど、そう思っちゃう。
「曜は千歌っちのことが大好きなのでしょ?だったら本音でぶつかった方がいいよ。大好きな友達に本音を言わないで……2年間も時間を無駄にしてしまった私が言うんだから間違いありません!
それに……曜が前に言ったこと覚えてる?言葉にしないと伝わらないこともあるって。今がまさにその時じゃない?」
鞠莉ちゃん……やっぱり3年生だな〜頼りになる。それに最後の言葉……それは私じゃなくて先生に言われた言葉……
そうだね、ちゃんと言わないと!
「そ・れ・と!」
ん?なんだろ?
「前から気になってたんだけど……曜って先生のこと好きでしょ?」
「………っ//な、なんで!?さ、さすがに教師の生徒はまずいんじゃ……」
「つまりそうじゃなかったら…」
「うぅ…//み、みんなには内緒で//」
「ふふっ、いいわよ」
だ、だって仕方ないじゃん!初めて会った日にあんな風に助けられたら誰だって……//
曜side out
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「千歌」
「先生?お疲れ様です。さっきはすみません、何回もやったのに上手くいかなくて…」
その上手くいかなくてってのは学校で練習してた時のことだよな?俺や鞠莉がこっそり見ていたことには気付いてないだろうな。
「でももう大丈夫です!曜ちゃんが、梨子ちゃんとやってた時みたいにやってみてって言ってやったら上手くいったんです!曜ちゃん凄いですよね?これで上手くいっちゃうんだから」
上手く……か。たしかに動きだけを考えたら上手くいってるってことでもいいだろうな。
でも……
「千歌たちはそれでいいのか?」
「え?どういう意味ですか?」
「今回のあと振り付けは千歌と梨子でやるために考えたやつだろ?でも梨子は参加できないから曜とに変わった。梨子とやるために考えた振り付けのままでいいのかってことだ」
「………」
「俺はどんな形になろうとみんなを支えたりするけどさ、それにこのままでいいって言うならそれでもいい。
でも、どうしたいかは一回考えた方がいいんじゃないか?曜と一緒にさ」
「曜ちゃんと……」
まっ、どうするかはみんなに任せるんだけどな。
「少し考えてみるといいさ。それじゃ」
千歌の家の旅館まで来たから俺はそこを通り過ぎた。どんな結論を出すのか、楽しみだ。
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曜side
「本音をぶつける……か」
よし!今日話してみよう!
「おっはよう!」
「あ!曜ちゃん見て見て!これ!」
「わぁ!可愛い!どうしたのこれ?」
部室のドアを開けて挨拶したら部室にいた千歌ちゃんたちが手にシュシュをつけてた。すっごく可愛いからどうしたのか聞いてみたけど……聞かなきゃよかったかな……
だって……
「梨子ちゃんが送ってくれたんだ〜いいでしょ?」
って言われたんだもん……
千歌ちゃん以外に部室にいたルビィちゃんと花丸ちゃんと善子ちゃんもシュシュをつけていて私の分も渡された。
「そろそろ練習を始めますわよ〜」
「「「「はーい!」」」」
ダイヤさんが声をかけてきてみんな屋上に移動し始めた。
「千歌ちゃん!」
思わず呼び止めちゃったけど……今言うべきじゃないよね……
「頑張ろうね!」
「うん!」
私も急いで着替えて行かないと……
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「結局言えなかったな……」
練習終わってからも言うチャンスはあったと思う。それでも言えなかった。
「そもそも本音って言っても…私なんて言えばいいんだろ…」
『千歌ちゃん!私と梨子ちゃんどっちが大切なの!はっきりして!』
「いやいやいや、これは違うよね」
というかなんで壁ドンでイケボ?みたいなのを想像してるの私…
えっとじゃあ……
『千歌ちゃん…私のことあんまり……好きじゃないよね?』
『ん?』
「これもちがーーーーう!」
何今の少女マンガみたいな言い方!?読んだことないけど……
なら!
『私!渡辺曜は千歌ちゃんのことが全速前進〜ヨーソロー!』
『んん?』
「もぅーーーーーー!」
なんで今度は着ぐるみ着た姿想像してるの私!?というか意味わかんないよ!
「なんかもう訳わかんなくなってきた……ん?」
電話?誰だ……ろ、梨子……ちゃん?
「もしもし?………ううん、平気。何かあったの?」
『うん、曜ちゃんが私のポジションで歌うことになったって聞いたから。ごめんね?私のわがままのせいで』
別にわがままなんて思ってないよ。私だけじゃない、みんなも思ってないよ。
『私のことは気にしないで、2人がやりやすいようにやってね』
「でも…もう……」
『無理に合わせちゃダメよ?曜ちゃんには曜ちゃんらしい動きがあるんだから」
「そう……かな……」
『えぇ、千歌ちゃんもきっとそう思ってる』
「そんなこと……ないよ」
『え?』
梨子ちゃん驚いたみたい。そりゃあそうだよね、いきなりこんなこと言うんだから……でももう言っちゃった方がいいよね……
「千歌ちゃんの側には梨子ちゃんが1番あってると思う……だって……
千歌ちゃん、梨子ちゃんが側にいると嬉しそうだし……梨子ちゃんのために頑張るって言ってるし……」
どうしよ……涙出てきちゃった。声でばれてないかな……
『そんなこと思ってたんだ……』
そんなことって……私にとってはそんなことじゃないんだよ……
『千歌ちゃんね、前話してたんだよ………
うん、それじゃあ』
「千歌ちゃんがそんなこと……」
梨子ちゃんから今言われたこと……
『あのね、千歌ちゃん前話してたんだよ?曜ちゃんの誘いをいつも断ってるって。ずっと気になってるって。
だからスクールアイドルは絶対一緒にやるんだって、曜ちゃんと絶対やり遂げるって!』
知らなかった。千歌ちゃんがそんな風に思ってくれてたんだから。
「曜ちゃん!」
「っ!?」
あれいない?聞き間違え?そうだよね、こんな時間にいるわけ………
「曜ちゃーん!」
聞き間違えじゃない!な、なんでいるの?
「千歌ちゃん!?」
なんでいるのか、私には分からなかった。
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「行ってきまーす!」
「本当に大丈夫?」
ん?今の千歌の声?ちょっと夜風に当たるために砂浜に行ってその帰りだけど…やっぱり千歌だ。
「大丈夫だって!」
「気をつけなよ?」
「わかってる!それじゃあ………」
「千歌?」
「あ、先生!」
こんな時間に自転車に乗って……練習着?となると行き先は…
「曜のところ行くのか?」
「はい!私先生に言われて考えたんです!それで一から作り直したいって、曜ちゃんと2人で作りたいって思ったんです!だから行きます!」
そうなって欲しいとは思ってたけどさ……この時間に1人で行かせるのは危ないんだよな……
「曜と2人で作り直すって言うのは賛成だけどさ、こんな時間じゃなく明日じゃダメなのか?」
「今すぐ行きたいんです!」
あ、ダメだ、これは止まらないな。
「すみません先生、多分千歌止まらないと思いますよ。先生が良ければついて行ってもらってもよろしいですか?やっぱりこんなでも私の妹ですし……自転車も旅館の貸しますし」
「そうですね、ではお借りしてもよろしいですか?心配なのは一緒ですから」
「2人が一気に堅くなった!?」
「「…………」」
美渡さんと考えてること一緒かもな。千歌のせいだってな。
千歌と一緒に曜の家まで自転車を走らせる。そういえば曜の家に行くの初めてだな。
しばらくすると曜の家に着いた。すると千歌は
「曜ちゃん!」
とでかい声で呼び出した。近所迷惑ってことを考えような?
「曜ちゃーん!」
「千歌ちゃん!?」
曜はここに千歌がいることに驚いた。あれ?これは俺がいることに気付いてない?
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「どうして!?」
「練習しようと思って!」
まぁ曜の反応は普通だよな。
「練習?」
「うん!考えたんだけど……
やっぱり曜ちゃんは自分のステップでやった方がいい!合わせるんじゃなくて、作り直したい方がいい!
曜ちゃんと私の2人で!」
「っ!?」
「曜ちゃん!?」
大丈夫……気持ちは伝わってる。
「玄関の方行ってこい千歌。絶対出てくる!」
「はい!」
千歌が玄関の方に行くと俺もゆっくりと歩いていった。
するとちょうど出てきたところだった。後ろ向きで……
「曜ちゃん?」
「汗びっしょり…どうしたの?」
後ろ向きで千歌に触れた曜は、千歌が汗びっしょりなことに驚いた。まぁ夜とはいえ夏に飛ばしてきたらそりゃあ汗びっしょりにもなるよな。
「バス終わってたし、美渡姉たちも忙しいっていうし…曜ちゃん…ずっと気にしてたみたいだしいてもいられなくなって……」
ずっとこっちを向かないからか。千歌が不機嫌そうな顔をした。
いや、そんな顔すんなよ……
「私バカだ……バカ曜だ」
「バカ曜?うわっ!?」
「なになに?汚れるよー!」
「いいの!」
「風邪引いちゃうよ!」
「いいの!」
「恥ずかしいってばー!」
「いいの!」
「もうなになに、わっかんないよー!」
「いいのー!」
千歌でも恥ずかしいって気持ちあるんだ。っていう失礼な考えは置いておいて。
曜は嬉しかったんだよな。千歌がこんな風に言ってくれて。
少しの間そこで泣いていたが落ち着いたのか泣き止んだ。話しかけるなら今かな。
「曜、今日千歌のこと泊めてあげることできるか?多分千歌のことだし今からやろうとか言いそうだし」
「もちろん大丈夫で………す………って先生!?なんで!?」
「千歌の付き添いだ。こんな時間に1人は危ないだろ?」
やっぱり曜は気付いてなかったな。そういう反応見るの楽しいな。
「「内浦なら問題ないのに…」」
「ハモるなよ!?それに曜のことも心配だったからな。鞠莉が曜と話してくれたっていってもさ」
「先生…ご心配をおかけしました。もう大丈夫であります!」
いつもの曜だな。もう大丈夫か。
「じゃあ曜ちゃん!ちょっとだけやろ!」
「うん!」
やっぱりやるんか!?
練習を見ながら鞠莉に電話して現状を伝え、美渡さんには明日の朝自転車を返すことを伝えた。もちろん千歌が曜の家に泊まることも一緒に伝えた。
千歌と曜の練習に基本的には口出しはしていない。細かいところで少し提案を出したくらいだ。あとは千歌と曜の2人で作らせてみた。
「そろそろ終わりにしたらどうだ?だいぶいい感じになってるしさ」
「そうだね、じゃあ曜ちゃん!最後にもう一回決めるよ!」
「ヨーソロー!」
もう本当に大丈夫そうだな。最後にもう一回と言って2人がやってみたけど上手くいってるな。
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あれから2人のステップも完成し、Aqours踊りも変更して練習を重ねた。
そして今、予備予選の順番待ち。もうそろそろAqoursの出番だ。
「さて、みんな準備はできてるな?」
『はい!』
「今日はここに梨子がいなくて8人だ。でも気持ちは繋がってる。まぁ言わなくてもわかってると思うけどな。
今自分たちができることを精一杯やってこい!」
『はい!』
あとはリーダーである千歌に任せよう。
「さぁ行こう!ラブライブに向けて!私たちの第一歩に向けて!
今を全力で輝こう!Aqours!」
『サンシャイン!』
Aqoursの予備予選の曲
【想いよひとつになれ】が披露された。曲名の通り、千歌たちと今ここにいない梨子の気持ちは繋がっている。
梨子の様子は分からないがきっと大丈夫だ。なんせ千歌たちは大丈夫。気持ちが繋がっている梨子もきっと大丈夫だと信じているからだ。
次回は1期12話。再び東京に行く話ですね。少しだけ言っておくと達也はAqoursのメンバーと行動しません。Aqoursより早く東京に向かいます。あとは投稿されてからのお楽しみに!