駅から少し離れた所に移動をしてダイヤさんに今回のイベントのことを話し出した。
「投票0ですか……やはりそういうことになりましたか…」
鞠莉さんだけじゃなくてダイヤさんも投票0になると思ってたみたいだ。
俺もだけど1票でも入ればいいと思ってたくらいだしな。
「先に言っておきますが、決してあなたたちがダメというわけではないのです。スクールアイドルとして充分練習を積み重ね、見てくれる人を楽しませることができている。
ですが…今はもうそれだけではダメなのです」
「どういうことですか……?」
「7236…これが何の数字を表しているかわかりますか?」
さて、誰かわかる人いるかな?まぁいないよな。
「ヨハネのリトルデーモンの」
「違うずら!」
「ツッコミ早すぎ!?」
はぁ…真面目に話してる時に何言ってるんだよバカ……
「善子ふざけるな」
「ごめんなさい…」
「7236、これは去年ラブライブに最終的にエントリーしたグループの数だ」
「そう、小野先生の言う通りですわ。スクールアイドルに詳しいみたいですね。
7236というのは第1回ラブライブの10倍以上になります」
いやいや、いい加減俺がμ'sのマネージャーやってたってこと気付けよ……
「そんなに……」
「元々スクールアイドルは人気があり、ラブライブの開催で人気が爆発的に上がりました。A-RISEやμ'sによりその人気が揺るぎないものになりアキバドームで決勝が行われるようになりました。そしてレベルの向上が生まれたのです」
たしかにな、第1回ラブライブはランキング20位以内に入れば本戦出場できるくらいにしかエントリー数がなかった。
それが第2回には予備予選が必要になるくらいエントリー数が増え、たくさんのスクールアイドルがスクールアイドルの素晴らしさを伝えるために秋葉を会場に1つになってライブをしたくらいだ。
そういや俺もその時は踊ったっけな。
「じゃあ……私たちが誰にも投票してもらえなかったのは…」
「そう…あなたたちが誰にも支持してもらえなかったのも、私たちが歌えなかったことも仕方のないことだったのです」
ダイヤさんも鞠莉さんもこの結果を予測していた。多分松浦さんも…
「歌えなかった?」
「どういうことですか?」
「今から2年前にもう浦の星にはスクールアイドルがあったんだよ。俺は東京で今回参加したイベントを見てたけどその時にダイヤさんと鞠莉さんと、松浦さんの3人が出てたんだよ。ただ……」
「2年前、既に統廃合になりそうという話は出ていたのです。それで私と鞠莉さんと果南さんでスクールアイドルを始めました。そしてあなたたちが参加したイベントにも参加したのてすが……その時のイベントで私たちは歌えなかったのです。他のグループのパフォーマンスや会場の雰囲気に圧倒され……
あなたたちは歌えただけ立派ですわ」
統廃合の話が出てたことは知らなかったな。でも……本当に歌えなかったのか?そこだけが疑問だ。見てた時そんな雰囲気じゃなかったし。
「じゃあ反対していたのは……」
「いつかこうなると思っていたからです」
ダイヤさんは言葉はきつかったがみんなのことを思ってくれて反対していた。このことを聞いてみんながどう決断するかはそれぞれに決めてもらう。
「迎えの車も来たみたいだし今日はそろそろ解散にしよう。
みんな今回のイベントのこと、それにダイヤさんの話を聞いてこれからどうしていきたいか、みんな自分で考えて決断するんだ。それでたとえ辞めるって決断をしても責めない。どんな決断でもいいから自分自身でちゃんと答えを出すこと!いいな?」
『………はい』
みんな元気ないな。まぁ仕方ないことだ。みんながどんな決断をするのかわからない。
でもどんな決断でも俺は寄り添っていくつもりだ。
さて、帰る前に1つだけ確認するか。
「ダイヤさん」
「なんでしょうか?」
「答えたくなければ答えなくていい。2年前……本当に歌えなかったのか?俺にはそう見えなかったけど」
「っ……そうで……いえ、嘘ということは見抜いているのでしょう。すみませんが今は……」
「そっか、ダイヤさんも何かあれば頼ってくれて構わないからな」
「ありがとうございます」
やっぱり歌えなかったわけじゃないか。何か訳ありなみたいだし無理に聞くのはやめておくか。
歩いて帰ろうとしたら美渡さんが乗せてくれたから楽に帰ることができた。
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「すみません、私まで送ってもらって」
「いえいえ、いつも千歌がお世話になってますから。これからも千歌のことよろしくお願いしますね。
千歌〜早くお風呂入っちゃいなよ?」
「わかってる〜」
「梨子ちゃんも、ゆっくり休んでね」
「はい、ありがとうございます」
俺も梨子もそれぞれ家の方に歩いていった。
そして次の日の朝。
「ん?梨子?どうかしたのか?」
朝少し外に出てみたら梨子が砂浜の方に走っていくのが見えたから俺もそっちの方に行ってみた。
すると
「千歌ちゃ〜ん!」
と何度も叫んで……ちょっと待て!?まさか!?
「梨子!」
「先生!千歌ちゃんがこっちに歩いてるのが見えて急いで来たんですけど…」
梨子が慌てて説明するとザバァっと音がしてそこには
「あれ?梨子ちゃん?先生も…」
千歌がいた。とりあえず馬鹿なことは考えてないみたいだな。
「な、何してるんだ?」
「えっと…何か見えるかなって思って、梨子ちゃん海の音聴きたいって言って潜ったでしょ?だから……」
そういやそんなこともあったな。
「それで?何か見えた?」
「うん!何も見えなかった。でもね、だから思ったの!続けなきゃって。私、何も見えてないんだって、先にあるものがなんなのか。このまま続けても0のままなのか、それとも1になるのか、10になるのか。
ここでやめたら全部わからないままなんだって」
「千歌ちゃん…」
「だから私は続けるよ!スクールアイドル。だってまだ0だもん。0なんだもん……」
千歌……この様子だと本音言ってくれるかもな。
「あれだけみんなで頑張って、歌を作って、衣装を作って、PVを作って……頑張って頑張って頑張って、スクールアイドルとして輝きたいって……
なのに0だったんだよ!悔しいよ!差がどれだけあるかなんて関係ない!悔しいんだよ!やっぱり私、悔しいんだよ……」
ようやく言ったか。梨子が千歌の所に行ってるけど俺も行くか。
「よかった。ようやく本音が聞けた」
「だって…私リーダーだし、私がしっかりしないとみんな困っちゃうでしょ…」
「そんなことだと思ったよ。別にリーダーだからって悔しがったらダメなんてことはないぞ。悔しいなら悔しがれよ。それくらいでみんながついていかなくなるなんてことはないさ」
「先生の言う通りよ。それに誰も千歌ちゃんのために始めたんじゃないわよ。自分がやりたいから始めたのよ。それは私だけじゃない、みんなもよ」
「じゃなきゃ、みんなここに来ないだろ」
「えっ?」
俺が後ろを振り向いていると千歌も同じ方向を見る。するとAqoursがみんなこの場所に来ていた。みんなの表情を見る限り、迷いはないみたいだな。
「おーい!」
砂浜の方で曜が手を振っている。と思ったらすぐに海に入ってきた。曜だけじゃなくみんなも。それを見て千歌は泣き出してしまった。
「今から0を100にするのは無理かもしれない。でも1にすることならできるかもしれない。私もそれが知りたいの、できるかどうか」
「っ………うん!」
泣いている千歌に梨子が言うと泣き止み、元気よく答えた。
そしてちょうど、雲の間から日が差し込みAqoursのメンバーを照らし出した。
0から1へ!その想いを胸に、Aqoursはここから新たにスタートしていく。
次回はオリジナル回にしようかなと考えています。
投稿はもう一つの連載作品の「絶望を感じた少年に光を」の次回かファーストライブまでの投稿が終わってからです。次回でファーストライブまで書いちゃうかまだ未定です。