異世界食堂another またはエル君の異世界食堂メニュー制覇記   作:渋川雅史

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またしても前後編になってしまいました。
 なお、作中のあるシーンについては規定にかからない表現を心掛けたつもりですが不可であればご指摘ください
 今回も戦況及び戦後状況は私の創作であり、公式とは何の関係も無い事を申し上げておきます。


外伝2#女王と騎士、道行きの第一歩 前編

 華燭の宴は新生クシェペルカ王国の復興を内外に示す目的もあり勤めて盛大なものとなった。国外からの出席者はロカール諸国連合中再興された国の君公、そして孤独なる11国の大使達。フレメヴィーラ王国からはリオタムス王とともに当然のごとく銀鳳騎士団の面々がいる。

「おめでとうキッド!…いや、いやしくも一国の王配にこの呼び方はもういけませんね…おめでとうございますアーキッド・オルター・セラーティ・クシェペルカ殿下。」

「そ、そうだね、キッ…じゃなくアーキッド兄上、エレオノーラ様、おめでとうございます!」

「よせやいエルもアディも…」

「いやいや、こういう事はけじめが大切です!」

 妙な所で律義なエルとキッドの会話をくすくす笑いながら見つめていたエレオノーラが優雅な仕草でアディの手とエルの手を取った。

「アデルトルート、これで私と貴方は義姉妹ですね。そしていずれはエルネスティ様とも…」

「きゃ!」

「女王様!」

「アディ、言うだけ野暮だが何処へ飛んで行くか分からないコイツをしっかり捕まえておけよ!エルはいい加減覚悟を決めろ!」

「うん!」

「…はい…」

 それぞれの表情で真っ赤になる2人に追い打ちをかけるキッドだった。

 

 そして初夜、二人はこれまでの想いの丈をぶつけ合う。キッドはエレオノーラを強く、逞しく貫き、エレオノーラは痛みと共にキッドの全てを受け止めた。

「愛してる!…エレオノーラッ!!」

「私も…愛して…います…アーキッドッ!あなたぁーっ!!」

二人はお互いの名を叫びつつ同時に果て、崩れ落ちる…

 熱い時が過ぎ、月明かりの中二人は見つめ合う…エレオノーラの目には涙があった。

「…ごめんエレオノーラ、その…辛くした?」

「いいえ、嬉しくて…だってあなたが私を『エレオノーラ』って呼んでくれた…そう呼ぶことができる存在になって下さった…その事が…」

 こみあげて来る想い、キッドはエレオノーラの涙を拭うと口づける。手を握り合って貪るようなキスを交わす二人はしかし、ヴィクトリア…長い耳の美しく、狡猾なまでに賢く、自分達より遥かに年上の『魔女姫』の言葉を思い、これが始まりである事を見据えていた。

『二人で人生を歩む、その覚悟を示しなさい…』

 

Menu-Z2:チョコレートパフェ再び

 ここで話は数年前に遡る。

「ん……」

「どうですかエレオノーラ様?」

「え、ええ…不思議な味だけどとても甘くて飲めます…」

「よかったぁー…フレメヴィーラでは何処の家でも作る薬酒なんです。俺やアディも寝込んだ時は母様によく作ってもらいました。」

「そうなんですね?ありがとうアーキッド様」

 フレメヴィーラの一部で獲れる薬用植物の根(朝鮮人参的)を煮詰めたものとたっぷりの蜂蜜を葡萄酒に入れて温めた物をキッドはエレオノーラに作ったのだった。

 キッドの心遣いが嬉しくてエレオノーラが笑った。やつれてはいるが久しぶりに見た彼女の笑顔にキッドも胸を撫でおろした。

 もともと食の細かったエレオノーラだったがここ暫くは酷い食欲不振が続いていた。理由は分かっている。クシェペルカ王国や旧ロカール諸国連合の戦後処理を急ぎ済ませねばならないのである。クシェペルカ自体の復興だけでも多難な中の激務で決して頑健ではないエレオノーラがまいってしまうのは当然であったろう。

 ジャロウデクの西部戦線、孤独なる11国との戦いは後者が圧倒しているように見えるがフレメヴィーラからの支援として藍鷹騎士団からもたらされる情報ではジャロウデク側は意図的に戦線を縮小しつつ乾坤一擲・伸るか反るかの反攻を準備しているらしい。この会戦の勝敗によっては戦況の膠着が予想される、その時こそ最大の講和の機会。単なる講和ではなくジャロウデクを関の向こうに逼塞させ、西方諸国の主導権をクシェペルカ王国が握れるか否かが掛かっているのだ。

 

 閑話休題、ここでクシェペルカ王国の戦後状況についてお話しておこう。

 第一王女カタリーナと共にデルヴァンクール在のジャロウデク軍主力が事実上壊滅し降伏して以降、更に西部に存在したジャロウテク軍残存部隊(占領地維持の為の第二線兵力)―統制を失いなし崩しの総退却を開始した彼らに対しクシェペルカ王国軍は凄絶な追撃・掃討戦を開始した。組織的戦闘力を失った彼らはできの悪い標的のごとく薙ぎ払われていくが、そこで戦死した者はいっそ幸運であった。

 魔獣という脅威に対して団結心の強いフレメヴィーラと異なり、西方諸国の一般国民は国に対しての忠誠心というものはさして強くない、一定の治安を維持してくれれば税をそこに納めるだけの事である。だから国に掲げられている旗が変わった所でさして気にする事もない筈だったがジャロウデクの占領行政はマズすぎた。傲岸に法外な挑発を行い役務を課すだけでなく兵の暴行略奪を統制しないどころかこれの停止を懇願する者を反逆者として虐殺するにあたってはなにをか言わんや…

 状況がひっくり返った時、逃げ遅れた間抜けや敗残兵に対する一般国民の復讐は凄惨だった。馬鍬で貫かれ、鎌で首を抉られ、鋤で頭を割られるのはこれまた運のいい方である。首だけを出した姿で生き埋めにされて酸欠で口をバクバクさせつつ窒息死するかその状態で食肉獣に首を、顔を喰らわれ餌食となる。あるいは真っ裸で木に逆さ吊りにされ耳目口鼻全てから血を吹き出して、或いは腕で縛り上げられて吊るされ、関節や軟骨が全て外れる苦痛に泣き喚きながら鳥に目をほじくり出されて2~3日かかって絶命するよりは、という事ではある…。

 カタリーナ他捕虜となった者達もその多くが安穏ではない。身代金が期待できる相応の身分の者は牢獄にすし詰め状態で監禁され、最低限の食糧で飼い殺しとなったがそれ以外の者はクシェペルカ軍が追撃を停止した旧ロカール諸国連合とジャロウデクの自然国境である不毛の荒野(岩砂漠)に着の身着のままで追放された。引き返そうとするものは法撃で吹き飛ばされるだけである。遮るものとてない直射日光と岩からの照り返しで肌を焼かれ、乾き、行き倒れる者はこれまたまだ幸運。わずかな水を、あるいは倒れた者(息がまだある者を含む)から引き剥がした衣服あるいは靴を争う『共食い』…フラフラの者たちが石で殴り合い、首を絞め合う…の果てに歩き続けて倒れ、次に服と靴を引き剥がされ、そして引き剥がした者がまた…といった地獄絵図の果てに野垂れ死ぬよりは、という事ではある…。

 ところでこんな中、統制を保ったまま小隊規模で生きてジャロウテクにまでたどり着いた一団がいる、指揮官はあのグスターボ。とにかく戦える者を集めて旧ロカール諸国連合国境地帯の村を襲って殲滅し、水と食料 牛馬と馬車を略奪して荒野の踏破を図ったのだった。これまた苛烈なトリアージー勝手に水や食料に手を出す者は切る、歩けなくなっただけでなく立って小用が出来なくなった者(=一週間は持たない者)は始末する―の結果である。自他ともに認める『切る』事にしか興味のない半狂人というのがグスターポの評だったがドロテオの武人としての仕込みは決して無駄ではなかったらしい。

「義親父(おやじ)よ、ありがとうよぉ…」

という呟きを共に帰還した者達数人が聞いているのだった。

 そんな形でクシェペルカ王国内はもとより旧ロカール諸国連合領域までジャロウデク軍の掃討・駆逐を完了したクシェペルカ軍はそこで停止した。ここからの更なる侵攻は主に補給の問題でできなかったのだ。

 残敵掃討の後始まった戦後処理、クシェペルカでもロカール諸国連合でも貴顕層は軒並み戦死するか粛清されており統治機構には大幅変更が必要だった。

 まずクシェペルカ国内では中央護府に従っていた役人や下級貴族は相応の処遇差を課しつつも罪に問うことなく地位を保証し、領地を安堵して混乱を避ける事となったがこの処遇と論功行賞のさじ加減が実に頭の痛い問題だった。一歩間違えば後日大混乱の元、更には内乱の種になりかねないのである。

 それに加えて旧ロカール諸国連合の問題があった。クシェペルカは今後のジャロウデクとの対抗上これらの国々の再興(クシェペルカが主導権を握った大同盟を視野に)を大義として掲げていたのである。

 旧ロカール諸国連合の君公はクシェペルカ・ジャロウデク双方の政治的影響力が過度になることを防ぐために孤独なる11か国の王族ないし貴族との縁を重視していたので新たな君公はそちらの縁を辿ればある程度なんとかなりそうだった。特にマルティナの夫であった故フェルナンド大公が旧ロカール諸国連合との取次ぎ役でその家系に詳しかったのも幸いであっただろう。

 対空衝角艦ジルベールとイカルガ…エル他銀鳳騎士団とエムリスが孤独なる11か国を文字通り飛び回ってこれはという家に接触して(示威行為を兼ねる)君公への即位を打診する…クシェペルカの主導という点に不満はあるものの、東方にツテを維持できるというのは11国にとって悪い話ではない。半数程の国については再興の目途が立ったが半数ほどは新君公にふさわしい血縁者がいなかったり、村落・都市代表からの申し入れでクシェペルカ内の自治領として編入される事となったが、これにともなう統治機構の再構築や新君公の受け入れと同盟条約の折衝…複雑怪奇なることこの上ない仕事が重なっていたのである。

 

「…不甲斐ないですわ。宰相を引きけて下さったマルティナ叔母様達はあんなに頑張っておられるのに私はこんな有様で…」

「エレオノーラ様…」

 エレオノーラの体調はストレスからくるものである事は本人もキッドも分かっている、医者からは

「とにかく何か食べていただかない事には…それできっと元気になられる筈なのです」

 と言われているのだが喉を通らないという状況は本人にも如何としがたく、それが更にエレオノーラの心労を追加していた、悪循環である。ここでキッドは無念と悔しさの果てにせんない事とは思いつつもこんな言葉を口にした。

「ちくしょう…異世界食堂…『ねこや』にいけたらなぁ…」

 食事の旨さもさることながら、エレオノーラには気持ちを和らげてくれる環境が必要なのではないかとキッドは思っている。言うなれば転地療養である。あの店の落ち着いた雰囲気と客をもてなす達人のマスター、アレッタやアーデルハイド、ラナーといった女性陣との出会いが彼女に素敵な休息を与えてくれる筈だ。しかし現実には扉は大山脈の向こう側…歯噛みするような思いのキッドだったが事態は思わぬ方向に動き出す。

 きょとんとした表情のエレオノーラがこんな事を言ったのだ

「アーキッド様、今『異世界食堂』『ねこや』とおっしゃいましたよね?どうしてその名前を…そもそもあの店は本当に実在したのですか?」

「はいいぃーっ!?」

 盛大にズッコケるキッド!更にきょとんとした表情になるエレオノーラに逆に質問を浴びせた。

「エ、エレオノーラ様どうしてねこや…異世界食堂の事を…まさかあそこに行ったことが!?」

「ではあの出来事は夢ではなかったのですね!?…ええ、あれはお母様が崩御した葬儀式が終わった日の事でした…」

 エレオノーラはキッドに語った、10年程前の不思議な体験…素晴らしい菓子と温かな出会いの思い出を…

 

 その日、父王も叔父である大公と叔母も…親族家臣達が弔問外交や式の後始末に忙しい中、放置される形になっていたエレオノーラは目に涙を一杯ためながら普段は誰も足を踏み入れない王城の深部を彷徨っていた。

 幼い彼女には『母の死』を、母にもう会えないという事をどうしても深い所で受け入れることができなかった。母はこの城のどこかにきっといる!私が見つけるのを待っている!というおよそ根拠のない事は頭ではわかっている思いにとらわれて城の部屋と言う部屋を探し回っていた時にその扉に出会ったのだ。部屋の中央にぽつねんと立つ不思議な扉…この向こうにきっとお母様はおられる!彼女は扉を開けた…

 

「当然ですがお母様はおられなかった、そこで出会った方々は…」

チリンチリン

「おや、お嬢ちゃん一人かな?異世界食堂―洋食のねこやへようこそ。」

 入店したエレオノーラに先代がニカッと笑いかけたのだが…彼女の目からみるみる涙が溢れて…

「う、うわあぁ――んっ!!」

「お、おいお嬢ちゃん?」

「おいなにやってんだよ店主?女の子を泣かせて…」

 顔を覆って泣き崩れてしまったエレオノーラの様子にどうしてよいか分からずおろおろする先代にメンチカツ:ウイリアムが呆れた調子で声をかける。

「人聞きの悪いことを言わんでくれ!何もしとらんぞ。」

「じゃああんたの顔が怖かったんだ?」

「メンチカツよ、そこまでにしておけ」

 ここでコロッケ:ウィルヘルムがメンチカツを窘めるとすっと立ち上がって二人に近づくと先代に向かって頷いた。意を察した先代が下がりエレオノーラの前に膝をついて屈んだ、そして優しくその頭を撫でる…

「あの方の事は忘れられません、冷たくて皺だらけだけど大きな手…ゆっくりと優しく私が落ち着くまで私を撫で続けてくれました。禿頭で髭は真っ白、相当なお歳だった筈ですが王服としか思えない服をまとった威厳に満ちた姿…私を落ち着かせるだけの力がありました。」

 ウィルヘルムはエレオノーラ…服装からどこかの貴顕の令嬢であると見抜いている…の頭を撫でつつ落ち着くのを待っている、流石と言うべきか彼女にはとても悲しい事があったに違いない事がわかっていた。やがて少しエレオノーラの涙の勢いが減じたのを見て口を開く。

「姫よ、この老人に名前を教えてはくれないかね?」

「…エレオノーラ・ミランダ・クシェペルカ…でございます…」

 『はて、そんな国あるいは王侯貴族の家は知らないな』とウィルヘルムを含むその場の客全員が思ったが、ウィルヘルムとしてはその件はさて置いてエレオノーラににっこりと微笑みかけた。

「エレオノーラ姫、どのような悲しいことがあったのか話してはくれまいか?…そうか、母君が崩御されたか…」

 ウィルヘルムはそっとエレオノーラを抱きあげると自分の席の前に座らせた。きょとんとしたエレオノーラに微笑みかける。

「姫、もう泣くのはおよし…今とても美味しいお菓子を御馳走してあげよう。そなたが今まで食べた事のない『冬の雲』をね?」

「『冬の雲』?」

「そうだよ、店主?」

「おう了解!バカ孫!」

「もう準備してるよ、それとバカは余計だ。」

 笑いを含んだ先代と当代のやりとりににっこりと笑うウィルヘルム、エレオノーラも思わずつられて笑ってしまった。そこへ笑顔の当代がやって来る。

「おや笑ってくれたね?どうぞ、チョコレートパフェです」

 

「俺、それ食べた事があります!甘くて冷たくてフワフワで黒い『チョコレート』は苦くて甘くて!」

「でしょうでしょう!?」

 異世界の菓子の味で盛り上がる女王と騎士、奇妙な光景ではある。

 

 目の色を変えてチョコレートパフェをパクついていたエレオノーラはグラスが半分になった当たりで我に帰った。

「ありがとうございますおじいさま…申し訳ありません、遅ればせながら名前をお聞かせいただけませんか?」

「私の名はウィルヘルム、帝国の皇帝だった。今は息子に帝位を譲った隠居の身だがね。」

「『テイコク』?国王陛下ではあられないんですか?」

 聞いたことのない言葉をオウム返しにするエレオノーラにウィルヘルムは笑みと共に言葉を続ける。

「まあ似たようなものだよ、言い方が違うだけだと思ってくれればよい」

「やはりそうでしたか。ウィルヘルム陛下、改めてお礼を申し上げます。

 …でもどうして見ず知らずの私にこのように良くして下さったのですか?」

 ウィルヘルムは席を立って貴婦人の礼をするエレオノーラの質問に、穏やかな笑みと共に席に着くよう促してから答える。

「私にはちょうどそなたと同じ年頃の孫娘がおるのだよ…父である今上帝も母も多忙な上、病弱で私が預かっておる故に何やら他人に思えなくてな」

「そうでしたか…」

 一応納得して再びパフェを食し始めたエレオノーラを穏やかだが真剣な表情で見つめつつ語り始めた。

「エレオノーラ姫、今から話す事は今のそなたには難しいだろうから聞き流してくれればよい。耳から体と心を通せばいずれ思い出すこともあるだろう…」

「?」

「私の孫の事は話したね?今は私があの子を庇護してやれるがこの歳だ、いつまでそうしてやれるか…」

「…そんな!?駄目ですウィルヘルム様!…その方の為にどうかお元気でいて下さらなくては!」

 ウィルヘルムの孫と自分、母とウィルヘルムを重ねたエレオノーラが再び涙目になって叫ぶが、ウィルヘルム自身は笑顔でぽんと彼女の頭に手を置いた。

「そうだな?だが別れと言うものは時に否応なくやってくるのだよ…そなたの母君もそうだったのだろう。そなたを残し逝く事はどれほど心残りであったろうな…」

「…」

「生きる事には常に苦労と苦難がつきまとうもの…いや生きる事自体が苦労と苦難なのだろうな。それはどのような立場・生まれ・貧富も関係はない。それでも人は生きて行かねばならぬものなのだよ…一滴の幸せや他の誰かの笑顔を糧として。

 姫、そなたはそのような人生の第一歩を否応なく踏み出したのだ。これからも同じような、或いはそれ以上の苦労と苦難があるだろう。だから見つけねばならない、その中に有っても押しつぶされぬような幸せを…それがどのようなものかは分らぬが…私にとってはこの店の一皿のコロッケなのだがね」

 

「『チョコレートパフェ』を食べ終わった私をウィルヘルム様とご店主、その孫の料理人の方が扉から送り出してくださいました。私はそれからその部屋に何度も行ったのですが扉を見つけることができなかった…今の今まであれは何かの夢ではなかったかと思っていたのです。」

「夢じゃありませんよエレオノーラ様!…あの扉は7日おき、あちらの『ドヨウの日』だけ現れて開くんです!」

「7日…そうだったんですね?」

 ここでキッドは部屋にあった暦と小型黒板、チョークで計算を始めた。異世界食堂に最後に行った日から計算して次に開く日は…

「今日だ!」

「ええっ!?」

「エレオノーラ様、その部屋の場所は忘れてませんよね?」

「もちろんです!」

 

 夜も更けて、密かに寝室からキッドはエレオノーラを連れ出した(幻晶甲冑使用!)そして彼女の記憶にある部屋へ赴く二人…いろいろな意味で危険な行為だがキッドもエレオノーラも止まらなかった。

「アーキッド様、なんだかわくわくしますわ。」

「…あった!計算が合っていた。」

 そこにはキッドにとっては1年超、エレオノーラにとっては10年ぶりの異世界食堂の扉があった。

「行きましょうエレオノーラ様、異世界食堂へ!」

「はいアーキッド様!」

 二人が手を合わせてドアノブを回す…チリンチリン…

 




 戦中戦後の状況は、「歴史〇像」で読んだ中世欧州のそれと「ドキュメント太〇洋戦争」のガダルカナル戦&インパール作戦のそれを参考にしたものです。
 
 次回いよいよ二人の来店です。常連の誰と出会い、どのようなことと相成るかはお楽しみに

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