イカロスの翼は死に戻る   作:玄武 水滉

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久しぶりに書きましたが、オケアノス編をのんびりでも書いてこうかなって思いました。
主人公はキャラ難があったので、とりあえずあなた表記にさせていただきました。
今回は短めです。導入みたいなものです。次回から本格的に進むと思います。


オケアノス編
レイシフト


 

 

 

 

 

 

 

 ーー長い長い夢を見ていた。

 

 

 そう独り言ちた所で、ふと自分の居る場所が英霊の座ではない事に気がついた。

 はて、誰かの召喚に応じただろうか。記憶にないと言えば正しいのだろうが、自分が召喚に応じなければ、きっと召喚される事もなかっただろう。そう思い、腕をぐぐっと伸ばした。伸びきった背中からポキポキと音がする。

 

 長い夢を見ていたと思う。あの迷宮での出来事。忘れるはずのない自分の呪い。そして狂気に似た自分の憎悪。

 まるで走馬灯の様に思い出していた。だが、それも終わりの様だ。

 

 外から声が聞こえる。激しい声だ。誰かを罵り、誰かが叫び。その声に応じるかの様に誰かが悲鳴をあげた。

 そうか、これはきっとあの惨劇に似た様な事が起きている。誰かが傷つき、誰かが死んでいる。それでも鳴り止まない音、気が付けば不思議と手はドアノブに近付いていた。

 

 あの忌々しい光が降り注ぐ外へと。いま、舞い降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは現在進行形で慌てていた。

 レイシフトに成功し、どんな場所なのかーーと思った矢先、矢鱈ガタイの良い男達に囲まれていた。

 隣では後輩のマシュが、彼女の体に似合わない大盾を構え、青白いモニターではドクター・ロマンが頭を下げていた。

 

 だが、状況が好転する筈もない。サーベルを構えた男達ーー海賊が迫る。

 

「先輩!」

 

 ーーあぁ、戦おう。マシュ!

 

 令呪でサポートする事も念頭に入れ、あなたは礼装によるマシュの強化を行った。

 マシュが突貫する。海賊達を薙ぎ払い、あなたは船の端まで寄るようにマシュに言った。

 疑う事もせずに頷いた彼女は、あなたを背にしてすぐさま端まで寄った。背後には古代の波が轟々と音を立てている。落ちれば命はないだろう。

 それでもあなたがそう考えたのには理由があった。

 勿論自分が足手纏いになるのを防ぐ為である。四方八方囲まれた状態ではマシュも碌に戦う事は出来ない。なら、攻められる方向を減らせば良い。後は一人ずつゆっくり倒していけば、体力の高いマシュが勝てる。

 

 それが()()()()()()()()()の話だが。

 

『気を付けて!サーヴァント反応だ!』

 

 ドクター・ロマンが叫んだ直後、突然船の扉が開いた。

 ロマンの叫び声に気を引き締めるあなたとマシュ。海賊ならまだしも、サーヴァントはそういかない。相性によっては最悪死ぬかも知れない。そんな事実が迫っていたが、あなたは常に最善を尽くすだけだ。そう頭を回転させ、心に炎を灯した。

 

 ドアを開けて飛び出したのは、布を被ったサーヴァントだった。その姿はボロボロの布に隠れて見えない。

 

 が、マシュの眼前にすぐ様迫った所を見るに、俊敏性の高いサーヴァントの様だ。

 

 ーー相性が悪い……!

 

 そう判断を下したあなたは、礼装によるガンドも視野に入れて動く事を決めた。

 一瞬止める事が出来るガンドだが、きっと役に立つだろう。

 

「はぁあああああああっっ!!!!!!!!」

 

 マシュの盾が唸る。振るわれた盾は、布のサーヴァントが持っていたナイフにぶつかり、甲高い音を立てた。

 拮抗。その様に見えたが、マシュの方が僅かばかり押していた。

 そのまま押し返した彼女は、空中でもう一押しと言わんばかりに布のサーヴァントを盾で殴った。

 殴られた布のサーヴァントは、後方に一回転宙返りすると、銀のナイフを再び構えた。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

 が、その直後一人の海賊が慌てて飛び出して来た。

 

「俺たちも急に襲って悪かった!だけど、こいつには手を出さないであげてくれ!」

 

 ーーその子は一体なんなんだ?

 

 何か訳ありな言い方に、理由を聞くあなた。すると、苦しそうな顔で海賊は言った。

 

「こいつはなぁ……ボロボロの姿で波打ち際にいたんだ」

 

「先輩……長い長い話が始まりそうですよ」

 

 ーーうん、なんかさっきの戦いが嘘の様に話し始めたよ。

 

 目に涙を滲ませて話し始めた海賊に、あなたは少し苦笑する。

 

 マシュの言う通り、本当に長い話が始まったのはその後の事だった。






最初で殺し合いが〜の下りはマシュが盾で海賊を吹き飛ばしているだけです。勘違いってやつですね。

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