本編の『ロロナルート』とは異なり、一緒には行かない組なので出発前のお話となっています。
…………って、あれ? 何かがおかしいような……?
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、一部表現の変更、句読点、行間……
【*2*】
僕を訪ねてきたトトリちゃんから「『塔の悪魔』を倒しに行く」ことを伝えられ、僕はその準備をすることに……。
『塔の悪魔』のことや、それを今後倒しに行くという話は以前に聞いていたので、前々から色々と考えていちおう準備を進めはいた。なので、持っていく武器やアイテムを選別しまとめるのには時間はかからなかった。
準備をサクッと終えた僕は、さっそくトトリちゃんたちとの集合場所である『アランヤ村』に……行くわけではなかった。
出発は明日。僕の手元には『トラベルゲート』があるから『
もちろん、早めに行っていても何も問題は無いんだけど……でも、やっておくべきことが僕にはあった。
それは、遠出をする際に行く前と帰ってからいつもしている「挨拶周り」だ。
――――――――――――
***青の農村・マイスの家前***
……で、挨拶周りに行こうと家を出たところで、僕は固まることとなった。
その理由は……
「…………。」
「え、ええっと……?」
玄関を出たすぐ外に無表情の
僕は、この子が僕に何か用があって来たんだろうということはすぐにわかった。そうでもなければ、わざわざ僕のところに来たりはしないだろう。
じゃあ「知り合いなのか?」と聞かれれば答えはNO。
目の前の男の子が「村長に挨拶しにきました」って言いそうかと聞かれてもNOだろうと思う。挨拶に来る人は他所の地域の人や行商人を中心にこの数年で沢山あって来たけど、
なら「なんの用かな?」とでも聞けばいいんだろうけど……何故か僕には目の前の男の子のことがが妙に引っかかっていて、何か聞く前に頭の中で「あれ?」っと考えてしまったのだった。
さっき思ったように、この男の子にはこれまでにあった覚えは全く無い。が、その男の子には何故かはわからないけど既視感を感じる。
服装は……動きやすさとかよりも見た目を重視しているデザインに見え、どちらかと言えば街の貴族の人たちなんかが身に纏っているようなものに近い。だけど、キッチリカッチリって感じでもなく、首元や襟元にはフリルがあったりしてどっちかといえばフンワリ系? あと、袖が手が隠れるくらい長い……
「あっ!」
っと、ここである事に気がつき、自分が感じていた既視感についても理解ができた。
そしてそのことの裏付けを取るため、僕は目の前の男の子に問いかけてみることにした。
「えっと、もしかして……
僕の問いに男の子は表情を変えないまま頷き、口を動かす。
「はい。ホムはホムです。そして、ホムをホムだと認識したことを含めた様々な要素から、ホムはあなたを「マイス」だと判断します。間違いはないでしょうか?」
「うん! 僕がマイスだよ。よろしくね、ホムくん!」
「はい、よろしくお願いします」
礼儀正しく深々とお辞儀をするホムくん。
そんなホムくんを改めて見ると、僕が出合い頭から既視感を感じたのも当然のことだろうと納得できる容姿だ。
さっき注意深く見た服装が、長い袖をはじめとした部分部分がホムちゃんの服と
そして、無表情のその顔もよくよく見てみれば……いや、よく見なくてもその目や鼻、口といったパーツをはじめ、全体的にホムちゃんの
また、何て表現をしたらいいのかわからないけど、その独特の雰囲気も同じで、やはり総合的に見てもホムちゃんとホムくんは似ているんだろう。
双子のように似ている二人だけど……でも、確か生まれた時期はアストリッドさんが街を出る前と後という差がある。本当に双子ってわけでもないのに、どうしてこうも似るのだろう?
二人とも正確には人間じゃなくて『ホムンクルス』っていう存在らしいけど……つくったのがアストリッドさんであるという共通点からか、もっと別の何か……作り方や素材で変わったりするのだろうか? いや、ちむちゃんたちのことも考えると、『ホムンクルス』という存在自体が「似やすい」という性質を持ってたり?
……色々と考えてみるけど、やっぱり『錬金術士』ではない僕には考えつかない領域なのか、前々さっぱりだった。
そんなことを考えていたのだけど、ふと
「ええっと……それで、ホムくんはどうしてここに?」
挨拶をするためだけにわざわざ『
「グランドマスターから調合の素材の調達を命じられました。こちらでそろえられるとの話でしたが……」
「ああ、なるほど、いつものおつかいだね。ちょっとリストを見せてくれる?」
「はい、どうぞ」
ホムくんがから手渡してもらった四つ折りにさせた紙を広げ、そこに書かれてあるリスト表に目を通し、素材とその必要個数を確認していく。
確認しながら家のコンテナや倉庫で保管している物を思い浮かべ「うん、とりあえず量は問題無いし、品質も悪くなかったはずだから大丈夫かな?」と一人考える。
……と、そんな確認作業の最中、またある疑問が浮かび、さっきと同じようにホムくんに聞いてみた。
「そういえば、普段はホムちゃんがおつかいで、ホムくんがその間アストリッドさんのお世話をしてるって聞いたんだけど……交代制にでもなったの?」
ホムちゃんだけでなく、ホムくんもアトリエの外に出しておつかいとかをさせて「社会勉強」をさせるとか、そういう理由で交代制にするようにしたのかなぁ?
そんなふうに思ったんだけど、アストリッドさんのことだし、もっと何か後々の事を考えて判断したんだろう……
「いえ。ホムがホムの代わりに来たのは、
「へぇ、なるほど…………え? 謹慎!? なんでホムちゃんが!?」
一瞬納得しかけてしまったけど、よくよく聞いてみればおかしな状況だ。
あのホムちゃんが何かそんな失敗をするとは思えないし、したとしても、そんな外出禁止を言い渡されるほどの大事を起こしてしまうとは考えられないんだけど……?
「グランドマスターの言葉をそのまま言うと……「休みを与えたらどっかに行ってしまったかと思えば、ロロナとその他
「思いっきり私情じゃないですか、アストリッドさんっ!!」
けど、その謹慎処分って僕に原因があるんじゃ……?
『水着コンテスト』のことを知らなかったとはいえ、朝、うちに来たホムちゃんを誘い、そのまま『豊漁祭』に連れて行ったのは僕なわけで……。うん、これは何とかしてあげたほうが良いような気がする……というか、なんとかしてあげたい。
でも、「僕のせいなんです」って伝えたところでアストリッドさんの反応は「で?」というどうしようもない言葉か、「ならお前が『水着コンテスト』を開催しろ」という無茶振りか、どちらかだろう。……どっちもいろんな意味で無理だよ。
なら、代案かを出したり、別の物で満足させたらいいんだろうけど……「アストリッドさんを」という時点ですごく難しくなってしまっている。
「……そういえば、『学校』のこともあってマークさんとハゲルさんと『サンライズ食堂』に飲みに行った時、酔払ったマークさんが「僕も『豊漁祭』には行っててね、その一部始終をカメラで撮影していたんだ」って言ってた気が……。アストリッドさんがロロナたちの水着姿が見たいなら、マークさんに言えばなんとかなるかもしれないかな?」
「はぁ、カメラで撮影、ですか?」
「うん。あっ、でも冒険者免許とかで使ってる『写真』じゃなくて『えいぞう』ってモノを撮るカメラらしいよ? 話を聞いてもよくわからなかったんだけど、目の前で見えてる光景や動きを記録して、いつでも繰り返し見れるとか何とか……」
「……ホムにもよくわかりませんが、グランドマスターにそう伝えてみます」
――――――――――――
それから、リストに書いてあった素材を用意して、ホム君に渡した。
本当はゴハンを食べていってもらいたかったんだけど、ホムくんには「いえ、必要ありません」と断られてしまった……。
そして僕は、帰っていくホムくんの後ろ姿を見つめて「そういえば、会った最初の頃はホムちゃんもあんな感じにそっけなかったっけ?」と少し懐かしみながら…………なーと戯れたり、
「次のおつかいはホムちゃんが来てくれるかなぁ?」
自然とそんな言葉が口から出てきていた……けど、「それはそれ、これはこれ」と挨拶回りを再開することにした。
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後日、マークさんの
Q,『IF』はマイスと各ルートのお相手の絡みを見る場所では無いのですか?
A,全体のストーリーの流れの都合で、マイス君とお相手のどちらかが登場しないお話があったりします。ご了承ください。
……本当にすみません。
本編で取り上げられなかった『豊漁祭』のマークさんがチラ見えしたり、ホムちゃんが大変なことになってますが……どうしても必要なお話だったので……。