マイスのファーム IF【公開再開】   作:小実

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『豊漁祭《下》 【*1*】』


「そういえば、二人って誰に投票したんですか~?」

「僕は……」


『ホム』◄(ぽちっ)





※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、一部表現の変更、句読点、行間……


『ホム』ルート
ホム【*1*】


***アランヤ村・広場***

 

【*1*】

 

 

 

 

「僕が投票したのはホムちゃんだよ」

 

「そうだったんですか? ありがとうございます……とホムはお礼を言っておくべきなのでしょうか?」

 

「あははっ、そんなに気にすることじゃないよ。僕はただお祭りの催し物に参加しただけだから」

 

 さも当然のように言うマイス。そこから「水着がどうだった」とか「可愛かった、綺麗だった」などと言わないので、本当にただ何となく投票したと思われても仕方がないような状態である。

 ……が、対するホムはそんな態度に不機嫌になるわけでも、(とがめ)めるわけでもなく、「そうですか」と受け入れていた。もちろん、水着への感想なども求めたりせずに普段通りに(たたず)んでいる。

 

 二人揃って通常営業のマイスとホム。だが、あの『水着コンテスト』の後であると考えると、逆に落ち着き過ぎていて首をかしげたくなってしまう。

 

 

 

「マイスもホムちゃんも、別に恥ずかしがったりとか照れたりはしないんだ。なんだかなぁ……」

 

「でも無関心ってわけでもなさそうだし、むしろ仲は良いように見えるわよ? ……なんていうか、ちょっと不思議な感じね、あの二人」

 

 反応を見て茶化したりして面白おかしく盛り上げようと話題を振ったメルヴィアは残念そうにしていたが、その隣でピアニャの手を引いているツェツィは二人を見てなんとも言えない感覚に(おちい)っていた。

 

「まぁ、あの二人は昔っからあんな感じだったからな」

「そうね。良くも悪くも淡々としているって感じかしら?」

 

「でも、息もぴったりでちょっとうらやましいかも……」

 

 『青の農村』での二人を中心に、ロロナの次くらいには二人の事を多く見てきたであろうリオネラが、両腕でホロホロとアラーニャを抱きしめながら、無意識のうちにそんな言葉をこぼす。

 

 

 

 さて。そんなふうに色々と言われている二人なのだが……不意にホムの眉がほんの少し歪み、八の字……とまではいかないが、それに近いものになった。

 

「ですが、困りました。ホムに投票したということは、おにいちゃんもホムにヨクジョーする変態さんなのかもしれません。そうなると、グランドマスターの(めい)でボコボコに殲滅(せんめつ)許可がおりることとなるのですが……」

 

「ええっ!? ヨクジョーっていうのはよくわからないけど……投票はしたわけだし、僕、ホムちゃんにボコボコにされるのかな?」

 

「その心配はいりません。グランドマスターは「してもいい」と言ってましたので最終判断はホムに(ゆだね)られています。……おにいちゃんに投票してもらえたという事実は、不思議と心地の良いもので嫌ではありません。なので、ホムはおにいちゃんをボコボコにはしません」

 

 いつもの無表情に戻り……そして次にはうっすらと笑みを浮かべたホム。

 彼女の表情の変化に気付けた人は驚くことだろう。『水着コンテスト』中や、マイスを探しながらみんなで祭りの村の中を歩いてまわった時など……それらとは比べ物にならないくらい表情豊かであることに。

 

 残念なのは、ホム本人にその自覚は無く……それを向けられているマイスも「昔より元気になったなぁ」と思いつつも「ソレが今の普通」だと思ってしまっているため、別段何とも思っていないことだ。

 

 

 

「合流に時間がかかりましたが、今からは約束通り一緒にお祭りをまわれます。グランドマスターとホムへのお土産を探すのを手伝ってください」

 

 そう言って、フリルの付いた長い袖に隠れた手を自然と差し出すホム。

 

「いいよ。アストリッドさんも難敵だけど、ホムくんの分も難しいところだね。食べ物は無理だろうし、他には……」

 

 ホムが言った「ホム」をどっちなのか瞬時に判断しつつ、差し出された手を握るマイス。

 そうして手を繋いで並び立った二人は、行き交う人々の合間に見え隠れする店を、指差して一緒に見ながら「あれはどう?」だとか「あちらのお店は?」と何やら二人で相談し始めた。

 

 

 

 そんな二人に、周りの誰よりも強い視線を向けている人物が一人。

 

「む~……っ! マイス君が、マイス君がホムちゃん取った!! わたしの弟と妹なのに!」

 

「なに変なこと言ってるんですか、先生?」

 

「ていうか、前々から思ってたけどあの二人がああやってるのを見ると、外見は似てなくても本当の兄妹に見えてくるわね」

 

「うっ!?」

 

 弟子の言葉にショックを受け、親友の言葉に「そ、それは……」と、自分でもどこかそう思っていたのであろう反応を示すロロナだった……。

 


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