『アーランドシリーズ』ではアプリの『アトリエクエストボード』にて期間限定イベントで『バレンタイン』『ホワイトデー』のイベントがあります。
今回は、その『アトリエクエストボード』でのイベントをベースに「細かいところは気にするな」精神で書いています。
時期的には【*5*】前後くらいのタイミングを想定していますが、あまり気にしてはいけません。
主に、「イベントの概要」、「本編および各ルートでの状況・感情面整合性」等が色々と変化しておかしくなっています。
また正確には「前編」ではなく「分岐点前」というのが正確な表現となります。
感謝祭・前編(甘くはない)
【IF】感謝祭・前編【EX】
それは、本当にのんびりとしたいつも通りのお昼前。
『
その帰り道の途中、『
―――――――――
***ロウとティファの雑貨店***
「あれ?」
雑貨屋さんに入ってすぐお目当ての
その違和感の原因はすぐにわかった。
いつもと商品の位置がちょっと変わってる、というよりも正確には――――
「なんだか、
いやまぁ、こういったお店の壁際じゃないお店に入ってすぐに目にはいる位置の商品棚に置かれる商品は、季節や流行、仕入れの状況によって入れ替えられて
ただ、
そう、棚いっぱいに並べられているのは、形や包装の色、そしておそらくは入っている
「でも、どうしてこんなに『チョコ』ばっかり……?」
これまで聞いたこと無かったけど『青の農村』で作られてるお野菜みたいに『チョコ』にも旬があるのかな?
「あら? もしかして、トトリちゃんは知らなかったかしら?」
並べられた『チョコ』を前に首をかしげてしまった私に声をかけてきたのは、もちろんこのお店の店主の――
「ティファナさん、こんにちは! あの、それで、知らなかったっていうのは……?」
「このあたりだと、『チョコ』をプレゼントして相手に想いを伝えるっていう風習があってね。それで、ちょうどこの時期くらいからみんな用意を始めるから、その素材や完成品をウチの店でも取り扱うようになってるの」
「トトリちゃんがいた村ではしてなかったかしら?」ってティファナさん聞かれて、思い返してみる。
うーん……あったような、なかったような……?
先生から『錬金術』を習うまでは私って自分で何かするってことも無かったし、そもそもゴハンとかおやつとか時々お手伝いすることもあったけど基本的になんでもおねえちゃんがしてくれてて……『チョコ』を貰ったことはあっても、それが
だけど、「想い」を伝えるなんてそんなイベントがあったなら、今よりもこどもだったとはいえ私が興味を持つと思うんだけどなぁ……? だとしたら、知っててもおかしくない気もしなくはないから、知らないってことはやっぱり『アランヤ村』ではしてなかったのかな?
……あれ? そういえば、普通に
「いちおう確認なんですけど……「想いを伝える」っていうのは、アレなんですか? そのー、こっ恋人とかそういう……?」
「ふふっ。もちろんそういう意味もあるけれど、家族やお友達への感謝の気持ちを伝える日でもあるわよ?」
「あぁ、そうなんですね」
なんだ……安心したような、ちょっと残念なような……。
変に身構えちゃってただけに、どっと力が抜けて――――
「もっとも「感謝を伝える日」は別にもあるから、気になる相手への告白の意味合いが強いのも確かなのよねぇ」
「うぇえっ!?」
「あらあら? その反応……もしかして、トトリちゃんにもついに
「そっ! そういうわけじゃ……!!」
ううっ。否定しても、ティファナさんは意味有り気に微笑むばっかりでちゃんと聞いてくれない……
それは、まあ、私だってそういう話に全く興味が無いって言ったらウソになっちゃうけど、だからと言って「自分が」ってなるとそれはまた別問題だよね。……興味がないわけじゃないけどっ。
何はともあれ、そんなイベントがあるってことはわかったんだけど、一つ疑問が……
「私って、そういうイベントはマイスさんのところで真っ先に知るはず……なんで教えてもらってないんだろ?」
―――――――――
***ロロナのアトリエ***
とりあえず買う物を買ってから帰り着いた『
とは言っても、依頼が沢山舞い込んで忙しくしてたとかそういうわけじゃなくって、お客さんが来てただけなんだけどね。
ロロナ先生と、お仕事がお休みだから先生に会いに来たっていうクーデリアさん。私が出掛けてる間に来て、すれ違いになっても悪いしその内帰ってくるだろうからと待ってくれてたミミちゃん。あと、何の用事かは詳しくは知らないけど、昔先生のお手伝いをしてたっていう――けど、私の中ではどちらかというとマイスさんとセットなイメージのある――ホムちゃん。
帰ってきた私を入れて5人――と、それに加えて『ロロナのアトリエ』にいるちむちゃんたち4人が、今アトリエにいることに。
私はとりあえず、先生からお茶を受け取りながら、お散歩中のこととを……そして、雑貨屋さんで聞いたイベントの話をしたんだけど――
「あー! あったね、そんなイベント。なつかしいなぁ~」
先生以外も「そういえば」といった感じで、思ってたのとは違ってみんな興味が薄いみたい? あれ? もしかして、「ちょっと楽しそうだなー」なんて思ってたのは私だけなのかな?
あと、ミミちゃんに関しては、送る
というか……
「「そんな」って……。先生、なんだか少してきとーな扱いしてる気がするんですけど、もしかして嫌いだったりしました?」
「そ、そんなこと無いよ!? 良い風習だと思うし、私自身も色々と思い出もあって……!」
ロロナ先生がなんとなくだけど
一体どうしたんだろう? ……もうちょっと、つっついてみよう。
「本当ですかー?」
「ううぅ~……感謝を伝えたり大事なイベントだって言うのはわかってるし、嬉しいし、気合も入るけど……けど、チョコの調合の依頼が山ほど入ってきて何日もチョコばっかり調合することになったり、国からの課題の進行具合とかと変に被っちゃったら、それはもう大変で大変でー……」
ほんのちょっと涙目になりションボリしながら話し出すロロナ先生。
その話を聞けば、先生のさっきまでの反応は納得はできた。
国からの課題っていうのは、話には聞いてはいるあのアトリエ存続のためのやつだったよね? つまりは、楽しいことだけじゃなく、大変なこともたくさんあったってこと……うん、『チョコ』の依頼で忙しかったってことも含めて、きっと先生自身が楽しめるような状況じゃなかったんだろうなぁ。
と、先生が言ってたことに静かにだけどしっかりと頷いていたホムちゃんが、私が見た限りではいつも通りの表情で――でも、こころなしか声はトーンが落ちてる感じてて――当時の事を少し付け加えて教えてくれた。
「時期的には課題の期限そのものと被ることはありませんでしたが、それでも休む暇も無いようないわゆる「修羅場」というやつでしたね。……ですが、
「そういえば、イベントがあるなら依頼が入ってきててもおかしくないんだけどなぁ?」
「確かに……。それに、これまではトトリがそういった依頼受けてたことってなかったわよね?」
ミミちゃんが
いや……一応『パイ』とか他のお菓子関係の依頼に交ざって『チョコ』系もあったような? でも、そんな大忙しになるほどじゃなかったし、そもそもこの時期でもなかったから、気のせいかな?
とにかく、今までの話を聞く限りじゃあ、本来今頃こんなのんびりとお茶飲んでお喋りしてる暇なんて無いはずなんだけど……なんでだろう?
そんな私たちの疑問は、今までチョビチョビと香茶を飲みながら話しを聞いてたクーデリアさんだった。
「それは、アレよ。ロロナが前に旅に出てた時期があったからよ」
「ふえ?」
「先生が旅に出て? ……あっ、もしかして?」
一瞬、頭に
私の考えが読み取れたのか、クーデリアさんは短く「そっ」と頷いてからそのまま話しを続けた。
「アトリエに誰もいなくなれば当然依頼も来なくなって、アトリエにお願いしてた人たちは他所に頼むようになったのよ。昔からこの時期には『サンライズ食堂』とかでも『チョコ』を取り扱ってたりしててね」
そう言ったクーデリアさんだったけど、そこから「でも……」と少し話を変えつつ話しを続ける。
「もっと結果的なことを言えば、アトリエに来てた分を他所に回っても、ただでさえ忙しかった所に注文が増えても限度が出てイベントそのもののあり方も微妙に変わっていったのよ。つまりは、頼む側もそれとなく察せて……ちょっと過程は省くけどそれから色々あって、このイベントでのプレゼントの主流が市販のシンプルな既製品の『
「なるほど。それで『
でも、少し勿体ない気がするなぁ。
依頼が来てたら、このイベントの事をもっと早く知れてたわけだし、お菓子作りも別段嫌いなわけじゃないし、当然プレゼント様に先生やミミちゃん、他にもお世話になってる人たちの分とか、ついでに自分の分も作っちゃったりして……
……ううん、冷静に考えたらちょっと無理だよね。今でこそ余裕が出来てるけど、『冒険者免許』の期限の事やおかあさん探しのことを考えると、そんな『チョコ』作りに没頭するヒマはあんまり無かっただろうなぁ。というか、今の私なら何とかこなせるかもしれないけど、
先生、アトリエの存続がかかってた時期らしいのによくやれたよね……。おっちょこちょいなところもあるけど、『錬金術』に関しては昔から凄かったのかな?
いや、でも……うん。改めて考えても、依頼のほうは無理だったとしてもイベントのことについては早く知っておきたかった。
それはまぁ準備とか色々大変な部分もあるだろうけど、せっかくの楽しそうなイベントなんだから多少忙しくてもちょっとだけでもいいから参加しておきたかった。こういうのって、やっぱり楽しんだもの勝ちだし、どうせならお祭りみたいにみんなで盛り上がった方が…………なんだか、考え方がマイスさんみたいになっちゃってる?
って、そうだった!
私が今回のイベントを今の今まで知らなかった大きな要因って、やっぱり
「あのっ! ティファナさんから聞いてからずっと思ってたんですけど……私、こういうイベントって大抵マイスさんのところで知るんです。だけど、今度のは今まで聞いた憶えが無くって……その、もしかして、何か理由があったりするんですか?」
疑問に思っていたことを口にしたところ――
「えーっと……『青の農村』のお祭りには含まれてないし、告白とかそういうのはもちろん、
そう言ってちょっと困ったような笑みを浮かべる先生。
でもマイスさんは、告白とかソッチ方面はそれはそうかもしれないですけど、感謝の気持ちはむしろ人一倍
「おにいちゃんは感覚がズレてますので。おそらくは、そういったおにいちゃん特有の事情もあってお話になる機会が無かったのだと、ホムは思います」
ホムちゃんはどこか残念なものでも見るような目をしてマイスさんの事を語った。
マイスさん特有の事情? それがいったい何のことなのかはわかんないんだけど、感覚がずれてるのは否定できないし、する気は無い。
「
私はクーデリアさんの言葉の前半で凄く納得して――後半には凄く驚かされた。
えっと、もしかして……いや、もしかしなくても、わざわざ名前を出された二人は――――ううん、やめとこう。そもそも、それは私が聞いても良いものなのかな?
いいなら、もうちょっと聞いてみたいんだけど……
「マイスさんはイベント自体はちゃんと
ミミちゃんは、クーデリアさんよりも詳しくマイスさん側の認識を教えてくれた。すっかり忘れてたけど、マイスさんって私と同じで『
似たようなお祭りを話に聞いたことがある、ってことは他所の街でもそういった風習があったりするってことかぁ。街でのこともそうだけど、本当私が知らなかっただけで、意外と有名なのかな?
そして……確かに、マイスさんって昔から「沢山出来てもったいないから」とか「いつもお世話になってるから」とか何かと理由をつけて、畑で作った野菜とかソレらを加工した『パイ』とか諸々を普段からよく持ってきてくれたりしてた。そう言われてみれば……なんというか特別感が無い気がするかも? もしかして、先生が言ってた「
というか、それら以上に気になるのは……
「ミミちゃん、まるで聞いたように具体的に言ってるけど……もしかして、そういう話をマイスさんとしたことがあるの?」
「あるもなにも、私がこのイベントの事を教えてくれたのはマイスさんで――――はっ!?」
言ってる途中で
そんな視線を一身に受けたミミちゃんは、案の定、これでもかというくらい顔を真っ赤っ赤にしちゃって……そして、首と手を振りながら「ちがうわよっ!」って必死に
「別に街出身なのに、全然知らなかったとかそういうんじゃなくて……だいいち、あの頃はまだ私はこんくらい小さい子供で知らなくて当然だったのっ! そこに本当にたまたまマイスさんがいて、怪我とか心配だからって『チョコ』の作り方とかも一から教えてくれたってだけで……!!」
「……前から思ってたけど、私と初めて会った時のミミちゃんって「マイスには会わないー」とか言ってたのに、実際はマイスさんのこと凄く知ってるし、よくお喋りしててなんだかんだで仲も良いよね? それに今の話じゃぁ結構昔からの知り合いだったみたいだし……一体、どういう関係なの?」
「関係!? そっそれはーまぁその……知り合い――昔からお世話になってるんだし、それはちょっと違う気が……? いいえっ、ともだ――でもないし……」
一人でブツブツ呟いてうんうん唸りながら左右に何度も首をかしげるミミちゃん。
ついには考えるのを放棄したのか、「あーもうっ!!」っておっきな声をあげて――――
「だだだっだからって、別にこうなんか特別とかそう言うのじゃないわよっ!? 『チョコ』をプレゼントしたのだって作り方教えてくれたののお礼と、あくまでお母様のオマケなんだから!!」
((((プレゼントしたことはあるんだ))))
……そこまでなら、やっぱりミミちゃんとマイスさんってただの顔見知りとかそういうのじゃないんだろうなぁ。
気にはなるけど……でも、これ以上聞こうとしたらミミちゃんが逃げたり暴れたりしかねないから、今はやめとこう。
それにしても、聞いてもいないことまで暴露してるけど……いいのかな? けど、結局はミミちゃんが恥ずかしいだけなわけだし、そんなに気にする必要はないかも?
と、ミミちゃんの赤裸々な情報漏洩に、勝手に色々と考えてしまってる私だけど、周りのみんなも各々思い思いに好きに言ってるみたいだ。
「でも、ミミちゃんったら、そんなに恥ずかしがらなくていいのに……。わたしだってマイス君や他の人にも『チョコ』あげたことあるし、お世話になってる人にプレゼントするくらい普通だよ」
「以前グランドマスターが言ってました。「有ること無いこと意識して過剰な反応を示すのは若さゆえで、歳を取ればイタイだけ――だが、どちらもイジル分には面白い!」と。そして「ホムは『チョコ』を渡す際にもっと様々な変化を加えて相手をからかい尽くすべきだ」とも言ってました」
「何言ってんのよ
ミミちゃんの反応に「もしかしたら」の可能性については全く考えてない様子の先生に、なんだかマイスさんとは別方向にズレてる気がするホムちゃん。
クーデリアさんは「あいつ」とか「あのふたり」っていうのはよくわからないけど、その表情からするに気苦労が絶えないみたいで……。それに、『チョコ』のプレゼントに関しても先生達とはなんだかちょっと違う感じ?
というか、やっぱりというべきか、『
私の勝手な妄想かもしれないけど、なんだか凄い疎外感が……
「せっかくの機会だし、今から準備して私も参加してみようかな?」
感謝の気持ちっていったら、おねえちゃんやメルおねえちゃん、村の人たちにも何人か……あと、今ココにいる先生たちと、他には――――
――――――――――――
***マイスの家***
「うっかり忘れてだけど……もうそんな時期だったんだね」
今朝、起きてすぐに取り掛かっていた日課の畑仕事。その最中にコオル君が来て僕に渡した『チョコ』。
「いきなりどうしたんだろう?」と首をかしげてると、コオル君は「まあ、最近の様子からして忘れてるとは思った」って言って――予想してたらしいのに、呆れ顔で大きなため息を吐いてたんだけど――いちから説明してくれた。
とは言っても、僕もその説明の途中で思い出しはした。
『
行われる時期やプレゼントするモノがそれぞれ微妙に違ったりするけど、おおよそは同じような
なにはともあれ、コオル君のおかげで思い出すことが出来た僕は、大急ぎで『チョコ』のお菓子を作りだした。
都合のいいことに、材料自体は沢山あったから問題は
「これだけ用意してとけば、とりあえずは大丈夫かな?」
急ごしらえなため、
「待てよ? こういう時は、僕のほうから配って周ったほうが良いのかな?」
そうなると、もっと用意したほうが良いかな? 『
そうと決まれば、追加で作る作業を――――
コンコンコンッ
――――そう思って改めてお菓子作りにとりかかろうとした僕の耳に、玄関のほうからノックの音が聞こえてきた。
「はーい! 今行きまーす」
「お腹を空かせたロロナかな?」◀
「クーデリアかもしれない」◀
「おつかいしにホムちゃんが?」◀
「トトリちゃんだったり……」◀
「規則正しいノックはミミちゃんだね」◀
「リオネラさんが律儀に今年も?」◀
「フィリーさんがモフリに……!」◀
「……誰だろう?」◀