※2019年工事内容※
特殊タグ追加、細かい描写の追加、句読点、行間……
【*5-1*】
***青の農村・マイスの家***
「だ、大丈夫……いけるっ、いける! ……はず」
深呼吸をした後に
「フィリーさん、また
ティーポットの中の『香茶』がきれてキッチンの方へと向かって行くマイス君が何か言ったような気がするけど……たぶん気のせい、だよね?
それに、「かもしれない」なんていう
と、とにかくぅ! 今は、気を静めて、落ち着いて、無になって! それで、良い所で噛まないようにマイス君に話しかけないと……!
本当に気をつけないと、今日、
「ううっ……どれもこれも、こんなに緊張してるせいで……こんなに緊張することってほとんど無いのに……!」
体の芯から震え上がってしまい、全身全霊を持って「平常心」だとか「落ち着いて……」とか考えていないと過呼吸になってしまうんじゃないかってくらい……は言い過ぎかもしれないけど、それくらいの緊張。
こんなの、受付で男の人――特に身体が大きくて威圧感のある人――や、目つきの鋭い人、なんでもかんでもすぐに文句を言ってくる人、とにかく声の大きい人の相手をしないといけない時とか……あと、仕事で失敗をしてクーデリア先輩に睨まれた時と、ステルクさんの顔を見てしまった時と……
少なくとも、それくらいの場面と同じくらい緊張して……!
して……?
「……あれ? 「ほとんど無い」どころか「よくある」……っていうか「いつも通り」?」
むしろ、それくらい経験してるはずなのに、一向にこの感覚に慣れてないような……? それどころか、悪化、してたり……? いやっ、あれ? ああ、でもそれはさすがに無い……かな?
……そんなことにも自信を持てない自分が情けないよぅ……。
「ま、まぁっ! 私が色々とダメダメなのは、今に始まったことじゃないし……!」
自分で言ってて凄く悲しいけど……それよりも何よりも、今は
そうだ……そもそも
こんなの、駆け出し冒険者に最初の関門『グリフォン』を討伐しろ……どころか『ドラゴン』を討伐しろ、って言っているようなレベルだと思う。
というか……今思えば「モコちゃんと遊びたい」っていうのも、
「あっ、でも、モコちゃんが大好きっていうのは間違い無いし、フワフワモフモフな毛も大々好きだし、あの後ろから抱きしめるのにちょうどいいサイズなのがまた何とも……ふへへへ~…………はっ!?」
いけない、いけない! ついつい妄想に浸るところだった!
……でも、人の状態では逆にマイス君が私を抱きしめて……っていうのは鉄板だと思うけど、いっそのこと人の状態
そもそも、現状じゃああんまり体格差はないし、これからどっちかが成長すればあるいは…………二十歳を過ぎても、成長、できる……かなぁ?
いやいやっ! だ・か・ら!! そんな妄想じゃなくって、今日はちゃんとマイス君を誘って何処か遊びに……
そこまで考えて、私は「あれ?」と首をかしげる。
『香茶』でも飲みながらお喋り……は、どう考えてもモコちゃん状態でモフモフしながらのほうが良いに決まってる。うん、間違い無い。
その、一緒に手、とか繋いだりしてお散歩……って、どう考えても、マイス君を見つけた人もモンスターも寄って来て、私の精神状態がヤバくなる未来しか見えない……。
クーデリア先輩が言ってたような
「他に何かあるかな?」って考えてもみたけど……うん、全然思い浮かばないよぅ……。誘うために勇気を出したり、緊張をどうにかしようとする前に、そのあたりの計画をちゃんと練らないといけないことに、私は今更ながら気付いたのだった……。
「はい、フィリーさん。これでも飲んで、ゆっくりのんびりして」
「う、うん。ありがとう」
いつの間にかキッチンから戻ってきていたマイス君から新しいティーカップを受けとりながら、お礼を言う。
……ん? あれ?
熱さに気をつけながら、受け取ったティーカップに口をつけてみたんだけど……前にだされた『香茶』とは香りも味も違うような気がした。なんていうか、こう、すっごく落ち着くっていうか、自然と力が抜ける感じがするっていうか……。
普段、飲んでいる『香茶』とは違う……でも、これまでにも
そのことを私が問いかける前に、いつも通りの微笑みを浮かべたマイス君が先に私が聞こうとしていたことを言ってきた。
「『リラックスティー』って言ってね、こっちでメジャーな『香茶』とは素材とか色々違うんだ。その名前の通り、リラックス効果があってね、これまでにも時々淹れたことはあるけど……うんっ、今回が一番効果が出たのかな?」
「へぇ……そうなんだぁ」
どうりでさっきまでの緊張がウソのように落ち着けたわけだ……。それでいて、眠くなったり、ポヤーってするわけでもなく意識はしっかりすっきりしているという、なんていうか少し不思議な感覚……。
その効果に驚きつつ……その言ってる感じからして、マイス君が私の様子を心配してこの『リラックスティー』を淹れてくれたんだという事を察することは難しくなかった。
そんなマイス君のおかげでこうして緊張がほぐれたわけだ。その気遣いにお礼を言いつつ、流れのままお散歩……いやっ、やっぱりお買い物……? ううん、わかんないから、もうなんでもいいっ! と、とにかく何かに誘って……!!
「ああ。まだ私が受付で働いてた頃に王宮で流行ってたあのお茶ね。確か、大臣……ああ、今は前大臣だけど……あの人もかなり気に入ってたわね。というか、重宝してた、って言ったほうが的確かしら?」
「普段からお仕事が忙しくて大変っ、そういう人ほど『リラックスティー』は効果覿面というか……今でも、メリオダスさんの定期的に茶葉を持って行ってますから」
さあっ! 今こそ、勇気を出して! やらなきゃ、
「まぁ、メリオダスさんもトリスタンさんに後を任せてからは、随分と楽になった……はず、ですし……?」
「マイス君? 言い淀んじゃってるあたりでもうわかってるかと思うけど、後任のトリスタン君が
私が座っているソファーとも、マイス君が座っているイスとも別のイスに座って、『リラックスティー』の
「お……おおおっ、
「ひさしぶりね、フィリー?」
反射的にソファーから跳び上がってしまった私の反応を特にどうと思った様子も無く、お姉ちゃんは手をヒラヒラ振って簡単に挨拶を…………って、そうじゃなくてっ!?
「なんでお姉ちゃんが
「あいっかわらず、
お姉ちゃんは私の問いに答えようともせずに、ちょっと呆れた顔をしながらもケラケラと笑っうばっかり……。
そこに、「あれ?」っと声を漏らして首をかしげたのはマイス君で……そのままマイス君は不思議そうに言ってくる。
「エスティさんが家に来たのはついさっきですけど……んん? でも、街に帰って来てからは少し
「ううん、ホントに会ってないのっ。 そもそも、
でも、そのこと自体にはそこまで驚きは無かったりはする。
というのも、街を出ていったお姉ちゃんは
そう考えたところでお姉ちゃんが、その私の予想が的中しているという事をちょうど話し始めた。
「ちょっと仕事で……というより、国の今後に大きく関わることでマイス君に用があったのよ。家に帰ってないのは…………街に帰ったのが久しぶりなせいで、ありとあらゆる方面で忙しいからよ、うん……」
そういうお姉ちゃんの目は……あぁ、ホントに
ああ、でも……
これでまた、私はマイス君を遊びに誘うなんてことはできなくなったわけだ。お姉ちゃんの前でそんなことをするのは、難しいっていうか下手すれば自殺行為っていうか……。マイス君と出会ったばかりの「
お姉ちゃんが帰ってきた『アーランド』。
せっかく頑張ってちょっと勇気を出して「マイス君との間を詰められたならなぁ」なんて考えてたのに……ううっ、こ、これから大丈夫かなぁ……?
……ない!
『フィリールート』のラスボス、STⅢが本格参戦!(まだ平和)
まだなにもできてないのに、どうするフィリー!?