『マイス「」』とありますが、第三者視点となっています。ご了承ください。
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、細かい描写の追加、句読点、行間……
【*3*】
***青の農村・マイスの家***
窓から、爽やかな朝の日差しがめいいっぱい入ってくる……そんな快晴の日。
普段から日が顔を出し始めた
「「いただきまーす」」
朝ゴハンの『フレンチトースト』と『野菜ジュース』を前にして声をそろえる
フィリーは『冒険者ギルド』での仕事があるはず……その疑問は、先日、『塔の悪魔』を倒しに行く前に今後の予定を聞いたマイスなら湧いてきて当然の疑問だ。
しかし、そこは『青の農村』が誇る「お人好しNO.1」、「おもてなしNO.1」のマイス。いきなりの訪問でも手際よく準備途中の朝ゴハンを一人分増やし、特に何も聞かずに
「もぐもぐ……んくっ。マイス君、『塔の悪魔』ってどんな感じだった?」
「うーん? 何て言うか、人っぽかったかな? 見たまま悪魔-って感じじゃなくて、身体も特別大きかったり尖ってたりしてなくてさ。あと、何だか貴族っぽい服しっかり着こなしてたんだよね。ただ、あの顔を見たら「悪魔」というか「悪そうな奴」だっていうのは嫌というほどわかって……アレは絶対に対話できないタイプだろうなぁ」
「マイス君がそう思うってことは……ひえぇぇ! ど、どれだけ怖い顔してるの、その悪魔ぁ……!!」
朝ゴハンを食べながら、そんな他愛のない会話をするフィリーとマイス。
フィリーが驚いているのは……まあ、あれだろう。『ぷに』のようなカワイイモンスターから『ウォルフ』のような
なお、マイスによるモンスターとの会話は、実際のところはモンスターの種族や種類以上にその個体の性格や気質が大きく関係しているのだが……なんにせよ、多少の違いがあったところで、ただの受付嬢であるフィリーにとっては驚くには十分すぎるものなのだが……。
多少話題が一転二転しながらも続いた会話と朝ゴハン。
二人がちょうど食べ終えたあたりで……会話はようやく、あの話題に移るのだった。
「そういえば、今日ってお仕事じゃぁ……ここでノンビリしてて大丈夫なの?」
「うんー大丈夫だよー? だって今日はお休みだし」
ニコニコ笑いながらそう返すフィリー。
だが、対するマイスは「はて?」と首をかしげる。確か『塔の悪魔』を倒しに行くことを伝えた時にはその日から見て「明日がお休み」という話をしていたはずだ。今日ではないはずだが……最近いくらかマシになってきたそうではあるけど、『冒険者ギルド』はいつも忙しそうなイメージを持っていたマイスは疑問に思ってしまったわけだ。
「あれ? この間予定を聞いた時は次の休みはまだ後みたいなことを言ってた気がするんだけど……?」
「あーっと、あの後ね……どう言えばいいかなぁ」
あごにチョンと指を当て、その時の事を思い出すかのようにウーンと呻った後、「実はねー」とフィリーは言葉を続ける。
「お仕事が終わって「さあ帰ろっかー。でも、明日マイス君いないんだ……」って落ち込みながら『冒険者ギルド』を出ようとしたんだけどね、そこで「ちょっと」ってクーデリア先輩に呼び止められて」
「呼び止められて?」
「「あんたの休み、変わったから明日も仕事ね」って。どういうことかよく話を聞いてみたら、なんだか知らないうちにお休みをずらされずらされちゃってたんだー。っで、そのズレたお休みがそれが今日だったの」
つまりは「マイスが『塔の悪魔』を倒しに行く日が休日だったのに、いつの間にか勝手に変更されてて、それが今日だった」ということらしかった。
それを聞いたマイスは「お休みが変更って、何か急ぎの仕事で人手が欲しかったとか? やっぱり忙しいのかな?」なんてことを考えていたのだが……そのことを話した当のフィリーのほうは、何故か首をかしげて眉間に少しシワを寄せていた。
そんなフィリーの姿を見て、当然のように心配して声をかけるマイス。
「どうしたの? ……ハッ!? もしかして、今日の『フレンチトースト』美味しくなかった!?」
「えっ! そんなことないよ!? すごく美味しかった! ……そうじゃなくってね、なんだか悪い事でも起きそうだなーって思って」
「へ? なんで?」
「だって……クーデリア先輩が私にあんなに優しくするなんて、絶対なにかおかしいもん!」
珍しく口調を強めて言ったフィリーだが、それを聞いたマイスはといえばキョトンとした様子で首をかしげて……
「クーデリアはいつも優しいと思うけど?」
「いやまぁ、マイス君にイジワルしてるとこはあんまり見たことはないけど……。でも、この前お話の邪魔してきたりしたのによく言えるねぇ……」
「あれは、お仕事中に長々とお話してた僕が悪かったわけだから、クーデリアがどうこうって話じゃあ……あれ?」
先日の一件のことについて言っていたマイスだったが、ふと先程フィリーが言ってた事を思い出して、そちらへと話を進路変更させた。
「クーデリアに優しくされた、って、何かあったの?」
「何かというか、そのお休みがズレたって話をしてきた時にね……「この日なら、マイスも流石に帰ってきてるでしょ」って」
マイスは頭に疑問符を浮かべ、首をかしげた。
「なんで僕の名前が?」、「というか、それでなんで「優しい」?」とグルグル頭を悩ませ始めたマイスだったが、「そういえば……」と『塔の悪魔』を倒しに行くことを話した時の事を思い出し、そして今聞いたことと繋ぎ合わせて……ようやく答えを出せた。
「えっと、つまりー……クーデリアが勝手にお休みをずらしたのって、僕が討伐に出ている期間と
「うん……そうみたい。そもそも、こんなこと初めてで……」
「ちょっとよくわかんない」と困惑顔で呟くフィリーに、マイスはなるほどと頷いた。
確かに、クーデリアがそんなことをするというのは、マイスにも初めて聞くことだった。ただ、「悪いことでは無いからそんなに気にする必要は無いんじゃ……」というのが、マイスの考えだったりするのだが……。
「それに、なんかよくわからないことも言ってきて……」
「よくわからないこと?」
「うん。「たまには二人で買い物にでも行って来たら?」って」
「へぇ……ん? それってよくわからいこと?」
「そうだよー? だって、せっかくマイス君の家に来れてるのにお買い物って……そんなことしてる暇があったらモフモフするよー。だから、ね?」
「さあ! さあ!」と
対するマイスは、彼にしては珍しく冷や汗をたらし……けど、表情的にはすでに諦めムードで……浅く座っていたイス上で後ずさりをして、背もたれに背をピタッっと張り付けてしまっていた。
この後、
――――――――――――
***後日・冒険者ギルド***
「で、どうだった? 昨日の休みは?」
ちょうど利用者が途切れた受付カウンター。そのタイミングでクーデリアが隣の受付のフィリーにそんな風に話を振った。
「はい! モコちゃんと沢山触れ合いましたよ!」
「まぁ、なんとなくそんな気はしてたけど」
クーデリアは呆れ気味に苦笑いを浮かべ、短くため息をついた。
「はぁ~、あのモフモフは最高ですよー。……やっぱり今度は自分の手で毛刈りをしてみたいなぁ……」
「……無理言って
「やれやれだわ……」と首を振るクーデリア。当のフィリーはそんなことは目に入っておらず、ニヤニヤと口元を歪めて
前回は邪魔をして、今回はサポート(?)をするクーデリア。
そして、それに対していつも通りのフィリーとマイス君。
なんでこんなことになっちゃってるんでしょうねぇ……?
そして、この関係は次回の【*4*】でどんな変化が……?