マイスのファーム IF【公開再開】   作:小実

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『豊漁祭《下》 【*1*】』


「そういえば、二人って誰に投票したんですか~?」

「僕は……」


『フィリー』◄(ぽちっ)






※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、特殊タグ追加、細かい描写の追加、句読点、行間……


『フィリー』ルート
フィリー【*1*】


***アランヤ村・広場***

 

【*1*】

 

 

 

「僕が投票したのはフィリーさんだよ」

 

「えっ、私?」

 

 マイスに名前を呼ばれ、ポカンとするフィリー。驚きや恥ずかしさよりも、信じられないという気持ちが勝っているのだろう。慌てたり、オロオロしたりすることも無く、むしろマイスに向かって「大丈夫?」といった視線を向けている気さえする。

 

「ええっ……マイスくん、もしかして適当に投票したの? わたし、ほとんど隠れてたし、何にも喋ってないから水着なんてほとんど見せてないはずなんだけど……」

 

「あはははっ、確かにいっつも腕とかで隠そうとしてたし、紹介の時もすぐに舞台袖に引いちゃったけど、それでもどういう水着を着てるかはちゃんと見えたし、恥ずかしくてもがんばってたのはわかったよ」

 

 いつもの調子でニコニコしながらマイスはそう言った。彼は腹芸が出来るような性格でもないため、思った通りの事を言っているのだろうが……それはそれでフィリーにとっては色々と問題であるということまでは、考えが回っていなかったようだった。

 

 

 というのも、ちゃんと水着姿も見ることはできたという事実は、フィリーにとってはあってほしくない事実なわけで……。

 

「ううっ……見られたら見られたで、それは恥ずかしすぎるんですけどぉ……! お嫁にいけない……」

 

 まあ、当然こうなるわけだ。涙目になり、まるでこの世のお終いだとでもいうかのように「もうやだー……」と呟きを漏らすフィリー。

 

「大丈夫ですよ、フィリーさん!」

 

 恥ずかしがりながら落ち込むフィリーを、マイスが放っておくわけがなかった。どこにそんな自信があるのか問いかけたくなるほど自信満々の表情をフィリーに向けていた。

 

 

 その時、フィリーに電撃が走った!!

 

 

 そう、彼女の頭の中に唐突に浮かび上がったのは、ある種の恋愛ものの物語でも時折ある「お嫁にいけない」からの「オレが貰ってやるよ」の流れ! あの日実在人物相手でも何度か妄想したあのシチュエーション!!

 今ここが、その流れの最中(さなか)であることにフィリーは気づいたのである!

 可能性は有るか、無いか。無い……とは言い切れない。なにしろあの美女・美少女(ぞろ)いの『水着コンテスト』で、マイスはわざわざフィリーを選んだのだ! これを「可能性有り」と言わずに何というか!!

 

 

 気づけばフィリーは、自分の顔が恥ずかしさとはまた違ったモノにより熱くなっていることを感じた。鼓動もまるで心臓が頭の中に移ったかのように大きく高鳴り、そのリズムも早いものとなっていた。

 

 そして、フィリーの視線は……次の言葉を発するべく動き始めているマイスの口元に釘付けになっている。

 「うわーっ!? うわーっ!?」という叫び声と、「さぁ来い! 来い! 来い!!」という期待の声に、彼女の心の中は満たされている。

 

 フィリーの内心がそんな状態になっているとは知る由もないマイスは、相変わらずの自信満々の笑みで言葉を続けるのであった……。

 

 

 

 

 

「お嫁にいけないなら、お婿さんを貰えばいいんです!」

 

 

 フィリーは前のめりにずっこけた。

 他の面々の多くも「ずっこける」まではいかなくとも、変な脱力感に襲われる結果となった。

 

「どうしてそうなるのよ……」

 

 おでこに片手を当てて「ハァ」とため息を吐くクーデリアの呟きが、その場にいた人たちの心の声を代弁してくれたことだろう。もはや、言葉遊びにすらなっていないレベルである。

 

 

 ずっこけたフィリーが立ち上がると、その鼻からは一筋の血が流れていた。それは、極度の興奮状態まで昇っていっていたからなのか、それともずっこけた拍子に出来た怪我なのか……マイスの一言が残念だった以上、正直どちらでもいい気がする。

 そんな鼻血を拭き取りつつ、フィリーは困ったように様子を隠そうともせずにマイスに言うのだった。

 

「ええっと、そういう意味じゃないって言うか、それじゃ解決できないって言うか……ね?」

 

「そんなことないと思いますよ? エスティさんだって諦めずにお婿さん探しを頑張ってるそうですから、まだまだ先はありますって!」

 

「おねえちゃんくらいまでなると、さすがに無理色々とがある気が……ひぃ!?」

 

 マイスにしては珍しいタイプの爆弾投下である。そこにはいない人物の地雷を的確に踏み抜いていったのだ。

 もちろんマイス本人に悪気はなく、むしろ彼自身はエスティを応援しているくらいなのだが……周りからしてみれば気が気じゃない。特にエスティの事をよく知っているロロナ、クーデリア、ステルク、そしてマイスに釣られるようにして失言をしてしまった妹のフィリーは、錯覚かただの気のせいかはわからないが体をブルリと震え上がらせてしまうほどの寒気(さむけ)を感じていた。

 ただし、何故かはわからないが、発言者であるはずのマイスはそういった様子を見せていなかった。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 ……結局、謎の寒気のせいでなんだか締まらない感じになった「投票した相手の発表」。その寒気を忘れようとするかのように、フィリーたちを中心に『豊漁祭』をめいいっぱい楽しんだという……。

 




 他のキャラよりもイチャイチャ感は少ないフィリー。それには色々と理由があるのですが……それについては今後明かされる予定です!


 そして、これで【*1*】は終了となります!
 ……えっ? 『エスティ』ルートはどこ行ったかって? アンケートの際に票を取れなかったため、エスティさんはルートが作成されませんでした。一生独身です。

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