色々と抱え過ぎなんですよね、この娘……。そして、やっぱり、今回だけで全部解決できる気がしないという。
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、特殊タグ追加、句読点、行間……
【*5-1*】
「友達ならちゃんと祝福してあげないと」
「私は今、十分すぎる程めぐまれて幸せなんだ」
「マイスくんが結婚するのは、
……そう自分に言い聞かせ続けた。
アラーニャとホロホロはそれを否定するけど……でも、私の思っていることは間違ってないと思う。
マイスくんが幸せを掴もうとしている。それを邪魔してもいいのだろうか? 私が今更割って入るのは違うんじゃないか?
……もちろん、「もしも」と思わないわけじゃない。
これまで言いだせなかったこの
でもそれは、今はもう有り得ないこと。他でもない、私自身が掴み取ろうとしなかった
街での公演をマイス君が観に来てくれたり……『青の農村』での公演の後にタオルとか飲み物とかを用意してもらって、そこで感想を聞いたり……フィリーちゃんと二人で遊びに来て、一緒にお喋りしたり、ゴハンを食べたり……。
それで、私が、十分すぎるほどの幸せを感じていたから、満足してそれ以上のことを望まずに「ずっとこんな時が続けば……」そう思う
そうやって何もしなかったから、気付けば自分の手の内からこぼれ落ちていた。
……考えてみれば、当然のことなのかもしれない。だって、マイスくんはいつも「自分がしたいから」と何かをする。例え、
『
私もわかっている……わかってる
私が「特別」な気持ちを抱いても、
マイスくんにとっては誰でも同じなんだ。だからこそ、
わかってる……わかってるのに、どうしてこんなに…………
そして…………
どうして
――――――――――――
***夜の領域***
「「どうして」って、それは……ねぇ?」
「まぁマイスのせいだろ。断れなかったオレらもオレらだけどよ」
私の思考に返答をするのは、いつも私の
そんなやりとりをする私たちが今、どこにいるのかと言うと…………星々が輝く夜が毎日一日中……年中常に夜の採取地『夜の領域』に
……えっと、本当にどうしてこんなことに……?
『
マイスくん、結婚前なのに、こんなことしてていいのかな……?
「いいも何も、
「まぁ、一応は
アラーニャの言う「約束」というのには、私も覚えがあった。けど、マイスくんに「よし! 行こう!」って言われるまで忘れてたんだけど……主に、マイスくんが結婚するって話で頭がいっぱいになってたせいで。
「約束」
……たしか、あれはマイスくんがロロナちゃんのお弟子さんのトトリちゃんについて行って『塔の悪魔』を倒しに行ってきた後のことだった……はず。
その時、帰って来たマイスくんにアラーニャとホロホロが「マイスが『塔の悪魔』を倒しに行っている時に人形劇の公演があったら、絶対大失敗してた」みたいなことを言ったのが始まり。それで何をどう思ったのかマイスくんが「確かに最近一緒に冒険したりしてないから不安になっちゃうかぁ……じゃあ、今度一緒に冒険に行こっか!」と、「何が「じゃあ」なの?」ってツッコミたくなる微妙にズレたことを言いだして、そのまま「今度、『学校』のこととかの都合を調整するから!」っていつの間にかそういう約束になったのだ。
……で、今回、それが本当の本当に行くことになったわけで。
この約束をした時は、まだ結婚の話なんて聞いてなくて、
結局、色々混ざった中から「マイスくんと一緒にいたい」というただ単純な私の欲で……マイスくんやその結婚相手のことも考えずに、こうして二人で冒険に出たのだ。
「はたから見たらどう思われるかはわからないけど……でも、わたしたちはリオネラの判断が間違ってるなんて思ってないわ」
「ずっと言ってんだろ? オマエはもっと自分に素直になれって。今更おせーかもしんねぇけど、でも、自分に嘘つき続けるのは辛いばっかだぜ?」
けど、
確かに、私の中に押し留められて行き場を失ったままのこの
でも、それをぶつけられたマイスくんは?
きっと、
そのせいで、今、こうして
マイスくんとの繋がりを切られた私に、何が残るんだろう……?
ロロナちゃんも、フィリーちゃんもいるのに……今の私には、マイスくんとの繋がりを切られることが
だから、嫌だった。
マイスくんに迷惑をかけるのは。
迷惑をかけて嫌われるのは。
だから、この
「けどよ、こんなこと考えたのはこれまでで初めてじゃねぇだろ? 何回も考えて、何回も同じ答え出して、何回も自分に言い聞かせて……それでも納得できねぇから、またこうして問答しちまってる」
「このままだと、たぶん、一生
……じゃあ、どうすればよかったの? どうしたらいいの? これから何ができるって言うの……?
「簡単よ。
でも、そんなことしたらマイスくんが困るし、それにその結婚相手の人もマイスくんになんて思うか……
「なんだっ? オマエの惚れた男は、心に決めた相手がいるってのに他の女に言い寄られたら簡単になびいちまうような軟派な奴なのか? それに、オマエの惚れた男は、自分のことも信頼してくれないような女を嫁に貰おうとする目の曇った奴なのか?」
それは……それは……!
「
「ワタシたちには御見通しよ?」
……私だって、わかってる。私自身が、わかっていない
「オマエはただ、怖がってるだけなんだよ。「嫌われること」をじゃなくて「ふられること」をな。ふられた後、関係が崩れるとかを心配してるふりをして、そのこと自体から目をそらしてる。嫌なんだよな、「振られること」自体が。「拒絶」されるのが」
「
……だから、怖い。
これまで以上に
そして、大切な……大切な友達のはずなのに、その友達を信じきれない自分に寒気が走り、そのゾワゾワとした感覚が私をより不安にさせてくる。
なんで? どうして?
こんなにも……
他でもない、あの時
「それはね、リオネラ……」
「それはオマエがだな……」
「「マイスのことを、それだけ
――――――――――――
「……ね……ん……リオネラさん?」
「……っ!」
すぐ横から聞こえてきたマイスくんの声に、私はハッとした。
地べたに座った状態のまま、周りを確認する。
あたりは星が輝く一面の夜空。人工物と思ってしまうほどきれいで、一辺が10mほどありそうな巨大な立方体の岩と、それらが積み重なり
ここは、間違い無く『夜の領域』だろう。
……そうだ、思い出した。
冒険でここまで来て、それから襲ってきたモンスターを撃退して……それで、一通り敵がいなくなったのを確認して、それから「ちょっと休憩しよっか」ってことになってマイスくんが何か飲み物を用意してくれはじめて――――私はいつの間にか思考に浸ってしまってた。
隣を見ると、いつの間にか火を起こして小型の鍋で何かを温めているマイスくんがいた。
鍋をかき混ぜつつも、その目は少し心配そうにチラチラと私の様子をうかがってくれているのがわかる。
「なんだか、目のあたりがちょっとギューってなってたけど、どうかしたの? ハッ!? もしかして、どこか怪我でも……!?」
「う、ううんっ! 怪我はしてないよっ」
「リオネラだって、そこそこはやるし、しぶといのよ?」
「まっ、いつものマヌケっぷりは健在だから、時々、ぽけーってしてるだけだって」
私に続き、アラーニャとホロホロも「大丈夫」っていう風に伝える。
それでマイスくんは引き下がってくれたんだけど……でも、そこまで私が酷い顔をしていたのか、「でも……」と付け加えるようにして言ってきた。
「何かあったら、ちょっとしたことでも言ってくれていいんだよ?」
「ほんとだよ? そもそも、あの戦闘だってほとんどマイスくん一人で全部倒しちゃったようなものだし……」
「えっとまあ、戦う前に逃げてくれる
少し恥ずかしそうにしながら「あはははっ」と笑うマイスくん。
そんなマイスくんが鍋で温めていたもの……『ホットチョコレート』をふたつのマグカップへと注ぎわけ、そのうちの一つを「はいっ」と私に渡してきた。
あぁ……マイスくんは変わってない。初めて会った時、自分の作った作物や調理した料理を自慢げにしていた頃のマイスくんのままだ。それが自分の強さに変わっただけで、少し恥ずかし気にけど誇らしげにしている……どこか子供っぽさの残った感じ。
そう、マイスくんは変わってない。変わったのは私。信じるべき
だからこそ、私はマイスくんに相応しくない。想いが実のならくて当然だ、そうなって当然のこと。ゆえに、わたしは一歩引くべきで、私の中でアラーニャたちがそう言ったように、ちゃんとケジメをつけるべきなのだ。
私の隣に座り、無限に広がっていそうなほど壮大な夜空を見上げているマイスくんが、自分の『ホットチョコレート』に
「『夜の領域』でこんなにノンビリするのは初めてだけど、ほんと綺麗に星が見えていいよね。うーん……アッチとアッチとがああ結ばって『十字架座』……いやっ、アレがああなって『かんざし座』……? って、『
空の星を指差して結ぶように動かしたりした後に、空を見ていたその顔を私の方に向けて、困ったように笑うマイスくん。
その後も、「季節は違うけど『モコモコ座』や『バッファモー座』に見えそうなヤツもあるような……?」って夜空を見上げては
「マイスくん」
「えっと、おすすめは『かぶ座』……いや、『かんむり座』かな? それっぽいのは……」
そう言ってなおも夜空に目を向けるマイスくんだったけど、こっちの様子をうかがうようにチラッと視線を向けてきて……その目を止めて、そのまま私の方を向いてくれた。……私、今、どんな顔をしてるんだろう……。
「今日は……今回は、本当にありがとう」
「へっ、う……うん? どういたしまして? でも、これくらい当然って言うか、そもそもは僕が不安にさせるのが原因だし……?」
「本当に嬉しいの……でも、
私が言っていることが理解できないのか、マイスくんはより一層首をかしげた。
「二人っきりで
この想いを打ち明けようとする瞬間。自分の心臓が耳元で高鳴っているかのように、心音が大きく聞こえてくる……なんてことは無かった。不思議でもあったけど、思った以上に自分自身が冷静なんだということがわかった。
それはなぜか? これまでに何度も自分に言い聞かせてきたからか、さっきの思考の際に何かを自覚ができたからか、もしくは、ふられるのがわかっているからか。
「私は、マイスくんのことが大好きだから……愛してるからっ……!」
……ああ、言った。言ってしまった。
言った瞬間、自分の中で何かつっかえが取れた気がした。胸の内にあった苦しさが無くなって解放された……そんな感覚。
でも、
だから、言葉を続けた。
「けど、わかってる……こんな幸せを受け取るべきなのは、私じゃないって。これで幸せになれるのは私だけだって……だから、これからは、
そう言っている私は、自分で思っているようにちゃんと笑えているだろうか?
甘さの感じられない『ホットチョコレート』を飲み干してしまう。
『
「それじゃあ、早く帰ろう? お嫁さんのこと放っておくとマイスくん怒られちゃうかもしれないし、早く帰ってあげたほう……が…………?」
その言葉は、どこまでが本心だろう? ……これ以上マイスくんと一緒にいてどういう顔をすればいいかわからないから、逃げ出すための言い訳……そういう気持ちが少なからず含まれていたと思う。
立ち上がって、隣に座っていたマイスくんのほうを振り向いて「ね?」と催促しようとした……けど、変なことに気付いた。
見つめてきてるって言っても、鋭い目で睨んできてるってわけじゃなくって……なんていうか、こう、呆然としてるっていうか……?
「ええっと……マイスくん? どっどうかした……?」
私がそう問いかけると、マイスくんは「ハッ!?」としてワタワタしだして……トマトみたいに顔を真っ赤にして、私の事を見ていたはずの目も右へ左へと泳ぎ出した。
「うぇっ!? あ、あのっそのっ! えっと、ななな何から言えばいいのか……というかっ! あー……うー……!!」
これまでに見たことがないくらい落ち着きがないマイスくん。
その様子と言動は、普段のマイスくん以上に子供っぽいというか……それだけ慌ててる……のかな? でも、なんで?
「えっ、えっとね? もし違ったらゴメン……って、そんなことは無い気がするけど……
「えっ?」
えっ、今、なんて……? ウソ?
「騙された」って気持ちよりも、「よかった」っていう気持ちのほうがはるかに大きかった……。
「あっ、いやっ! そのころを勘違いして色々お祝いとかしてきた人とか、そのっ、イッパイいたからソコはそんなに気にしなくていいと思うよっ!? ……で、あ……あのー……? ぼ、僕は
「さっきの
「ううん……ああっ……こっ、こういう時どうしたらいいんだろうね?
困ったように笑うマイスくん……じゃなくって!?
いやっ! そのっ! ええっ!? マイスくんの言ってることって、もしかしなくても……!!
「ふぇっ!? えええ、ええっとその、ねっ? さっきのは……!!」
「え、あ、うん。そっそうだよね? さっきのは勘違いで言っちゃったことで、別に特別な意味は無いよね? わかってるよーあはは――」
「ううんっ! その、
マイスくんの顔が熟れすぎてるトマト……って例えも思いつかないくらい真っ赤に……それに、きっと私の顔も……!!
マイスくんの目も未だに泳いでるけど、私の方も真っ直ぐマイスくんのことを見れなくて、アッチを見たり、こっちを見たり……!
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「……………………」
「……………………」
「「あ、あのっ…………っ!」」
「えーっと……あ、あはははは……」
「うう………………」
「……………………」
「……………………」
チラチラと相手を見て、たまたま目が合ってはそれをそらして……。
何か言わなくちゃ、って思って口にしようとすると……またたまたま被っちゃって、どうしようもなくって……。
結局、この何とも言えない……苦しいような、幸せなような、沈黙は……
「……オイオイ、いつまで続けんだよ、コレ? 日が暮れちまいそうだぜ」
「何言ってるの? 『
……ホロホロとアラーニャがそんな横槍をいれるまで続いた…………。
他ではやっと自覚したり、自覚までの過程だったりするのに対して、勝手に告白し始めた常に2歩先を行く『リオネラルート』!
この最短のルート以外にも回り道したシナリオも考えたんですが……たぶん、それを書いていたら、作者の胃が死にます。
「勘違いで」って意味じゃあ『ミミ【*5*】』よりもやらかしちゃったリオネラ。……でも、他ルートじゃあこれすらもできずに終わってるんだろうって言う話しで……本当にこの娘、マイス君無しで幸せになるにはどうしたらいいんでしょう……?