『マイス「」』とありますが、第三者視点となっています。ご了承ください。
※2019年工事内容※
細かい描写の追加、句読点、行間……
【*3*】
***青の農村・集会所前広場***
『青の農村』。
その中心部にあたる『集会所』の前の『広場』は、お祭りなど村で行われるイベントの際に活用されることの多い開けた場所だ。
そんな広場に、今日はお祭りでもないのに人だかりが出来ている。いや、正確には人だけでなく『青ぷに』や『たるリス』、『ウォルフ』などといった『
その人だかり(?)の視線の先にあるものは……
宙を自由自在に動き回り舞う黒猫と虎猫の人形。その二体をまるで踊っているかのように動きながら、見えない糸を扱うように指を動かし操る人形使い。
世にも不思議な『人形劇』。……なのだが、公演は定期的に行われているため、この光景は『青の農村』や『アーランドの街』では実はよく見られる光景だったりする。
その人形劇もちょうど終幕を迎えたらしく、二体の人形と人形使いが
一通り拍手が鳴りやむと、観客たちは各々散っていったり、人形使いにおひねりを渡したり……子供は人形たちに跳びつこうとしたりする。
それも落ち着き出すと、人形使いが未だに残っている観客たちに対して改めてお辞儀をして、その場を立ち去るのだった……。
――――――――――――
***マイスの家***
「ふぅ……」
広場から離れた人形使い……リオネラが、家に入ってから短く息を吐いた。
人形劇は長年続けてきているとはいえ、あれだけ
活動拠点を再び街のほう移してからも度々訪れ、時には泊まっているため、正に第二の家とでも言えるのかもしれない。
さて、そんなようやくひと息つけたリオネラに声をかける人物が……それはもちろんこの家の主であるマイスだ。
「お疲れさま、リオネラさん。今日も大盛況だったね」
そう言いながらマイスはリオネラにタオルを手渡した。テーブルのほうに目を向けてみると、水差しとコップもあるため飲み水の用意もできているのだろう。万全の用意……それもそのはず、マイスは劇を観客の一人として見た後、リオネラがおひねりを受け取ったりしているうちに一足先に家に戻り、準備をしていたのだ。
そして、それが『青の農村』が正式にできる少し前からの、ここでの人形劇公演のいつものことだ。
その差し出されたタオルを受け取りながらリオネラは……ちょうどマイスと目が合ってしまったからか少し顔を赤くして、慌てながらもうっすらと笑みを浮かべてお礼を言う。
「ありがとうっ。今日の劇……どうだった?」
「うん! すっごく楽しかったよ! 他のお客さんたちも満足してるどころか次が待ちきれない感じまでしてたし……リオネラさんたちの人形劇はやっぱりすごいなぁ」
「そ、そう?」
マイスに褒めちぎられて、なお顔を赤く染め恥ずかしがるリオネラ。
と、そこに虎猫と黒猫の人形……アラーニャとホロホロが話に加わってきた。
「まぁ、そのあたりは飽きさせないためのお話作りと演出の工夫、日々の研究の結果よ。後は、ここ最近大きな失敗もしないで上手くやり続けれているからじゃないかしら?」
「だな。いやぁ~よかったぜ。マイスが『塔の悪魔』とやらを倒しに行ったあん時にちょうど公演の予定が無くってよ」
アラーニャの言葉に「なるほど」と頷いたマイスだったが、続くホロホロの言葉に「え?」と首をかしげた。
どういうことだろうと考え出すマイスに、それを察したホロホロが「それがだなぁ?」とことの証明を話し始めた。
「リオネラがな、マイスから話し聞いたあの日の夜にな、嬉し恥ずかしでベッドの上でもだえてたんだけどな……時間が経つにつれて「マイスくんは強いけど、『塔の悪魔』ってすごく怖そう……大丈夫かな……?」って一人で心配しだしたんだ」
「ちょ……! ホロホロ!?」
語り始めたホロホロを慌てて抑え込むリオネラだったが、そのホロホロに変わり、今度はアラーニャが「そうそう」と引き継ぐようにして喋りだした。
「でね。次の日……マイスが出発した日なんだけど、一人でいるとドンドン不安になってきちゃうからって、フィリーに会いに『冒険者ギルド』に行ったのよ。でも、当然フィリーはお仕事してて、ずっとは話せなくって、ちょっと話したら辺りをウロウロして、また仕事の合間に話して、またウロウロして……って繰り返してたら、クーデリアに怒られたのよ」
「あはははっ……なんて言うか、その……ごめんね?」
「あっ、いや、別にマイスくんが謝るようなことじゃ……! もうっ! ホロホロ、アラーニャ!」
自分の行動が原因でそうなってしまったのだと考えたのか謝るマイスに、そのことを否定しながらアラーニャとホロホロを叱ろうとするリオネラ。
しかし、アラーニャとホロホロは気にした様子は見せず、続けて話し出した。
「でも、本当の事でしょ? あんな「心ここにあらず」な状態だったあの日、人形劇の公演があったら大失敗間違い無しだったわよ?」
「うっ……」
「そうだぜ? マイスが何かしでかす度にあんなんなってちゃあ、コッチの身が持たねぇってもんだ」
「それは……そうかも、だけど……」
ふたりに言われて、
そんなリオネラに救いの手を差し伸べたのは、他でもないマイスだった。
「それじゃあ久しぶりにさ、今度一緒にちょっとした冒険に行こうよ! 学校の事とかで少し忙しいけど、そのくらいの時間を作ることは出来るから!」
「えっ?」
「いっつもノンビリしてるように見えるかもしれないけど、衰えたりはしてないし、むしろ強くなってるってところを見せてあげるからさ!」
最初は疑問符を浮かべていたリオネラだったけど、マイスがそこまで言って何も察せないほど鈍感というわけでも無かった。
つまり、マイスの頭の中では……
「行くって報告した時には笑顔で送り出してくれたけど、やっぱり心配させちゃったんだなぁ……」→「心配させたのって、僕の実力に不安な印象があったから?」→「そういえば、長い間一緒に冒険してなかったっけ?」→「長い間実力を見れてなかったら、不安にもなるかぁ……」→「じゃあ、一緒に冒険に行って間近で見せてあげよう!」
……という流れになっていたわけだ。
そして、それをリオネラは察してみせた。
「馬鹿真面目っていうか、真っ直ぐすぎる天然ボケが地味にメンドいんだよなぁ」
「その面倒さが子供っぽく思えて愛らしい感じもするんだけどね?」
「マイス君らしいんだけどね……あはははっ」
ちょっと困ったように笑うリオネラだったが、「でも」と言葉を続けた。
「そ、それに、一緒にお出かけに行けるのは、その、嬉しいし……」
「えーっと? つまりそれはー……結果オーライってことか?」
「……じゃないかしら? まったく、マイスもマイスだけど、リオネラも
ちょっと呆れ気味に言うアラーニャだが、その声の中からは
「うーん……この日は予定からしてずらせそうにないから無理として……コッチのをここにずらせば行けそうかな? それと、あとはここも……」
カレンダーに目をやり冒険に出れそうな日程を本格的に考え、いくつか候補を絞り始めているマイス。その顔は、お祭りの日を楽しみにする『青の農村』の子供たちのようにイキイキとしていた。
リオネラは受け取っていたタオルで顔を
……もう本当になんで付き合ってないんでしょうねぇ?
「作者が言うな」っていう話しなんですが……。
個人的にはやっぱり次の【*4*】が興味深いところです。そこで他のキャラとは違う「何故、くっつかなかったのか?」がわかってくるのですが……他のルートを見ながら、お楽しみに!