「そういえば、二人って誰に投票したんですか~?」
「僕は……」
『リオネラ』◄(ぽちっ)
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、特殊タグ追加、句読点、行間……
リオネラ【*1*】
***アランヤ村・広場***
【*1*】
「僕が投票したのはリオネラさんだよ」
恥ずかしがったり、どもったりもせずに発せられたマイスの言葉に、みんなが驚いた……のだが、その中でも一人が大変なことになっていた。
それは、他でもない、マイスに投票されたリオネラだ。
「…………」
湯気が出ていそうなほど顔を真っ赤にして固まっている。それはまあ、そうなって当然かもしれない。
が、問題はそのそばにいたアラーニャとホロホロがポトリと力無く地面に落ちた事だ。
普段浮いているふたりがいきなり落ちたのことに周りは驚いているが、ふたりが
まあ、そんなことになれば周りも心配しないわけがなく……
「ねぇちょっと、起きてる……生きてるの?」
落ちてしまったアラーニャとホロホロを拾い上げながら近づいていったのは、マイス繋がりでリオネラと知り合ったミミ。言ってることは少しアレだが、その視線は本当に心配している
「りおちゃーん……? 聞こえるー?」
リオネラが街に来た当時からの付き合いがあるロロナも心配そうに近づき、耳元で「おーい?」と言ったり、顔の前で手を振ってみたりしている。
他の面々も「なんだ」「どうした」と寄ってきたわけだが――それらが効果があったのかは
「……あう、あううぅ……!!」
顔を真っ赤にして、両手をそれそれ左右の頬に付け、首をブンブンと振るリオネラ。
……と、ミミに拾い上げられていたホロホロとアラーニャが動き出し、ミミの手から飛び出して、しゃがんでいるリオネラのそばへとフイーッと飛んでいった。
「いやぁ。今のは仕方ねぇよな」
「そうね。普通に言うのも含めて予想外過ぎるもの」
「やれやれ」といった様子で軽く首を振るふたり。
そんないつも通りの様子を見てか、それともリオネラが動き出したからかはわからないが、マイスがしゃがみこんでいるリオネラに歩み寄りながら声をかけた。
「大丈夫ですか? リオネラさん」
「おっと、今近づくのは
「えっ……」
ホロホロに制止をかけられ、動きを止めるマイス。その顔はすぐにドンヨリとし、そしてガックリと肩を落とした。
アストリッドをはじめとした数人に「顔に出やすい」と言われているマイスだが……確かに、これは誰がどう見ても一瞬で落ち込んだことがわかるだろう。
「あーもう、そんな悲しそうな顔しないで。別にリオネラがアナタの事を嫌いになったとかそういうわけじゃないから、心配しなくていいわ」
いちおう、アラーニャがフォローを入れるものの、その言葉を聞いたマイスの表情を「ホントに……?」と希望と不安が混じった状態以上にすることは出来なかった。
さて。ここでホロホロとアラーニャのふたりによる緊急会議が行われる。
彼らという存在の事情を知っている人からしてみれば、なんとも不思議な光景だが……そうでない人たちから見れば、人形同士がご主人様の近くで内緒話をしているという中々に可愛らしい光景だったりする。
「で、どうすんよ? 安心してもらうにしても、リオネラの気持ちを説明したら、そういうことだって伝えちまうことになるぜ? ……って、いっそのこと、ぶちまけちまったほうが良い気もすんな」
「いいわけないでしょ!? こんな他にも人が沢山いる場所で告白だなんて! それに、そもそもリオネラの気持ちをワタシ達から伝えること自体間違いだし、伝えたところでマイスが理解してくれるかどうかが怪しいし……」
「あぁ、それもそうか」
「これは、とにかくリオネラ本人に頑張ってもらうしかないわね」
彼らがリオネラの精神の一部であると考えると、彼らがしているのはリオネラの深層心理にある葛藤なのだろう。……つまりは、リオネラの奥底には告白などや、ああいったことやこういったことの欲望もあるにはあるらしい。
そんな会議をしているホロホロとアラーニャだったが、リオネラのすぐそばまで近寄ってきて肩に手をかける人物がいたため、一旦中断されることとなった。
その人物というのは……近い性格だったからか意気投合し、親友と呼べる間柄にまでなっているフィリーだ。
「り、りおっリオネラちゃん、大丈夫!?」
肩をゆすられたリオネラは、なんとか持ち直し、目の前にいるフィリーに向かって言葉を投げかけた。
「だ、だだだ……大丈夫って、そそんな……!! だって、だって、マイス君がぁ!?」
「うん、うんっ! 言いたいことはわかるから、とりあえず深呼吸してみようよぅ?」
何故かリオネラに負けず劣らず取り乱しているフィリーに
「はぁ……落ち着いた?」
「なんとか……」
一緒になって深呼吸をしてなんとか落ち着きを取り戻し、笑い合う二人。
そして……落ち着けたリオネラが真っ先にしたのは、少し離れてもらってしまっているマイスへの確認だった。
「えっと……ま、マイス君?」
「あっはい! 大丈夫ですか、リオネラさん?」
「う、うん。ごめんね、心配させちゃって」
リオネラの謝罪にマイスは笑顔で「大丈夫だったなら良かったよ!」と返事をした。
マイスが元気そうなことに一安心するリオネラだったが……ひとつ「ごくり」とつばを飲み込むと覚悟を決めたように小さく頷きゆっくりと口を開く。
「それで……その、わっ、私の水着……どう、だった?」
「とっても似合ってたと思うよ。あのまま本当に人形劇を観たかったくらい!」
いつもの、柔和な笑顔でそう言うマイス。そこにはやはり照れや恥ずかしさは無く、本当に素直な感想からきている言葉なのだろうと察することが出来る。
「そ、そう……?」
少し表情に固さは残っているものの、マイスの言葉にリオネラは表情を緩ませた。そして、人形劇のこととなると黙っていないのがあのふたりである。
「さすがに水着じゃ無理だけど、また『青の農村』でやる時に観に来てちょうだい」
「だな。まっ、マイスが「どうしても」って言うなら、お前の家に、お前のためだけの人形劇をしに行ってやってもいいぜ? それも、ご要望とあればあの水着でな」
「ちょっ!? ホロホロ!?」
毎度、一歩踏み込んだ余計なことを言うホロホロである。
が、何度も言うようだが彼らもまたリオネラの精神の一部。ということは、リオネラも少なからずホロホロの言ったようなことは考えているわけで……でも、実際に言ってしまうのはどうかと思う。
しかし、そんなホロホロの上をいくのがマイスである。……斜め上かもしれないが。
「あははっ、それもいいかもしれないね! じゃあその時はごちそうをたくさん用意しておくよ! あと、『離れ』のほうもちゃんと泊まれるように整理して、あとは……」
「えええっ!? よ、よろしくお願いします……?」
マイスは普通に申し出を受け入れたのである。その予想外の展開にリオネラも驚きその流れでよくわからないまま承諾したのである。……しかも、お泊まり前提のようだ。
「えっと……トトリちゃん。あの二人ってもしかして、お付き合いしてたりするのかしら?」
「仲はいいみたいだけど、してないと思うよ? ……でも、マイスさんの家にずっと長い間お泊まりしてたし、それも先生たちは内緒で……何も無いって方が不思議なんだけどなぁ?」
姉のツェツィからの質問に答えるトトリ。確かに彼女の言う通り、あれで何も無い方がおかしいのだが……本当にあの二人には何も無いのだ。
そして……ホロホロが提案したマイスの家での人形劇は、何の邪魔も入らず実現されるのだろうか……?