コレハヒドイ
今回は完成までに二転三転してしまったお話。
本年の方のストーリー改変との兼ね合いとか、細かい描写の有無。何処までぼかすとか……あとは、ミミの心情の変化と彼女自身の捉え方、そのあたりの表現の試行錯誤などなど……。
次回からがミミルートは本番……かなぁ?
※2019年工事内容※
一部表現の変更、句読点……
【*5-2*】
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***シュヴァルツラング家***
勘違いからマイスさんに結婚祝いの品を持って行ってしまった私。
急いで品物を用意したのに結局はただの噂話で無駄足に終わっちゃったんだけど……
お祝いの品だったモノはどうしようもなくなったから、マイスさんにあげてしまい、私は勘違いしてしまったという恥ずかしい気持ちをまぎらわせるかのように……うん、実際紛らわせようと思って、早足で帰路へとついた。
……で、屋敷に帰り着いたのはいいんだけど、何故かそこにはちょうどうちを訪ねてきていた『アーランド共和国』の大臣さんが。なんでも私にお話があるそう。
そして今、その大臣さんからのお話――「みんなが笑顔になれる話」だそうなのだけど――それを聞き終えた私が思ったことは……
「……お話になりません。そのお話、お断りします」
「あっ、やっぱり?」
「…………」
わざわざ時間を作らせておきながら、いざダメだとなると食い下がったりもせずにあっけからんとした様子でそう言ったトリスタン大臣。それも、これまでとは打って変わって一刻の大臣らしからぬ砕けきった口調で。
その様子に内心呆れかえってしまい、私はため息が喉元まで出かかったけど寸前のところでなんとか抑え込み、それを悟られないようすぐに取り繕う。
……けど、隠しきれていなかったのか、何処か細かい仕草に呆れや苛立ちが出てしまっていたのか……それとも偶然か、私と対面しているトリスタン大臣は肩をすくめ首を振ってきた。
「ああ、ゴメンゴメン。話している途中から表情が変わっていってたのには気づいてたからね。だからキミの返事は予想できちゃってたんだ。まぁ、この喋り方に関しては元々堅苦しいのが苦手だっていうのもあるんだけど……」
「そうですか。では、お話はこれで終わりということで?」
「うん、そうなるね」
やはり、先程と変わらず特に残念がったりすることもなく話をおわらせてゆくトリスタン大臣。
まあ、変に食い下がられても面倒なだけだから、私としてはこれでよかったんだけど……でも、なんだかモヤモヤするし、それとは別に肩透かしを受けたような釈然としない感じもしている。
けど、わざわざこうして屋敷を訪れるほどの用件だったはずなのに、こうもアッサリと……
他にも、「
「参考までに聞きたいんだけど……今回の話を断った理由、よかったら教えてもらえないかな?」
「参考になる保証は出来ませんが、それでも良いのなら……」
……まぁ、これ以上変な気を起こして余計なことをされても、私だけじゃなくきっとマイスも困るだろうし……今ここで私から
そう思い、私は今回の話――
「まず最初に、正当性と信憑性。「国からの話」と言って切り出した割には、説明等は表面こそキレイに整えてはいるものの内容はスカスカで行き当たりバッタリとさえ思えるくらいです。正直、決定事項として会議されたうえで作成されたものとは思えず疑心感を持ちました」
「おやっ、そこからバレて……意見は真っ二つだったし、よりによって首長含む上層部の多くが「不干渉派」だったからなぁ。それで僕が一人でこういうことすることになっちゃってさ……」
何言ってんのよ、この
何? 今の話聞く限りじゃあ、本当に「国からのお見合いの話」っていうのは嘘で、その上それは
悪態を吐いてしまいそうな口や、ピクつくコメカミを何とか抑えつつ、私は言葉を続ける。
「コホンッ! 次に、善意の感じられなさと下心。十分いい歳になったマイスさんに出会いの場を……といえばそこそこ聞こえはいいですが、話を聞く限りでは相手は『貴族』や重役の親族かに絞られているようで……ほとんど政略結婚を目指した物だということ。倫理的に良いこととは言えません」
「そう見えるのは当然、か……まぁ
……?
また大臣が何か言ったけれど……前半は今度はよくわからない。どこの事を言っているのかが理解できなかったから。ただ、ここまでで一つ分かったことは、この
そして後半は……まあ、一応何も知らないわけでも、考えていないわけではないっていうことは分かった。
「最後に……これは断った理由ではなくて、むしろ指摘や忠告に近いモノですが……もし仮に『貴族』や政治関係者の娘がマイスさんの妻になったところで、あの人が言うこと聞いたり、大人しくなったりすることは絶対無いと思いますよ?」
「ああ、うん、それは同感だ。彼って、そもそも「権力に屈しない」どころか「理解してない」レベルだし、ソッチの方で期待してもダメだろうね。……
最後の最後で
けれど、ここまでの返答で――満足できたかどうかは定かではないけど――トリスタン大臣は時間を作ったことへの謝辞を言い帰る用意をしだしたのだった。
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正直な話、お見送りなんてしたくはなかったけれど、『貴族』として最低限の礼儀はしておこうと思い、屋敷を出るトリスタン大臣を門のところまで送っていくことに。
屋敷から敷地の門までの道中、不意にトリスタン大臣が足を止め自分のあごをつまむように触れて思案顔をした。
そうしたのかと思い、声をかけようとしたその直前に「ねぇ」と大臣はコッチを見た。
「これは大臣としてじゃなくて、僕個人の興味なんだけど……今回のお見合いみたいな裏側の事情とかとは関係無しに考えたら、彼との交際ってアリ? ナシ?」
「それは――――なしです」
私の返答に、トリスタン大臣は目を見開いて随分と驚いた様子。
……そんなに、意外なことなのかしら?
「何故なら――――――」
その先の言葉は……以前にも時々出てきていた「ミミの心情」となります。
それは後のお話しで。