マイスのファーム IF【公開再開】   作:小実

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※注意※
このお話には「独自解釈」や「捏造設定」が多々含まれます。主にミミちゃんの家のこととか……。


 また本編から大幅に遅れそうだから二話分投稿したいけど、根本的に書く時間が足りていないという問題にぶち当たりました。



 今回の『ミミ【*5*】』ですが、厳密に言うと、本編の【*5*】よりもほんの少しだけ前のお話になります。まあ、あくまでIFですので、実際に本編のほうとつながっているわけでは無いのですが……。

 あと、途中、別のも挟まっていますが、基本ミミちゃん視点での話となっています。





※2019年工事内容※
 特殊タグ追加、一部表現の変更、句読点、行間……


ミミ【*5-1*】

【*5-1*】

 

 

 

 

 

 

***青の農村・マイスの家前***

 

 

「すぅ……はぁ……」

 

 『青の農村』の一角、マイスさんの家の玄関の前で、私は数回深呼吸をして息を整えて気を落ち着かせる。

 

「って、なんで私がこんなに緊張しなくちゃいけないのよっ!? これは……そう! 強くて、優しくて、博識で、人望もある……けど、どうしようもないお人好しで、『ホットケーキ』みたいに甘くてホワホワな頭の()()()()()()()が騙されてるんじゃないかとかっ! あと、そもそも相手の女性がマイスさんに相応しいかどうかを……!」

 

 だから緊張なんてしないで、むしろコッチが高圧的に出れるくらいどっしりと構えて……

 

 あっ、でも、玄関戸(この扉)の向こう側で、例の結婚相手とマイスさんがいちゃ……えっと、こう……な、仲睦まじくしていたらどうしたらいいのかしら? と、とりあえず、静かにそっと戸を閉じて……って、いや普通に考えて、開けた時点でマイスさんはコッチに気付くわよね? それはつまり、いい雰囲気を邪魔しちゃってるわけで、複雑……じゃなくて、少し申し訳ないような……。

 ちょっと待って? どう考えても、扉を開ける前にノックをするのは常識でしょう? なんで私はそんなことまで忘れちゃってるのよ!? ……あっ、でもそれも結局はいい雰囲気を邪魔できて良い気味……そう言う話でもなくって!

 

 と、とにかく! 礼儀としてノックはすべきだけど、その前に中の様子を確認するべきよね。だったら、玄関から向かって右側にある窓からこっそり中の様子を覗いて……

 

「覗きぃっ!? そそ、そんなのはしたないわ! 『貴族』にあるまじき行為……あっ、でも前にトトリとケンカした時に気になってアトリエの中を……あ、あれは緊急事態で仕方なく……って、私は誰に言い訳してるのかしら?」

 

 自分で思っている以上に緊張していることを再確認してしまいながらも……それでもなんとか気持ちを落ち着けて、改めて玄関戸のほうを向いて――――

 

 

 

「…………」

 

「あははっ……」

 

 いつの間にか開いている扉と、そこからヒョッコリと顔を出しているマイスさん。

 

「あの、い、いつから聞いて……?」

 

「えっと、なんだか賑やかだなーって思って見てみたら、ミミちゃんが一人で首振ったり()()()()()頭抱えて(もだ)えたりしてて……で、覗きがどうとか言って……」

 

「~っ!?」

 

 ぜ……前半は聞かれてないみたいだけど……でもっ! 結局それはマイスさんに変なところを見られたことには変わらないわけでっ!!

 

 自分でも顔が真っ赤になるのがわかるほど、顔が熱くなって……!

 で……でもっ! ここで逃げ出すわけにはいかないわ! 羞恥心を我慢して踏みとどまり……「ふんっ!」と胸を張って背筋を伸ばし改めてマイスさんのほうを向く。

 

 

「あーえーっ、本日はお日柄もよく……じゃなくて! この度はおめでとうございます……って! まだ祝っちゃダメなんだってば!!」

 

「ミミちゃん……その、大丈夫?」

 

「はぁはぁ……あっ、はい、すみませんでした」

 

 自分で言うのもなんだけど、私、どれだけ緊張すれば気が済むのよ。おかげで、まだ何にも始まってないって言うのに凄く疲れちゃったんだけど……。

 

「と……とにかく、言いたいことは色々とあるんだけど……今、時間はある?」

 

「あるよー。……改まってて固い感じがしてたけど、いつも通りに戻すんだね?」

 

「そっそこは気分と言うか雰囲気と言うか……とにかく、いいでしょ、別に!」

 

 声を荒げてしまいながらも、一度「コホンッ!」と咳払いをして話にも自分の気持ちにも一区切りをつける。

 

 

「それで……例のお相手はここにいるのかしら? 祝ったりするよりも前に、その人の顔を見ておきたくて……私も知ってる人なら色々と手っ取り早いんだけど。なんにせよ、一度会っておきたいんだけど」

 

「例、の……? お相手? 祝ったり……え?」

 

「何首かしげてるのかしら? ほら、あのマイスの、そのっ……け、結婚、相手のことよっ! どこにいるのよっ!?」

 

「えーっと……それは、どこにもいないって言うか……?」

 

 ……? どういうことなのかしら? 「いない」って、相手は遠方の取引相手とかで村や街には今いないってこと? いや、それなら「どこにも」なんて言い方は……ん? 「どこにも」……?

 

 

 

「もしかしなくても、「マイス()が結婚する」って()を聞いて来てくれたんだよね?」

 

「ええ、まぁ…………噂?」

 

「うん、誰が流したのかは結局不明のままだけど……アレ、真っ赤なウソだから。僕、結婚する予定は全く無いから」

 

「…………はぁ!?」

 

 

 ええっ!? つまりは、私はあの行商人に真っ赤なウソをまんまと掴まされて……ええっ、いや、あの人はウソを言ってる感じはしなかったし、きっと行商人仲間から聞いた噂話を本気にしてしまっただけで……

 

「って、それでも結局は私がしてたのは勘違いで、その勘違いでマイス()()滑稽(こっけい)で恥ずかしい所を見せ続けてたってことには変わりないじゃないのよー!?」

 

「あはは……そんなに気にしなくていいよ? 『青の農村(ウチ)』の子供たちなんてまいす、けっこんおめでとう」って書いた横断幕を用意しようとしてたりしてて……それとかと比べればカワイイ失敗だと思うし、こうやって否定するのもやり易いからね? いやぁ、アレは別に僕が何か悪い事しちゃったわけでもなかったんだけど、何というか頑張ってる子供たちに申し訳が無かったっていうか……」

 

 きゃあぁーーっ!? しかも、途中から思ったことがそのまま口に出てたー!?

 そのせいで、マイスさんが何か気を遣ってくれて、今回の件であった他の人の失敗談を離しだして……それで、何故かマイスさん自身がもの凄くダメージ受けてるんだけど!?

 

「ちょ、なんでマイスが凹むのよ!? これは私がここに来る前に、話がウソだって気付けたり、他の人から聞いてれば……ば? …………ああっ~!?

 

 私が突然あげた大声に目の前のマイスさんがビクッと驚きすくみ上がっていたけど……今の私には、それは二の次三の次になっていた。何故なら……私は、今、私の手元にある急遽用意した「結婚祝いの品」を買った場所……冒険の準備でもお世話になったりしている『ロウとティファの雑貨店』でのことを思い出したから。

 

「あの雑貨屋の店主! (みょー)にニヤニヤしてる気がしたけど……あれ、私が噂のこと真に受けてるのわかってて……! だぁーっ!!」

 

「ああ、ティファナさんか……普段は普通に優しい人だけど、時々「あらあらうふふ」って感じであえて何もせずにスルーしたりするからね。でも、そういう時って大抵それでよかったりするんだけど……主にフィリーさんが弱音を吐きに来た時くらいだし……」

 

 そう言ったマイスさんは、「あれ? じゃあ、なんで今回は?」と首をかしげるけど……マイスさんはもちろん、私だってそんなことはわからない。ティファナさん(あの店主)の気まぐれ……じゃなかったら、なんだっていうのかしら?

 マイスさんの言ってる通りだとすれば、こうして私が勘違いしたままここに来て「よかった」ってことになるはずだけど……本気でそう思ってるなら、あの人、結構性格が悪いんじゃ?

 

 

 

「そういえば……話にティファナさんが出てくるってことは、雑貨屋さんに寄ったってことだよね? 何か用があったの?」

 

「あっそれは……あー……」

 

 私が目を向けるのは、自分の右手に持っている紙袋。

 そう、中には雑貨屋で買った物が入った箱が綺麗にラッピングされているのだけど……それの事を思い出して、私は何とも言えない気持ちになった。

 

「……実は、結婚の話を聞いたのが冒険帰りで、『青の農村』での結婚祝いの作法はわからなかったけど急いで何かお祝いの品を用意しなければと、街に帰ってすぐに冒険の必要品などを買う為によく使うあの雑貨屋に急いで行って、そこで「結婚祝いの品」を買ってからここに……あっ、でもコレをすぐに渡すつもりは無くて、結婚相手がマイスに相応しいかどうか審査したうえで、その人に渡そうと思って……」

 

「えっ? しんさ……?」

 

「な、なんでもないわっ! 忘れてちょ……ください、本当に、お願いします」

 

 顔から火が出そうなくらい恥ずかしい……けど、逃げ出したら負けなような気がするし、なにより、その「結婚祝いの品」の処理に困ってしまうため、他所へと走り出しそうになる脚を止めてその場に留まった。

 

 勘違いしたことからくる恥ずかしさやマイスさんへの申し訳なさで、途中、丁寧口調になりながらも言葉を続け……「これっ」と右手に持った紙袋をマイスさんに向かって差し出した。

 

「急で買ったからそんなに高いものじゃないけど、ペアのティーカップ。村長なわけだし、来客もあったりするんでしょう? そういう時に適当に使ってちょうだい。……勘違いで買ったまま(ウチ)でホコリを被るよりも、そのほうがよっぽどいいと思うから」

 

「ミミちゃんの家では使いそうにないの?」

 

「ええ。まぁ貴族のたしなみってわけじゃないけど、食器類は私が使ったことの無い物も含めていくらでもあるのよ。ウチで料理とかした時に見たことあるでしょ?」

 

 まだ、お母様が健在(いた)ころのことをマイスさんに言ってみると、心当たりがあったようで「ああっ」と納得したように頷いていた。

 それを確認し、マイスさんが受け取ってくれたことも確認した私は、一歩後ろに下がって一礼をする。

 

「えっと、その……今日はお騒がせしてすみませんでした。それでは、私はこれで……」

 

「いやぁ、そんなかしこまったり、謝ったりしなくても……それに、僕も今からちょっと作業の合間の休憩を入れるところだったから、よかったら休んでいっても」

 

「それはちょっと、色々と限界が近いから……そ、それではっ!!」

 

 これ以上何か言われて引き止められる前に、もう一度礼をしてから私は駆けだした。

 ……本当に色々と限界だったから。冒険帰りの肉体的疲労、色々あっての精神的疲労……あと、恥ずかしさとか。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 ミミが帰った後、マイスはラッピングを綺麗に剥し箱から出して、「結婚祝いの品」だったペアのティーカップがどんなものなのかを、その目で確かめた。

 

「うーん……これは、お客様用には出来ないなぁ」

 

 「あはははっ」と少し困ったように笑いながら見るそれは――――全体的にハート柄が散りばめられ、ペアの取っ手同士を合わせるとハート型に見えるものだった……。

 

「さて、どうよう……?」

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

***アーランドの街***

 

 

 

「はぁ……なんか、どっと疲れが出てきた気がするわ……」

 

 家への帰り道。『アーランドの街』の中にある住宅地でも特に『貴族』の家々がそれぞれ広い敷地を持って邸宅を建てている区画へと差し掛かったあたりで、ようやく「帰って来た」という実感が湧いてきたのか一気にこれまで以上の疲労感を感じ始めた。

 

「帰ったら早々に休むべきね、これは」

 

 とは言っても、当然身支度などもあるからすぐに休めるわけではないのだけど……ああ、それに家を空けていた間に変わった事がなかったかとか、当主としての責務を果たさなければいけないわね……。

 

 

 そんなことを考えながら家路についていたのだけど……

 

 

「あら?」

 

 ようやく見えてきた『シュヴァルツラング家』の邸宅前の門で、誰かが二人で話してるのが見えた。

 

 一人は、(ウチ)の管理のために王国時代のころからずっとウチに雇われてくれているメイド長。お母様が亡くなってからも、私が冒険者になって家を空けがちになってからもとてもお世話になっている人だ。

 

 もう一人は――直接話したことは確かなかったはず。だけど、何かと顔を見る機会はあって――個人的にちょっとだけ知っている人だった。

 

 

 メイド長が帰って来た私に気付き一言と共に礼をして一歩下がる。そして……もう一人の人物は、「ちょうどよかったよ」と呟きながらコッチに向きなおった。どうやら私にようがあるらしい。

 

 私は疲労感などを内面に隠しつつ、その人物に恭しくお辞儀をしながら挨拶をする……。

 

 

 

「これはこれは()()()、御機嫌よう。本日は『シュバルツラング家』にどのようなご用件でしょう?」

 

「ああ、そんなに堅苦しくしなくていいよ。僕はそういうの、あんまり得意じゃなくってね。それに……せっかく楽しい話になるのに、そんなにカチカチだったら味気無いじゃないか」

 

 ()()()という感じの雰囲気……マイスさんとはまた違った()()を見せるその大臣に、私は内心眉をひそめた。個人的にはどちらかと言えば苦手なタイプだ。

 

「あらあら、楽しい話……ですか?」

 

 

 

 

 

「うん。きっと……みんなが笑顔になれる話だと思うよ」

 

 




 本編でもやってた(かもしれない)某大臣様の犯行(?)がついに……!?


 言うときは基本「マイス」なのに、内心やぽろっと口から出た本音とかでは「マイスさん」と言ったりして忙しいミミちゃん。書いていると、色々と考えてたはずなのにごっちゃになっちゃいます……。



 そして、色々と不明なミミちゃんの家の事情。貴族だしくーちゃんのところみたいにSPやら使用人がいてもおかしくないだろうし、『冒険者』という職業の都合上、家を空けることも多くてその間を中心に管理をする人が必要だとか、その他諸々……。
 特に、ミミちゃんが産まれたのだから存在はしていたはずのお父様は、原作中では全く登場せず、まだ十代前半のミミちゃんが「当主」を名乗ったりしていることを考えると健在とは考えにくいという……。
 まあ、親の片割れや両親についてほぼノータッチだったりするのは、『アトリエ』でも『RF』でもよくあることなんですけどね!

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