マイスのファーム IF【公開再開】   作:小実

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『5年目:マイス「ある日の日常」【*3*】』

 『マイス「」』とありますが、第三者視点となっています。ご了承ください。


 地の文、多すぎる問題。
 どれもこれも、素直にマイス君とからんでくれないウチのミミちゃんがいけないんだ! ……で、ミミちゃんがそうなったのはマイス君のせいであって、もっともとを辿ればこんなシナリオにした作者のせいなわけで……。自分で自分を殴っておきます。

 早くミミちゃんをワタワタ慌てさせたり、照れさせて真っ赤にさせたいです。



※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、一部表現の変更、句読点、……


ミミ【*3*】

 

【*3*】

 

 

 

 

***アーランドの街・広場***

 

 

 

 ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラング。幼くしてアーランドの貴族『シュヴァルツラング家』の当主となり、最近ではここ数年で『冒険者』として一流と言っても過言では無いほどの実力者である。

 

 ミミがそこまでの冒険者になれたのは、才能や運、周囲の環境など様々な要素が組み合わさった結果でもあるだろうが……彼女の知識・身体などといった内面的部分、外面的部分、そのどちらもおろそかにしない絶え間ない努力があってこそのものだろう。

 

 

 そんなミミだが……今は特に何をするわけでもなく、街の広場にあるベンチに一人で座っていた。

 なんということは無い、控えてあった少し前に大きな戦闘を終えたので休暇として一日とっておいたのだが、休みと言ったところで特別何かすることがある訳でも無く、ただ時間が余っていてそれを持て余していただけである。

 

 まぁ、というのも、ここ最近冒険はトトリと一緒に行くことがほとんどであったため、『塔の悪魔』を倒し、トトリの冒険が本格的に一段落したことによって彼女との冒険の時間が減ったのが直接的な理由だろう。

 

 

 

「自分で言うのもなんだけど、仕事しか頭に無い「仕事人間」とでもいうのかしらね、これは。趣味の一つや二つ、あれば苦労しないんだろうけど……」

 

 そう思い、ミミは自分の『趣味』と呼べそうなモノを思い浮かべようとした。

 

 まず、真っ先に思い浮かんだのが「鍛練」。ヒマがあれば槍を手に取り、戦闘に置ける一連の動きを実際に動いて確認したり、敵の種類や数などの状況を想定した上でのイメージトレーニングをしたり、技の改善点を探したり、新たな技を試行錯誤しならがら完成に近づけていったり……体力や体の疲労さえ無ければ、いくらでも時間は潰せるどころか、勝手に時間が進んでしまうくらいだろう。

 だが、「鍛練(これ)」が『趣味』かと聞かれれば、ミミは素直には頷けない。嫌でやっているわけではないが、客観的にも見てしまうためどうしても「仕事」の延長に思えてしまう。

 

 

 他には……

 

 「武器の観賞」は、冒険者として武器にはある程度精通しておくべきと思ってしたことはあるが、よほど無骨だったり逆に装飾過多で機能性を損なっていたりしない限り(こだわ)りがある訳でも無いので、ミミはそこまでのめり込めず。

 

 「裁縫」や「料理」は、初めてしたころは楽しかったし出来なくはないのだが、時間が経つにつれ「貴族のたしなみ(必要に迫られて)」として努力の末身に付けた部分が大きくなったため、ミミにとってはなんというかそこまで積極的にやりたいと思えることでは無くなっていた。

 

 「ショッピング」は、貴族としてそれ相応の身なりを整えることは当然であるし、ただ単純に服はもちろんのこと、髪飾りなどの装飾品にも人並みには興味はある……のだが、「コッチもカワイイ。アレもよさそう」などと思っても、いざ買うとなるとやはり日々の多くを街の外での冒険に費やしているだけに「でもこれ、冒険の時に付けて行くには……」と考えてしまい、結局買わないことがほとんどだったりするため、ミミはそこまで買い物を楽しめる気がしなかった。

 

 他に思いつくものといえば……

 

 

「読書、くらいかしら……? 自分でいうのもなんだけど、読んだ本は人一倍多いっていう自信はあるし……」

 

 もちろん、その読んだ本の全部が全部『趣味』の一環であるとは言えないことは、ミミ自身もわかっている。これまでにしてきた「読書」だって、その半分近くは知識を得たり見聞を広めるための手段として本を読んでいただけにすぎず、それはやはりどちらかと言えば勉強の色合いが強い。

 ……()、それはあくまで全体の半分の話。残りの半分は冒険譚やファンタジー系などの娯楽色の強い創作小説も()()()読んでいるのだ。

 

 最初に触れた本。それはもちろん読み書きの練習の意味もあったであろう、親から与えられた「絵本」。そういったものは大抵絵空事……フィクションであることが多いが、それがきっかけで小説などの本をよく読むのが好きになった……()()()()()()()()()

 そのきっかけというのは、もちろんミミ自身はちゃんと自覚していた。

 

「どう考えても、()()がきっかけなんだろうけど……まぁいいわ。今日は久々に本でも探してみようかしらね」

 

 冒険者になるまでは、鍛錬の合間などに本を読んでいた。

 しかし、冒険者になってからというもの、本を読むような時間も随分と減ってしまったわけで……ミミにとって、本そのものを新しく買うというのも随分と久々なことなのである。

 だからか、ベンチから立ち上がったミミの顔は、心なしか薄っすらと微笑みを浮かべているように見えた……本人がそれを自覚していたかどうかは、不明である。

 

 

 

――――――――――――

 

 

***街中・某所の本屋***

 

 

 

 『アーランドの街』には本を扱っている店は少なくない。というのも、料理屋なら料理本が、鍛冶屋なら鍛冶や鉱石に関わる本が……そういった具合にその店ごとに、自信の店にあった本を置いているところが多いからだ。

 そういった店がある中で、数軒だけだが街の外で見かける機会の少ない「本を専門に取り扱っている店」もある。

 

 このご時世、本は「珍しい物」ではないが「あふれかえっている物」でもない。

 が、アーランドは少し事情が違っていた。

 

 上質とは言えないレベルかもしれないが、機械による量産で紙の供給が安定している事と、機械による印刷技術確立がされている事、その二つが大きな要因であろう。正に、機械の恩恵を受け発展しているアーランドならではの豊かさだ。

 

 

 さて、機械技術を駆使して量産された本も、直筆で書かれている希少価値の高い本も、完璧にとは言えないものの取りそろえられている本屋に入店したミミは、さっそく棚に並べられている本の背表紙に目を通していき、気になる本がないか題名を確認していった。

 

 二つ目の棚の三分の二くらいの背表紙に目を通したあたり。そこでふとミミの目に止まるものがあった。

 ミミは当然、それを手に取った。

 

「あっ。この題名(これ)って、前に読んだことのある……続編なんて出てたのね」

 

 手に取った本と、その本があった場所の隣にある本を見比べながら、読んだ当時の事を思い出しつつ、その物語の内容を記憶の中から掘り出していく。

 

「確か、呪いのせいで身体が(むしば)まれている魔法使いの話だったかしら? 設定の割には中身は普通に楽しい魔法使いの冒険の物語で、読み終わった後に「あの設定って必要だったのかしら?」って思った気が……」

 

 「結局あの設定って何だったんだろう?」と思いながらも、ミミはその本に対する自分の印象は「楽しかった本」と残っているため、読んだことの無いその続編にも少なからず興味が湧いてきた。

 

「まぁ、何にしても暇潰しくらいにはなるでしょ」

 

 そう思い、ミミはそのままその本は手に持って、本探しを再開するのだった。

 

 

 

「にしても、『魔法』ねぇ……」

 

 手に取った本の内容から思い出したこと。それは先日、『塔の悪魔』を討伐しに行った時にマイスとした会話と、その後の戦闘、戦闘後のこと……という一連の出来事のことだった。

 

 塔に行く最中にマイスから言われた「『魔法』を使うかもしれないんだ」という言葉。

 実際に、戦闘中に使われた多彩な『魔法』の数々。

 そして……『塔の悪魔』を倒した後、『最果ての村』でマイスの口から聞いた「今度のお祭りで『魔法』を大々的に発表し、その『魔法』その他諸々を教える学校をつくる」という話。

 

 その全てに、ミミは少なからず驚いた。特に学校の話は「目から鱗」な部分も多くあり大変驚いた……が、それ以外に関しては多少は驚いても案外素直に受け止めることができた。

 というのも……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 昔……ミミが始めてマイスに会い母親に薬を作ってほしいと家に連れて行ったから、母親が無くなってから少し経った後に「家に二度と来るな」とミミがマイスに言って追い出すまでの長いようで短い期間。

 その間、シュヴァルツラング家に通ったマイス。調子が悪くベッドから動けない母親から離れようとしないミミをみかねてか、そういう状況になる度に、マイスはミミとその母親(二人)に物語風だったり、ユーモラスな小話風だったりするお話を語ることがあった。

 

 マイスの語ったお話。それがミミが物語を読むことが好きになった「きっかけ」であり……

 ミミはそのお話を……()()()、街の外で実際にあった出来事だと思い熱中し……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、自分たちを驚かせ楽しませるための創作物語だったのだと思い……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、「……もしかして、あの話って本当に事実だったり?」とそんな気もしなくはない程度になっていた。

 

 故に、マイスが『魔法』が当然あるかのように話しだしても……で『塔の悪魔』との戦闘で物語に出てきた『魔法』が聞いたままの形で目の前に現れても……それが誰にでも使えるものだから使ってみたい人には教えてあげるようにするという話を聞いても……「ふーん、やっぱりそうなんだ」といった感じで受け入れることができたのだ。

 

 

 しかし、だからといってそれでミミの頭の中がすっきりさっぱりとしたわけじゃなかった。

 実のところ、むしろ疑問は増えているくらいである。

 

 

「『魔法』は実際にあったわけだけど……他のも全部事実だったりするのかしら?」

 

 

 そう。『魔法』なんてものはマイスがミミに語ってきたお話のごく一端に過ぎず、人・物・文化・お祭り・食べ物・その他諸々……本当に様々な方面で不思議な話があるのだ。それらが事実なのか。そして……

 

「そんな不思議にあふれている場所のことを、なんでマイス以外は知らないのかしら……?」

 

 当然と言えば当然の疑問。今回の『魔法』にしたってアーランドでは本に書かれた空想世界での話に出てくる程度で、マイスが語るような明確な種類区分やメカニズムについて記されている物は、アーランドには存在しない。

 その他についても、マイス以外の人の口から聞くようなことはまずありえなかった。

 

 

 そして、ミミがずっと気がかりになっている、マイスがしている「隠し事」。

 それは、ミミがマイスの口から聞いた「来ることはできたはずなのに、元いた場所に帰れない」という話とその理由。それと、イクセルが語った「マイスは自分の親が小さいことを知っている」という、ミミがマイスから聞いた「憶えてない」と言う言葉とは矛盾するために「あるのでは?」と思ったのだが……。

 

 ミミは『魔法』が現実にあることをその目で見てから、マイスの「隠し事」についてもある考えを巡らせていた。

 

「もしかしたら、マイスが話したお話の中にヒントがあるのかと思ったけど……どうにも、そういうわけでもなさそうなのよねぇ……」

 

 そう小さく呟くミミ。

 

 

 

 実は、ヒントもあり、答えに繋がる材料も全てミミは知っている(見ている)のだが……それに気づくことも無く、棚に並んでいる本の背表紙に目を通す作業を続けるのであった……。

 




「帰れないのは異世界だからで、記憶が無いのに親がわかるのは自分が『ハーフ』でその片方が『モコモコ』っていうアーランドでも時々見られる金のモコモコ(モコちゃん)と同種のモンスターだから、「親の片方は小さい」ってほぼ確信して言えるんだよ!」

 察しろ、とか無理ですよね、はい。

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