本編の感想返信おそくなってしまっておりますが、明日の夜中にしますのでもうしばらくお待ちください。
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、特殊タグ追加、一部表現の変更、句読点、行間……
【5-2】
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***アランヤ村***
私の故郷『アランヤ村』。
「マイスさんが結婚する」っていう噂を聞いてから、そのことが時間が経つにつれてドンドン気になってしまって……今朝、『
気付けば私は、村の中心付近にある広場の一角に一人で
「ハァ、ハァ……とっさに『トラベルゲート』使っちゃったけど、失敗しなくてよかったー」
ちむちゃんたちをマイスさんへの「すぱい」として放った後、いきなり現れたマイスさんに驚いて、気付けば逃げるように『
とっさの転移だったから座標がズレてしまう可能性が十分にあるって、使った後に気付いたんだけど……幸運なことに、大変な事態にはならなかった。
まぁ、アトリエからはかなりズレちゃってるけど……海に落ちたりしてないんだから、全然マシだよね?
「それにしたって、まさかマイスさんが
完全に予想外だったなぁ……。てっきり『青の農村』のお家にいるとばかり思ってたもん。
おかげで、こんな風にドタバタ逃げるはめに……
「……って、あれ? 私なんで逃げたんだろう」
それはまあ驚いたのは事実だし、間違い無いんだけど……何も逃げ出さなくっても良かったような……?
ああっ!? そうだ!!
ちむちゃんに「すぱい」になってもらって、マイスさんのことを周りには秘密にして調べてもらおうとしてたから、やっぱり後ろめたさがあって……って、あんまり無いなぁ、後ろめたさ。だって、アレは「マイスさんが結婚する」なんて噂がたってるからで……噂がたってるのが悪いんであって、私は別に悪くないもん。
というわけで、私にはそんなに逃げ出さないといけない理由なんて無いはずなんだけど……
でも、なんだかマイスさんの顔を見たら「逃げなきゃ!?」って思っちゃって。なんていうか、こう……見た瞬間に「カチッ」っと変わる感じ?
……自分の頭の中で整理してるはずなのに、結局よくわかってない気がする……。
「うーっ、考えてたらなんだかモヤモヤしてきた。気分が悪い……わけじゃなくって、イライラする……っていうのとも違って……考えるの
「うふふ~、それは『恋』ね~」
「こい……故意、かぁ……ん? コイ?」
「故意」って、何が? 誰が、いったい、何を考えて?
「コイ」って、お魚? 今のところ実際に見たことはないけど、そんな種類の魚が居るとかいないとか、昔読んだ本に書いてあったような気が……?
ええっと、他に「こい」っていえば……?
「――――恋!?」
「こいー?」
「そうよぉ~? 今、トトリちゃんは『恋』してるの。間違い無いわ~」
お散歩してたのか何なのかは知らないけど、いつの間にかそばに居たパメラさんとピアニャちゃん。
手を繋いでもらっているピアニャちゃんがコテンッと首をかしげて疑問をそのまま口に出し、パメラさんがそれに頷きながらニコニコ笑って……って、そうじゃなくって!!??
「ううウソだよっ! わたわわわた私が、っあ、あのっまま……マイスさんに……恋っ!?」
「あら~! お相手はマイスなのね~!」
「わわわぁー!? 違うっ! 違いますって!! マイスさんは、そのそんなんじゃなくってー!!」
わけもわからないまま、首も手も一緒にいっぱい振って否定してみる。
けど、パメラさんは「あらあら~」ってクスクス笑ってばかりでちゃんと聞いてくれなくって……!
「そんなに恥ずかしがらなくていいじゃな~い? 乙女に恋の一つや二つは付きものなんだから」
「そ、そういうものなんですか……?」
それなら、コレも別に気にしなくっていいってこと?
……って、そうじゃなくって!? そもそも、私がマイスさんに恋してるってこと自体、本当かどうかもわかんないんだから!
そんなことを考えたら、クイックイッって私の服の裾を軽く引っ張られて……「どうしたのかな?」って見てみたら、頭の上に「?」が見えそうなくらい眉を八の字しにて首をかしげたピアニャちゃんが、いつの間にか私のそばまできててジッと見てきてた。
「トトリ。『こい』、ってなぁに?」
「うえぇっ!?」
そそそっ、そんな質問、どう答えたら……!?
ああっ、ピアニャちゃんも
どっちにしろ、私の口からは何にも説明してあげられそうにないんだけどー!?
「ねぇねぇ、なんなのー?」
「そ、それはー……そのー……」
というか、この気持ちが本当に『恋』なのかどうかとか、その辺りはむしろ私が教えてほしいっていうか……。
「大丈夫。ピアニャちゃんも女の子だから、そう遠くないうちにわかるようになるわよ~?」
「ほんと? でも、ピアニャ、今知りたいなー……」
「うふふ~、そんな焦らなくても心配いらないんだから~」
「そ、それじゃあ私、用があるからこれで……」
「えー? トトリ、もう行っちゃうの? ピアニャと遊んでくれないの……?」
遊んであげられないっていうより、この場に居たら私がどうにかなっちゃいそうっていうか……とにかく無理だと思う。
私は、心の中でピアニャちゃんに深々と頭を下げて謝っておく。
「ダメよ、ピアニャちゃん。トトリはこれから愛しのマイスに会いに行くんだから、邪魔しちゃお馬さんに蹴られちゃうわ~」
「いきません!! ええっと……そうっ! 今からお仕事、お仕事なんです! だから行ってきます!」
パメラさんの言ってることは……! と、とにかくよくわかんないから、これ以上は聞いてられません!!
私はふたりの反応や返事を気にするのもそこそこに、この場を離れるための言い訳で言ってしまったお仕事をしに、依頼の受付のある『バー・ゲラルド』へ早く行くことにした……。
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「トトリ、行っちゃった……」
「あらっ……ちょっとからかい過ぎちゃったかしら?」
足早に行ってしまったトトリの後ろ姿を見送るピアニャとパメラ。
残念そうな
が、すぐにいつものニッコリ笑顔に戻り……その耳に届いていないだろうことを百も承知で『バー・ゲラルド』へと入っていってるトトリへと言葉を投げかけた。
「頑張ってね~トトリちゃんっ。女の子は恋をして綺麗になるのよ~」
「ふーん?」
「それじゃあ、私たちも休憩終わりにして『お店屋さんごっこ』に戻りましょーか?」
「はーい」
再び手を繋いだ二人は、そろって『パメラ屋』へと歩いていくのだった……。
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***バー・ゲラルド***
「――というわけで、『ぬし』を釣ってきて欲しいんだ」
「いや、なんでそうなるんですか?」
それこそ逃げ込むように入った『バー・ゲラルド』なんだけど――気づけばカウンター越しにゲラルドさんに詰め寄られてた……。
きっかけはといえば、酒場に入って挨拶したところで「ちょうどいいところに!」といきなり話を振られたのが始まりだった。
以前に私がゲラルドさんに頼まれて作った『
あの、魚の生臭さそのものが液体化しちゃったようなお酒のどこが良かったのか分からないけど……それからというものの、ゲラルドさんに「別の種類の魚を使ってバリエーションを増やしてくれ!」ってことになって……。
追加で数種類作ったところで一段落したんだけど、当然のようにゲラルドさんが望んだような「お客さんの増加」は発生しなかったみたい。そして、また悪い方向に進んでるみたいで「もっとインパクトを」とのこと。そのために今度は村の近海に現れる『ぬし』を使った酒を作ってほしい、って言い出しちゃった……ってわけ。
「『ぬし』を使った酒なら、村の連中も飛びついてきて店も繁盛すること間違い無しだ!」
「まず、お魚でお酒を造るってところから変えないと、どうしようもないんじゃ……って、ああ、もう全然聞いてない」
もう変に熱くなっちゃってるゲラルドさんには私の言葉は届いてないみたいで……私の言ったことには気づかないまま、勝手に「『ぬし』を釣る方法」を話しだしちゃった。
……要約すると、「丈夫な船」「釣竿」「エサ」、そして釣れる「場所」「時間」、最後に『ぬし』を釣り上げられるだけの「腕力」が必要……とのこと。
「場所」と「時間」のことは教えてもらえた。場所は村の港から出てちょっと行ったところ。時間は新月の日の夜。
あとは「丈夫な船」はもうあるんだけど、「エサ」はゲラルドさんがしっかり憶えてなくって「フルーツ」とだけしかわからなかった。あと「釣竿」はゲラルドさん曰く、グイード――つまり私のお父さんが使っている――あの、ロロナ先生を釣り上げた事もある釣竿を借りればいい、っていったんだけど……。
「でも、そんなことしたらお父さん、やることが無くなってヒマしそうで……。普段、働かないで釣りばっかりしてるし」
「流石に辛辣すぎやしないか? 事情もあったのだから、何もそこまで言わなくてもだな……」
それはそうだけど……。
でも、もう船造り、本当にしないのかなぁ?
――――――
「んー、困ったなぁ。誰かいないかなぁ……?」
とりあえず、ゲラルドさんのもとから離れて『ぬし』を釣るのに必要なものをあつめることにしたんだけど……。
「エサ」はあてずっぽうである
誰かいるかなぁ?
「あら? トトリじゃない。『
『
「あっ、メルおねえちゃん。実は……
って、いたー! 怪力の人!!」
「うん、まあ事実は事実だけど……いきなりソレは、流石に失礼じゃないかしら……?」
メルおねえちゃんは笑って……でも、口角をピクピクと震わせながら、そう言ってきた。
「あっ! ご、ごめんなさい、つい」
「つい、って……」
少しの間をあけて、諦めたように大きなため息を吐いたメルおねえちゃん。
そのまま帰っちゃうかもしれない、って思ったけど、メルおねえちゃんは「で?」と私に話の続きを催促してきた。
というわけで、私はメルおねえちゃんに説明を始めたのだった……
――――――
「はぁ……? 『ぬし』釣り、ねぇ? なんというか、色々変なことやるわね、あんたも」
「やりたくてやってるわけじゃ……とにかく、そういうわけで力のある人が必要なのっ! メルおねえちゃん、手伝ってくれない?」
「手伝ってあげたいのは山々だけど、今回はパスね。あたし、魚とか苦手だし」
あれ? そうだっけ?
メルおねえちゃんが「魚が苦手」とか、そんなことあったかなー?っと記憶を必死に探ってみると……やっぱり覚えがなかった。
「食べるのは好きなんだけど、生きてるのは……ね? なんかネチョネチョしてて気持ち悪いじゃない、生きてる魚ってさ」
「へぇー……」
聞いてみれば、まあ分からなくも無い理由ではある。
でも……うーん……?
「……何かしら、その目はー? 「なに女の子みたいなこと言ってるんだ、似合わねぇなコイツ」とでも言いたげね」
「えっ、ち、違う! そこまで思ってないよ!?」
「つまり、少しは思ったと?」
「……ごめんなさい」
否定しきることが出来なくって謝った私だったけど、そんな様子を見てまたメルおねえちゃんはため息をついた。
やっぱり私、一言多いんだろうなぁ……?
「まぁ、あたしは手伝えそうもないわけだけど……そうだ、ステルクさんとか丁度いいんじゃない? あの人、基本お人好しだし、トトリが頼めば手伝ってくれるんじゃないかしら?」
「ステルクさん……?」
ステルクさんかぁ……。
ああっ、そういうえば前に『青の農村』であった『大漁!釣り大会』で一匹だけしか釣れてなかったけど、その一匹が大物だったんだっけ? 普段大きな剣をふりまわしてるし、ステルクさんなら『ぬし』も釣り上げられる……かも?
でも、ちょっと頼み辛いなぁ……。
メルおねえちゃんも言ってたように、基本いい人なんだけどやっぱり顔が怖いし、それ以外も愛想が無いっていうか……結果頼み辛いことに変わりなし。
ん……あれ? 『大漁!釣り大会』?
あの時、小物ばっかりだったけど私がいっぱい釣って一位だったけど……何か別にあったような?
「ああっ、そうだ!
「あら? ……って、そういえば背は低めだけど確かに怪力の持ち主ね。人だってモンスターだって簡単にぶん投げるんだったわ、あの人」
そうっ! 身長はミミちゃんと変わらないくらいだけど、力に関しては随一って言ってもいいくらい。マイスさんの筋力はそれこそメルおねえちゃんに負けず劣らずスゴイんじゃないかなーって私は思ってる。
あと……
「マイスさんなら
「それに?」
「釣りが一人だけ段違いに上手過ぎて、村の釣り大会で出場禁止処分受けてるんだって!」
「へ、へぇ……それ、誇らしげに言っていいことなのかしら?」
え……?
でも、事実だし、野菜コンテストと一緒で「殿堂入り」扱いっぽいから良いことなんだろうし……別にいいんじゃないかな?
―――――――――
***青の農村***
そんなこんなで、思い立ったら吉日。
私は『トラベルゲート』を使ってさっそく『青の農村』に……でも、何か
「よーし! それじゃあ、さっそくマイスさんに頼んでみて……あれ?」
『ぬし』釣りなんて無茶苦茶な話ですっかり忘れてたけど、私、今朝にちむちゃんたちを使って秘密が無いか探ろうとしたり、いきなりのマイスさんに逃げ出してしまったりしてたような……?
……このままじゃあダメな気がする……。
これはどうすれば……!!
「う、ううん! アレはちょっとした気の間違い。だから気にしなくていい……気にしちゃダメなの!! がんばれっ私! 勇気を出してやれば、きっと大丈夫だから!」
大きく息を吸って……吐いて……
それを繰り返して、深呼吸を二度三度――――うん! 落ちついてきた! これなら、今、マイスさんを見ても逃げ出さずにいられる気がする!!
「よぉーし! それじゃ――」
「ん、トトリちゃん? もしかして、ウチに用事かな?」
「――ふぇ?」
声がしたほう……後ろへと「まさか? まさか!?」と思いながらギギギッと振り向いていく……。
そこにいたのは…………想像してた通りの人物だった。
「ああ、そうそう! さっきアトリエの前を通ったら「トトリちゃんがいきなりいなくなったー!?」ってロロナが心配してたよ? もしかして、お出かけすることロロナに伝え忘れて出てきちゃった?」
「え、あっはい。ソンナトコロデス……」
……だ、大丈夫!? 私っ!?
何気に久々の原作『トトリのアトリエ』内のイベントを元にしたお話でした。
そして、次回【5-3】は……原作イベントを知ってる人は内容がおおよそ予想できてるかもしれませんが「VS『ぬし』」です。
…………えっ? この予告がマイス君はついて行くのかどうかのネタバレになってるって?
マイス君が断るところ、想像できるでしょうか?
冗談はさておき、言い訳をするなら、今回の最後でサラッとするか、次回の最初でサラッとするかで悩んだ結果、お話の最初にサラッとすませたほうが良いと思ったからです。そういうことです、申し訳ありませんでした。