マイス君の結婚云々が気になり、他ルートよりも早い時期に街にくる。
そして……今回、『トトリルート』ですがマイス君視点でも無く、トトリ視点でも無く、第三者でも無く、まさかのロロナ視点です。
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、特殊タグ追加、一部表現の変更、句読点、行間……
【*5-1*】
***職人通り***
わたしです、ロロナです。
……どうしてこんなことになっちゃったんだろう?
どうして? なんで?
ありえない……あっちゃいけないことなのに……。
でも、目の前に見える
耳から聞こえてくる
嘘だと言いたい。嘘だと思いたい。
けど、けど……っ!!
けど、何回確認し直しても、今アトリエの前で起きている出来事はどうしようもない現実だった。
「いーい? ちむちゃんたちは今から『すぱい』なんだよ? そう気取られないようにしながら、マイスさんの秘密を……弱みを調べるのがお仕事です!」
「「「「ちーむー?」」」」
トトリちゃんが、笑顔で悪巧みする悪い子になっちゃったー!?
『アランヤ村』に帰ってたはずのトトリちゃんが、聞いてた予定より早く『
しゃがんでちむちゃんたちの視線に近づけて喋ってるトトリちゃんは、笑顔なんだけど……わたしの目が変になってないなら、笑顔の裏にっていうかトトリちゃんの背後になんか凄い黒いモヤモヤ~ってしたオーラが見えてる……。
ほっ、ほほほ……
わたしの育て方が悪かったのー!? わたしなんかが先生だったから、トトリちゃんの性格が歪んじゃって、お腹まで真っ黒な悪い子になっちゃったんだー!!
で、でも、どうしたら……!?
「ちむっ! ちっむ、ちちむー?」
あっ、トトリちゃんの前で整列してた『
「ちっちむ?」
「ち~む~?」
「ちむ?」
それに続いて、他の子たちも顔を見合わせたりしながら、まるで何かを確認するように喋って……いや、ちむちゃんたち、何言ってるんだろ、これ?
「どんなことでもいいけど、誰でも知ってるようなことじゃダメだよ? ……で、さっきも言ったように、やっぱりマイスさんの弱みになるような秘密が……って、これじゃあまだ、大雑把すぎてボンヤリしてるかな?」
あっ、トトリちゃんにはちゃんと伝わってるみたいで、真っ黒なモヤモヤをモワモワ出しながら、笑顔でちむちゃんたちに……
……って、あれ? 急にトトリちゃんから黒い笑顔が消えて、目がどっか
「そ、ソウダナァー。ナンデモイイケドー……主に女性関係とかカナァ?」
「「「「…………ちむー……」」」」
あっ、今のちむちゃんたちの反応はわかった! 「えー」とか「あー」っていう感じで呆れてるっていうか、引いてるっていうか……とにかく、思いっきりちむちゃんたちのテンションが下がったのは間違い無いと思う。
でも、トトリちゃんはそんなやる気の無くなったちむちゃんたちを見てもそんなに気にしてないみたいで……また黒いモヤモヤを出しながら笑顔で……今度は「くっくっくっ!」って物語に出てくる悪者くらいしかしないんじゃないかって感じの笑い方をしながら、しゃがんでいた体勢から立ち上がって、
「ちむちゃんたちは意地悪ダナー?……あーあ。ちゃんとお仕事出来た子のためのご褒美で、お姉ちゃん直伝の『おさかなパイ』を沢山作ってキテタノニナー?」
「「「「ちむっ!?」」」」
「『青の農村』の人たちでも知らないような、
「ちむ!!」
「ちむーっ!」
「ち↑~む↑~!!」
「ちっむ! ちっむ!」
ああっ!? わたしが気分転換で作るか、マイス君がおすそわけを持ってくる以外、自分たちで量産した
さっき、やる気が無くなってテンションだだ下がりになったちむちゃんたちが態度を一気に変えて、わーわー賑やかになって『おさかなパイ』を高々とかかげているトトリちゃんの足元に
「……というか、スペシャルでゴージャズな『おさかなパイ』はわたしも欲しいんだけど……わたしが調べてきたら貰えたり……?」
「演技がヘタな先生は黙っててください!」
「ええっ!? そんなぁ!?」
トトリちゃんの足元に群がっているちむちゃんたち。
仕事へのやる気を示すように手をあげて声を上げる子。甘えた声を出してトトリちゃんの足にすり寄っていく子。トトリちゃんの足元で半狂乱気味に踊り出す子。ピョンピョン
そんなちむちゃんたちを前にしてトトリちゃんは……
「ふぅはっはっはー!」
カワイイちむちゃんたちに群がられてか、ただ単にテンションが上がっただけなのかわからないけど、本当に悪者みたいな変な高笑いをし始めちゃった……。
弟子が悪い子になっちゃうなんて、わたしは先生失格だぁー!?
で、でもっ、このまま何にもしないわけにもいかないよね? こういう時、なんとかするのも先生の役目のはずだもん!
けど、なんとかするって、結局のところなにをすればいいんだろう……?
えっと、ええっと……! 何か参考にできそうな…………
先生……そうだっ! こんな時、師匠なら……!
って、ダメだ!? 師匠だったら絶対面白がって悪ノリするよ!? 参考にならなーい!!
「さぁ! ちむちゃんたち、行ってきてちょーだい!」
「「「ちむー!」」」
そんなことを考えてるうちに、トトリちゃんがちむちゃんたちに号令をかけて、ちむちゃんたちが一斉に走り出していった。
目的地はマイス君のいる『青の農村』なんだけど、ちむちゃんたちは……雑貨屋さんのあるほうへと続く階段をピョンピョン跳んで降りて行ったり、アトリエの脇の裏路地に入っていたり、アトリエ前を流れる水路を
「……って、んぇ?」
今気づいたんだけど、ひとりだけまだトトリちゃんの足元にいる子が……?
さっきまで踊ってた男の子……えっと、確かあの子はちむどらごんくん……じゃなくて、ちむまるだゆうくん?
あっ、トトリちゃんも気づいたみたい。
「あれっ? ちむまるだゆうくん、どうしたの?」
「ちーむー?」
なんていうか、さっきまで元気そうだったのになんだか眠そう……?
あっ、眠いんじゃなくて、ただ単に目を細めてるだけっぽい。見てるのは……ちむまるだゆうくんから見てトトリちゃんがいるその向こう……『冒険者ギルド』があるほうの道かなぁ?
「ちむー!」
細めてた目を見開いた後、ちむまるだゆうくんは真っ直ぐ見ていた方向へとットコ走り出していった……って、あれ? もしかしてあっちにいるのは……?
「あれっ? ちむまるだゆうくん? おつかいかな?」
「ちむっ!」
ちむまるだゆうくんが駆け寄った先……『サンライズ食堂』の前ありで出会ったのは、マイス君だった。もしかして『冒険者ギルド』に行ってきた帰りだったりするのかな?
ん? ってことは、さっき走って行っちゃったちむどらごんくんやちみゅぬぅっ!? ……ちにゅ!? ちみゅみゅみゅちゃん! ……え、えっと、あと、ちむっ……ちみゅみみゅちゃんは、誰もいない『青の農村』のマイス君の家に行ってるってこと? ……あらら。
「ちむ、ちむーむ、ちっちむ! ちーむちむちむっ!」
「へっ!?……ちょ、それは……! 他の人には秘密にしてっていう話で……」
「ち~む~? ちむ、ちっちむーちちむ!」
「えっ、スペシャルでゴージャスな『おさかなパイ』? あー、それで……うーん、でも良いよって言うわけにも……」
ちむまるだゆうくんとマイス君が、何かお話をしてるみたい。なんだかトトリちゃん以上にスムーズにお喋りしてるような気もするけど……? っていうか、何話してるんだろう?
ああっ、でも、マイス君をはじめとした『青の農村』の人ってモンスターとお話しできるみたいだし、ちむちゃんも……って、あれ? ちむちゃんって、ホムンクルスってモンスターの一種だっけ? 違うような……?
「というか、僕のことを調べるって……そもそもなんでトトリちゃんがそんなことを……?」
「ちむ、ちっちむー……」
「す、すけこまし? なにそれ?」
「ちむち~」
「えー……とりあえず、トトリちゃん本人に聞けばいいかなぁ? 忙しいけど、ちょっとだけなら寄り道する時間は作れなくはないし……」
あっ、ちむまるだゆうくんを抱っこしてマイス君が
「やあ、ロロナ! こんにちは!」
「ち~む~」
「あっ、うん。マイス君、いらっしゃい……なのかな? ちむまるだゆうくんは、おかえり?」
え、ええっと……色々と気になるって言うか、「これでいいのかな?」って思うことはあるし、ふたりで何を話してたのかも気になるけど……それよりも、今は……。
「あれ? トトリちゃんは? ちむまるだゆうくんがいるって言ってたんだけど……?」
「ちちむー?」
「うーん……それが、ちむまるだゆうくんが走ってった時にはまだいたんだけど、気付いたらいなくなってて……」
玄関戸を開けて覗きこみ、アトリエの中も見渡してみるけど……うん、中にもいそうにない。
「やっぱり、どこか行っちゃったみたい」
「そっか……うーん? いったい、どうしたんだろう?」
「ちーむっ?」
いきなりいなくなっちゃったトトリちゃん。
わたし達さんにんは揃って首をかしげた……。
あっ(察し