マイスのファーム IF【公開再開】   作:小実

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『5年目:マイス「塔での決戦!……その前に」【*2*】』


 本編の『ロロナルート』と同じく、一緒に行く組、その1。






※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、特殊タグ追加、句読点……


トトリ【*2*】

【*2*】

 

 

***東の大陸・塔への道***

 

 

 

 僕の元を訪ねてきたトトリちゃんから、「『塔の悪魔』を倒す」と伝えられたのが昨日のこと。

 僕らは『トラベルゲート』を使い『東の大陸』に移動し、今、その悪魔とやらがいるという『塔』を目指して、雪が降り積もり道があったかも確認できない雪原を歩いている。

 

 塔へと向かっているメンバーは過去最多であろう八人(プラス)一人。

 トトリちゃん、ミミちゃん、ジーノくん、メルヴィア、ロロナ、マークさん、ステルクさん、そして僕。最後の一人は、生贄役のパメラさんだ。

 道中、悪魔のいる『塔』の影響なのか。全くと言っていいほどモンスターの気配がしないため各々(おのおの)自由気ままで、気になるものを見つけては近寄ってみたり、誰かと一緒に話ながら歩いていたりと、これから大物を倒しに行くというのになんだかいつも通りな感じだった。

 

 

 そんなことを考えながら歩いている僕は、一人でこれからの戦闘の事を考えていた。

 人が多いというのは、手数的にもスタミナ的にも良い点がある。……が、同時に立ち回りや連携が難しくなってくるというのも事実だ。敵の大きさにもよるけど、大人数だとかえって戦いにくくなってしまう可能性だったある。

 

 僕がここまで戦闘のことを意識しているのかというと、この前、最初に『東の大陸』にたどり着いた際の航海……そこで『フラウシュトラウト』と戦った時に、戦略の重要さを感じたからだった。あの時のように、海の船の上という特殊な状況ではないとはいえ、どうしても慎重になってしまう。

 

「ロロナとトトリちゃん以外は、みんな基本接近戦主体だから……面倒だとか思わないで、やっぱりここは僕が後衛にまわるべきなんだろうなぁ」

 

 というわけで今回は気分一新、いつもとは違う用意をたくさんしてきてるんだけど……ぶっつけ本番な部分も沢山あるから、大丈夫かちょっとだけ不安だったりする。

 それに、いきなりいつもしたことの無いような動きを要求するわけにはいかないから、あくまで僕の中だけで「ああしよう」「こうしよう」と考えているだけで、戦略とは言えないレベルだろう。……でも、もしもの事態も考えて、緊急で指示を出すことも想定しておいた方が良いかもしれないかな?

 

 

 

 

 

「ま、マイスさ~ん……!」

 

 考え込んでいて俯き気味だった僕の耳に不意に聞こえてきたのは、普段よりも弱々しい、僕を呼ぶトトリちゃんの声だった。

 

 声の主がトトリちゃんだとわかってすぐに僕は顔を上げ、トトリちゃんが歩いていたはずのばらついた集団の先頭のほうを見た。すると、歩いてきた道を逆走するようにしてヨタヨタとこっちへ歩いてきているトトリちゃんが見えた。

 

「トトリちゃん、どうかした……って、もしかして、どこか痛くなった!? それとも気分が悪く……ああっ! そんな格好だからお腹が冷えちゃった!?」

 

「あっ、いや、そういうわけじゃなくて……あと、寒さ対策はちゃんとしてますから。それに、そんなこと言ったらメルおねえちゃんのほうが……」

 

 そう言ってトトリちゃんがチラリと見た方向には、何やらミミちゃんとジーノくんにちょっかいを出しているメルヴィアが。その格好はいつも通りで、上は水着や下着と言っていいようなモノのうえに前開き半袖を一枚は折ってるだけ、下は短いスカートとブーツ……お腹だって丸出しだし、どう見ても寒そうにしか見えない。

 それで平然としているんだから驚きだ。鍛えているからか……もしくは前に聞いた「オシャレは我慢」というやつなんだろうか?

 

 まあ、それはさておき……

 

「えっとそれじゃあ……どうして元気が無いの? これから『塔の悪魔』と戦うけど大丈夫?」

 

「だ、大丈夫です! パメラさんのことについて本人と先生から色々聞いてたら、ちょっとと疲れちゃっただけで……少し休んで気持ちを切り換えられれば問題無いと思いますから」

 

 ああ、前のほうでロロナとパメラさんと一緒にいたのは、パメラさんのことについて話してたからだったんだ。トトリちゃんが反対していた「生贄を捧げる」ことへの抜け道と言える「パメラはもう死んでるから、生贄にしても死なない」という話をするには必要なことだろうから、ちゃんと聞けたなら良かった。

 ……って、あれ?

 

「それで、何で話を聞いてて疲れてたの?」

 

「なんでってそれは……なんていうか、自分の中にあった常識が崩れてゴチャゴチャーってなったところに新しい話がドンドン入ってきて、ちょっと整理しきれてないって言うか……」

 

 なるほど。どうやら知恵熱……じゃないけど、いっぺんに色んな新しいことを知って、こんがらがってしまっているみたいだ。まあ、普通に一緒の村で暮らしていた人が幽霊だったと知れば混乱してしまっても仕方ないと思う。

 でも、最後にポツリと小声で呟いた「マイスさんで慣れたつもりだったんだけどなぁ」って言葉……どういう意味なんだろう?

 

 

「そういえば、パメラさんって昔は今みたいな身体(からだ)は無くって……その幽霊のパメラさんを、マイスさんは全然驚きも怖がりもしてなかったらしいですけど、本当なんですか?」

 

「え、うん。本当だよ?」

 

 僕の返答に、トトリちゃんが「ええっ!?」と驚いた。……いやぁ、そこまで驚かなくてもいいと思うんだけど……。

 

「とはいっても、浮いたり透けたりしてて、初めて会った時はさすがにほんのちょっとだけ驚いたんだけどね。そもそも幽霊(ゴースト)はいきなり消えて、変なところに現れたりするから戦うのは「面倒だ」とは思ったけど、「怖い」って思ったことはないかなぁ?」

 

「な、なるほど? ゴースト系のモンスターのことを考えて……って、それ、どこかズレてる気が……?」

 

 首をかしげてしまい納得できてなさそうな様子のトトリちゃん。

 ううん……でも、これ以上言えることって無いような……? あっ。

 

「パメラさんに初めて会った時って言ったら、ちょっとおすそわけで、うちで作った作物を使った食べ物を持っていってたんだけど、パメラさんは「幽霊だから食べられない」って……あれは残念だったなぁ」

 

「えっと、それ、怖がらなかったことに関係あるんですか?」

 

「あると言えばあるし、ないと言えばないかな?」

 

 そう僕が返すと、トトリちゃんは「ええっ……」と呆れ気味に声をもらしていた。

 ……ちょっとだけ心外だったりする。けど、僕がちょっと遠回しに、もったいぶり過ぎて言ってしまったって言うのもあるかな?

 

 とにかく、僕が何を言いたかったのかを伝えることにした。

 

「相手が人間でも、モンスターでも、幽霊でも、いつも通りの自分で接してみて……その上で、今後どうしていくか決めたらいいんだよ。一緒に過ごしてみて楽しかったらもっと仲良くなってみるのもいいし、性格が合いそうになかったり、怖かったらちょっと距離を置くとか……」

 

「…………」

 

「あとは「仕事上の付き合い」とか最低限の範囲にするとか……って、どうかしたの?」

 

「あっ、その、マイスさんがそんな色々考えて人と接してるのが意外で……」

 

「いやまあ、実際のところはいつも通りにしてたら楽しくなって、すっかり忘れちゃってることがほとんどなんだけどね?」

 

「やっぱりですか。マイスさんらしいというか、なんというか」

 

 「なんとなく、そんな気はしてた……」とこぼしたトトリちゃんを見て、僕は苦笑いをした。

 トトリちゃんの場合、時々出てくる毒舌のせいでトトリちゃんからではなく相手から距離を置いてきそうな気もするけど……その時々ある痛烈な一言以外は本当に良い子だから、なんだかんだ言って離れられる(そういう)ことはそうそう無いんじゃないかな?

 

「でも、マイスさんって誰とでも仲が良いですし、誰かと距離を置いたりなんかしてない気がするんですけど……」

 

「実はしてたりしたんだけどね……その、今さっき話したパメラさんとか」

 

「ええっ!? って、そういえば、前に「全然お店に来てくれないー」ってパメラさんが言ってた気も……欲しい道具が無かったとか言ってましたけど、実はやっぱり幽霊が怖かったんですか~?」

 

 驚いたかと思えば、最後にはまるでからかうように聞いてきたトトリちゃん。

 ちょっと前まであんなに疲れてる様子だったのに、無事元気が戻ってきたようで何よりだ。

 

 っと。それはそれでいいんだけど、まずは誤解の無いように言っておかないと……

 

「怖かったからじゃなくて……さっきも言ったけど、霊体のパメラさんって何も食べられないんだよね。で、おすそわけをアトリエに持って行って、ロロナとホムちゃんと一緒にお茶にして……って時に、パメラさん一人だけ食べれないってなっちゃって、それでちょっと気まずくて……それで、どうしても今でも苦手意識がちょっとだけ残ってるんだ」

 

「な、なるほど……。でも、この間『青の農村』に一緒に行った時のパメラさんは、そんなこと気にしてる様子はなかったですし、マイスさんが気にし過ぎな気も……。というか、わたしやジーノくんの時もそうでしたけど。マイスさんにとってのコミュニケーションの第一歩って、自分の作った物をごちそうすることだったりするんですか?」

 

「うん! やっぱり僕を知ってもらうには、僕が丹精込めて作った作物を使った料理を食べてもらうのが一番だと思うからね!」

 

 そう僕が言うと、トトリちゃんが小声で「まあ、確かに「驚かされる」って意味じゃあ一発で知ってもらえると思うなぁ、うん」とこぼしていたけど……なんだろう? それは僕がいつも誰かを驚かせてるみたいな言い方のような……? 『青の農村』のお祭りではみんなを驚かせて楽しんでもらおうとは思ってるけど、そのことかな?

 

 

グゥ~……

 

 

「「…………」」

 

 と、不意にお腹の虫の声が聞こえてきた。発信源は……いわずもがな僕の隣を歩いているトトリちゃんだった。

 

「……『塔の悪魔』を倒したら、僕の家でみんなで『お疲れさま会』でもしよっか? 色々料理も用意してさ」

 

「ううっ、今のはスルーしてくれた方が嬉しかったんですけど……!」

 

 チラリとそっちを見てみると、恥ずかしがってか顔を赤くしているトトリちゃんが、頬を膨らませ、うらめしそうに僕をジトーっと睨みつけてきていた。

 

「あははははっ! 大丈夫だよ。ロロナやステルクさん……他の皆も心強い人たちばっかりなんだから、『塔の悪魔』も問題無く倒せて、すぐにゴハンも食べれるって!」

 

「それじゃ、まるでわたしが食いしん坊みたいじゃないですか!? そういう話じゃ……って、もうっ! 笑わないでくださいよー!!」

 

 

 頬を膨らませたトトリちゃんにポカポカと叩かれながら、僕は先に見える雲に刺さるほど高くそびえる塔を見つめた。

 

 トトリちゃんと話すまで、あの塔での戦闘について不安なことばっかり浮かんでた。だけど、今はなんだかスッキリしている。

 やっぱりわからないこともあるし、不安が全く無いとは口が裂けても言えないけど……それでも、なんだか頑張れる気がしてきた。

 




 正直な話、『トトリルート』は『塔の悪魔』イベントが終わってからやっと一歩踏み込めるんですよね。
 それでもきっかけが無く、なかなか間が狭まらないんじゃないかなーっと思っています。なので、ある程度距離を置いた絡みが続くかと。

 ……早くイチャイチャさせたいですねぇ……。

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